降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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絶海の矜持①

 

 明日はイージス艦体験航海のため、舞鶴湾に向かう予定である。

 朝10時からなので、本日出発して向こうで一泊する手筈になっている。

 

 私の分に関しては、出立前の準備はもう済んでいる。

 まだ予定まで時間はあるから今は自室でトランプマジックを手慰みにパラパラと舞わせている。

 やればやるほど奥深いんだよな。

 

 ジャララ、と手の中で音を立てて全て黒一色に染まるトランプに、私は満足して息をついた。

 

 と、ふと小さなノック音が部屋に響いた。

 続いて入ってきたのは灰原さんだ。

 どうにも険しい顔をした彼女が、陰鬱に顔に影をかからせながら俯いた。

 

「ちょっと、空君来てくれるかしら」

「わかりました」

 

 私は二つ返事で立ち上がった。

 特にやることもないし、出発を待つだけだったからな。

 

 居間に向かうと、コナン君と阿笠博士が集まって何やらやけに深刻そうな顔をしていた。

 まだ出立には早い時間帯だが、事件でもあって何か予定に変更があったのだろうか。

 

「どうしましたか」

「ああ。お前にも共有しておこうと思ってな。迎えに行くと言って探偵事務所を出てきたんだ」

 

 コナン君が私の顔色を窺いながら、慎重に口を開いた。

 

「実は、父さんが懇意にしているメイラー大学附属研究所で、データが盗まれる事件があったんだ」

「……僕が血液検査した場所ですね」

「ああ。つまりお前の研究データも保管しているし、独自に解析をしてもいた」

 

 それはそれは、随分ときな臭いことで。

 私は気合いを入れ直して話を聞く姿勢をとった。

 

「盗まれた範囲は?」

「全データ。犯人は直接研究所に侵入して、丸ごとサーバーをコピーして持っていったみてーだからな。防犯カメラに犯人の姿が映ってた」

「既に犯人は捕まってるんですか?」

「いいや。海外逃亡済みだ」

「なるほど、売り先が既にあると」

 

 研究所のデータなんて取り扱いに困るもの、丸ごとコピーして盗むよりもっとやりようはいくらでもある。

 内部に職員として潜入するとか、学生を唆して持って来させるとか。

 それもせず直接盗って来させることができたのは、犯人にとってリスクを冒しても十分儲けがあると判断できたことになる。

 

 金か地位か、即金で払えるものを渡す約束をしたのだろう。

 よほど急いでいた…あるいは重大なデータがあったと見ていい。

 

 たとえば、世界を滅ぼしうる生物兵器のデータを掻っ攫うつもりだったとか。

 

 コナン君は目を伏せて言葉を続けた。

 

「実行犯はその研究所の研究補助員の男で、留学してメイラー大の研究所に入ったらしい。これが男のデータだ」

「………お国柄から察するに、母国にデータを流したんですね。それで奪取の指示が出たと」

「その可能性は高い」

「阿笠邸の場所は割れてるの?」

 

 灰原さんが険しい顔で問いかけると、コナン君は首を振ってそれを否定した。

 

「念のため、国が日本ということ以外は父さん以外には伏せてある。顔写真は向こうで撮られているかもしれないから、知られているのは顔と国だけと考えて良い」

「今すぐに身の危機というわけでもなさそうですが。あまり安心はできませんね」

「ああ」

 

 コナン君が暗い表情をして黙り込んだ。

 

 絶対に爆発させてはならない爆弾があるとして。

 普通、「爆発しないよう解体しよう」と考えるのが妥当なはずだ。

 

 しかし。

 時に人は「自分もその爆弾を手に入れよう」「人を脅すのに使おう」と考える生き物である。

 自分なら使いこなせる、一部だけなら制御できる。

 そのように愚かしい発想を膨らませるのだ。

 

『悍ましい、薄汚い人間どもが!僕たちを利用だと?殺してやる。ぐちゃぐちゃに潰して頭蓋を踏み砕いてやる…!利用できるものならしてみるがいい…!!』

 

 肉体君がいつも通りいきりたっている。

 私が言えるのは、私という存在が兵器として活用された時、人は滅びるしか無いということのみ。

 

「気をつけろよ、空。今後、出歩くときは阿笠博士と一緒に行くんだ」

「わかりました。すみません灰原さん、ご心配をおかけして」

「いいの。貴方は自分の身の安全だけを考えなさい」

 

 柔らかく微笑んで、灰原さんは私を抱きしめた。

 

「私達があなたを守ってみせるから。貴方は何にも心配しなくて良いの」

 

 暖かな体温が肌に染みる。慈愛に満ちた優しさが吐息を通して伝わってくる。

 ぎこちなく抱きしめ返して、私はその暖かさを享受した。

 騒ぎ立てていた肉体君が瞬時におとなしくなる。

 

『母君優しいですよね。すごく心がほかほかします。へへ』

 

 うわぁ!急にスンッてするな!!

