降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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難破船の行き先③

 

 飛行船内に殺人バクテリアがばら撒かれた。

 アンプルはすでに見つかっており、警察によって回収されている。

 

 場所は原作通り喫煙室だった。

 現在はその近くのバーも含めて警察が封鎖しており、比較的船内は落ち着いた雰囲気だ。

 この辺はキッド対策で捜査二課の面々が乗り合わせていたのが幸いしただろう。

 混乱は最小限に抑えられている。

 

 多少の混乱……すなわちシャム猫メンバーによる大袈裟な病のデモンストレーションはあったが。

 それも先ほど私が制圧したし、問題なく隔離ができている。

 

 灰原さんが青い顔で私に近づいてきた。

 

「貴方、さっき感染者に接触…!」

「大丈夫。すでに消毒しましたし、幼生による免疫機構は優秀です。それより、子供の姿の貴方の方が心配だ。何か体に不調があったらすぐ教えてください」

「………そうね、ありがとう宙君」

 

 灰原さんも少し落ち着いたようだ。

 しかしその隣で、何かに気付いたようにコナン君がハッと頭を上げる。

 

「おい、アイツらにも知らせねぇと!」

「僕も行きます。人手はあった方がいいでしょうから」

「悪い、手を貸してくれ!」

 

 コナン君と一緒に慌ててひた走る。

 

 一応、すぐに子供達を見つけることができた。

 どうやら通常の船室ではない裏手に入り込んで

探検していたらしい。

 悪い子達が探検の歌を歌いながら進行していたところを確保した。

 

 おおー、とガス袋を見上げていたので、コナン君がまず最初に元太君に飛びついた。

 感染確認をしているようだ。

 

 「なになになに?」と困った元太君がわたしを見上げてくる。

 軽く事情を説明をしておくこととする。

 

「つまり、この船に殺人バクテリアがばら撒かれた。子供への危険性は特に高い。感染に気をつけつつ、みんなと合流すべきだ、と言う話さ。一人で倒れても誰も助けられないからね」

「ひぃぃいい!俺死にたくねぇよ!」

「元太君…死んじゃったらヤダ…!うな重たくさんお供えするから死なないで!」

 

 子供達はもう元太君に対して弔う姿勢を見せて泣き始めた。

 妙に潔いの面白いからやめてくれ。

 

 そんなコントをしていると。

 

 何者かが暗闇の中大空洞を上り、不審な動きをしているのが目についた。

 「みんな伏せろ!」とコナン君が低く号令するので、皆慌ててざっと伏せる。

 よく訓練された子供達だ。

 

 不審人物の様子を、コナン君がそっと確認する。

 暗いが私の視覚ならば問題なく肉眼で視認可能だ。

 コナン君はメガネの暗視機能を使っているらしい。

 阿笠博士の流石の貫禄である。

 

 それは、何者かが外につながる天井のハッチを開けようとしているようだった。

 私は目を細めてその姿を見やった。

 

「ルポライターの藤岡さんですね」

「キッドか?」

「いえ、キッドは別途潜り込んでいたところにすでに声をかけていますので別人です。どちらかと言うとあれはシャム猫……」

「ッならマズイぞ!はやくハッチを閉めねぇと!」

 

 まあ、連携をがっちりしていた彼らシャム猫の仕事にそんな時間などないわけで。

 まもなく、外からヘリのプロペラ音が響いた。

 私は子供達を抱えて、急いでシャム猫に見えないところまで退避する。

 

 上から降りてきたのは完全武装の傭兵団であった。

 プロらしく、動きに迷いが見られない。

 赤いシャム猫は一人一つサブマシンガンを携帯し、慎重にしなやかに、全方位を確認しながら敵地に降り立った。

 

 神経が高揚し、己の瞳孔が開くのがわかる。

 自然と口角が吊り上がり、その肉を引き裂く欲がざあざと脳を支配する。

 殺してやるぞ、殺してやるぞ、殺してやるぞ。

 危害をくわえようと言うのか、私に、お前達が、お前達如きが!

