降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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ストライカーの苦悩終

 

 試合の後半戦が始まった。

 

 それと同時に灰原さんに連絡があって、片手でスマホを持った灰原さんが私に声をかけてきた。

 

「空君、赤いリストバンドをしているエースストライカーに注目して。貴方の力を借りたいの」

「……何かあったんですか?」

「試合会場に爆弾が仕掛けられてる。彼らがゴールのクロスバーの真ん中にボールをぶつければ、電光掲示板が二回点滅するはず。それが爆弾解除のサインよ」

「それはまた、随分と手が込んだ嫌がらせですね」

 

 選手にのしかかる重圧はいかばかりか。

 この大歓声の熱狂の渦のすべてが自分にかかっているとしたら、それこそ吐きそうなプレッシャーのはずだ。

 達成したとして齎されるのは観客のブーイングのみ。

 

 よほどの恨みがなければそうはならないだろう。

 

 いや、逆か。

 お前達ならば自分の凶行を止めてくれるだろうと期待しているのだ。

 10万人の期待と声援を一身に背負う彼らならば、あるいは全てを大団円に収めてくれるのではないかと。

 

 なんて身勝手。熱量の無駄遣い。

 

 画面の向こうでは、次々とエースストライカー達がシュートを決めている。

 この極限状態の中、的確にクロスバーへとボールをぶち当てているようだ。

 シュートを外した選手へと容赦なく観客のブーイングが突き刺さる。

 

 それでも、無事に爆弾を解除した選手は全身から喜びを発散させてガッツポーズをきめる選手の姿に、私はほうとため息をついた。

 ううむ、かくありてぇもんである。

 後日実録映画が作られそうなドラマチックさである。

 というかこれは作られるな多分。伝説の試合、観客の命を背負うエースストライカー達、みたいなキャッチコピーで。

 

 しばらくすると、灰原さんが犯人追跡メガネを起動させた。

 

「今、江戸川君は東都スタジアムに向かってるみたいね。移動手段は車かしら」

「オリジナルの車に乗っているのでしょう。オリジナルのGPSも同じ位置にいます」

「あの男にGPSを仕掛けたの!?」

 

 灰原さんが驚きに目を見張って私に迫るが、私は首を振ってそれを否定した。

 

「いえ。位置情報共有アプリですよ。万が一の時はお互いフォローし合うということで、阿笠博士に頼んで作ってもらいました」

 

 スマホに入れる形のアプリ型だ。

 発見されないよう巧妙に隠してあり、不正なアクセスがあれば自己消去される仕組みになっている。

 バーボンがスマホを取られても安心安全というわけだ。

 

「そう……バーボンと一緒ならそこまで心配しなくても大丈夫そうね。一応試合終了を見届けたら帰りに寄りましょうか」

「そうですね。ですが子供達はどうしましょう」

 

 そう聞くと、光彦君がずいと後ろを向いて「僕たちがどうかしたんですか!!」と迫ってきた。

 半分ほど聞いていたらしい。

 覗き込まれて私は少々面食らった。

 

「さっきからずーっと上の空ですよ?」

「……貴方達の声援が素晴らしいなと、そう話していたんです。生で選手達に届けられないのが勿体無いと」

「そうね。きっと彼らの力になったでしょうに」

 

 子供達は顔を合わせて見つめ合った後、プクーッと膨れて目を三角にした。

 

「ゼッテーなんか隠してるだろ!」

「僕たち騙されませんからね!またコナン君が抜け駆けしてるんでしょう!」

「歩美も行きたい!!」

 

 どうも私の見え透いたおべっかではダメだったらしい。

 子供達はいきりたってぷくぷくと拳を振り回した。

 

 これこれ、と阿笠博士が宥めるも子供達は納得しない。

 私はうむむ、と少しばかり悩んだ。

 東都スタジアムに到着してしばらく経っているし、なんにせよ今から行っても意味はなかろう。

 私はニコッと微笑んで口を開いた。

 

