降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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子供の子供の話
沈黙の火


 

 一週間ほどで、私は小学一年生ほどの大きさになった。

 

 そこで改めて「阿笠空」を名乗り、活動を開始することにした。

 海外から帰ってきた設定だ。

 一週まわってぐるりと元のところに戻ってきた感じで、なんとも感慨深い。

 

 肉体君が私に再三に渡る注意を繰り返した。

 

『いいですか、普段からこまめに「阿笠宙と同一人物だよ」感を出すんです。一日五回を心がけましょう。間違っても母君の前で差異を生んではならない。わかりましたか?』

「ふぁい」

『心機一転で新しいこと始めないこと!マジックの練習は欠かさない!いいですね!!』

「うす」

『あと笑えないジョークはやめてください。血飛沫の中這い出るエイリアンの真似は厳禁です。話題に出してもいけません』

「え、僕の鉄板の持ちネタ…」

『ふざけないでくださいこの生物兵器。僕が人類滅ぼす前に母君が心労で倒れます』

 

 肉体君も無事受け継がれていて、私に一歩遅れて自我を取り戻した。

 

 今では私に何か粗相が無いかすごく注意をしてきてうるさいのだ。

 別に私は「頭が割れるの結構痛いから帝王切開にできないか」とかそういう相談しかしてないのに。

 それもダメらしく凄くガミガミ言ってきた。

 

 どうも「前回でよくわかりました。貴方に任せておくと人の心がなさすぎて物事が拗れる。遠慮なく口出しする必要があるのだと」とのこと。

 なぜにそんなに信用が低いのか、それがわからない。

 

 肉体君はひとしきり注意した後、ため息をついた。

 

『僕、本当に僕のままなんでしょうか。単なるコピーだとして、それは果たして僕といえるのか』

「そこはご安心を。違ってても僕が別個で全部記憶してるので。次もその次も覚えてるつもりなんで長く付き合いましょう相棒」

『むしろなんで貴方は自己同一性に疑問をかけらも持ってないんですか。貴方の在り方に救われるので僕はありがたいですが』

 

 転生者が自己同一性で悩んだりするものかよ。

 そんな話をしつつ。

 

 ともかく、私はスクスクと育っていった。

 

 ちなみに、ベルモットも無事で私の新しい体に幼生のコントロール権限が引き継がれている。

 後から思い出してめちゃビビって連絡したんだよな。

 特に何もなかったようで何よりである。

 

 ベルモット自身には「そんな大事なこと忘れて私が非業の死を遂げたら化けて出るわよ!?」と凄く恨まれたが。

 すまんね……ともかく、万事こともなしということで勘弁してくれ。

 

 ちなみに、地下の手足の方も実に大人しいものだった。

 私の誕生と同時にキイキイ鳴き喚いて手をゆらゆらさせる奇行を行ったとのことで。

 次代の誕生を祝っていたらしく、前の私が出した幼生が私に接触しても、特に暴れたりはしなかった。

 

 

 

 

 さて、今日は安室さんがやってくる日だ。

 

 私は久しぶりに会えるということでややおめかしをしている。

 灰原さんに選んでもらったやや可愛いおしゃれな子供服に身を包み、椅子で足をぶらぶらさせている。

 

 先に何か話があったのか、チャイムがなってから随分と間が空いて20分ほど経ってからの入室だった。

 キイ、と小さなドアの軋む音。

 

 コナン君に連れられて入室した安室さんは、随分と顔色が悪く憔悴していた。

 黒々とした隈はよく寝れていないことを示している。

 コンディション悪そうだなおい、そんな忙しかったなら私のことはいいから早く帰って寝てほしい。

 

 そして壮絶な迫真顔で黙りこくった。

 

「……………」

「オリジナル!見てください、新しい体になりました!二代目ですが、記憶と人格は据え置きです!前より安定が早くて筋力も強いんですよ!」

 

 私は力瘤を作って自慢した。

 前は匂いや音なども敏感に反応してしまって大音量に弱かったが。

 生まれ直しを経て品質が安定したのか、いい感じに大人形態の特徴を引き継いで克服している。

 

 安室さんは土気色の顔で呻いた。

 

「君は、本当に阿笠宙なのか…?」

「僕はそのつもりです。ああ、前の身体は灰原さんが研究のため保存していてくれています。見ましたか?ちょっと次代を産んだため頭部の破損が酷いのですが」

 

 安室さんはさっと顔色が変わり、そのまま口を押さえて「すまない」と短く言い置いて凄い勢いで退室してしまった。

 なんなんや一体。

 

 私の前の肉体は、現在地下室で保管されている。

 貴重な生体のクイーンのサンプルとして、次に活かすために研究しようということで、死の間際に話がまとまったからだ。

 

 それを言い出したのは灰原さんで、そりゃもう凄まじい迫力だった。

 そんな気合を入れなくても私は二つ返事でOKするのに、泣いて吐いて泣いて。

 「貴方に安らかな死も弔いも与えてあげられない私を許して」って嘆いていた。

 他ならぬ私のためなんだから気にすることはないのに、本当にままならないものである。

 

