着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:うめけ

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すみません


USJにヴィラン襲来か……ならば魔法少女だな!

 

USJに到着した時点で少し嫌な予感はしていた。雄英に入学してから嫌な予感が当たることが増えた気がする。主に爆豪関連で。

 

施設の中は広かった。水難事故ゾーンだの火災ゾーンだの災害を再現したエリアが並んでいて、正直かなり面白そうだった。

 

13号先生の説明も始まる。個性は人を救う力にも人を傷付ける力にもなる。とても真面目な話だった。俺も真面目に聞いていた。七割くらいは。残り三割は13号先生のコスチュームどうやって洗うんだろうと考えていた。

 

そんな時施設中央の空間が歪んだ。黒い霧が現れ、その中から大量の人影が出てくる。空気が変わった。訓練じゃないと、さすがの俺でも分かった。飯田が前へ出る。緑谷の顔も緊張している。相澤先生は既に前へ歩き出していた。

 

俺は中央に立つ男を見ていた。上半身に大量の手が付いている。怖いとか不気味とかより先に、あれ管理大変そうだなと思った。洗濯とか。

 

「平和の象徴を殺しに来たんだけど」

 

なるほどヴィランだった。服のセンスが終わっているだけではなかったらしい。

 

しかし見えてるな。今、普通に位置把握完了だった。条件達成とも言うな。俺は指を鳴らした。

 

手男の服装が変わった

 

大量のフリル

大量のリボン

大量のハート

ピンク色

キラキラ

そしてステッキ

 

完璧な魔法少女だった。

 

施設全体が静まり返る。

手の男が固まる。

黒い霧が固まる。

ヴィラン達が固まる。

A組も固まる。

相澤先生ですら一瞬だけ動きを止めた。

手男が自分を見る。

もう一度見る。

さらに見る。

 

「なんだこれ」

 

知らないのだろうか?魔法少女である。

 

「衣替君」

 

緑谷が震えた声で聞いてくる。

 

「何」

 

「何したの」

 

「魔法少女」

 

「それは見れば分かるよ!」

 

手男はまだ固まっていた。理解が追いついていないらしい。気持ちは分かるぞ、俺も初めて自分を魔法少女にした時はそうだった。

 

「おい」

 

「おい」

 

かなり怒っている。魔法少女なのに怖い。

 

「誰だ」

 

ゆっくりこちらを見る。

 

「誰がやった」

 

俺は静かに視線を逸らしたけどバレた。なぜならクラス全員が俺を見ていたからだ。誰も庇わなかった。団結力を感じる素晴らしいクラスだ。いずれ日本を救えるかもな。

 

手男がこちらへ歩き始める。怒りのオーラがすごいぞ魔法少女なのに!

 

「殺す」

 

走り出した。速い!かなり速い!!俺も走る。死にたくないので。

 

「ざまぁねぇな布切れ野郎」

 

味方とは思えない発言が聞こえてきたが今は余裕がなかった。手男が迫る中俺はもう一度指を鳴らした。

 

魔法少女ならではの二段階変身システムである。

 

スカートが増える

羽が生える

ステッキが豪華になる

キラキラが増量される

 

完全体だった。

 

手男がまた止まる。

二回目だった。

自分の姿を見る。

空を見る。

自分を見る。

 

「なんだこれ」

 

ヴィラン達も静かだった。誰も状況についていけていない。黒い霧なんて明らかに顔を逸らしている。笑っている気がするが気のせいではないと思う。

 

「やばいな」

 

瀬呂が呟く

 

「やばいね」

 

上鳴が頷く

 

「やばい」

 

耳郎も頷く

 

「衣替君やばいね」

 

麗日も頷く

 

「衣替君やばいよ」

 

緑谷も頷く

 

その直後黒い霧が動いた。ワープゲートが一斉に広がり相澤先生が何か叫んだが間に合わない。俺の足元にも黒い霧が開き、次の瞬間には足場が消えていた。

 

落下する

 

浮遊感

 

視界が回る

 

気持ち悪い

 

そして盛大に水へ突っ込んだ。

 

顔を出して周囲を見る。船舶事故エリアだったらしく近くでは緑谷と蛙吹も浮上している。どうやら同じ場所へ飛ばされたらしい。

 

「みんな無事かしら」

 

「多分」

 

「多分じゃ困るわね」

 

周囲には数える気も起きないほど大量のヴィランがいる。

 

「まずここを脱出しよう」

 

さすが緑谷だ。俺は服のことしか考えていなかったのに。

 

その時、ヴィランの一人がこちらを指差した。

 

「あいつらだ!」

 

水中をヴィラン達が迫ってきた。緑谷が構え蛙吹も構えた。なので俺も指を鳴らした

 

先頭のヴィランが突然タキシードになる。

 