 

 コナン君が声を抑えて私の服の裾を引っ張った。

 

「待て、子供達がいる!」

「っ………本職の分隊レベル相手に、流石に無手で突貫はしませんよ」

 

 そう言い訳するが、ちょっと盛り上がってしまったのは否定できない。

 私は努めて呼吸を深くして、その湧き立つ欲望を排除した。

 

 コナン君が傭兵達を確認し、眉間に皺を寄せる。

 

「爆弾を仕掛けたのか。……光彦、場所を探せるか」

「はい!見つけてきます!」

「奴らが出て行った後だ。いいか、絶対に爆弾には触れるなよ、俺が解体する」

「わかりました!」

 

 子供達は皆揃ってびしっと了解のポーズをとった。

 上澄み中の上澄みの子供達の仕事は早く正確だ。

 シャム猫達が去った後、そーっと音を立てずに散開していく。

 あまりに優秀で舌を巻く動きだ。

 

 私もゆっくり動き出す。

 逸った事を言ったが、あの人数で本職に武装されると流石に敵わないんだよな。

 

 本来私は前に出て戦うために作られてはいない。

 あくまで私に備えられているのは自衛用の性能だ。

 だから爪もなく、鋼鉄に似た鱗もない。

 手足を増やして物量で攻める、それが私という生物兵器のあり方である。

 

 殺人バクテリアを持つ傭兵団への対処というなら、まずは手足を用意すべきだ。

 子供達による爆弾の捜索を手伝いながら、私はコナン君に声をかけた。

 

「隙を見て1人ほど鹵獲しましょうか。幼生を孵化させて戦力にすれば、安全に制圧できます」

「だめだ。万が一乗客にあんなものが見られたら、この後お前が追われる立場だ」

 

 それは確かに、その通りだ。

 手足が民間人に見られた時点で、優作氏も降谷さんも動き出すだろう。

 なるべくなら避けたいところ。

 

「それより元太だ。アンプルの見つかった喫煙室も中を覗いたと言っていた」

「…………」

「もしかしたら、」

 

 なにか言いたいのか、迷っているのか、コナン君は途切れ途切れに言葉を紡ぐのみだった。

 

 私の幼生は免疫機能を有している。

 それは人の機構と大きく異なるが強力なことが実験で確認できている。

 

 それを万が一の時元太君に適用できないかと、コナン君は言いたいのだろう。

 私は首を振った。

 

「無理です。免疫機構を目的とした幼生の投与はまだ成功していません。なにより、今回の細菌に効くかも未知数です」

「…………ああ」

「ともあれ、シャム猫の制圧は出発点でしかないのでしょう。この後この船をどこに着陸させるか。どのように検疫するか。いつまで隔離するかの話こそが本題になる」

 

 原作でこそアンプルは偽物だったが。

 本物であっても、彼らはちっともかまわないのだ。

 完全防備の姿でないから偽物である可能性の方が高い、という程度の話。

 

 面倒なことになったものだ。

 やっぱり一匹ほどシャム猫を捕まえて手足を孵化させた方が、文字通り手が増えて楽だろう。

 私もその後ルパンのところに逃げてしまえばいいし。

 

 でも灰原さんもコナン君も悲しむから、やめた方が無難だろう。

 

 私は肩をすくめて笑った。

 

「仕方ない。僕は船内でゲリラ戦するよ。爆弾を手分けして解除した後は、個々にシャム猫を仕留めていく」

「俺もそのつもりだ。悪いが協力してくれ」

「勿論。ただ、船内の人間を人質に取られたらどうする?」

 

 少し迷って、コナン君は私に目配せした。

 

「俺は出ていく。お前は残って抵抗してくれ」

「………その意図は?」

「俺は子供の姿だから、人質が効くと思われてランダムに船内の人間を殺されかねない。でもお前なら「自分の命が惜しい」とでも言えばそれ以上の効果は期待できないと考えるはずだ。特にお前はこの船の誰とも血の繋がりが無いからな」

 

