降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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甘く冷たい問題提起

 

 ベルモットと軽く相談事である。

 

 場所は米花町内の品のいいカフェテラス。

 ベルモットはお忍びのため、サングラスをかけ体型を隠すような服を着ている。

 

「これ、私の方でも洗っておいたわよ」

「ありがとうございます」

 

 ベルモットが私に差し出したのは、13人のリストである。

 これは私が研究所を脱走した当時、休暇等でいなかった人間達だ。

 そこに降谷さんが調べた死亡確認の取れていない人間を合わせてある。

 

 ベルモットがその白魚のような手を紙に這わせた。

 

「残ってるのは3人。あとは全員始末済みよ」

「組織がですか?いったいなぜ」

「組織の重要施設に侵入を許してあんなふうに警察に立ち入られたんだもの。処分されるに決まってるわよ」

 

 侵入者だとしたら研究員に非はないのと思うのだが。

 まあ、実際は被験体の脱走事故だから処分が妥当ではあるか。

 

 ベルモットは麗しく冷酷に言葉を紡いだ。

 

「一人は清掃員で除外。一番有力なのは、コマンド・行動原理デザイン主任の男、酒井卓よ」

「へえ、日本人なんですね。組織が行方を追えてないということは、姿をくらましたんですか?」

「そうよ。家ももぬけの空。知人友人も何一つ知らず、手がかりなし。中々優秀な男のようね」

 

 荒事担当とは離れた研究職にしては思い切りが良く判断が早い。

 捕まえるのは中々大変だろう。

 降谷さんも私に情報を共有してないということは、いままで有力な手がかりを掴めてないということになる。

 

 探り屋でコードネームを得たバーボンからここまで逃げ延びるとは、相当に胆力のある相手だ。

 

 ベルモットがつまらなさそうに肩をすくめた。

 

「ところで、私の頭の中の幼生を退治する方法は何か掴めた?」

「いえ……体調は何かお変わりありませんか?」

「頭の中でキイキイ声もしないし、大人しいものよ。不気味って意味だけど」

 

 ため息をつき、ベルモットは物憂げにした。

 まあ、幼生は休眠状態にあるからおよそ事態が急変することはないはずだ。

 灰原さんの実施した血液検査で幼生も検出されなかった。

 完全に脳に定着しているのだと思われる。

 

 私は頷いて口を開いた。

 

「幼生の殺し方は分かりましたが、それをすると感染から1時間以上の宿主は共に命を落とすことがわかっています」

「全然ダメじゃない!」

「もうしわけありません。どちらにせよ僕も命は惜しいので」

 

 ベルモットには黙っていてもらわねば話にならない。

 私がぺこりと頭を下げると、ぷりぷり怒ったふりをしつつ、ベルモットは話を流したようだった。

 

 なんというか、そこまで怒っていないというか、気にしていない感じだ。

 頭に寄生虫入れられて怒っていないとはいかなる理由か。

 どちらかというと機嫌がいいのも不気味だ。

 

「ベルモット、どうしてそう機嫌がいいのですか?」

 

 私が聞くと、ベルモットは一瞬きょとんとしつつ。

 それからうっそりと陰鬱に嗤ってみせた。

 

「こんなにも近くに、全てをめちゃくちゃにできるものがあるっていうのは、どこか甘美な響きだとは思わない?」

「破滅願望ですか」

「悪い?この世にエンジェルとクールガイ以外の人類はいらないわよ」

 

 ベルモットの言葉に肉体君が感心したように口を開いた。

 

『へぇ、この女もたまにはいいこと言うんですね。ええ、そうです。そうして残った二人を丁寧に看取り、この世の全てを漂白することで世界は完成するんです』

 

 肉体君節はいつも通りである。

 しかし看取るか。殺すんではないんだな。

 結果的に死ねば人類滅亡するからその言葉選びにしただけだろうが。

 どこか二人を手にかけたくない、大切にしたいという想いが滲んでいた。

 

 というかエンジェルって灰原さんじゃねーから。

 蘭ちゃんなのに意図的に曲解してんじゃねぇよ。

 

 ベルモットはやや心配そうに目を細めて私を見た。

 

「貴方、危険視されてるんでしょ。どうにかして寄生虫だけでもなんとかできないの?」

「そうですね……難しいですが、貴方に流し込んだ幼生も意図して『殺さない』『自我を奪わない』『感染しない』と機能制限できています。やってやれない気はしますが」

「なら急いだ方がいいわ。貴方の性能はあまりに人類共通の敵、危険すぎる代物よ」

 

 ベルモットの言葉は真摯だった。

 だが、じゃあ何をどう意図するかというのが問題になってくるわけで。

 

 私はじろりとベルモットを見てお願いした。

 

「………実験台になってくれます?」

「嫌よ。具体的にどうするつもり」

「病気とかを防げ治せ〜などと願いながら追加の幼生を注入します」

「胡散臭すぎ。まだ道端の新興宗教の方が無害よそれ」

 

 ベルモットには一蹴されてしまったようだ。

 一段階成熟した今なら、なんかできそうな気がするんだがなぁ。

 万病に効く治療法が、人類を滅ぼす寄生生物と同一のものから作られる。

 なんとなく事態を複雑にするだけなような気もするが、それはおいておいて。

 コナン君達が私を守るに足る理由にはなるはずだ。

 

