今日は子供達とパワースポット巡りである。
最近テレビでやっていたから、少年探偵団が行きたいと言い出したのだ
かわゆい子供達の頼みとあらばと、阿笠博士が車を出してくれたというわけだ。
優しい……やさしいせかいだね。
というわけで、みんなを乗せて中型車を走らせる今。
コナン君は車の中で名人戦をニュースで確認しているようだ。
ネットニュースよりもニュース動画の方が好きなようで、よくスマホで移動中見ている。
光彦君がそれを隣から覗き込んでにっこりした。
「羽田名人、勝つといいですね!」
「勝ったら由美さんと結婚するんだよね!すごい!」
「結婚式すんのかな!美味そーなもんでるかな」
子供達も盛り上がっている。
めでたい話はいつだって心を盛り上げてくれる。
子供達は結婚式の歌を歌い始めた。
その即興曲みんなすごく耳に残るけど私学校で習った記憶ないぞ。
コナン君がひっそり私に耳打ちした。
「羽田名人、確か赤井さんの弟だって話だよな?」
「はい。昴さんとお茶会している時にそう伺いました」
赤井さんも割とお喋りで愉快なおじさんだからな。
子供の前では口が緩むのかもしれない。
ちなみに、最近も雑談をしていて、主にクイーンを介さず命令を下す装置について懸念を述べていた。
ただしテンションは野球中継の前で管を巻くおじさんのそれである。
国家が自由を人から奪うための道具になるからな、あれ。
あまりに便利な兵器と言えるだろう。
私は「世界を脅かすクイーンに対抗するための、革新的な手段」と捉えていたんだがな。
私の危険性を低くするためのアピールとして使えば、万が一の時はこれでクイーンを抑えられると宣伝できると思ったのだ。
だが赤井さんの「権力者がクイーンになるためのおぞましい支配の道具だぞ、それは」という言葉を聞いて納得。
なるほど、そりゃまずいと思い直したのだ。
人間の悪意って底が知れないよな。
大人しくクイーン対抗にのみ使ってくれよマジで。
しかし、そうなるとあとの希望は安室さんが探っている幼生排出の研究のみ。
ため息も自然と深くなるというものだ。
『僕らの幼生を人類が利用しようなど片腹痛いですね。どうせ扱いきれずに自滅しますよ。はは、その時が楽しみですね』
肉体君がくつくつと嘲笑している。
性格の悪い肉体君のようだ。
だからあの機器は誰にも渡せないし、製造法も秘匿すべきだと赤井さんは意見を述べていた。
コナン君が胡乱な顔で私を見る。
「つかいつそんな仲良くなるんだよ」
「阿笠邸で草取りしてると自然と。昴さんも草取りしてるので、終わった後一緒にまったりティータイムしたりしてます」
「え、昴さん草取りしてんの?気にしなくていいのに」
「暇を持て余していると意外と楽しいらしいです。程よい力仕事だと」
「ええ………?」
昴さん、私のためにノンカフェインのお茶をわざわざ買ってきてくれてるんだよな。
嬉しいのでよく一緒に飲んでいる。
話のネタはわりとバラバラだ。
昨今のニュースについての雑談とか。
私の体についての超くだらない質疑応答───フレーメン反応は起きるのか?とか。
ブラックジョークも結構ある。世界の頂点に立つならまず何をする?
コナン君は審議中みたいな顔をした。
私はうむうむと頷いて補足説明する。
「バーボンとライの仲が悪いのは組織では有名な話でしたから。僕が友好的なのがすごく新鮮で嬉しいみたいです」
「なるほど…安室さんと会わせる時は気をつけねーとな」
今赤井さんと会ったらどんな反応をするかちょっときになるところだが、今壊れ気味だしな。
余計にバグってワケ分からんことになったら困るので、そっとしておいてある次第である。
ちなみに、灰原さんは今日はお留守番だ。
膨大な量の私のデータを確認の仕事もあったから、今研究室に缶詰めである。
コマンドについて新しい発見もあったから、そのデータの掘り出しとまとめをしてもらっている。
安室さんはといえば、今アメリカへと飛んでいる。
幼生排出の研究をしていた研究者についての調査だ。
日本の該当の拠点は既に引き払われていたから、もう一つの研究所の調査のため安室さんがアメリカに出立したというわけだ。
今はその結果報告待ちである。
その間、私はゆっくり小学一年生をするだけでいい。
小学校も楽しいし、世はまさに春一色というわけだ。
学校、今改めて通うと先生がいかに日々の授業で子どもの集中力を保たせるよう努力しているかわかるんだよな。
さすがは高度な専門職だ。
まずあの羊の群れに似たものを全員揃って席につかせるのがプロの技とすら言える。
