降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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洗脳

 

 今日はN回目のキャンプの日である!

 

 「今日もキャンプ明日もキャンプ!明後日も!」と軽快な声で合唱が車内に響いている。

 可愛い。

 可愛いけど明後日はキャンプじゃないからな。学校行こうな。

 

 私は歩美ちゃんの隣でマジックの練習だ。

 ほぼ考えずに手癖で色々できるようになったから、ぱっぱっとトランプを出したりしまったり。

 「わぁ!すごい空君!」「宙お兄さんみたいです!」と子供達が盛り上がる。

 同一人物なのでちょっぴり居心地が悪い。

 

 私の手の中からパッとトランプ柄の厚紙製の花を出現させた。

 それを灰原さんへプレゼントする。

 

「前の紙製花より一回り立派になりました。お納めください」

「あら、こっちもかわいいじゃない。前のと一緒に飾って大事にするわ」

 

 いや前のお菓子がついたやつだし捨ててもろて…と思ったが言わないでおいた。

 それを言うと、なんか肉体君の拳が飛んできそうな気がしたのだ。

 

『て、てっきり「前のヘロヘロの紙花なんて捨てて新しいのを愛でてください」って鬼畜生なこと言い出すと思ってひやひやしましたが…よく我慢しましたね!』

「しつれい」

 

 私はモールス信号で抗議した。

 いや言おうと思ったけど。でも言わないならそれが事実なのだ。えへん。

 

 ちなみに、あむぴに関しては復活して今日も元気に潜入捜査官をやっている。

 

 でもなんかやっぱおかしいんだよな。

 私のこと神か仏かみたいに持ち上げてひれ伏すし。

 「君の言うことなら間違いない」って言って狂信者の顔で全肯定するし。

 なんか完全にキマってしまった顔で、畳の上で四つん這いのままうっとりと私を仰ぎ見るとかもするし。

 

 肉体君が嘆息してやれやれと声を出した。

 

『完膚なきまでに自己を否定されて、その上で全てを受け入れられたんですから。洗脳の手法そのものですもん当たり前でしょう』

 

 つまりあむぴはブレインウォッシュされ、敬虔な私教の信者になってしまったと言うことらしい。

 やだ…あむぴを洗脳してしまった…?

 幼生も使ってないのにそんなことある?

 

 ともかく、しばらく時間をおいてまだダメだったらそのままコナン君に紹介しよう。

 こんなお目目ぐるぐるの安室さんを潜入捜査官として紹介したらまずいが、あまり時間を置くのも問題だし。

 

 ともかく今日はキャンプだ。

 楽しんでる私達の写真を撮って安室さんに見せるつもりだから、それで日本の将来を担う存在たちの活動を見て癒やされてほしいところである。

 

 なお、現在の車内ではコナン君は灰原さんの持っているアポトキシン4869の解毒薬に釘付けだったりする。

 「くれよ〜!なぁ頼む!」「いやよ!」とコントが繰り広げられ、子供達は相変わらずキャンプの歌を合唱。

 大変騒がしくて良いことである。

 

 私は賑やかさにニコニコした。

 

「ううむ、僕も薬一つで伸び縮みできると便利なんですけどね」

「うっ……」

「このラブコメ探偵さんがおかしいのよ。その点空君はいい子にしてて偉いわ」

 

 灰原さんに褒められてむやみやたらと鼻高々になる。

 せやろ。灰原さんに褒められたんやで。

 しょげかえったコナン君が「でも戻りてー時あんじゃん…」と撃沈している。

 可哀想に、高校生なら元の姿で青春を謳歌したい時など山ほどあるのは間違いない。

 

 蘭ちゃんに他校の変な虫がついた時とか悶絶してたし。

 

 なんにせよ、来週はミステリートレインだ。

 オリエント急行さながらの謎解き汽車に乗っての旅ということで、私もかなり楽しみである。

 まあ、殺人が起きて本気でオリエント急行になってしまうんだが、それはそれ。

 私は無視して普通の謎解きをしていよう。

 

 が、トラブルには事欠かない。

 米を炊くための飯盒を忘れてしまったらしく、急遽コナン君と阿笠博士が飯盒を買いに行くことになった。

 私と灰原さんは子供達の見張りで、その間に薪拾いをする手筈になっている。

 

