降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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夜の褥

 

 深夜、寝静まる頃。

 

 私が起きたのは、夕方の謎の羽虫……仮名「寄生型」の対処のあった日の夜である。

 偶然寝苦しくて、もぞもぞとベッドを出る。

 ピンクの寝巻き姿のまま、ナイトキャップを揺らして廊下をトボトボと歩いた。

 

 ちなみにこれは灰原さんが買ってきたものだ。

 「可愛いでしょう?」って笑顔で渡されれば着ない選択肢は私にはないのである。

 ファンシーなお人形みたいな配色で、それでいてどこかシックで大人っぽい。

 ナイトキャップもセットなので、特にこだわりはないがひとまずつけている。

 

 どうやら灰原さんも部屋にいないようで、隣の部屋は半開きで半ば空だった。

 

 代わりに居間に灯りがともっている。

 話し声が漏れ聞こえてきていて、私は瞬いた。

 

 これは阿笠博士の声だ。

 

「実際、あれはあまりに危険すぎる。あの虫の中は幼生が詰まっていて、感染に特化していることはわかっておるのじゃ」

「なるべく施設は拡充しているつもりだけど、あれを一匹でも逃せば東都は終わりというのは、本当のことよ」

「…………それでも、お前は研究を続けるつもりなのか」

「ええ。あの子のためだもの」

 

 三人が陰鬱な声色で内緒話にしけ込んでいる。

 私のことを話し合っているようだ。

 

 どうもあの羽虫、中に幼生がたくさん詰まっていたらしい。

 ということはあれは空を舞って、無作為に人々を感染させる疫病の運び手なのだろう。

 そりゃ、まあ、殺処分以外の道はなかろうよ。

 

 戦争型のような単純な戦力はどうとでもなる。

 人は害獣に対して対策を開発してきたし、それを武力という形で発展させた。

 だが虫と病。こればっかりは逃した時の被害が大きすぎる。

 

 単なる形容ではなく文字通り人類の危機となりうるのだ。

 というか研究者達も何考えてこんなもの作ったのか。

 兵器って括りで収まるものですらないだろうに、ただのバイオハザード本編って感じだ。

 

 私はむむむと腕を組んだ。

 

 そうなると、一番手っ取り早いのは私が退場することだろう。

 原作もあむぴ登場まで見届けられたし。

 ハロ嫁やゼロしこが見届けられないのはやや未練だが、別に絶対条件というわけでもない。

 後腐れなくこの世界からおさらばして、次の転生を目指すのか最適解だ。

 

 でも死体から何か出てくるとまずいから、きちんと焼却処分しなくてはなるまい、

 やっぱり自分で焼却炉に入るソリューションが一番良いか。

 実はまだ肉体に定着し切ってないから、あまり痛みなく燃やされることができるはずだ。

 

『何考えてるかわかるから言いますけど嫌ですよ僕は。良いじゃないか人類滅亡。どんとこいですよ』

 

 肉体君がブーブー文句を言っている。

 どんと来られても困るんじゃよ。

 

 そこは見解の相違なので転生者権限で私が決めさせてもらうとしよう。

 蚊はね、流石にね。

 流石に自分の生存のために全人類を天秤にかけるつもりはござらんのである。

 

 コナン君のあまりに陰鬱な声が耳に響く。

 

「灰原、俺の父さんから連絡が来てるんだ。空をこちらのラボで預かるって」

「冗談。預ければ最後、待っているのは殺処分のみよ」

「………そうだな。俺もそう思う。だが、そんな貧弱な民間のラボでは事故が起きれば取り返しがつかない、と言われれば断るのは困難だ」

「それをいうなら金をよこしなさい。こっちで整えるわ」

「俺も、詳細は伏せてその方向で返事はしている。どこまで粘れるかは……わからない」

 

 どうも、私のデータを優作さんと融通しあっているらしい。

 優作さんの紹介で一度、私の健康診断を実施しているからな。

 もちろんその中には血液検査もあった。

 私の血液中に流れる幼生も採取されたことだろう。

 

 僅かに開いた扉の隙間から中を覗くと、コナン君の苦悩に塗れた辛そうな表情が垣間見えた。

 灰原さんが赫赫と目を見開いてコナン君を見る。

 

「さっきから何が言いたいわけ」

「軽率な真似はするなって言ってんだ。あいつを連れて逃げるとかな」

 

 コナン君があまりにも苦しそうだから、私は思わず手が伸びそうになった。

 

「捜査機関の優秀さは俺が一番よくわかってる。お前達を事故に見せかけて殺そうとするだろうことも」

「…………じゃあどうしろっていうのよ。あの子を諦めろっていうわけ!?冗談じゃないわッ!!」

「あ、哀君!」

 

