降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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絶海の矜持③

 

 CIC(戦闘指揮所)での戦闘訓練見学を終えた後は、甲板の見学である。

 

 私はそこでうろっとしてから、お目当てのものを見つけて頷いた。

 NOCに渡しておいた予備のスマホが、甲板にポツリと置かれてあったのだ。

 それを拾い上げて、ほっと一息つく。

 

「お前、何してるんだ」

 

 コナン君が背後から声をかけてきた。

 私はスマホの内部を確認しながら頷いた。

 

「スマホを落としてしまったみたいで」

「スマホは艦内に入る時に一時預かりになったはずだ」

「予備機を渡すのを失念していまして」

「…………」

 

 完全にしくじった気がする。

 

 甲板に入ったのは今が初めて。

 落とし物があったとして、ここに落ちてるのは流石に不自然だ。

 今落としたばかり、というには私の足取りはあまりに迷いがなかった。

 

 私はここを初めて通ったし、ここに乗客が入れるようになったものついさっき。

 迷いがなさすぎたのだ。

 こんなことでコナン君に疑念を抱かれてしまうとは。

 

 これは少しのきっかけにすぎないが。

 間違いなくコナン君は私の計画の全貌に気がつくだろう。

 

 私がスマホを落としたわけではないということは。

 誰かにスマホを渡して、やり取りしたということになる。

 会話しているのを見られたくない相手だ。

 もっと手軽なメモ用紙をつかわなかったということは、ある程度まとまった量の情報をやり取りをしているということ。

 

 頑張って隠し通す選択肢もある。

 だが、転生に関わること以外でコナン君に隠し事をするのは、私が嫌だと思うのだ。

 彼に嫌われたくないと強く思う。

 

『正直、人の心のない単独行動はバレた時完璧に嫌われますよ。隠し通す自信があるなら別ですが』

 

 肉体君が私に忠告する。

 でもコナン君になんて言えばいいのか。

 もう殺すしかないから、せめて私がこっそり手にかけようとしました?

 それは余計に悩ませてしまうだろう。

 加えて、いくら仕方なかったとはいえ彼に信念を曲げさせたくない。

 彼は輝けるヒーローなのだから、輝いていてほしい。

 

 私の悩みによる沈黙に、肉体君が予想外だというように瞬いた。

 

『貴方、情がないように見えて、しっかり絆されてたんですね。ちょっと人の心がないだけで、人並みに情はあるわけだ』

 

 言い方酷いんだよなぁ!

 

 さて、こんだけ長考すればコナン君も私が隠し事をしていることに気がついたはずだ。

 鋭い視線が私に突き刺さっている。

 私は視線を逸らした。

 

 コナン君が私の手を取り、優しく声をかける。

 視線が一時的に和らいだ。

 

「お前の力になりたい。お前を守りたいんだ」

「………少し、人道にもとる行為を計画しています」

 

 私は視線を合わせぬまま、拾い上げたスマホを画面を見せた。

 そこには、スパイが書き込んだ上層部の情報がみっしりと書き込まれている。

 

「この船に別件で乗り込んでいた、某国のスパイさんです。偶然私の存在が見つかってしまったので、幼生を付けました」

「……………お前」

 

 コナン君の顔が苦悶に歪む。

 私の思考を素早くトレースしたのか、そのまま大きく目を見開いた。

 こぼれそうな青の瞳が私を捉えている。

 

「殺そうとしたのか、人を」

「はい。これが彼の本国に知られれば、僕の周りの人に危険が及ぶ。彼が逮捕されて日本に知られれば、僕は皆と一緒にいられなくなる」

 

 一緒にいられないだけで済めば世界は平和だっただろう。

 

 米国に引き渡されて新兵器開発とか、パンデミックの懸念で世界的大混乱とか。

 あるいは日本を出し抜こうとした他国が特殊部隊を送り込んでくるとか。

 色々悪い想像には事欠かない。

 

 そんなことコナン君だって分かってるはずだ。

 コナン君は悲痛そうに眉を顰めて声を潜めた。

 

「………どこまでバレた?」

「すでに発見報告が本国に入っています。彼を生かしておくとしたら、電子機器の使えない個室に永劫閉じ込めておくしかありません」

「っ、どいつだ?」

「今から呼び出します」

 

 回線でスパイさんを呼び寄せる。

 音声にはならないが、向こうも呼ばれていると直感しただろう。

 

 幸い近くにいたようで、人質の子を置いて甲板を歩いてやってきたようだ。

 険しい顔で私を睥睨する。

 

「……何の用だ」

「彼の質問に正直に答えてください。意図的に誤解を招く表現を禁止します」

「お前がこの化け物の飼い主なのか…?」

 

 Xは困惑したようだ。 

 たしかに、小学生が私の主人であるのは予想外だったことだろう。

 

 コナン君はぎりっと歯を噛み締めてから、スパイさんを見上げた。

 

「貴方の目的は何?」

「……第一目標はこのイージス艦のデータを奪取して本国に渡すことだ。すでにデータは手に入れているから、あとは無事受け渡せるかどうかだけだな。どうにも難しそうだが」

「第二の目的は?」

「この化け物の捜索だ。見かけたら報告しろとのことだったが、欲をかいて住所を手に入れようとしてこの様だ」

「あなたの上司は空君のことについて詳しく知ってるの?」

「さあな。知っていて捕獲を目論んでいるとしたら、頭がおかしいとしか言いようがない。……小僧、お前もな」

 

