降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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研究という狂気

 

 杯戸中央病院は、原作にて重要な役割を負う施設だ。

 

 赤井秀一が死亡偽装をした病院でもあり、キールの入院先

 それと「ギスギスしたお茶会」の舞台でもあったか。

 

 バーボン側に赤井秀一を追う理由がなくなってしまったため、バーボン編自体が未発生。

 死亡偽装のわずかな情報は未だこの病院内に残っている。

 

 事前にホームページは確認したものの、研究員の名前は見つからなかった。

 ともかく行ってみるしかないだろう。

 臨床検査技師として勤めているらしいから、退勤の時を狙うのが一番早いはずだ。

 医師免許も持っているはずだが、名前が大っぴらに出ることを避けたのだろうか。

 

 調査のメンツは私、降谷さん、そしてコナン君である。

 

「まさかこんな近くに隠れ潜んでいるとは。研究員の胆力もなかなかのものですね」

「僕も、こんな目と鼻の先に本名で堂々と活動してるとは思わなかったよ。組織を舐めているのかな。見つけられなかった僕が赤っ恥じゃないか」

 

 降谷さんがプリプリと怒っている。

 まあ、探り屋の名前をコケにされたようなもんだからな。

 研究者側にその気はなかったとはいえ、バーボンとしては失態だ。

 

 ちなみに、バーボンを擁護すると件の研究者は海外に飛んだ形跡が残っていたのだ。

 だからそちらの情報を重点的に洗っていたせいで発覚が遅れたのも大きいだろう。

 研究者の作戦勝ちである。

 

 杯戸中央病院の三つある駐車場の一つに停めてから、車を降りる。

 帰宅時間を狙うため、時刻はもうすっかり夜となっている。

 

 張り込みしようと職員用駐車場に近い出入り口に近づいて。

 私は驚きに目を見張った。

 

「………これ、だいぶまずいですね。というか、本当にこれはヤバい…」

 

 思わず私は語彙力のない呟きをしてしまった。

 コナン君がきょとんと首を傾げて私のところに肩を寄せる。

 

「どうした空。何か気づいたことがあったのか?」

「ええ。僕の幼生との回線に、接続者がたくさん現れました」

 

 つまり感染者がたくさんいるって話だが。

 コナン君は目を見開いて息を呑んだ。

 

「どのくらいの規模だ!?」

「僕が感知できる範囲で13人はいますね。でも妙で……使ってる言語が違うような感じで、命令や情報取得ができません」

 

 降谷さんが険しい顔で病院を見上げた。

 子供だけで夜遅くいると見咎められるから、本当は阿笠博士についてきてもらう予定だったが。

 話を聞いた降谷さんが代わりに手を上げてくれたのだ。

 「僕の方が有事に動きやすい」と。

 

 忙しいだろうに、ありがたい限りである。

 バーボンとしての功績を残すためでもあるだろうが。

 

 しばらく張り込んでいると、標的が病院を出てきた。

 

『あの男!!!僕にチップを埋め込んだ!あの顔!!引き裂いてやる引き裂いてやる引き裂いてやる!!!』

 

 肉体君が喚いている。

 

 標的は降谷さんを見てギョッとしたように立ち尽くした。

 にっこり笑って、威圧的な足取りで降谷さんが近づいていく。

 

「ば、バーボン様……」

「僕と一緒に来てくれますよね。酒井卓さん」

 

 有無を言わさない口調に、男が生唾を飲み込んだ。

 車まで案内されていくので、私たちは車に先回りしておいた。

 コナン君が緊張に唾を飲み込む。

 

 車の前で待機する私の姿を見て、男はパッと顔が明るくした。

 

「君は!!!まさかこんなところで会えるなんて!バーボン様のところにいたのかい!?」

「え、あの」

「研究所から脱走しただろうとは思っていたけど、クイーンが稼働しているところに会えるなんて!記憶が思ったより多かったのかな。殺しの衝動はどうやって回避したんだ?抗えるようなものじゃないと思ったけど…というかもしかしなくても二個体目!?無事世代交代できたんだね!いやぁ、めでたい!」

 

 す、すごい怒涛の早口だ。

 興奮して猛りまくっている。

 

「口を閉じてください。脳天吹っ飛ばれたいんです?」

 

 そこに、降谷さんが青筋を立てて拳銃を突きつけた。

 研究者はしおっとして俄かにおとなしくなる。

 でもそのテンションは内で燻ったままのようだ。チラチラと私を見ている。

 

 降谷さんが順を追って男に問いかけた。

 

「まず、彼の幼生を統制する技術の有無について聞きたい」

「あるにはあるよ。機器を使って命令系統に割り込む方式。でもこれって完全にセキュリティ上の脆弱性だろう?」

「………」

「そこで!私は研究所崩壊直前、通信方式の変更をできるように新たなプログラムを組み込んだ!どうだい、やれるかな967-OA2君!」

「いえ…よくわからないです」

「そんな!まだうまく成熟が進んでいないのかな…」

 

 大層ガッカリされてしまった。

 しょぼしょぼのしょぼとなった研究員は、再び気合いを入れ直して咳払いした。

 

「ともかく、機器での命令拡散は私も使ってる手法だから実施可能。ハッキング対策は開花したらうまく使ってくれ!」

「………それは、あの病院内に感染者がいることと何か関係があるのか」

 

 降谷さんの凍えるような声色に気づくことなく、「よくぞ聞いてくれました!」と研究員は胸を張った。

 というかテンション高えなオイ。

 

「感染者にアクセスして、夢という形であらゆる情報をやり取りできないか試していたんだよ!最終的には統一意識と呼べるものを練り上げて、それをクイーンが操作する!人類が一つになるんだよ!ワクワクすると思わないかい?」