「実のところ、もう決着ついてまして。僕たちが今から行っても警察に追い返されるかと」

「えーーーー!そんなぁ!なんで黙ってたんですか!」

「ウラギリだぞ!」

「空君ひどい!」

「お望みの夕飯を家で振る舞うということでどうかご勘弁を」

 

 私がぺこりと頭を下げると、ブーブー言いながらも飯に釣られてトーンダウンしていく。

 よし。

 これでこの後解散して暴走するのは止められたことだろう。

 

『でも正直、事件現場なんかより阿笠邸に子供を入れる方が危険だと思いますけどね。地下に何がいると思ってんですか』

 

 それはそう。

 私は肉体君の言葉に思わず深く頷いていた。

 

 手足は柔らかい肉が好きで、人肉はもっと好きだからな。

 柔らかい人肉には喜んで飛びつくだろう。

 

 灰原さんが私を労るようにヨシヨシしてくれれる。

 嬉しみである。私は灰原さんに擦り寄った。

 

 と、そのあたりで電話だ。

 画面を見るといつも通りの非通知である。

 

「オリジナルですか?」

『ひとまず犯人を確保、爆弾すべての解除を終えた。他の会場は無事か?』

「ええ。中継映像に異常はありません」

『良かった。まったく、単独犯の規模じゃないぞ…個人的恨みで何万人殺す気だ?』

 

 安室さんはブツブツ文句を言ってため息をついた。

 確かに、思えば凄まじいローンオフェンダーだ。

 割と犯行の規模が頭おかしいのは否定できない。

 

『ともかくこちらも撤退する。君たちは東都スタジアムにはまだ近づかないようにしてくれ』

「承知しました。お疲れ様でした、オリジナル」

『ああ』

 

 ブツっと短い通話が途切れる。

 わざわざ電話するほどの内容ではなかった気がするが……もしかしたら、私の労りの言葉が聞きたかったのかもしれない。

 疲れる仕事だし、癒しの一つも欲しいだろうしな。

 今度差し入れのあったかいアイマスクでも持って行ってやろう。

 

 

 そんなわけで、子供達を連れて帰宅。

 阿笠邸に帰ってきたわけだが。

 

 明かりの消えた阿笠邸にいつもと変わった点は存在しない。

 しんとした住宅街に、大きく特徴的な白い阿笠邸が佇んでいる。

 

「じゃあ車を車庫に入れてくるからの、君たちは先に降りて、」

「待ってください」

 

 私は気がつけば阿笠博士を静止していた。

 嫌な予感がする。

 わんわんと胸に響くような、ぞわぞわする予感だ。

 

 灰原さんが眉間に皺を寄せて「どういうこと?」と私に耳打ちした。

 

「少し中の様子を見てきます。灰原さん達は少しここで待っていてください」

「………まさか」

 

 最悪の想像がよぎったのか、灰原さんが顔を青くする。

 そうではないと信じたいが、まずは確認してからだ。

 

 鍵を開けて慎重に中に入る。変わった様子は見られない。

 一階にも二階にも荒らされた形跡はなかった。

 地下階はしっかりと施錠がされていて、そこが突破された様子はない。

 

 内部カメラを操作し、外から中の様子を確認する。

 カメラを起動して、壁掛けのモニターに映し出す。

 

 映ったのは、細かい細かい大量の羽虫。

 地下の密閉空間の中には、蚊のようなものが大量発生していた。

 

「…………『あつまれ』『死ね』」

 

 扉の外から指令を出す。

 この程度の障害物越しならば指令を通すことができるからな。

 掃除がしやすいように一箇所に集まる命令を出してから、死亡命令を出す。

 

 床の一点に集まったそれは、すべてがぱたりと息絶える。

 

 カメラを操作して念入りに内部を確認してから、ゆっくりと扉を開けて中に入る。

 そして再び閉めて、万が一がないように気をつける。

 

 まず蚊を念入りに確認する必要があるか。

 瓶詰めにして、部屋に死骸が残っていないかを調査。

 センサーもチェックして、生き残りもいないかを再度確認。

 

 よく見ると、それは蚊ではなくバクテリオファージに羽が生えたような不可思議な生き物だった。

 頭の部分がちょっとぷにぷにしていて、中に何かが詰まっていることを想像させる。

 

