着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:運命決定

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オールマイト引退は流石の俺でもショック

 

 

気付けば、事情聴取が終わっていた。本当に長かった。警察、ヒーロー、雄英教師、次から次へと同じ質問をされる。どうやって拉致されたのか。BARで何をされたのか。脳無格納庫で何が起きたのか。そして当然、一番聞かれたのは神野の最後だった。刑事さんの顔は疲れている。

 

「衣替くんの個性によって、敵ヴィランの装備が解除された」

 

「まぁ」

 

「その装備は生命維持装置だった」

 

「たぶん」

 

「故意ではない」

 

「もちろん」

 

「理由は?」

 

「全体のシルエットが崩れてたので」

 

刑事さんが目を閉じる。隣の人がペンを置いた。信じてない顔だ。俺は本当の話をしているだけなのに理不尽。

 

結局、俺と爆豪は保護扱いで解放された。元々夏休み中だから自宅待機で外出は控えること。取材対応は禁止で雄英からの連絡待ち。そんな感じ。

 

家に帰って、まず鏡を見た。黒と白に分かれた前髪は少し乱れている。ピアスも片方外れかけていた。服もボロボロだ。さすがにこれは着替えたい。でもその前にテレビをつける。さすがにどの局も同じニュースだった。

 

 

《オールマイト引退》

 

 

画面いっぱいにその文字が映り胸が少しざわついた。平和の象徴が力尽きた。あの圧倒的な背中が、もう戦えない。しかも本当はずっと前から限界だったらしいと。テレビでは重い空気で話が進んでいた。

 

『オールマイトは以前から深刻な負傷を抱えていたことが判明しました』

 

『神野での戦いも、限界を超えたものだったと見られています』

 

『平和の象徴を失った今、日本社会は━━━』

 

画面の中の言葉がやけに遠く感じた。あの痩せた姿を思い出す。ゼウスの服、似合ってたな。

 

そんなことを考えているとスマホが震えた。爆豪からか。

 

爆豪『生きてるか』

 

衣替『生きてる』

 

爆豪『ネット見たか』

 

言われてスマホを見る。SNS、ニュース、掲示板。全部、神野の話題で埋まっていた。その中で一つ、やたら伸びているスレを開く。

 

 

【神野決戦、ガチで神話だった件】

 

1:風吹けば名無し

最後のオールマイトやばすぎた

 

7:風吹けば名無し

雷神だった

 

18:風吹けば名無し

ゼウス感すごかった

 

31:風吹けば名無し

敵ヴィラン怖すぎ

 

44:風吹けば名無し

怪物王みたいだった

 

69:風吹けば名無し

ゼウスvsテュポーンで草

 

91:風吹けば名無し

でもわかる

 

 

俺は少し笑ってしまった。みんな思うことは同じらしい。別スレを開く。

 

 

【ドレスコード、またやらかす】

 

5:風吹けば名無し

体育祭の時のA組のやつだろ?

 

12:風吹けば名無し

衣替装

 

19:風吹けば名無し

あのオシャレ番長

 

37:風吹けば名無し

爆豪と一緒に拉致されたやつ

 

39:風吹けば名無し

爆豪お姫様で草

 

42:風吹けば名無し

平然としてたのおもろ

 

43:風吹けば名無し

もう慣れてるんじゃね?

 

56:風吹けば名無し

無事でよかったよ

 

74:風吹けば名無し

で、何したの?

 

95:風吹けば名無し

敵の装備剥がしたらしい

 

108:風吹けば名無し

強すぎない?

 

121:風吹けば名無し

武装解除はエグい

 

143:風吹けば名無し

しかも生命維持装置だった説ある

 

177:風吹けば名無し

 

201:風吹けば名無し

笑い事じゃねぇ

 

229:風吹けば名無し

でもMVPでは?

