降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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絶海の矜持②

 

 私は頬杖をついて、端の方の席に座るスパイXをみやった。

 

 現在航海の注意事項などについて全体説明を受けている最中だ。

 陽気な海自のお兄さんの話を聞きながら、私はふうむと思考を巡らせた。

 

 まず。

 あの視線が某国のスパイXさんだと仮定する。

 と言うか間違いなくそうだ。国籍的にも不審者としての可能性的にもそれ以外の可能性は極めて低い。

 

 私の情報をどこまで握っているかは微妙だが、少なくとも容姿は理解しているようだ。

 国に私の身柄の確保でも命令されたか。

 

 するとまず一番大きなファクターは、衛星電話を持っているかどうかになるか。

 

 原作では持っていないような雰囲気に見えたが、実際どうかはあきらかになっていない。

 持っていたら終わりだ。

 

 公開演習中に艦長室へと侵入して、その隙にデータコピー。

 その合間を縫って体験参加者名簿の住所を見られるだけで、全ては水泡に帰すだろう。

 

 だからそれまでに身柄を押さえねばならない。

 

 そうでなくとも先ほど見られた時に地上で「例のガキを見つけました。これから裏どりします」とでも報告されてればジエンドだが…。

 まあ、そこまでならまだ芽はあるか。

 イージス艦への再侵入は容易ではないだろうだろうし、住所を握られる心配は薄い。

 スパイ一匹始末すれば当面の間は無事だと思われる。

 

 問題は、警察にスパイの身柄が確保された場合である。

 そうそうスパイがゲロることはないが、もし少しでも情報が出れば一巻の終わりだ。

 うっかりでも世間に話が出回れば次に危ういのは私、ひいては阿笠博士の身である。

 

 つまり、最低限海の藻屑になってもらう必要があるってわけだ。

 幼生を寄生させて傀儡にしても無駄だろう。

 どうせ本国に帰還したら寄生されてないか検査するだろうし。

 後腐れなく事故死してもらうより他ない。

 

 問題は、動くには証拠が足りなさ過ぎるということか。

 

 某国スパイのXが誰かなんて、私は原作知識で知っているのみだ。

 私が動いたとして、その理由が説明できない。

 

 「すみません、少しトイレに行ってきます」とコナン君に言い置いて私は素早く足音を立てて小走りで部屋を出た。

 「あっおい!」とコナン君の呼び止める声。

 

 釣られるかどうかは賭けだったか……来た。

 端にいたスパイXも私を追いかけてやってきた。

 

 私はわざとらしくハンカチを落とし、ウロウロとそのハンカチを探す仕草をする。

 後から来たスパイXは、ハンカチを拾うと見せかけて、持ってきたペットボトルの中身をパシャリとかけた。

 

 ハンカチはずぶ濡れになった。

 多分そうだろうと思ってハンカチを落としたんだよな。

 すれ違いざまに茶をかけられてびしょ濡れになりたくなかったし。

 

 

 そう。

 今から行うのは、最も簡単な解決方法のひとつである。

 

 

「ああっ、ごめんよボク!ハンカチ濡らしちゃって…」

「構いませんよ」

「新しいのを送るから、どこに住んでるか教えてくれるかな?」

 

 Xが素直にトイレに行くはずがない。

 これは元々、単純に乗客達がいない間に間取りの確認を行うための行為だろう。

 ついでに私の住所を聞き出そうと動き出したと言うわけだ。

 

 つまり確定。よし、視線の源特定!