 例えば乗客から聞き出して阿笠博士を狙ったとして、それでも単なる養父だ。

 シャム猫も深追いする可能性は低いと言える。

 そんなことするより直接私を仕留めようと人を派遣する方が効率的だと思うだろう。

 

 私は眉を顰めてコナン君を睨んだ。

 

「でも出て行った君は殺されますね。抵抗した見せしめとして」

「間違って蘭が殺されたりでもしたら死んでも死にきれねーからな。それでいいんだ」

「僕が良くないです。そんなことになったらシャム猫で手足たくさん作りますよ僕は」

「お前……命の価値が軽いんだか重いんだかはっきりしろよな」

 

 半目で睨まれて、私はむすっとして唇を尖らせた。

 人の心がないと評判の私だが、この局面ではコナン君の方が人でなしだ。

 

「親しい人の命だけ重いなんてありふれた価値観でしょうに」

「そうだな。お前は情に厚いやつだよ。世界と大切な人なら、躊躇いなく大切な人を選べる」

「悪口です、それは悪口ですよ。人でなしみたいに聞こえます」

「褒めてんだよ。そのぐらいでないと、守りたい人の命は守れねーからな」

 

 いつも俺は蘭を傷つけてばかりだし、とコナン君が自嘲した。

 真実をかざすコナン君の葛藤のようなものがそこからは見てとれた。

 真実を優先して大切な人を傷つける。

 今もまた、そのように傷つけ続けている。

 

 と、そのあたりで子供達がわちゃわちゃ帰ってきた。

 「爆弾見つけたぞ!」「僕の方がたくさん見つけました!」「歩美も歩美も!」と言って我先にと教えてくれる。

 可愛くて優秀な子達だ。

 

 爆弾を解除するのは二人で手分けして行った。

 私はコナン君の手が届かない箇所を中心にしたので、非常にスムーズに終えることができた。

 

 時間的余裕もあり、シャム猫が来た頃には完全に迎撃態勢を取ることができたのだ。

 

 興奮で全身の肌が粟立つ。

 人を狩れる、血を浴びることができる、その歓びで背筋が震える。

 殺せ、殺せ、殺せ、と本能が私をせき立てている。

 

『あはははは!引き裂きましょう!あの愚かな猫どもを血染めで船内に飾りつけましょう!豪華な催しになりますよ!!』

 

 肉体君も大喜びだ。

 多分生物兵器の健康にもいいのだと思われる。

 

 私はハッチの真下に子供達を隠し、怯える彼らを優しく撫でた。

 「ここに隠れてるんだ、いいね歩美ちゃん」と声をかける。

 子供達はしばらくここに隠れていてもらうこととしよう。

 

 歩美ちゃんが私を見上げて涙目を作った。

 

「宙お兄さんたちはどうするの?」

「悪い人をやっつける。僕も蘭さんも同じぐらいには戦えるつもりだからね。でも君たちを守りながらは戦えない。君たちが見つかれば負けるのは僕らだ」

 

 やさしく、根気強く語りかける。

 

 「上手に隠れられるね?」と問い掛ければ、彼らはこくりと頷いた。

 不安そうに涙目になって、それでもおとなしくしている。

 

 男達がやってきた。

 

 さて、狩りの時間である。

 





・「手足」統率型
中間統率を果たす指示役。
正式名称はラジオタワー(電波塔)。
自我はなく、どちらかというとクイーンの指示を溜め込むプログラムに近い。
たくさん口があって、そこから寄生型がワーンって常に沢山出てくる。

・「手足」支配型
研究所での正式名称はゼーロス(支配)。
免疫機構を担うのはその亜種となる。
調整すれば万病に効く特効薬となるかもしれない可能性を秘めている。
他にアレス(戦争)、リモス(飢饉)、寄生型ことモース(疫病)などがいる。

・担当科学者
「かっこいい名前つけれて満足。でもうっかり支配型の性能が良すぎて薬学部門に回されそうになって焦った。こんな好き勝手できる部署他にないのに」
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