 というわけで、私の体は研究に使われる予定だ。

 次代のクイーンの発生方法やら、各種臓器の位置やら解剖の予定がみっちり入っている。

 

 コナン君が冷たい色の瞳で出ていった安室さんの後ろ姿を見て、「悪いな空」と肩をすくめた。

 

「どうかしたんですか、体調不良でしょうか」

「あの男がうまく状況を飲み込めてなかったから、お前の死体を見せた。利用する形になって悪い」

「構いませんよ?でも確かに少し見た目はグロいですけど、その程度バーボンなら見慣れていると思いましたが」

「あのグロさを見慣れてる奴は中々いねぇよ。俺でも脳裏にフラッシュバックするし」

「え、歴戦の探偵のコナン君まで…!?」

 

 私が慄いていると、コナン君は半目になってため息をついた。

 

「バーロー、ただの被害者ってならともかく、親しい人間がああなってたら俺もビビるっつの」

「なるほど。配慮が足りませんでした…次はもっと綺麗に這い出られるように注意します。難しいな…」

 

 まだ魂が転移した直後のことだったからな。

 肉体制御が難しく、本能に任せて力任せに這い出るしかなかったのだ。

 次は顔を避けて後頭部から頑張って這い出るべきだろうが。

 でも硬い骨を砕くのに苦労するだろうなぁ、方向もよくわからないし。

 

 しばらくするとげっそりした顔のあむぴがやってきた。

 なんか病的な顔色だ。

 やっぱり自分と同じ顔が破壊されてると気落ちもするのかもしれない。

 

「オリジナル、すみません。貴方の似姿を破損させてしまって」

「……君のせいじゃない。君のせいじゃ……だって、すごく苦しんだと聞いた」

「確かにとても痛かったですが、出産は一般的に苦しいものでしょう。特筆すべきことでもありません。ただ、二回目があると思うとやはり憂鬱ではありますね」

「にかい、め…」

 

 虚ろな瞳に絶望がぐるぐると渦巻いた。

 そんなに気にしないで、これが私の在り方と割り切ってはもらえないものだろうか。

 

「はい。僕はこうして生死を繰り返すものとしてデザインされましたから。サイクルの時期はまだ不透明ですが、これにより永劫を描くのが組織の目的でしょう」

「そしきの……目的」

 

 ドス黒い敵意と殺意の煮凝りのようなものが安室さんの瞳に宿った。

 ついでにコナン君も、表情がとてつもなく険しくなる。

 おお、私のために組織壊滅への志が新たになった!なんで!?

 

『僕らの苦しみを思って組織に敵意を抱いているんですね。何を馬鹿なことを。貴様に憐れまれる謂れはない』

 

 何か不良肉体君が捻くれたことを言っている。

 でも、私のために怒ってくれているのだ。

 それは嬉しいことであるだろう。

 

 私は恐れ多いと思いつつ、安室さんの手を取った。

 

「僕のために貴方が心を動かしてくれているのなら、それ以上に嬉しいことはありません。でも、それが苦しいのなら僕はやめてほしいです。貴方には苦しんでほしくない」

「宙君……君はいいのか。そんなふうに歪に弄られて、弄ばれて。憎くはないのか?」

「僕は特には。それより、貴方に会えて、言葉を交わせることの方が重要ですから」

 

 本物の推しとの握手会である。

 フリーお話タイム付きでスタッフに時間ですって注意されないおまけ付き。

 そりゃ何より重要なことだろう。

 

 安室さんはいよいよ沈黙した。

 長い沈黙の後、コナン君が「バーボン」と一言声をかけると、ぴくりと指を動かして安室さんはゆるゆると頭を上げた。

 

「……僕はもう行くよ。君に会えてよかった」

 

 それだけ言って、私の頭をぎこちない手でそっと撫でて。

 安室さんは出ていった。

 

 扉を閉めたところで、向こう側からひそめた声が響いてくる。

 常人ではとても聴こえないだろうが、私の鋭敏な耳でなら捉えられる音量だ。

 

 コナン君がゆるりと濁った声を出す。

 

「バーボン、花を供えるなら今晩来い」

「…………ありがとう」

 

 私の抜け殻に献花するようだ。

 それは実に情緒的な行いだった。

 蝉の抜け殻を弔うような、奇妙だが味わい深い色を持つ。

 

 想われているような気がして、私は嬉しくなったのだった。

 





・コナン君
絶対に組織は壊滅させる。強い決意を抱いた。
バーボンについては遅れてやってきた上にこの期に及んで「本当に彼は死んだのか」とか言い出したのでR-18Gの現実を見せた。
死体は研究の後に焼却炉で燃やして擬似的な墓を作る予定。
「死体遺棄、だな。立派な犯罪だ」
「そうね。私たちは共犯者というわけね」
「ああ…………この罪は、俺たちで背負っていこう」

・安室さん
窓の外からちらっと阿笠空の姿を見てしまって何もかも信じられなくなったら、コナン君に致死量の現実を見せられた人。
むごい。直視できない。
組織に対する憎悪が積み重なっている。
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