この展開がやりたかったので両サイド手際良くなりました
林間合宿三日目
朝から夕方まで続いた個性強化訓練を終えた頃には当然、A組もB組もすっかり疲れ切っていた。
もっとも、それでもテンションの上がるイベントが一つだけ残っている。肝試しだ。夕食を食べながらその話題で持ち切りになっていた。
「やっと訓練以外のイベントか……」
「まあ、肝試しも訓練の一環らしいけどね」
上鳴と耳郎が話している。訓練の一環か、それでも普通の訓練よりは気楽だ。少なくともマネキン五十体よりは。
今回の肝試しはA組とB組で役割が分かれていた。前半はA組が探索役、B組が脅かし役でその後交代。二人一組で決められたルートを進み、山道の先にあるチェックポイントを回って戻ってくるだけ。
なお補習組は連れていかれた。かわいそうに。組み合わせも発表され俺は爆豪とペアだった。
「よろしく」
「よろしくじゃねぇわ」
ひどい。だが文句を言いながらも拒否はしない。爆豪なりに協力する気はあるらしい。
「お前ェ変なことすんなよ」
「変なこと?」
「服だ」
失礼なヤツだ。山の中は昼間とは別世界だった。灯りは最低限で木々の隙間から月明かりが差し込むだけ。風が吹くたびに葉が揺れ普通に怖い。
「思ったより雰囲気あるな」
「ハッ、ビビってんのか」
「少し」
「情けねぇな」
「熊とか出そうだし」
「そっちかよ」
俺達は山道を進んでいく。どこかにB組が隠れているはずだがまだ出てこない。静かすぎるな。爆豪も少し警戒している。その時ガサッと近くの茂みが揺れた。
「来たか?」
次の瞬間飛び出してきたのは小森だった。
頭にキノコ
顔に白い布
「きゃあああああ!」
自分で叫びながら飛び出してきた。
「何で自分で驚いてんだよ」
爆豪が真顔で言うと小森も途中で恥ずかしくなったらしい。
「失敗したノコ……」
そのまま茂みに戻っていった。なんだったんだ。
さらに山道を進む。地面から小大が生えてきたり影から黒色が出てきたりしたがチェックポイントまではあと少し、そのはずだった。
突然、嫌な臭いがした。
血のような臭いに爆豪も足を止める。
「・・・おい」
「うん」
空気が変わった。これは肝試しの雰囲気じゃない。本能が危険だと警告していた。
次の瞬間木々が切断された。目の前の大木が斜めに裂ける。
「は?」
爆豪が目を見開いた。現れたのは人影。拘束された細長い身体と異様に伸びた歯。
肝試しは終わった。
マンダレイのテレパスが頭の中へ響く。
『全員聞いて!ヴィランの襲撃よ!!生徒は直ちに施設へ避難して!!』
目の前にいるのはB組の脅かし役ではない。本物のヴィランだ。しかも最悪なことに、俺でも分かるくらい危険そうだった。男は異様に長い歯を口から伸ばしながら木々を切り裂いている。さっきまで普通に立っていた大木が紙みたいに倒れていく光景はかなり怖かった。正直、今まで戦った相手の中でも上位に入る。
隣では爆豪も警戒していた。普段なら真っ先に突っ込んでいきそうな奴なのに、一歩も動かない。つまりそれだけ危険だということだろう。
「見ィつけたァァァァ!肉ぅゥぅゥ!!見せてぇぇ!!!!」
男が地面を蹴った。かなり速い。伸びた歯が鞭のように森の中を走り、俺達がいた場所をまとめて切り裂く。反射的に飛び退かなければ危なかった。切断された木が後ろで倒れる音を聞きながら、俺はこの相手にどう対処するべきかを考える。
幸い、攻撃方法は分かりやすい。攻撃は全部歯、つまり口だ。だったらやることは一つしかない。
俺は個性を発動した。男の服装が変化する。
首元を完全に覆う厚手のタートルネック。さらに口元を固定するベルト付きの装飾。夏場に着たら熱中症になるレベルの重装備だ。狙い通り男は口を開こうとするが開かない。当然だ、開けさせないための服なのだから。
そして攻撃が止まったその一瞬を爆豪が見逃すはずがない。
「どけ!!」