 焚き木を拾い出すと

 すすす、と近寄ってきた光彦君が私を前にもじもじした。

 

「どうかしましたか?」

「あの………灰原さんのこと、なんですけど」

 

 顔を赤く染めて、光彦君は意を決したように顔を上げた。

 声を潜めようとしているのはわかるが、それを差し引いても全然響く声で叫んだ。

 

「やっぱり空君、灰原さんのこと好きなんですか!?」

「ん?好きですよ」

 

 衝撃を受けた光彦君の前で、あっ違うこれは恋バナで、Likeの話はしてないと気づいて慌てて訂正する。

 

「か、家族としてですよ?たぶん……おそらく……」

「本当ですか!?」

「はい。きっと……」

 

 そうでないと、「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」みたいなことになってしまう。

 そんな妙なタイミングでガンダム要素は入れたく無い。

 何より私は属性としてはシャアでなくアムロだし。

 

 言葉を濁しているのは、私自身彼女に対する感情がなんなのか決めかねているからだ。

 恋よりも罪悪感が近かろう。愛よりも家族が近かろう。

 私は人間と生態が違うのだから、そもそも関係すらも成り立たない。

 

 でも、これほどの想いを愛と形容しないのも腑に落ちない気がするのだ。

 

 

 などと哲学的な考えに想いを馳せている間に、そこそこ深いところまで薪拾いに来ていたらしい。

 ざっく、ざっく、と音がする。

 

 元太君が「そろそろ帰ろうぜ!コナンたちが新しい飯盒買ってきてるかもしんねーし!」と元気よく声を上げた。

 そしてふと後ろの茂みの後ろを覗き込んで、元太君は硬直した。

 ざっく、ざっく、と音がやむ。

 

 元太君の目の前で、男が女性の死体を埋めていた。

 

 なんでこう運命的な出会いに事欠かないのか。

 あと考え事してたせいでこの血の匂い無視してたわホンマごめん。

 

 一瞬呆然とする子供達。あと犯人。

 次の瞬間、「逃げなさい!!」という灰原さんの言葉に子供達が一斉に逃げ出す。

 

 犯人は一拍遅れて憤怒の表情を形作った。

 絶対に殺す、と殺意が漏れ出ているのか、荒い息で目を見開き、死体を埋めるのに使っていた大きなスコップを握り直す。

 あれで殴られれば子供の頭など最悪は柘榴のように砕かれるだろう。

 

 私は子供たちへの道を塞ぐように前に出た。

 狂気に染まった犯人がスコップを振り上げる。

 その隙を見逃さず、そのまま軽く足払いをかける。

 

 前の時の第二段階より力があるらしい。

 足を払うだけのつもりが、ぼきりと片足をへし折ってしまった。

 ぎゃああああ!!と男が醜く喚く。

 

「灰原さん!警察に連絡を!」

「分かったわ!!」

 

 私は遠巻きに私を見ていた灰原さんに通報を指示した。

 これで足を潰された男に為せることは何もない。

 叫んでいた男が震えながらスコップに手を持ち直そうとするので、それも踏み砕いてやる。

 草木に足を取られて転んだ、と言うことで一つ。

 

 私は腹の中にたぎる憎悪と衝動を理解する。

 

 我々を傷つけようとしたのか。

 お前が、お前如きが、人間が、ヒト風情が!

 殺してやる殺してやる殺してやる。

 お前は子供達と灰原さんを怯えさせた、あんなにも震えて涙目で怖がっている。

 脳髄を捻り出して啜ってやるぞ。臓物を引き摺り出して遊んでやるぞ。

 

 ────なんて、そんなことはしないのでご安心を。

 そんな熱量私には無いので。

 

『殺すべきだ!こんな下衆は殺すべきだ殺せ殺せよ人も何もかも滅ぼしてやる穢らわしい炎の中に還すべきだ殺し尽くしてやる!』

 

 肉体君が荒れ狂っているので、私は軽く肩をすくめてリラックスした。

 どうどう、落ち着け。

 別に普通の殺人犯じゃろがい。

 

 犯行現場を見られて私たちを始末しようとしただけの、いつものアレである。

 まったく迷惑この上ない。

 

 しばらくすると、パトカーがやってきた。

 灰原さんの呼んだ警察車両がファンファンと音を立ててキャンプ場の駐車場に雪崩れ込み、現場へと駆けつけてくる。

 中から出てきたのは群馬県警のへっぽこ警部だ。

 

