小森とか黒色ってどうやって入試クリアしたんですかね
翌日
夏休みだからといって雄英ヒーロー科が休ませてくれるわけじゃない。みんなで朝食を摂り、学校へ。徒歩5分というのは楽で良い。
教室に集まったA組を前に、相澤先生はいつも通り気だるそうに話し始める。髭も生えてきたしまた髪ボサボサに戻ったな先生…
仮免取得を当面の目標とするようだ。そこで今日から1人最低でも2つ必殺技を作れと言われた。俺に攻撃技は無い。どうしようか…
セメントス先生、ミッドナイト先生、エクトプラズム先生も合流して体育館γへ。ミッドナイト先生のコスチューム…変えたい…もっと良くできると思う。
いつも通りの俺だ。
各自動き始める中、俺は相澤先生に呼び止められた。
「衣替。お前自覚あるか」
「何がですか」
「味方に頼りすぎだ」
なにも否定できない。その通りだから。
「お前の個性は強い。拘束、妨害、防御、サポート、応用力も高い。だが逆に、決定力が足りない」
その言葉はかなり腑に落ちる。授業でも攻撃は誰かに任せることが多い。
爆豪だったり、緑谷だったり、蛙水だったり。葉隠にさえ頼る。神野でもそうだった。
「一人で敵を倒せるようになれ」
確かに自分だけで完結する攻撃手段は必要か。
「何か案はありますか」
「お前、手は空けたいだろ。なら蹴りだな」
「蹴り、ですか」
服で拘束して隙を作りそこに蹴りを叩き込む。想像上では綺麗に繋がるな。
この体育館TDLって名前らしい。いいのか?
移動して早速飯田が質問。先生たち曰く仮免では色々な要素を見られるが結局戦闘力が大事らしい。爆豪の戦闘力は俺の30倍ぐらいあるだろうか。あ、技は必ずしも攻撃である必要はないらしい。ならば合宿で成長した今の俺なら《魔法少女地獄絵図》とかも可能だろうな。くっ、試したい…
「やめろ。」
心を読むな、爆豪。
夏休み残り10日の圧縮訓練が始まった。
俺はまずエクトプラズム先生に蹴り技等を鍛えてもらうことにした。
「悪クナイ」
「ダガ軽イ」
「キミノ蹴リハ速イ」
「ダガ仕留メル蹴リジャナイ」
言葉が刺さる。速いだけじゃ駄目だな、決定打にならない。先生のアドバイスをもらい訓練を続ける。
隣の訓練スペースから爆豪の視線を感じた。目が合って数秒、爆豪が鼻で笑う。
「軽ィな」
イラッ。
「腰だけじゃねぇ。踏み込みが死んでる」
それだけ言って自分の訓練に戻っていく。言い方がかなり腹立つがたぶん正しいんだろうな。エクトプラズム先生も否定しなかったし。
「モウ一度ダ」
……まぁいい。どうせならもっと完成度を上げたい。
エクトプラズム先生の分身相手に蹴りの反復練習をしているとオールマイトが来た。
痩せた姿のまま。それでも存在感は相変わらず大きい。訓練を回りながら一人ひとりの様子を見てアドバイスしているらしい。
「やぁ衣替少年。蹴りの鍛錬中か」
「はい」
「決定力不足ノ改善ダ」
「なるほど」
少しだけ俺の動きを観察する。
「蹴り自体は良い方向だ。手を空けられるのも、君の個性と相性がいい」
そこまでは相澤先生と同じ意見だな。
「衣替少年、君は相手に何を着せるか。自分が何を着るか。何を奪い、何を与えるか。そのすべてを、君は極めて高速に判断している」
言われてみれば戦闘中、服を変える時にいちいち深く考えている感覚はない。でも頭の中では、相手に何が一番効くかを瞬時に選んでいる。
「なら、君の理想はこうだ。
①着せ替え
②拘束or混乱
③決着
これが一連の流れとして数秒以内に終わるレベルだ」
確かにできたら強いが。でもそれがプロのレベルなんだろう。
「君の戦い方はとても君らしい。極めたまえ、誰にも真似できないレベルまで」
その言葉に不思議と背中を押された気がした。誰にも真似できない衣替装だけの戦い方か……