 

 それにしても、私を本当の子供だと思っているらしい。

 大人にそんな聞き方をしても警戒されるだけだが、子供ならそれでいいと思ったのだ。

 ということは、本当に外見情報だけ渡されて、私の素性は何一つ知らないと見るべきか。

 

 私と視線を合わせるよう屈んだところを、跳躍。

 ガブリと噛み付いてやる。

 

「がっ!?!?」

「っ、ぐ」

 

 首元に噛みついた瞬間肘鉄が決まりそうになり、私は慌てて避けた。

 でも十分に幼生は注入できたからよしとする。

 

 Xは肩を押さえて荒々しく目を見開き、驚愕に肩を振るわせた。

 

「お前っ……」

「僕の住所、聞き出そうとしましたね。僕のことをどこまで上から聞きました?」

「なんの話だ…急に噛み付くなど常軌を逸しているぞ!親に言いつけるからな!」

 

 あくまで一般人を取り繕う様子に、私はニタリと微笑んだ。

 

「『正直に話してください』。どこまで僕のことを聞きました?」

「目撃したら報告しろと言われただけでろくに何も………っ!?」

「なるほど。やはり末端に教えたりしませんか」

 

 動揺して冷や汗を流す男を前に、私はうむうむと頷いた。

 男は動けないことに今更気づいたらしい。

 回線を通して「この場を動くな」「逃げるな」と命令を断続的に流しているからな。

 

 静かに、私は言葉を落とした。

 

「あなたの存在は僕にとって非常に都合が悪い。つまりどういうことかというと、死んでいただきたいんです」

「………!」

「もちろん今すぐはいけません。予定通りイージス艦のデータを狙って、追い詰められた先で自死するんです」

 

 優秀なあなたなら上手くできますよね?

 

 柔らかく、笑顔でやさしく声をかける。

 こういうのは圧をかけても達成率は良くならないらしいからな。

 死ぬならば本筋の任務が失敗して、あくまで自白するくらいならば死を選ぶという体にしないといけない。

 

「もちろん僕のことを探ってはいけませんよ。なんらかのメッセージを残すのも禁止です。あなたは何もなし得ず、何も残さぬまま死ぬのです」

「………お、前……!」

「僕に不利益がある行為は基本的に禁止します。それか総合的に僕の利益に結びつくのならば上申してください。僕が判断します」

 

 幼生に命令を注ぎ込んでいく。

 高度な命令だからプログラムに時間がかかるのが難点だが、一つ一つ手入力。

 全て入力し終えると、絶望に顔を歪めたXが愕然と震える息を吐いていた。

 

 脳の幼生を通してある程度は状況を理解できたのだろう。

 本当に意味わからんぐらい柔軟性があるんだよな、これ。

 直感だが、別の専用の手足を挟むことでより良い運用が可能になるだろうと思う。

 

 私はゴホンと咳払いしてXを見た。

 

「ところで……この件はもう上に報告しちゃいましたか」

「ああ。それらしいガキを発見したと一報入れてある」

 

 SHIT!!!

 これだからホウレンソウのしっかりしたスパイは嫌いなんだよ!

 

 私は舌打ちして頭を抱えた。

 これは本当に上手く自死してもらわないと周囲の人の命に関わる。

 あとイージス艦側には情報漏洩について細心の注意を払ってもらいたいところです。

 

「これ以降、上に何かを伝えるのは厳に禁止とします。あとこれ、この端末に上について知りうることを全て記入しておいてください。死ぬ前に甲板のわかりやすい場所に置くこと」

「………ぐっ」

 

 抵抗しようとしたらしいが、それは叶わず。

 スパイ君は端末を受け取って震える手でそれをしまった。

 

 うむ、と私は満足に頷いた。

 完全犯罪成立である。

 

「では、僕は戻ります。あなたも予定通り行動きたら戻るといい」

「………お前は、人類をどうする気だ」

 

 敵対的な目線を受けて、私は眉間に皺を寄せた。

 何もできない己にもがきつつ、その瞳には義憤と呼べるものが宿っている。

 

 いや私を利用してる国家の手先に言われたくないじゃんね。

 スパイさん自身はこの任務に反対派かもしれんけど。

 

『馬鹿馬鹿しい。子供を攫って親を人質に動き回っていた外道が、今更人のために憤るのか?人間とはつくづく都合がいい!』

 