「そんなの操作できるんです?」

「そのようにクイーンを改良すればいい!協力してくれるかい!?」

 

 ずい、と爛々と輝く瞳を向けられ、私は「いやですけど」と冷淡に帰した。

 

「な、なんで!?君はロマンを感じないのか!?」

「人にとっても僕にとっても利がなさすぎませんか」

「僕らのクイーンともあろうものが功利主義に走るのか!」

 

 え……わからん。なんだこの熱量。わからん……。

 私は大宇宙に思いを馳せた。

 降谷さんが何も興味のなさそうな瞳で頷いた。

 

「なるほど。ところで、幼生の安全な排出方法はありますか?」

「ないよ。あったらコンセプトから外れるし。いや、一人研究してる人が居なくもなかったか…でも例の脱走事故で死んだみたいだし無いんじゃないか?」

 

 さらっとした声色に恨みはかけらも存在しない。

 同僚が病死したかのようななんの感慨もない言葉に、私はおもわず問いかけていた。

 

「僕が貴方の職場を潰したわけですが、恨みはないんですか」

「え?なんで?いや、勿体無いとは思ったけど恨み?」

 

 本気で分からないらしく、きょとんと瞬いて研究者は肩をすくめた。

 こいつホンマ人の心無いんか?

 

『何考えてるか分かるから言いますけど、貴方が言えることではないですよ』

 

 ピシャリと肉体君に注意され、私は顔をくしゃくしゃにした。

 私も人の心常習犯だが、流石にコイツとは違うわい。

 

 研究者は子供に教えるように困り顔で丁寧に説明した。

 

「あのね、我らの生み出した最高傑作が、予定した通りの性能を叩き出した。予定以上のロマンを見せてくれた。それって喜ぶべきことでしょ」

「なるほど……?」

「いやー、沸いただろうなぁ。その場にいられなかったことが本当に悔やまれる」

 

 え、恐怖で逃げ惑ってたと思ったけど、実はフロア沸いてたの?

 そんな大イベントリアタイできなかったみたいな言い回しされても困るんだが。

 

 研究者は歓喜に打ち震えたように目を潤ませ、うんうんと何度も頷いた。

 

「生まれてきてくれてありがとう、我らの最高傑作…!」

 

 純粋に、純粋な狂気を孕んだ瞳だった。あらゆる理屈を飲み込む陥穽だった。

 それは理外の歓喜だった。

 

 私はドン引きしてコナン君の後ろに隠れた。

 コナン君が私を庇って果敢に研究者と対峙する。

 か、かっこいいコナン君!!我を助けたもう!

 

「その研究のデータを渡してくれる?」

「ところで君はバーボン様のなんだい?……まあ、なんでもいいか。こういうのは公開してこそだし。やっぱり発表の場がないと張り合いがないんだよね」

 

 男は嘆息して「惜しい仲間を亡くしたよ」と悼むような様子を見せた。

 

「ケイトとどんな幼生のデザインがいいか語り合うのは楽しかったのに」

「………」

 

 男の情緒の意味不明さに改めてコナン君が絶句している。

 スムーズに話はまとまったが、今後について危ういことに気づいた研究員が慌てて命乞いし始めた。

 

「ば、バーボン様、私助けていただけるんですよね…?」

「明日、改めてデータの受け渡しと会合の場を設ける。準備してください」

「はいっ!」

 

 研究員の男は従順に頷いた。

 とはいえ、逃走の恐れは無いでもない。

 幼生を頭に流し込むのは一つ手ではあるが、どちらかというと公安で見張っててもらった方がリスクは少ないだろう。

 

 コナン君が訝しげに研究員を見やった。

 

「コマンドを試して形成逆転しようとは思わないの?」

「効いてたら研究所はあんなふうになってないさ。チップになにか不具合があったのかな。それも調べたいんだけど」

 

 研究員がソワソワと私を見て笑顔を作った。

 

「いやぁ、これから手元で研究させてもらえるのかな?967-OA2君もワクワクするよね?」

「……なぜ僕の識別番号を?」

「あの時培養していた中で一番うまくいっていた被験体だったからね。逃げ出すなら君しかないと思っていたよ!ね、ワクワクするだろう?」

「僕はそういうのはあんまりよくわからないです…」

「勿体無い!あの研究所の標語は『ロマン』だよ。『ロマン』。大切にね」

 

 碌でもねぇ研究所だということは痛いほどわかった。

 肉体君は怒りのあまり「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」って念仏唱えるターンに入ってしまっている。

 男は陶然と私を撫でて、優しく微笑んでいる。

 

「マウスは大事に愛情かけて育てた方が結果を出すという。僕達は愛情いっぱいに君を育てたよ。君に与える栄養値をいくらにするとか。脳に埋め込むチップのデザインとか。散々話し合った」

「………それを、僕は殺し尽くしたわけですが」

「ヤンチャなのは立派に育った証だろう?僕らの研究はあの壊滅をもって実りの時を迎えたわけだ!」

 

 なーーんも分からん。

 私は会話に疲弊し、そのまま押し黙った。

 

 

 

 

 

 さて、翌日。

 研究員を迎えにいくと、男は部屋で頭から血を流して倒れていた。

 

 露骨な他殺現場に、不自然なトリックの跡。

 

 パチパチと明滅するモニターを前に、我々は振り出しに戻ったことを知ったのであった。

 





・クローン
人心無選手権で決勝戦敗退した。
やだこの研究者…人の心がない……。

・研究者
ウッキウキだったのに殺された。
どうしてそんな酷いことを!!!

・別に陰謀とかない野生の殺人犯
痴情のもつれで殺した。
研究?何それ知らん…怖……。
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