 

 

スマホを伏せた。なぜだろう頭が痛くなってきた気がする。タイミングよく爆豪からまたメッセージ。

 

爆豪『お前MVP扱いされてるぞ』

 

衣替『服変えただけだよ』

 

爆豪『だから怖ぇんだよ』

 

爆豪姫には触れないのか。いい感じに自分の記憶を書き換えたのかな。

 

 

 

 

 

全寮制導入の話が出た。林間合宿を襲撃され爆豪と俺の拉致からの神野での決戦。ここまであれば、雄英側が何か大きく動くのは誰でも分かる。安全確保のため、外部からの接触を極力減らすためだ。保護者への説明も兼ねて、教師が各家庭を回ることになったらしい。次死柄木と会ったら俺、殺されそうだし。USJでの殺意がまた別方向で再燃してるのは間違いない。

 

 

衣替家に来たのは、相澤先生とオールマイトだった。インターホンが鳴り俺は玄関へ向かって扉を開ける。

 

「こんにちは」

 

相澤先生はいつもの無気力そうな顔ではなく、髪と服も整っている。オールマイトは、もう痩せた姿のまま立っていた。テレビで何度も見た後でもやっぱりまだ少し不思議な感じがする。

 

「失礼する」

 

二人を家へ通すとオールマイトと相澤先生が止まって無言になった。理由は明白、とにかく広い。そして我が家のその大半は普通の家ではなかった。服、服、服、服、大量の服。ハンガーラックが何列も並ぶ。天井近くまで積まれた収納ケース。壁際にはブーツ、帽子、アクセサリー、コート、ドレス、スーツ、制服、軍服、和服、民族衣装、魔法少女、ジャンルがめちゃくちゃだ。しかも全部綺麗に管理されている。ちなみに普通のでかい倉庫も隣にある。オールマイトが瞬きしてる。

 

「これは・・・」

 

「衣替、何だ?これは」

 

「服です」

 

「見れば分かる」

 

オールマイトが困惑したまま聞く。

 

「全部、君のものか?」

 

「衣替家の、ですね」

 

素材や作りかけも多いが大半は服といえるものだ。相澤先生が深く息を吐いた。

 

「前から思ってたがお前の個性、想像以上に準備型だな」

 

「服がないと始まらないので」

 

俺の個性は便利だがベースになる服が必要だ。無から何でも生み出せるわけじゃない。ストックが多いほど対応力は上がる。逆に言えば、準備不足は致命的になる。

 

相澤先生とオールマイトはリビングに通された。母さんがお茶を出す。父さんもいる。簡単な挨拶のあと、本題に入った。相澤先生が真っ直ぐ言う。

 

「単刀直入に話します。雄英は全寮制を導入します」

 

父さんが静かに頷く。母さんも真剣な顔だ。

 

「今回の件で、生徒達が狙われる危険性が現実になりました。学校内で保護する必要があります」

 

家族全員、それを理解していた。神野はニュースで何度も流れている。俺が拉致されたことも、全国に知られている。反対する理由はない。父さんが口を開いた。

 

「安全面については理解しています」

 

母さんも頷く。

 

「装本人はどう思ってるの?」

 

俺は寮生活自体に抵抗はない。クラスメイトと過ごすのも、たぶん嫌じゃない。が、問題は別にある。

 

「一つだけ条件があります」

 

「条件?」

 

「週末は家に帰りたいです」

 

オールマイトが少し意外そうな顔をした。

 

「理由を聞いてもいいかな」

 

俺は立ち上がり服たちを見る。

 

「これです」

 

二人も視線を向ける。大量の服に相澤先生が無言になる。

 

「全部持っていけません」

 

当然寮の一室に入る量じゃない。絶対に無理だ。

 

「個性運用に必要です。寮の自室を作業部屋にできるなら服作りはできます。でも素材は家にあります」

 

壁際の棚、布地、革、ボタン、装飾金具、糸、ファスナー、染料、裁縫道具、トルソー、全部ある。それこそ、小規模な工房レベルだ。

 

「メンテナンスも必要です。使用後の修復、洗浄、補修、改造、全部家でやってます」

 

オールマイトが少し納得した顔になる。相澤先生も黙って考えていた。

 

「毎週必要か?」

 

「必要です。戦闘で服は傷むし、使い捨て運用は効率が悪いです。コンディション管理もしないと」

 

相澤先生が小さく息を吐く。

 

「お前らしい理由だな」

 

少しだけ呆れていたが否定はしない。オールマイトが静かに言う。

 

「学校側で預かれる量ではないな……」

 

「はい」

 

「これはさすがに」

 

相澤先生は腕を組んでしばらく考え込んでいた。

 

「週末の帰宅については、学校側で検討する。ただし条件付きだ」

 

「条件?」

 

「無断外出は禁止。事前申請。帰宅・帰寮時間厳守。状況次第で制限」

 

妥当だ、むしろかなり譲歩してくれている。

 