「は?」

 

もう一人鳴らす

 

今度はメイド服になる。

 

「は?」

 

さらに鳴らす

 

白雪姫になる。

 

また「は?」と言う。

 

人間は理解できないものを見ると大体同じ反応をするらしい。勉強になった。

 

その隙に蛙吹の舌が飛び、緑谷が突っ込み、ヴィラン達がまとめて転がる。

 

「便利ね衣替ちゃん」

 

褒められたので少し嬉しかった。

 

 

 

 

 

中央広場へ戻ってこれた。

 

瞬間、俺達は全員足を止めた。ひどかったからだ。施設のあちこちが壊れている。相澤先生は傷だらけだし、見たこともない巨大な怪物が暴れているし、黒い霧は相変わらずいるし(黒霧って名前らしい。そのままだ)、そして何より大量の手を付けた魔法少女がいた(死柄木って名前らしい)。あいつなんで魔法少女なんだ?おっとまだ戻していなかったのを完全に忘れていた。

 

死柄木も俺を見つけたらしい。遠くからでも分かるくらい怒っていた。魔法少女なのに怖い不思議な光景だ。普通なら可愛いはずなのに全く可愛くない。むしろ恐怖が増している気さえする。これは新しい発見だ。

 

緑谷達も中央の状況を見ている。笑っている余裕はないらしい。相澤先生は明らかに限界が近いし、巨大な怪物は普通に強そうだし、ヴィランの数もまだ多い。俺もさすがにまずいなと思った。思ったのだが、その時入口側から突風が吹いたのでそちらを見た。

 

誰か来た、そう思った次の瞬間には歓声が上がっていた。

 

オールマイトだった。

 

「本当に…いや本当にとてつもなく嫌な予感がしてね!……私が来た!!!

 

緑谷の顔が変わる

 

クラス全員の空気も変わる

 

ヴィラン達の空気も変わる

 

死柄木だけは変わらなかった。魔法少女だったから。

 

オールマイトは中央へ着地するとすぐ戦い始めた。そこから先は本当に凄かった。俺は結構語彙力がある方だと思うが、あれを説明する言葉は思いつかない。とにかく凄かった。ヴィランが飛ぶ、殴られる、また飛ぶ、もっと飛ぶ、気付いたら数が減っている。平和の象徴とはそういうものらしい。

 

戦況は徐々にこちらへ傾いていき巨大な怪物も押され始める。死柄木の表情もどんどん悪くなる。もともと良くはなかったがさらに悪くなる。そしてとうとう撤退を決めたらしい。黒霧がゲートを開く。

 

終わるのかと思った

 

ここで終われば綺麗だった

 

だが俺は死柄木を見てしまった。

 

目が合ったとも言う

 

職業病みたいなものだった

 

死柄木も気付いたらしく遠くからでも分かる嫌そうな顔をしていた。せっかく最後なのに今の服装では少し物足りない気もした。服飾とは妥協してはいけないものだと思う。だから俺は指を鳴らした

 

死柄木の衣装がさらに変わる。

 

羽が増える

リボンが増える

ティアラが増える

ステッキが豪華になる

謎エフェクトが撒き散らされる

全体的にキラキラする

 

完全版、いや集大成とも言う。

 

死柄木が固まる

黒霧が固まる

オールマイトが吹き出す

 

死柄木はしばらく動かなかった。多分理解を放棄していたんだと思う。その後でしばらく叫んでたんだけど何を言っていたかはよく覚えていない。だって長かったから。ただ途中で俺の名前が入っていた気がするので多分悪口だったのだと思う。

 

「殺してやる!!!衣替装ォォォォ!!!!!」

 

悪口は良くない。

 

そしてそのまま黒霧に回収されて消えていった。

 

USJは静かになり事件は終わった。先生達が走り回っている。救急隊も警察も来てるし明日テレビでは大騒ぎになるだろう。俺も疲れた。

 

そんなことを考えていると爆豪が近付いてきた。機嫌が悪そうだったけどもいつも通りだった。布切れ野郎と言われる準備をしていたら予想通り布切れ野郎と言われた。

 

安心した。日常が戻ってきた気がしたからだ。

 

後日、この事件は大ニュースになった。ヴィランによる雄英襲撃事件として連日報道され、社会問題にもなったらしい。ただ不思議なことに首謀者が魔法少女になっていた件についてはほとんど報道されなかった。大人の事情というやつだろうか。少し残念。

 

そして後に知ることになる。

 

ヴィラン連合の中で俺の危険度評価が異常なことになっていたのを。

 

理由は単純

 

魔法少女にしてくる奴として警戒されていたらしい。

 

心外だな

 

俺は他の服も使う。そこはちゃんと評価してほしい。

 

 

 

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