さて、そろそろ神宮に到着だ。
車を駐車場に停めたら、あとはてくてく歩いて参道を登っていく。
子供達が神宮の長い道を歩きながらキャンプの歌を合唱した。
今日はキャンプではないぞきみたち。
「ところで、最近コナン君も空君も元気ありませんよね?どうしたんですか?」
「歩美のお菓子食べる?」
「うな重食いに行こうぜ!うめーもん食うと元気出るし!」
「あー、悪いなオメーら、心配かけちまったか」
コナン君が肩をすくめて笑顔になった。
意外と子供も周囲をよく見ているということか。
『僕が全てを殺し尽くす時においても、子供は……まあ生かしてあげなくもないですね。母君と父君と、あと子供。阿笠博士も特別に追加で。あとは肉ミンチです』
捻くれた肉体君が取らぬ狸の皮算用をしている。
灰原さんたちの情操教育の成果で、順調に肉体君の情緒はすくすく育っているようだ。
あとそれオリジナルも輪に加えてあげてね。
その軸とは関係なく、今現在交通課の由美さんは攫われて、羽田名人は試合をブッチしてここに来ているんだがな。
原作「太閤恋する名人戦」である。
米花町が犯罪の坩堝すぎて全私がドン引きである。
さて、しばらく巡って次のパワースポットに向かおうかなというあたりで、着物姿の羽田名人が神宮にトップスピードで駆け込んできた。
今日が名人戦だから、バッチリ決めた着物姿はなかなかのイケメンだ。
その強さも相まってメディア人気は結構高い。
素早くコナン君がその姿に気づいて声をかけた。
うまくコナン君も聞き出す態勢を作ったようだ。
やはり原作通りに犯人に他言無用として脅されているようだ。
ここに駆け込んできた当初は焦りに焦っていたようだが、味方を得てやや落ち着いた様子になる。
さすがコナン君!
子供達に囲まれてわちゃわちゃしながら、太閤名人はため息をついた。
「こんなとき兄がいればと思ったけど、ここは日本だし無い物ねだりなんだよなぁ」
「兄というと?」
「アメリカで警察やってるんだ。すごく頭がいいんだ」
私の疑問に、羽田名人は誇らしそうに答えた。
この家族もなんというか、複雑な割に仲がいいようだ。
「それはそれは。兄弟揃って優秀なのですね」
「ううん、どうだろう。僕は兄さんみたい荒事の対処をするのはからっきしだし。家族で僕だけなんだよね、運動音痴」
羽田名人は大きなため息をついた。
確かにメアリーさん、赤井さん、世良さん全員すごく強いもんな。
そりゃ自分だけできないとちょっとコンプレックスかもしれない。
イタチの家族に生まれたハムスターみたいで。
十人十色の悩みはあるということだろう。
さて、神宮の有名パワースポット、清正の井戸に到着した。
順番待ちの列ができているので、それを待つためにみんなで並ぶ。
その列の長さに、羽田名人の顔に若干の焦りが浮かんだ。
しかし、名人戦中に抜け出して突然2時間かけて東京に来るとは。
今頃記者たちも会場も大騒ぎだろう。
まあ、後日美談になりそうでいいか。
七冠を捨ててでも愛しい人のために奔走する!とかでドラマ性はありそうだ。
…………私が愛しい人を人質に取られたら、どうするのが正解だろうか。
私がくだらないことを考えて、少しだけ息をついた。
私が利用されるとはすなわち、人類に危機が訪れるということ。
間違っても相手に屈することがあってはいけないわけだ。
とすると愛しい人はどうあっても命を落とす。
例えば灰原さん、コナン君、阿笠博士、子供達、オリジナル。
皆、私のせいで命を落とす。
私はまだ高く青い空を見上げて、ぼんやり思った。
そんなくだらないことで大切なものを失うくらいなら、多少面倒でも私が天に立ったほうが楽なんだよな。
藍染隊長かよ。
頭を振って、ぱしんと頬を打つ。
下らない仮定を考えるくらいなら、ルパンの泥棒課題で腕を磨いたほうが何倍もマシだ。
私は推理を進めるコナン君を静かに見つめて、そう思い直したのだった。
『ねえ、ねえ、滅ぼしましょう?人などという穢らわしい生き物は疾く死に絶えるべきだ。殺すべきだ潰すべきだぐちゃぐちゃに弄んでやる。母君と父君に手を出される前に、早く』
・スパイXの上の人
この幼生があれば人類を効率的に支配できるやで!!素晴らしい!
これを国民に注射して……アイェェェェエ!
なんでルパン!?!?
・突如湧き出たルパン
ドーモ、偉い人=サン。ルパンです。
ジッサイ碌でもないこと考えてそうだったので先回りして潰しに来ましたー。
転ばぬ先の杖ってね。
見てよおじさんの足長具合、労わってもらわねーと割に合わないと思わない?