「分かりました」

 

「お前の個性は特殊だ。服が単なる服じゃない。武装であり、拘束具であり、防具だ。メンテナンスも戦闘準備の一部だと判断する」

 

珍しくかなり理解を示してくれていた。ありがたい。その時、オールマイトがふとラックの一着を見つめた。神野で使ったゼウス風衣装だ。

 

「・・・まだあるのか」

 

「あります」

 

「保管しているのかね」

 

「完成度高かったので」

 

少し間を置いてオールマイトが苦笑した。

 

「また別のも頼むよ。衣替少年」

 

「是非」

 

平和の象徴はもういないが、オールマイトはまだ生きている。

 

今後の楽しみが、また増えた。

 

 

 

 

 





スレ見た後

飯田『衣替くん、爆豪くん、無事か!?』
麗日『ほんまに心配した…!』
上鳴『生きてるか!?』
切島『連絡くれ!!』
瀬呂『はよ!!』
緑谷『二人とも怪我は!?』
八百万『どうかご無事で…』
轟『帰れたか』
葉隠『衣替くーーん!!』
峰田『マジで心配してるぞ!!』
衣替『無事に帰宅したよ』
『心配かけてごめん』
麗日『よかったぁぁぁ』
上鳴『生きてた!!』
芦戸『よかったーー!!』
常闇『帰還……!』
八百万『本当によかったですわ…』
葉隠『衣替くんおかえりー!!』
緑谷『本当に良かった…!』
『かっちゃんも一緒?』
衣替『爆豪も無事だよ』
切島『よっしゃ!!』
上鳴『爆豪も生きてた!!』
芦戸『返事してよ爆豪ー!』
口田『良かった……』
耳郎『ホントよかったよ……』
轟『爆豪、何か言え』
『いるなら返事しろ』
梅雨『衣替ちゃん』
『一つ聞いていいかしら』
『神野でオールマイトの服、変えた?』
『テレビに映ってたわ』
轟『ゼウスみたいだった』
葉隠『思った!!』
麗日『うちも思った!』
瀬呂『敵の方も怪物みたいだったぞ』
障子『さすがにバレるぞ』
緑谷『衣替くんもしかしてあれって…意図的?』
衣替『神話バトルっぽかったから』
上鳴『は?』
芦戸『は??』
常闇『神々の闘争…!』
飯田『説明を求める!!』
葉隠『待って好き』
耳郎『頭おかしい』
緑谷『ちなみに誰モチーフだったの?』
衣替『オールマイトはゼウス』
『敵ヴィランはテュポーン』
上鳴『ガチで神話じゃねーか!!』
瀬呂『センス良すぎだろ』
砂藤『いや似合ってたけどよ!?』
葉隠『衣替くんブレなさすぎるよ』
麗日『そこだったんだ…』
轟『納得した』
梅雨『それで』
『敵ヴィランやけに苦しそうだったわよね』
『なにかしたのかしら』
衣替『生命維持装置外しちゃったらしい』
『さすがに反省してる』
上鳴『え?』
芦戸『え???』
切島『待て待て待て』
砂藤『生命維持装置!?』
葉隠『えっ、敵そんな状態だったの!?』
緑谷『えっ!?!?ちょっと待って』
『衣替くん、それ本当!?』
轟『つまり衣替が敵の生命維持装置を解除』
『街を破壊した敵が急激に弱体化』
『オールマイト勝利』
『MVPでは?』
上鳴『MVPじゃねぇか!!』
耳郎『いや普通に大問題だろ』
峰田『衣替怖すぎだろ…』
葉隠『服の個性で生命維持装置外すの意味わかんない』
麗日『でも結果的に助かったんやね…』
飯田『待ちたまえ!!』
『そこに至る経緯が意味不明だ!!』
障子『飯田が正しい』
緑谷『意味がわからないよ…』
上鳴『それな』
芦戸『それな』
瀬呂『それな』
葉隠『それな』
麗日『それなや』

爆豪『全部こいつのせいだ』
上鳴『かっちゃん来た!!』
芦戸『しゃべった!!』
切島『無事でよかったぜ!!』
麗日『爆豪くんよかった!』
爆豪『誘拐されて』
『ヴィランのアジト連れてかれて』
『こいつが服の話しかしねぇまま』
『最後に敵の生命維持装置消した』
『以上だ』

轟『情報量が多い。』
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