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『けけけたすたたけっけっけけすすすろすろろろろろろろろろろろ』
それは賢い鳥だった。
ハナから情報を託され、帝都の皇宮へと届ける伝書鳩。旧人類文明から続くこの鳥たちの仕事は、変わることはなかった。
それは、魔女の使いでもあった。古くから魔女に仕え、雑事も含めて様々な要件をこなしてきた。鳩たる身に無相応な程の富と叡智を授かり、悠久と思えるほどの長大な寿命を小さき身に受けた。
祝福を与えられた時、この先破滅の時まで全てを魔女に捧げると。そう誓ったのだ。
そんな鳥は、全身の羽毛を撒き散らし、骨を砕き、血を流し、生命を終えようとしていた。
『ししししねねねねねねしししししししねねすすすろろろろここここころろろろ』
勿論油断していたわけではない。荷物を強奪する悪党は帝国領内においても数は少なくなく、奴らの矛先は動物の運ぶ荷物にすら向くことがある。それを警戒して、木々の間を縫うように飛行していたのだ。
しかし、目の前のバケモノは的確に鳩を狩り取った。
なんだ、これは。なんだ、こいつは。
波紋が絶えず体を震わす、液体金属が如き体表。体らしい定型を持たないその体は、不気味に蠢いている。息絶え絶えの鳩の目に映るもので明確に形として捉えられるものは、たった今鳩を狩り取った刃くらいだ。その刃も不定形の体が変形していたもののようで、ひゅんと引っ込んでいく。
刃以外には、どろどろに溶けた金属が寄り集まり纏まって動くスライムのようにも見えるそれから、頭のようにも見える部位が生えていた。口と思しきその器官からは、常に謎の言語と煙が漏れ出ている。
鳩はある程度の魔法なら使えるように魔女から施しを受けている。探知も怠らずに飛んでいたのに、こいつは反応できないほどの豪速で迫り、鳩を切り裂いたのだ。
木々の枝をへし折り幹を薙ぎ倒し、その上で一撃で鳩に致命傷を与えた。頭上からでも林床から迫ってきたわけでもなく、鳩と同じ高度で、地面と平行に飛びながら、枝を潜る鳩を叩き落としたのだ。
しかも、延々と薙ぎ倒しながら来たのではない。すぐそこだ。待ち伏せのような形で、鳩の飛行ルート上に陣取っていたそれは、鳩を感知して飛び出してきたのだ。
しかし首をゆるゆると振るそれは鳩に微塵も興味もないのか、あちらこちらに視線を向けては外すを繰り返す。足元で死にかけている鳥には目もくれず。
『どどどどどこここどどこおおおおゆるるるるささささささいいいいななないいいい』
ああ、待て。行くな。行ってはならない。
鳩は言葉にもならない鳴き声を、必死に体を震わせて搾り出す。
嗚呼、わかる。わかるのだ。お前は迷いしモノだ。探すモノだ。
しかしお前、もうダメなのだろう。戻れはしないのだろう。止まれないのだろう?
魔女様なら救ってくれるだろうか?救済をあのモノに授けてくれるだろうか?
ここまで何年も生きてきて魔女様の思考を完全に把握できないのは、私の鳥頭故だろうか?
はは、笑えてしまうな。
『かかかかかかかかせせせせせえええええええぱあああああああああぱぱぱぱぱぱああああああああぱぱぱぱぱああああああああああ』
どうか、哀れな彼
悲しみを纏った落とし子に、祝福を。
◯鳩…死んだ
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