「ともかく、貴方は死なないように上手く立ち回りなさいよ」

「おや、心配してくれるんですか」

「バカね。貴方が死んだら私はどうなるのよ」

「うーん、嫌な想像しかできませんね……頭の中の幼生が暴走して急速成長して」

「具体的に説明するのはやめなさい!!」

 

 ベルモットに怒られてしまった。

 というか全然思考の外だったけどベルモット危険だな。

 私の死後になんか出てくるとしたらここからだし、そっちも私が死ぬ前になんとかしておかなければなるまいよ。

 

 私はしょぼっとしつつ、ちょっと真面目に怖い事態になるような気がして震えた。

 

「僕の方でも例の研究者を追ってみます。なにか幼生の無力化の手がかりがつかめるかもしれませんし」

「そうしてちょうだい。貴方も、くれぐれもその身には気をつけて頂戴」

 

 

 

 

 ベルモットと別れて家に戻ると、子供達が阿笠邸の庭でわちゃわちゃしていた。

 今日はクリスマスイブだ。

 ケーキが届くということで、みんなで食べる予定になっているのだ。

 

 手足も処分したし、クリーンな阿笠邸には子供達の歓声が一番似合う。

 

 元太君が嬉しそうに私に駆け寄ってきた。

 

「よう空!一緒にサッカーやろうぜ!」

「まだケーキが届くまでしばらくかかりますから、腹ごなしに運動しようって話になったんです!」

 

 サッカーとはまたホットでエクスプロージョンな話題であることよ。

 ちなみに、爆発した東都スタジアムは来週には営業再開される見通しである。

 早すぎんだろ………。

 

 コナン君がボールを脇に抱えてこちらにやってくる。

 その顔には優しげな笑みがやどっている。

 

「今日はサッカー、俺が教えてやっからさ。少し気分転換しようぜ!」

「……っはい!」

 

 やったー!!!コナン君とサッカーだ!

 歩美ちゃん並みに単純な思考で私は盛り上がった。

 サッカー系主人公直々の指導とは盛り上がりますなぁ!

 

 私たちはひとまず、近場の公園へと出向いた。

 そこはスペースとしては小さく、サッカーゴールはない。

 金網に白く塗料で四角い枠が書いてあるだけだ。

 そこでみんなでサッカーをするのもまた味わい深いものよ。

 

 私とコナン君、歩美ちゃんがチーム、残りが相手チームだ。

 ちょっと戦力に偏りがありすぎる気がするが、まあいいか。

 誰もが名を知るエース級プロサッカー選手に名を知られるコナン君は、彼一人だけでほぼ無双状態になる。

 

 故に今回は右足禁止の縛りを設けたらしい。

 左足も禁止にした方がいいぞ、とそっと思う私である。

 

 コナン君が私に軽く声をかけた。

 

「基本はまず、盤面全体を見ること。ボールを見るんじゃなくて、人の流れを見るんだ」

 

 走り出すと同時に、コナン君は左足でドリブルし始めた。

 手加減はしてくれているらしい。

 軽くパスを私にしてくれる。

 

 盤面全体、か。

 ああなるほど、今はシュートを狙うより光彦君を抜いてコナン君にパスしろという意味か。

 

 フェイントはまだ私には難しい。

 ある程度距離がある段階で高くボールを蹴り上げる。

 ああっ、と光彦君の悲しげな声が響く。

 そしてコナン君がそのままヘディングでシュート。

 元太君を抜いて一点先取する。

 

 灰原さんが「やっぱりずるくないかしら」と冷静にコメントした。

 

 確かにコナン君の存在そのものがズルではあるんだよな。

 雪合戦に巨大投石機を持ち込む愚行である。

 

 コナン君がこちらに寄ってきて、たくさんわしゃわしゃ撫でてくれる。

 「次はフェイントも練習してみるか!」と言って私にボールを手渡した。

 輝く笑顔には私への親愛が込められていることは明白だった。

 

 光彦君が「自陣の強化は反則ですよ!」とブーイングを飛ばしている。

 「そーだそーだ!俺たちにも教えろ!」と元太君の非難。

 

 そうして私たちは結局コナン君によるサッカー講座にシフトした。

 平和でよろしい。あとフェイントはめっちゃむずい。

 

 

 と、しばらく遊んでいると。

 太尉が公園にやってきた。

 猫の太尉は喫茶ポアロをねじろにしている野良猫で、原作でも梓さんに可愛がられていたことで有名だった。

 

 太尉が事故に遭わないように追いかけて、チーター宅配のトラックに入ったのだが。

 冷房車の中に死体が入ってるのはさすが米花町としか言いようがないわけである。

 犯人は宅配業者の二人。

 

 軽く私が宅配業者を薙ぎ払い、無事私たちは110番したのであった。

 





・コマンド、行動原理デザイン主任の男
妻子を捨てて一人で逃げた。
妻子はすでに組織によって殺害されている。
今はまったり自由研究をしながら楽しく過ごしている。
「組織は何もわかってない。あれは間違いなく被験体が逃げ出したんだ。なのに人類はまだ滅びてない。やはり世界にはわからないことが山ほどある!素晴らしい!」
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