すみません
原作とあまり変わらないなあって場所は飛ばします
期末試験が近付いていたとある昼休み
緑谷たちA組数人が食堂で期末試験について話し合っていると、B組物間が絡んできた。
「君らさぁ、ヒーロー殺しに遭遇したんだってねぇ。体育祭にUSJ、そしてヒーロー殺し。注目浴びる要素ばかり増えていくよねぇA組って!」
そんなノリに乗っている物間の後ろから俺は声を掛けた。
「物間」
「ッ!? 何かな衣替クン」
「そんなに注目浴びたいのか?」
「・・・は?」
「注目」
「いや」
「浴びたいのか?」
「違う!」
「ならいい」
指を鳴らす
「待て!!!」
物間の制服が変化しそして誰かが吹いた。
「ぶっ」
物間は真っ白なマントを羽織っていた。
肩には黄金の装飾
胸元には大量の勲章
背中には巨大な羽根
さらに頭上にはスポットライト
なぜかスポットライト
どこから出ているのか分からない
完璧だった。
「何だこれは!?」
「主役だけど」
「意味が分からない!」
「注目されたい人」
「だから違う!!」
食堂のあちこちから笑い声が上がる。特に笑っていたのはB組だった。鉄哲は机を叩いて笑っていて骨抜は椅子から落ちそうになっていた。拳藤はちょっとバカにした顔をしてた。
「似合うじゃん」
「拳藤!?」
味方だと思っていたらしい。残念。
「衣替ぇぇぇぇ!!戻せぇぇぇ!!」
「注目されてる」
「されてるよ!!」
「よかったな」
「よくない!!」
食堂が爆笑に包まれ物間は机に突っ伏した。俺は満足。
本人の希望かどうかはともかく、今日は間違いなく雄英で一番注目を浴びている。
さて、期末試験はというとさっくり終わった。筆記はまぁまぁで実技もクリアした。
ペアは葉隠で、姿を隠しながら狙撃してくるスナイプ先生相手は堪えた。手錠をかけるだけなんて俺の個性で視認すれば楽勝だと思ったのが間違いだった。さすが雄英教師陣、嫌らしい。
プロヒーローが学生相手に本気で逃げ隠れてしてくれるなよ。終了5分前に葉隠が先生を見つけてくれなければ俺も赤点だっただろう。葉隠が頑張っている間俺も頑張っていた。服を着替えて目立つように。
そして今は林間合宿の買い出しにショッピングモールへ来ている。爆豪と轟は来ていない。平和だ。
「今日は何もしないよ」
「嘘だな」
「嘘ね」
俺たちは大型アパレルショップへ入る。服が大量に並んでいる、つまり楽園。服は着せるだけじゃなく選ぶのも楽しい。
「なるほど」
全員が身構えた。傷つきながらもまずは緑谷の服を選ぶとしよう。今日のテーマは”一風変わった”コーデだ。
黒タートルネック
細身ジャケット
眼鏡
革靴
「どうぞ」
緑谷が着替えて出てくると、まさにインテリ実業家、若手CEOといった感じで別人のようだ。
「誰だ!?」
「似合う」
「似合うな」
「僕こんな感じ?」
「なれる」
「なれるんだ・・・」
次は切島が着替える。
黒スーツ
サングラス
革手袋
完全なヤクザ。
「違う違う違う!」
「男らしい」
「方向性がおかしい!」
次は飯田だが委員長系だと思うだろう?今日は違う。
白シャツ
袖まくり
黒エプロン
カフェ店員だ。
「似合う」
「似合うわね」
「似合いますわ」
「何故だ!?」
「接客上手そう」
「そうかい?」
「うん」
次は耳郎だがもちろんロック系ではない。
黒ワンピース
ロングコート
ブーツ
静かで大人っぽくした。
「・・・普通に好きかも。採用」
珍しく好評だ。買うらしい。
次は芦戸。皆が派手を予想するが違う。
純白ワンピース
麦わら帽子
サンダル
夏のお嬢さんコーデだ。
「え」と芦戸が鏡を見てまた「え?」と鏡を見ている。
「私こんな感じもいけるの!?」
「いける」
芦戸は上機嫌になったので大好評だったようだ。
次は常闇だ。「光らせるな」と鋭いご指摘が来たが当然違う。
真っ白
神官風
幻想的
「・・・ほう」
常闇が鏡を見ている。少し満足そうだ。
「これは良い」
「人の嫌がる服だけじゃないんだな・・・見直したぜ衣替!」
「それはそう」
似合う服を探すのも楽しいものだ。今日は一風変わった方向だがこれも良い。
「衣替さん。私のは・・・」
期待した顔で近づいてくる八百万を皆が見る。俺は数秒考えニヤッと微笑んだ。
「決まった」
八百万はだけ少し後悔した顔になった。
「待ってくださいまし」
「まだ何も言ってない」
「その顔は何か変なことを思い付きましたわね」
断じてそんなことはない。さて服を選ぶか。職場体験で学んだこと、それは相手をよく見ること。
八百万百
上品
才色兼備
お嬢様
完璧
高級
華麗
気品
だから皆同じ方向へ行ってしまう。それじゃあつまらない。
「なるほど」
「怖いですわ・・・」
数分後八百万が試着室から出てくる
「・・・」
「・・・」
八百万はメイド服だった。普通のメイド服ではなく
黒を基調にしたクラシックスタイル
ロングスカート
白いエプロン
上品
高級感
無駄に完成度が高い。
「何故ですの・・・」
「似合うからだ」
「理由になってませんわ・・・」
だがとても似合うのは事実。
「これは反則だろ」
「似合い過ぎる」