オールマイトが去っていき、俺は自分の足元を見る。
「何カ見エタカ」
「ひとつは。靴を変えながら戦おうかと」
「ホウ。形ニシテミロ」
爆豪が訓練の合間にこっちを見た。
「で?どんな靴にすんだ」
「軽量型、高速型、重量型……あと一点突破型」
整理してみよう。
「重量型は軍靴寄りかな」
「ソール厚めで重心低め」
「高速型はローラー」
「一点突破型は━━━ヒール」
「・・・ヒール?」
「うん」
「ヒール?」
「一点に圧を集中できるし細いヒールなら貫通力も出る。丈夫なのが欲しいな」
「いや待って。ヒールって、あのヒール?」
緑谷が困惑顔で聞いてきた。どこから生えた?なんか周りに聞かれてたらしい。
「そうだけど」
何かおかしいだろうか。かなり合理的だと思うんだが。
「衣替くん、それで戦うの……?」
「戦えるよ」
普通に。
「黒ブーツがベースでヒールは10cmくらいかな」
周りの顔が微妙になった。なぜだ。
「・・・キメェ」
「なんで?」
かなり理にかなってると思うんだけど……納得いかない。
訓練が終わった後も、頭の中は靴のことでいっぱいだった。
蹴りそのものの感覚は悪くない。むしろ思ったより手応えがあった。でも、完成度を上げるなら靴は絶対に必要だ。ただのブーツじゃ足りない。機能も、構造も、戦闘用に寄せたい。となると、一人で詰めるには限界がある。専門家が必要だな。
向かう先はサポート科。
雄英の校内を歩きながら、頭の中で設計を整理する。
細ヒールは見た目がいい。でも実戦向きにするなら補強が必要だ。太ヒール寄りにするか…いや、可変でも……
そんなことを考えながらサポート科棟に着く。
入口の前で、見覚えのある三人がいた。緑谷、飯田、麗日。
「あれ、衣替くん?」
「そっちも?」
「うん」
「我々もサポートアイテムの相談だ!」
なんとなく察した。みんなそれぞれ課題が見えたんだろうな。
BOMB!!
目の前で扉が吹き飛んだ。
……。
…………。
このドアは自動ドアだったらしい。発目とか緑谷とかが騒いでるが構わず中に入るとパワーローダーがこちらに気づいた。
「発目ェ!ん?どうした」
飯田が姿勢を正す。
「サポートアイテムの相談です!」
「ほう」
順番に用件を話す流れになった。俺もパワーローダーの前に立つ。
「何が欲しい」
「ヒールです」
「・・・ヒール?」
「はい。蹴り主体の戦闘スタイルに移行中なので安定性と瞬間火力が欲しいです」
パワーローダーの目が少し変わった。真面目な依頼だと理解したらしい。
スケッチブックを開き設計案を見せる。
細身のブーツ
踵部分補強
「面白いが、細ヒールは安定しない。やるなら補助機構が必要だな」
やっぱりそこか。その横で発目が飯田に何か装着していた。
「待て発目くん!! 何を━━━」
ドゴォォォォン!!
飯田がすごい勢いで天井に叩きつけられた。カオスだ。
少し離れたところで緑谷がぶつぶつ言い始めた。
「手……手を酷使しない……なら……足……?足を使えば……」
ぶつぶつが加速してるのでああ、何か見つけたなと思った。
たぶんかなり重要なやつだ。緑谷も足に方向を定めたか。
「緑谷もヒール作ってもらう?」
みんな固まる。発目だけ目が輝いてる。
「ヒール!?」
「いいですね緑谷くん!!超ハイテク戦闘ヒール作りましょう!!」
緑谷が顔面蒼白になった。
「いらない!!」
「なんで?足使うなら相性いいと思うけど」
合理的だと思う。
「いやいやいや!!僕ヒールはちょっと!!」
発目がもう設計を始めていた。
「緑谷くん専用バトルヒール・・・!8センチ? 10センチ?」
「いらないんだってぇ!!!」
緑谷の悲鳴がサポート科に響いた。