 

 

 

 

 さて、その後は予定通り新大阪に一泊して、私たちは舞鶴東湾に到着した。

 子供達は大阪で食べ歩きを楽しんで、大満足してからイージス艦の体験航海に参加することになった。

 

 蘭ちゃんと園子ちゃん、毛利探偵たちも一緒だ。

 博士は国際科学フォーラムに参加するため、私たちと分かれて大阪に滞在している。

 発表は灰原さんと阿笠博士の共同で行うということで。

 ほとんど向かう所敵なしのタッグであることは間違いないだろつ。

 

 コナン君がスマホでニュースを確認していて、そこに子供たちが群がっている。

 コナン君の影響でみんなニュースに関心が高いんだよな。

 

「舞鶴湾で不審船を発見って、ここですよね?」

「歩美怖い……」

「大丈夫。コナン君が守ってくれますからね」

 

 私が歩美ちゃんを元気づけると、ぽっと頬を染めてコナン君に擦り寄った。

 コナン君が困り果てている。

 かわいいのぉ。

 

 瞬間。

 強烈な視線が私に突き刺さった。

 

「…………!!!」

「ん?どうした?」

 

 コナン君の問いかけに、私は声を潜めて囁きかけた。

 

「今、誰かがこちらを見ていた気がしまして」

「……一人にはなるなよ、空」

「はい」

 

 そうそう私の存在がバレることはないだろうか、念には念を入れなければ。

 そのように考えて、私は体に気合を入れ直したのだった。

 

 

 

 

 

 

 男は、本国からの指示に驚いて目を見開いた。

 

「……予定変更?ここまで順調にデータを奪取できているのにですか?」

『大筋は予定通りでいい。お前に追加任務が課されるというだけだ』

「それが、子供の捜索とは…いったいどういう」

『お前は知らなくていいことだ』

 

 帰ってきたのはピシャリとした言葉だった

 突き放すというより、それは男の権限では知ることのできない情報だということを示しているだけに過ぎない。

 すぐさま納得して思考を切り替える。

 

「送られてきたデータ以外に注意事項はありますか」

『決して殺すな。一滴も血を流させるな。もし出血させた場合、すぐに報告しろ』

「………承知しました」

『基本はもし姿を見かけたら報告するだけでいい。実行はこちらが部隊を用意する』

「!!………はい。万が一情報を入手しましたらすぐにお伝えします」

 

 本来、男の任務は内部協力者の手引きに従って、イージス艦の情報を奪取するだけである。

 その後は帰国する手筈になっていた。

 

 それが、名前と顔しかわからない子供の捜索という、雲を掴むような長期任務に移行とは。

 よほど重要任務であるらしい。

 

 殺すな、というのも妙な話だ。

 言い回しが「出血させてはいけない」ということを主眼に置いているかのような口ぶりだった。

 専用部隊を投入するのもタダではない。

 取り逃しそうならこちらで確保しろ、という意図も含んでの言葉だろう。

 

 きな臭い動きを感じて、男は顔を顰めた。

 

 祖国に身を捧げるということは、単に忠実に命令を聞くという話ではない。

 いかに「怪しい依頼を避けるか」「泥舟に寄与しないか」。

 そこにかかっている。

 

 男がいかに祖国を思っていても、上が同じとは限らないからだ。

 

 これは繊細な立ち回りが要求されそうだ、と男は嘆息した。

 スマホには小さな子供の顔写真が映し出されている。

 悪く思うな。これも祖国のためである。

 

 男は薄く笑って、スマホを机の上に置いた。

 





・スパイX
有能スパイ。
絶対怪しいやんなぁと思いつつクローンの捜索を始める。
スパイX「翌日発見とかいうRTA」

・テイラー大附属研究所
おいおい死んだわ人類。
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