 阿笠博士の困り切った制止に、灰原さんがトーンダウンする。

 コナン君が震える肩で言葉を搾り出す。

 

「生き残った研究者を探すんだ。あいつらは兵器として空を運用しようとしていた。なら、何か制御の術があるかもしれない」

「………コマンドは、手足には効かないわよ」

「コマンドだけってのも考えづらいだろ。あれじゃクイーンが手足を差し向けるだけで簡単に反乱されるんだから」

「クイーンは常に手元に置いておく前提かも」

「灰原」

 

 コナン君が灰原さんの肩を掴んで、喉奥から吐き出すように言葉を漏らした。

 

「どうせ万に一つもない可能性なら、より希望のある方を取ってもバチは当たらねーだろ」

 

 一拍の沈黙の後。

 コナン君が小さな小さな、あまりにも小さな弱音を吐く。

 

「俺は、俺だって、空を助けたいんだ」

 

 灰原さんは息を呑んで、それから押し黙った。

 重苦しい沈黙が部屋に滞留し、人を圧迫するかのようにのしかかっている。

 

「……わかったわ。ひとまず、事故が起こらないようあの『寄生型』の発生メカニズムが判明するまで研究は一時停止にする」

「ああ。俺もなるべく時間を稼ぐ。その間に、安室さんに手を借りるんだ」

「ルパンにも声をかけた方がいいんじゃないかしら」

 

 コナン君が首を振って灰原さんの言葉を否定した。

 

「いや、ルパンは限界ギリギリで空の緊急避難先になってもらうだけだ。それ以上は借りが積もりすぎる」

「あの怪しげなお隣さんは?」

「昴さんは正直全くの第三者だ。上に報告しない約束だけど、最悪敵に回ると考えてくれ」

「あらそう。針の筵ね。でもいいわ。あの子は必ず守る。何が敵に回っても、誰がどうなろうと」

「は、俺も負けてられねーな」

 

 挑戦的な笑みでもって、灰原さんと頷きあう。

 阿笠博士は話に入れずしょぼっとしているようだ。

 これでいてとてつもない功労者なので仲間に入れてあげてほしいところである。

 

 ただ、いい話のところ悪いから私も方針を伝えておいた方が良いだろう。

 

 キィッと扉を開けて満を持して中へと入る。

 灰原さんがギョッと目を見開いで一歩下がった。

 肉体君が「あっ馬鹿!」と謎の制止をする。

 

「ッ貴方、いつから聞いていたの?」

「虫の話あたりからですね。そんな危険なものだったとは…」

「貴方は部屋に帰って寝てなさい。あとは私たちがなんとかするから」

「灰原さん達の負担になりたくないんです」

 

 私が前へ出て、強く宣言した。

 はっと荒い息が灰原さんの口から漏れる。

 

「守ってくださるのは嬉しい。でも、それであなた方が傷つくのは本末転倒です。僕はあなた方を守りたいのであって、守られたいわけではない」

 

 なるべく笑顔を心がける。

 こういう話は暗くなっていけないからな。

 全然心配いらないよ、と示すようにくもりない笑顔にしなければ。

 

「だからいざという時は研究所ではなく、この家で生を終えたいです。悪用されるくらいなら、自ら炎に身を投げましょう。僕のような生き物には、上出来な終わりで」

「やめて!!!!!」

 

 灰原さんの絶叫に言葉は不意に途切れた。

 な、なんで!?

 無理すると大変だからある程度で自刃するよってシンプルな話なんだが!?

 

 肉体君が特大のため息をつく。

 

『人の心がなさすぎて頭がおかしくなりそうなんですけど。今までの流れ聞いてました?聞いててそれなら今すぐ頭の病院行った方がいいです』

 

 肉体君相変わらず悪口の切れ味鋭いなぁ!

 私は後ろ手に腕をつねって肉体君に抗議した。

 

『あいたたたた変な抗議は止めてください!人心無野郎!』

 

 略すんじゃねーよ!

 

 灰原さんが私に縋り寄り、私の両腕をぎゅっと握って肩を震わせる。

 目は涙に潤んで暗く室内灯光を反射して煌めいている。

 

「やめて。私は貴方を守りたいの。お願いだから、私をおいていかないで…!」

「………!」

「空、あんまり悲観的になるんじゃねーよ。まだ何も決まってはいないんだ。俺たちを信じてくれ」

 

 そう言われてしまえば、私は「はい」と頷くより他ない。

 私は彼らがこうまでして護るべきものだろうか。

 そうでないなら、せめて彼らが護るだけの価値を示さねばなるまいよ。

 

 私はそのように思い直し、今後の計画を立てたのだった。

 





・今後の計画
なんか人類にとって生かすに足るほど有益であればいいんじゃろけん。
頑張るゾイ!(無計画・クローン談)
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