 へっぽこだが、死体が埋めかけられてて、スコップ持った人が倒れてるんだからこれ以上なく事態はシンプルである。

 「警部!」と言う声と共に現場を見た山村警部は、名探偵のように顎に手を当てて考え込んだ。

 

「ふむ……犯人は貴方ですね!!!」

「はい。この男がスコップで女性を埋めていました」

 

 呻く犯人を得意げに指差したので、私はそれを援護した。

 誰が見てもそうなんだが、これはこれで牧歌的で良かろうよ。

 

 私は頷き、一件落着に息をついたのであった。

 

 

 

 

 

 その頃。

 安室透は、喫茶ポアロのバイトをしながら毛利小五郎と雑談の最中であった。

 

「今日はあの子たちはキャンプなんですね」

「群馬のキャンプっつってたな。テメーは付いていってやらなかったのか?」

「探偵の仕事がありましたので。ですが直前、あの子と買い物に行ってキャンプ用具を買い足しました」

 

 安室とて小五郎の言葉の裏、すなわち「父親としてやれることはやってるか」というのは理解できる。

 安室があの子のためにできることは少ないが、少ないながらに触れ合っていきたい。

 そのように考えて返答をする。

 

 キャンプ用具の買い出しに付き合ったのは本当のことだ。

 あの子は今後の江戸川コナンとの打ち合わせのためだと思っているようだが。

 安室は空のために一緒に買い物がしたかったから着いていったのだ。

 

 安室はニコニコと目を閉じて想いを馳せた。

 

「群馬かぁ、あの子も楽しそうで良かったです。今頃キャンプを楽しんでいると思いますよ」

「コナンがうちに写真送るっつってたが、一緒に見るか?」

「お願いします!」

 

 ばっと安室は頭を下げた。

 写真はあって困るものではない。

 間違っても潜入捜査中に見つかってはならないため、セーフティハウスには置いておけないが。

 降谷零名義の本宅に郵送で送れば問題ないだろう。

 

 毛利小五郎がじろっと降谷を見た。

 どことなく、隣の毛利蘭が居心地悪そうな顔をしている。

 

「おめーさ、本当に空ってガキの父親なのか?」

「少し事情は複雑ですが、遺伝子的には血のつながりはあることは確かです。阿笠宙とも、同様です」

「!!………そうか」

 

 毛利探偵はそれっきり何も聞かないようだった。

 

 そう、父親という言葉がもっとも適当だ。

 己の遺伝子により生まれた子供。

 科学技術が悪意ある形で利用され、それによって生まれた生物兵器。

 邪悪の中望まれながら、光に生きる子供。

 

 ああ、と降谷は目を伏せた。

 そこにあの日のエレーナ先生を見たのだ。

 優しい手つきで抱きしめる体温、息遣い、暗い室内のカーテンの先から漏れる光。

 

 全てが全て、一枚の絵画のように降谷の脳裏に焼き付いている。

 

 あの子のためならばあらゆることをする用意がある。

 あるいは、桜の誓いより優先することもあるだろう。

 

 己にとって絶対の、星の如き輝き。

 あの陶酔を思い出すと、降谷は自然と口角が吊り上がる。

 ようやく暗闇に光が灯されたような、長い長い孤独が癒やされたような。

 あまりにも抗い難い感情が込み上げて全身が打ち震える。

 

 降谷はそれを押し殺して、できる限り真摯に言葉を紡いで見せた。

 

「一言で言い表せない、込み入った事情があったのですが。僕の罪を、彼は受け入れた。受け入れて純粋な愛で応えてくれた。今はそれを返したいと、そう思っています」

「………なら、しっかり守ってやれよ」

「はい」

 

 詳しく聞かないのは、毛利小五郎の優しさに違いない。

 

 まったく、彼の周りには優しい人ばかりだ。

 そのように思って、降谷は上機嫌でキッチンに戻ったのだった。

 





・クローン
激烈な衝動を平坦な理性で踏み越える、奇しくも欠陥だらけのこの生物兵器に極めて最適なOSを持つ。
暴走の心配がない。

・肉体君
「人の心も無いんですけどね…」

・あむぴ
お目目ぐるぐる。
完全にキマってしまっている。
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