「メイド長って感じ!」
「何でそんな評価になるんですの!?」
八百万が赤くなる。耳郎が腕を組んで言う。
「いや分かる」
「分かるんですの!?」
「新人じゃない」
「あぁ、絶対新人じゃねぇな」
「十年は働いてるね」
「働いてませんわ!」
「なるほど」
まだ足りないな……
「その顔やめてくださいまし」
帽子追加
白手袋追加
眼鏡追加
「完璧だ」
「完璧だね」
「完璧だな」
「完璧」
店員が近付いてきて「皆さんモデルさんですか?」と聞いてきた。上鳴が吹き芦戸が笑い八百万が顔を覆う。
俺は「違います。未来のヒーローです」と答えておいた。
しばらくして
自販機で買ったスポーツドリンクを片手に休憩スペースへ向かった時、先にベンチへ座っていた人物を見て俺は少し驚いた。だって見覚えがありすぎたから。
USJに来たヴィラン連合…死柄木弔だ。正直、こんな場所で遭遇するとは思わなかったしヴィランにも休日があるんだな。
「……」
「……」
向こうも俺に気付いて何となく気まずい。いや、別に気まずくはないか俺は被害者側だし。
「久しぶり」
とりあえず挨拶してみよう。露骨に嫌そうな顔されたな、まるで嫌な記憶を思い出したような顔だ。
「……久しぶりだな」
意外と律儀に返事は帰ってきた。俺は少し離れたベンチへ座る。逃げる様子もないし襲ってくる様子もないなら、変に騒ぐ必要もないだろう。もし襲ってきたら正当防衛魔法少女しかない。
死柄木も同じ考えだったらしく、首を掻きながら静かに前を向いていた。ヒーロー科の生徒とヴィランがショッピングモールの休憩スペースで並んで座っているという妙な時間が続いていた。客観的に見るとかなり変な光景だと思う。
「何してるの?」
「買い物だろ」
「俺も」
「そうかよ」
もっとこう、ヴィランらしい会話になるのかと思ったが意外にそうでもなかった。死柄木がちらりとこちらを見てくる。
「お前さ、USJでやったこと覚えてるか」
たぶん一つしかない。
「魔法少女?」
「そうだよ・・・」
あの時のことを相当根に持っているらしい。
「似合ってた」
「だからその話をするな」
俺は正直な感想を言っただけなのに。死柄木は大きくため息を吐く。USJの時も思ったが、こいつは妙なところで感情の起伏が激しい。ヴィランだから当然なのかもしれないけど。
ふと改めて死柄木の格好を見る。
黒いパーカー
黒いズボン
全体的に暗い
俺がじっと見ていると死柄木が警戒したように眉をひそめた。
「何だよ」
「服」
死柄木の顔が歪んだ。
「嫌な予感しかしないな」
「もっと良くなる」
「ならなくていい」
もったいないな素材は悪くないのに。むしろ個性的なアクセサリーが大量についているあの姿に合わせて方向性を決めればかなり強い。
だが死柄木はこれ以上その話をする気はないらしく、露骨に話題を切り替えてきた。
「お前は何でヒーローなんか目指してる」
少し意外な質問だったな。俺は正義感が強いわけではないしオールマイトみたいになりたいわけでもない。もちろん人助けは好きだ。でもそれだけじゃない。
「服選ぶと笑うから」
「は?」
死柄木に理解できないという顔をされた。俺も説明が上手い方ではないんだが。
「似合う服着ると嬉しそうな顔するから」
「・・・」
「それ見るのが好き」
クラスメイト相手でもそうだ。自分に似合う格好を見つけた人はだいたい笑う。俺はその瞬間が好きだ。
死柄木は何かを考えるように黙ってしまった。
「・・・オールマイトをどう思う」
「もっと肩に装飾増やしたい」
「・・・・・・・ステインは?」
「魔法少女は似合わない」
「こいつマジかよ・・・・」
救いようのない存在を前にしたかのようなため息の後、死柄木はやがて小さく鼻で笑う。
「変な奴だな」
「よく言われる」
「だろうな」
そんな話をしていると、遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「衣替ーーー!」
上鳴だ。その後ろから芦戸や瀬呂の声も聞こえる。どうやら思ったより長く離れていたらしい。死柄木もそちらへ視線を向けた。
「友達か」
「うん」
「そうかよ」
それだけ言うと死柄木は立ち上がって人混みの方へ歩き出す。その背中を見送りながら、俺は何となく思った。USJの時より少しだけ雰囲気が違うな。相変わらず危険な人なのは間違いないが、あの時みたいな苛立ちだけじゃなかった。
考えているうちに上鳴達が到着し、そして俺のすぐ近くを歩いていた死柄木の姿を見て固まった。
空気が一瞬で変わる。飯田は反射的に前へ出ていたし、緑谷も表情を強張らせていた。死柄木はそんな反応を一瞥すると、少しだけ振り返る。
「次会ったら魔法少女はやめろ」
「善処する」
「信用できねぇな・・・」
死柄木はそう言い残し、人混みの中へ消えていった。残された俺達の間には何とも言えない沈黙が流れる。最初に口を開いたのは上鳴だった。
「・・・何で普通に会話してたんだ?」
俺も改めて考えてみたが、よく分からない。
ただ一つ分かるのは、死柄木の服はやっぱりもう少し改善の余地があるということだった。