 肉体君が文句を言っているので、私はそうだそうだと内心同調した。

 そしてわざとらしくせせら笑い、死にゆく命への手向けとする。

 

「別にどうもしませんよ。人類に何かあるとするなら、それはヒトの自業自得でしょう────『なんて、答えを期待しました?あはは、滅ぼすに決まってるでしょう。醜く無様に喚いて散ってくださいよ!見渡す限りの肉塊を作りましょう……!』」

「ッ!!!」

 

 クスクスと押し殺した笑い声をあげて、肉体君は悪役じみた笑顔で壮絶にせせら笑った。

 喋りたそうだったから交代したのだが、こんな退治される怪物ムーヴするくらいなら閉じ込めときゃよかったと思う私である。

 

 しかし、このスパイさんには海上で仲間が待ってる可能性があるんだよな。

 万が一逃げ延びて生き残ってしまったらどうしようか、と私は思い悩んだ。

 

 まあその時は孵化させるしかあるまいよ。

 謎の海難事故で船を残して乗員が行方不明、みたいな。

 そういう怪談話になってもらうとしよう。

 最善ではないが、事態を遅らせることぐらいはできるはずだ。

 

 部屋に戻ると、完全に寝入っていた毛利探偵が物音にびっくりして立ち上がり、皆の笑いを一身に浴びていた。

 やっぱこれだよな、こののんびりさが一番いい。

 

 コナン君が半目で私を睨んだ。

 

「おい空、一人で行くなって言っただろ!止める間も無く走っていきやがって!」

「こんな海の上で攫ったところで逃げ場なんてありません。大丈夫ですよ」

「お前なぁ……」

 

 この後は航海演習だ。

 多少のトラブルはあるだろうが、きっとスパイさんは上手くやり遂げてくれるはずだ。

 

 スパイさん、上手く自死のタイミングを選んでくれないとラストでコナン君のサッカーボールで刈り取られてしまうんだよな。

 原作参照。

 いや、あれはあれでそのまま昇天しそうな勢いのサッカーボールなんだけどな。

 どうして原作でXは死んでいないんだろう。

 骨とか粉々だろあんなの受けたら…。

 

 肉体君がやや意外そうに瞬く気配がする。

 

『しかし冷淡ですね。あなたは人殺しは避けていると思いましたが。嫌われますよ、父君に』

 

 それはそう、なんだよな。

 実際人殺しは避けてもいた。

 

 コナン君に嫌われたくなかったからだ。灰原さんに嫌われたくなかったからだ。

 世間的に殺人は許容されない。

 あの救いようのない研究所を始末しただけで、あそこまで悲しがられてしまった。

 

 今私が身を守るために殺しをすれば、きっと傷つく。

 

 でも流石にこれは実害の方が目立つのだ。

 他の方法はどれもリスクが高く、一番スマートで確実な解決法がこれだっただけ。

 人殺しを意図して選んでいるわけではない。

 

 言い訳だ。

 

 コナン君は言っている。

 人が人を殺した理由だけは、理解はできても納得できないと。

 だからこれはどう足掻いても納得されない行いだ。

 かつての研究員の殺害のように、許容されぬ行いに違いない。

 

「………ああ、やだなぁ、コナン君に嫌われるの」

 

 きっと名探偵は私の完全犯罪をも解き明かしてしまうから。

 私は嘆息するばかり。

 

 まだ船は海の上。

 事態もまた顛末に辿り着いていないのである。

 





・上の人①
やばい生物が見つかったと聞いて満面の笑み。
我が国の新兵器として世界を席巻するんやで!
ガバの塊。

・上の人②
いやでもそれは危険とちゃうか…?
そもそも兵器として開発された可能性あり?
ほな大丈夫かぁ。

・スパイX
卑劣だが優秀で愛国心がある。
ド腐れ頭どもがxxxx(あらんかぎりの罵声)
今すぐ人類存続のためにここに核を撃て。
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