 肉体君がうっとりと悦楽に言葉を漏らした。

 

『僕たち、随分と成長しましたね。ふふ、これを解き放つ時が楽しみです』

「…何か知ってるんですか?」

『いや、完全に初見ですけど』

「そんな意味深な訳知り顔して初見なことあります???」

 

 私が突っ込むと、「仕方ないでしょう知らされてないモンは知りませんよ僕だって!」と肉体君は文句を垂れた。

 けっ、使えねぇ肉体君め。

 

 蚊の発生源は手足のようだ。

 まだ孵化から二日目の太っちょの個体が、穴だらけで息絶えている。

 あまりに気持ち悪い。

 

 ふと、回線に受信があることに気がついた。

 檻に入れていた手足の一匹が、「ハラヘッタハラヘッタハラヘッタ」と断続的に通信を入れているのだ。

 これは少々おかしい。確かに奴らはいつも腹ペコだが、こんなふうに訴えてだらだら涎を垂らすことはない。

 

 まあ、檻の中にいるから抵抗はできないだろう。

 自身の服に何かがついてないかもう一度確認してから、再び蚊に向かって「死ね」と命令を飛ばす。

 

 外に出てから、灰原さんに急いで報告を行う。

 

「どうしたの空君」

「実験室に異常あり、です。今日のところは子供達には帰ってもらった方がいいかと」

「!!!わかったわ。博士、送っていってあげてちょうだい。私は地下を確認するわ」

 

 博士は俄かに緊張して、「わかった、気をつけるんじゃぞ!」と慌ててシートベルトを締めなおした。

 子供達はなんだなんだと困惑気味だが、その緊迫した空気に大人しくいうことを聞いてくれているようだ。

 

 灰原さんが鋭い瞳で問いかけた。

 

「状況は?」

「羽虫の形をした新しい手足の発生を確認しました。すべて殺処分済み。死体は確保してあります」

「蚊……厄介ね」

 

 つまり捕まえておくのが非常に手間ということだ。

 逃せば二度と捕まえられないと見て良い。

 

「それと、刺した相手に何かしらの悪影響があるようです。刺し跡のある手足の様子がおかしいことを確認済み」

「同種を刺したの?」

「僕の感覚ですと、あれは基本、特定対象以外を見境なく刺すものだと思います。戦争型も兵士型も等しく刺すかと」

 

 クイーンたる私には無害、なような気がする。

 よくわからない直感でしかないが。

 

 灰原さんがため息をついた。

 

「また管理体制を見直さないと。本当なら独立したラボがあるの良いのだけれど」

「無限に金がかかりますね…あの研究所の二の舞になるのは御免被ります」

「あなたが意図せず人を傷つけてしまわないよう、研究自体を止めることはできない。うまくやりくりしていくしかないわね」

「すみません、灰原さん。阿笠博士にも迷惑をかけてばかりだ」

 

 しょぼんとしていたら、灰原さんが私の頭を優しく撫でた。

 慈しむ瞳で、愛情のこもる眼差しで、私を捉えて離さない。

 灰原さんは優しく、優しく、笑顔を作った。

 

 

「私は、あなたの力になりたいの。あなたがたとえ、────世界を滅ぼすのだとしても」

 





・羽の生えたバクテリオファージ
「手足」寄生型。
生物を見境なく刺して中に幼生を送り込む。
ただそれだけの脆弱な羽虫に過ぎないが、大量に現れ単体で10日ほど生存して至る所を舞う。
最も忌むべき存在。

・ハラヘッタ
偶然寄生型が持っていた「手足」飢餓型に寄生されたようだ。
飢餓型は幼生の亜種で、どちらかというと病の形をとる。
第一段階では満腹中枢を破壊して、感染者を気の狂わんばかりの食欲をもたらす。
手足も感染するが、第一段階までしか進行しない。
第四段階まで進んでも、感染者は死亡しないし自我がある。

・研究者(故人)
「バクテリオファージってカッケーよな。みんなもデザイン良いって褒めてくれたもん」
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