降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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NOCの告白─A面

 

 群馬からの帰り際、世良さんに遭遇した。

 どうやらコナン君が飯盒を買いに店へ行った時、偶然であったとのこと。

 

 本当に偶然でござるかぁ?

 工藤新一について探りを入れるために遠出してきたのではなく?

 

 まあそれはともかく。

 世良さんってことは、今回の死体埋め目撃事件は原作回ということなのだろう。

 

 もう数えきれないほどキャンプ事故があるものだからどれがどれやら思い出せない。

 もはや我らはキャンプ場を事故物件にするために全国行脚しているまである。

 原作回なのかすら定かではない惨状なのである。

 

 というかキャンプ場側も受難なんだよなコレ。

 これまで幾つのキャンプ場が閉鎖してきたのか不安になってくる勢いだ。

 それともこの程度の事件にはへこたれず、屈強に営業を続けているのか。

 

 じっくり覗き込んだ世良さんが、私を見て笑顔を浮かべた。

 

「君が安室さんの息子って噂の子か!本当に宙君とそっくりだな!」

「はじめまして、阿笠空です。貴方が女子高生探偵の世良真純さんですね」

 

 ぺこっと頭を下げる。

 ちなみに、現在宙は休学中という扱いだ。

 張り合いがなくなったのかなんだか学校で私の行方について聞いて回っているらしい。

 そりゃ探偵が謎に逃げられたら気になるというものか。

 

 探るような光を灯す瞳が私を捉える。

 

「君はさ、お父さんが普段何してるか知らないかい?」

「あいにく、僕は安室さんとは親しくないので。定期的に連絡こそしていますが、私生活を覗けるほどの好感度とは言い難いですね」

 

 実際問題、私と安室さんの会話は非常に事務的だ。

 この間買い物にも行ったが、業務連絡8割に「学校、最近どう?」という育児に参加しなかったお父さんみたいな話題1割。

 残り1割は私のことを褒めちぎってきた。

 なぜ私をアゲるのだあむぴよ。

 

 私が苦笑すると、慌てて阿笠博士が間に入ってきた。

 

「これこれ、あまりその話は…」

「世良のお姉ちゃん」

 

 瞬間、コナン君が氷点下まで行きそうな冷たい声を出した。

 世良さんが慌ててバタバタと両手を振る。

 

「ご、ごめんよ。ちょっと配慮が足りなかったかな」

「構いませんよ。謎が多いと探りたくなるのが探偵のサガ。僕もよくわかります」

「お、将来優秀だな。すごく賢いみたいだし、探偵にならないか?」

「それもいいかもしれません。コナン君の開く探偵事務所で働くのも楽しそうですし」

 

 私は殊更明るく振る舞って肩をすくめた。

 コナン君も私を慮って安室さんとの関係について探るのを注意してくれたみたいだ。

 気にしすぎだし、私は多少答えづらいという程度ではあるが助かったのも事実。

 

 コナン君がちょいちょいと手招きして私に耳打ちした。

 

「おい、第二希望なんて言ってたが、ルパンなんてやめて俺のとこにしとけよ。必ずお前を守れるだけの権力を身につけて見せるから」

「流石に貴方に権力者の後ろ暗い依頼ばかり受けさせるわけにはいきませんよ」

「バーロー、そういうのを乗りこなしてこその名探偵だっつの」

 

 返ってきた返事は非常に力強いものだった。

 主人公たる所以、その生命力と光に満ちた輝きは、人に奇跡を信じさせる。

 

 彼がそう言うのなら、あるいは本当に押しも押されもせぬ名探偵へと至るだろう。

 もしそうなったら、彼の元で働くのも悪くないかもしれない。

 

 世良さんがふむ、と目を細めて私を見やった。

 

「君は本当に宙君とそっくりだな。信じられないくらい聡明だし、まるでコナン君そっくりだ」

 

 なんかアポトキシンを疑われているようだ。

 じっとりとした視線にコナン君がわわわわと焦って子供ぶりっ子した。

 

「あのね、世良の姉ちゃん!宙兄ちゃんは今海外にいるんだよ?」

「そっか。そういうことにしておこうかな」

 

 探偵名物、別名「今日のところは追及しないでおいてあげるよ」が脳天に突き刺さり、私はくしゃくしゃの顔になった。

 

 探偵ってさぁ、なんでそう半殺しのまま放置するようなことするの?

 証拠が揃ったらとか悠長なこと言わずに一思いに殺ってくれよ。

 

 まあ、そんなこんなで帰宅の時間である。

 帰りの車で作戦会議をしつつ、私は降谷さんにメッセージを送信した。

 

 最近定期的に送りあっている活動報告だ。

 

 群馬にてキャンプ中殺人事件に遭遇。

 死体遺棄現場を見られた犯人が逆上して襲いかかってきたので撃退しました。

 予定通りキャンプ後帰宅。特筆事項なし。

 よし。

 

 コナン君がため息をついて腕を組んで唸っている。

 

「世良のやつ、一体何者なんだ?」

「明らかにライの妹じゃないですか?」

 

 私の言葉に、コナン君はぎょっとして目を見開いた。

 まるで予想外の単語を聞いたみたいな顔だ。

 