爆発音が夜の山に響く。爆豪が一直線に飛び出し、そのまま男へ突っ込んだ。拘束されたままのヴィランは迎撃できない。連続爆破をまともに受けながら後方へ吹き飛ばされていく。
それでも男は倒れなかった。なんてタフだ。俺はもう一度個性を発動した。今度は口元そのものを固定するデザインだ。バックルとベルトが何重にも重なり、無理やり口を閉じた状態で固定する。完全に趣味が入っている気もするが、効果は抜群だった。
「終わりだァ!!」
大きく跳び上がった爆豪は両腕を構え、森全体が揺れるんじゃないかというぐらい今までで一番大きな爆発を叩き込んだ。
爆煙が晴れる頃には、男は地面に倒れ伏していた。しばらく見ていたが動く様子はないのでどうやら気絶したらしい。俺はようやく息を吐いた。魔法少女にする余裕が無いくらい、正直怖かった。USJ以来な死の危険がある戦闘だったが、慣れるものではないらしい。
その時再びマンダレイのテレパスが頭の中へ響く。
『全員聞いて!ヴィランの目的は爆豪くんの拉致よ!』
俺は思わず爆豪を見た。爆豪もこちらを見ている。そして俺は考えた。
攫われる対象
守るべき対象
つまりお姫様である。
爆豪が何か言うより先に俺は個性を発動した。
1秒後
お姫様ドレスを着た爆豪がこっちを睨んでいた。
ヴィランを撃破した後B組と合流し俺、爆豪、円場、黒色でマンダレイの指示に従い施設への帰還を始めていた。
森の空気は重い。変なガスも漂ってるし個性で全員にガスマスクを着けさせる。爆豪だけ可愛いやつ。
さっきまでの肝試しの雰囲気はどこにもない。どこにヴィランがいるか分からない状況。
爆豪はもちろんお姫様だ。
純白のドレス
ティアラ
フリル
「戻せや!」
「駄目」
「何でだ!」
「誘拐されそうだから」
「だからだわ!!!」
円場が吹き出すと爆豪が睨む。
「笑うな」
「無理だろ!誰が想像するんだよヴィランが誘拐しようとしている相手がお姫様だなんてよ!」
「静かに。」
黒色は冷静だった。
その時、前方の木の上から声が聞こえた。
「わぁ」
少女の声に全員が反射的に身構える。枝の上に一人の少女が座っていた。
制服を改造したような服に、口元には悪趣味なマスク、複数のチューブが背中の装備から伸びている。そして異様に楽しそうな笑顔。
「見つけちゃいました」
少女は爆豪を見る
「・・・」
「・・・」
お姫様だった。
「・・・何で?」
「知らねぇよ!」
その瞬間俺は理解した。
「なるほど」
少女が嫌な予感を覚えるが遅い。
パチン
トガの服が変わる
改造制服が消える
チューブが消える
マスクも消える
代わりに現れたのは洗練されたゴシックロリータ風の衣装だった。
黒を基調としながらも上品
赤い差し色
レース
ブーツ
帽子
まるで高級ブランドのモデルだった。
トガが自分を見る。袖、スカートを見る。
「・・・え?あれ?」
本人も分かっていない。俺はさりげなく視線を逸らした。実は服を変えるのに乗じてチューブ装備とマスクを回収していた。この時は知らなかったがナイフも。誰も気付いていない。少女本人すら。
「可愛い」
「似合うな」
円場と黒色は頷いていた。何かがおかしかったが少女は急に我に返る。
「違う違う違う!ヴィランです私!」
そして木の上へ飛び移り
「今日は帰ります!また今度刺しますね!」
そのまま森の奥へ消えていき一同は少し呆然とする。
「帰ったな・・・」
黒色が呟く。爆豪は不機嫌そうにドレスを引っ張った。
「無駄な時間だった」
「施設に急ごうぜ!」
円場の言葉に気を取り直して走り始めた。
だが、不意に
「・・・?」
あれ?
爆豪が居ない
そんなバカな
たったさっきまで居たハズ
背後を見る
木陰から手が伸びてくる
そこで俺の意識は途切れた。
マスタードとマスキュラーは動かしづらいので原作通りここで退場してもらいます
脳無に発信機は付けれてません