 ニタリとスパイさんはせせら笑った。

 

「この危険な化け物を屋根裏で飼うのがいかに愚かしいかわかっているのか?母親にバレて叱責されるどころじゃない。人類が滅びを迎えるかもしれない愚行なんだぞ?」

「空君は化け物じゃない」

「いいや化け物だ。人の脳に虫を注入して操るものが化け物でないなら一体なんだ?現に今、俺はこうしてお人形をやっているんだぞ」

 

 皮肉げな口調だが、その裏に隠しきれない恐怖があるのが手に取るようにわかる。

 コナン君だってそれを感じ取れたはずだ。

 生殺与奪の権を完全に握られ、無力に死を待つしかない状況だ。

 利用され尽くして無意に死ぬことが決まって、恐怖しないものはいない。

 

「今ならば分かる。これは仲間を増やすものだ。感染して群れを作るものだ。溢れかえらずにひと所に止まっているうちに、絶対に殺し尽くすべきだ」

「空君はそんなことしない」

「性善説か?ガキは気楽でいいな。こいつの本性も知らずにいい気なもんだ」

 

 本性、とは私がちょっぴりチラ見せした肉体君のことだろう。

 別に本性とも違うんだが、まあいいか。

 

 というか、やはりスパイさんは捻くれてしまっているらしい。

 残りわずかな命なのに全然打開策も見つからなくて、世を儚んでいるのだ。

 

 黙らせようかとも思ったが、コナンくんが対話を望んでいるようなのでそのままとする。

 コナン君がスパイに語りかけた。

 

「大人しく警察に身柄を預ける気はあるか」

「本国の話をするぐらいなら死を選ぶが?」

「っ、本国へ空君の発見報告をあげた時の文言を正確に教えて」

「………『標的を発見。詳細は確認後また送付する』」

 

 コナンくんは目を細めて頷いた、

 

「なら、空君のことを本国に伝える時『新大阪で見た』というだけでいい。警察には空君のことを含めて全面黙秘のままで大丈夫」

「所在を撹乱する気か。どうせ国に帰ったら検査を受けるだろうがな」

「できるだけ公安の方で長く粘ってもらう。時間を稼ぐ目的でね」

 

 Xは心底から愚か者を憐れむようにため息をついた。

 

「そうか。檻にいる間に日本が滅びないことを願う。檻の中で餓死したくないからな」

「了承と捉えていいの?」

「俺も好き好んで死にたいわけじゃない。ただ、ガキの愚かさには呆れていたがな」

 

 肩をすくめてやれやれと首を振る。

 「化け物恋しさに人を滅ぼすとは、これだからガキは好きじゃないんだ」とコナン君を鼻で笑う。

 流石にライン越えの悪口なので、私の方からストップの指示を出す。

 

「口を慎んでください。彼は有能で、人格者です」

「そうか。それで、俺はどうなるんだ」

「少し彼と相談してから命令の詳細を伝えます。それまでは、以前の命令が優先されます」

「………そうか」

 

 彼はもう一度嘆息した。

 話はそれきりだった。

 

 

 

 スパイさんと別れてから、私は暗い空気を払拭するようにコナンくんをベタ褒めした。

 

「流石コナン君ですね!場所の撹乱とは、僕がすぐに思い付かなかったのが悔やまれます!」

「……けど、あいつが公安から解放されるまでに幼生を完全排出する術を見つけねぇとやべえことになる」

「ですね」

 

 私は同意して頷いた。

 向こうは新大阪で感染したと錯覚するわけで。

 大都市で既にパンデミックが起きつつあると誤解するわけだ。

 つまり核で滅却イェイ!が現実になる可能性が非常に高いというわけで。

 

 コナン君、恐ろしい子!

 

 私はおずおずとコナン君に進言した。

 

「やっぱり一思いに始末した方が……」

「ダメだ。いや、本当はそっちの方がいいかもしれないけどな」

 

 悔いるような言葉に合わせて、コナンくんは囁くような小さな声を出した。

 

「お前にもう罪を重ねさせたくないんだ。俺は、お前が化け物だったと皆に言われるような生涯を送って欲しくない。お前が化け物だと、言われたくないんだ」

「……コナン君」

「悪い。勝手で個人的な押し付けだ。そのせいで、愚かしい真似に付き合わせることになった」

 

 コナンくんは本当に悔いているようだ。

 そのまま背を向けて、その表情が見えなくなる。

 私は慌てて首を振った。

 

「いいえ、いいえ。貴方の思いは正しい。こんなにも僕のことを思ってくれているのですから、正しくないはずがない」

「………空」

「僕は貴方に従います。それは奴が思っているように、貴方が主人だからじゃない。貴方を慕っているが故です」

 

 私は私のために人に従う。

 大切な人に悲しんで欲しくないから、その人の力になりたいから従うのだ。

 

 私は微笑んで、コナンくんの手をぎゅっと握った。

 

 

 何故か余計に悲しまれることが多いのが難点なんだがな。

 どうしてじゃろ。

 





・人望に厚かった所長の登壇
えー、まず皆さんに言いたいのは『そこにロマンはあるんか?(裏声)』です。
せっかく作った生物兵器が無遠慮な核攻撃ではい終わり。それって、ロマンあります?
(感じ入り頷く所員)
そうですよね。
皆さん。我々は共に理想を追いかける同士です。
予算は私が確保します!お互い高め合っていきましょう!
(皆喝采し立ち上がる)
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