「ら、ライ?それって組織の…」

「赤井秀一が潜入中に与えられていたコードネームです。オリジナルとはライバル関係だったのですが、偶然にバーボンとしての任務中に会っています」

「なっ………赤井さんの妹!?!?」

 

 そう言えばコナン君は赤井さんのコードネームをしらなかったか。

 まあ赤井さんもお喋りの部類ではないからな。

 そんな不必要な昔話をすることはなかったということなのかもしれない。

 

 いや、私の前だと小粋な組織ジョーク──ソファで寝てるジンの髪ですっ転んだウォッカの真似という鉄板ネタ──を見せてくれたが。

 あれは多分半分酔っ払いおじさんだったんだろう。

 

 コナン君が深刻そうに眉間に皺を寄せて呟いた。

 

「なんで俺に探りを入れたりしたんだ?俺の正体を訝しんでるみたいだったが」

「さて。そこまでは。ですがお気をつけください。これは高校で話していての印象に過ぎませんが、どうもバックに妙な人物がいるような気がします」

「………」

「名探偵は必ずしも隠し事が得意というわけでもない様子。こんなことでは海千山千の権力者を相手取るのは難しいのでは?」

「にゃろ……」

 

 にまっといたずらげに微笑めば、コナン君はむすっと唇を尖らせた。

 私はそのまま、コナン君にわしゃわしゃと頭をくしゃくしゃにされてしまった。

 

「言ってろ!俺は必ず、お前を抱え込めるほどの名探偵になる!」

「……はい。楽しみにしていますね」

 

 彼がいうと本当にそうなりそうな気がするから困る。

 

 

 

 

 

 と、いうわけで帰ったらそのまま降谷さんのターンに移ることになった。

 

 しばらくしたら、帰りの車内で降谷さんから凄まじい鬼電が入ったのだ。

 別にいつものキャンプ事変なんだが。

 

 ついでにこちらに来るとのことなので、コナン君への正式な事情説明を兼ねさせてもらった。

 安室さんは多忙だから、この気を逃したら一週間とか平気で会えないし。

 潜入捜査官としての身分を明かすなら今のタイミングがベストだろう。

 

 阿笠邸は組織幹部の襲来ということで、自然と臨戦態勢の様相を呈した。

 言葉にせぬ緊迫感に、そわそわする阿笠博士。

 

 チャイムがなると同時にコナン君が迎えに出て行った。

 

 今回は念のため灰原さんにも同席して貰っている。

 灰原さんが私の隣に座り、そっと膝に手を乗せて息をついた。

 沈黙が部屋に満ちる。

 

「あの男のこと、まだ慕っているの?」

「……?はい。彼の志を、僕は何よりも誰よりも尊敬しています」

 

 国家という無形の概念のために命を捨てるという行為、すなわち私にはない熱量に焦がれているのだ。

 

 私は自分の命にすら熱が篭らないから、あらゆる物事が軽い。

 普通の人は命が大事だろう。孤独に心折れることもあるだろう。

 その上で身を捧げられる強い信念という熱量。

 

 その熱量をこそ、私は唯一無二のものだと尊んでいるのだ。

 

「……そう」

 

 灰原さんは私の前髪をそっと撫でて、猫にするように頬をくすぐった。

 私は柔らかく微笑んで、その感触を享受した。

 

『まあ、あの男の信念が今も翳りがないかは微妙なラインですね。一度壊してしまいましたし…貴方のせいですよ。聞いてます?』

 

 うす。その節は本当にすみませんでした。

 

 というわけで現れた安室さんは、いつものバーボンの服装ではなかった。

 グレーのスーツに身を包んだ「降谷零」としてのそれである。

 庁舎の帰りなのだろう。

 若干よれた服装を、最大限整えてピシッと仕上げている。

 それが彼の多忙さを示していた。

 

 しかしバーボンという肩書きも非常に便利なものだ。

 この姿をもし誰かに見られても、庁舎から出てくる姿を見られても問題ないからな。

 

 「探り屋として懇意にしている警察の一人や二人、居ないとでも思ったんですか?」って言えばいいだけだし。

 

 降谷さんの覇気のある立ち姿が静寂に満ちた室内を凛と際立たせる。

 バーボンのミステリアスさとはまた違った、機械的な威圧感。

 

 コナン君が部屋の扉を閉めながら、戸惑って口を開いた。

 

「オメー、なんか雰囲気変わったか?」

「それはそうだな。今の僕は立場が違うのだから」

 

 私が呼んだ理由を何も説明していないのに、降谷さんの方はバッチリお見通しらしい。

 もう現段階での口調すらも安室透とは程遠い。

 

「改めて。僕は降谷零。警察庁警備局警備企画課の人間だ。現在はバーボンとして組織に潜入捜査の任に就いている」

 

 

 そのように、彼は厳かに宣言した。

 





・「手足」戦争型
クイーンが安定したため、兵士型の中から稀に生まれるようになった。
現在発生が確認され次第安全のために殺処分している。
「あの子は……まだ未完成だったという事みたい。これからどんどん成熟していくわ。より人類にとって、脅威である形に」
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