着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:運命決定

21 / 34

日常


本気怪談大会

 

 

その日の夜はひどい天気だった。

 

夕方から降り始めた雨は時間が経つごとに勢いを増し、窓ガラスを叩く雨音が寮中に響いている。風も強い。遠くで雷がゴロゴロと鳴っている。

 

俺は一階共有スペースのソファでファッション誌を読んでいた。足を組みページをめくる。新作の秋冬ブーツ特集は参考になる。

 

寮内は比較的静かだった……最初は。

 

「暇だーー!!」

 

静寂を破ったのは上鳴。ソファにだらしなく寝転がりながら天井を見ている。

 

「 テレビもつまんねえ!」

 

「じゃあなんかしよーよ!」

 

ぴょこぴょこした葉隠。姿が見えるようになっても相変わらず動きが大きい。

 

「怪談大会しようぜ!」

 

俺は静かにページをめくった。始まったか…こういう時は芦戸と切島の食い付きがいい。

 

「いいじゃん!」

 

「夏っぽいな!」

 

「やろやろー!」

 

耳郎と麗日は露骨にテンション下がってるな。かわいそうに。

 

「え、やだ」

 

「うち怖いの苦手なんやけど・・・」

 

「えー? 耳郎ビビってんのぉ?」

 

「ビビってないし」

 

「麗日は?」

 

「ビビってない!」

 

「よし決定!」

 

「怪談大会開催ー!」

 

「オイラちょっと楽しみ・・」

 

「待て! こういう時こそ節度ある行動を━━」

 

「飯田もやるんだよ」

 

「なに!?」

 

こうして半ば強引に怪談大会が始まった。照明が少し落とされ共有スペースの中央に全員集まる。

 

ソファ組、床組に分かれて座る。俺はソファの端に座ったまま。耳郎と峰田がなぜか近くにいる。峰田は怖さ半分、期待半分といった感じか。ハプニング方面の。

 

1番手は上鳴が張り切って話し始めた。

 

「これは俺が小学生の頃の話なんだけど━━深夜二時、喉乾いて起きたんだ。それで冷蔵庫開けたら━━」

 

「・・・」

 

「俺のプリンが、なくなってた」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

……………………。

 

「家庭内事件じゃん」

 

「いや怖いだろ!?」

 

「誰が食べたの!?」

 

「親父!!」

 

「普通!!」

 

空気は一気に緩んでしまった。その後もしばらく軽い話が続いた。

 

瀬呂の「夜中トイレ行ったら暗闇に親父が立ってた話」

 

葉隠の「家族全員透明なので家の中全裸で歩き回ってた話」

 

芦戸の「学校の七不思議に遭遇したと思ったら全部勘違いだった話」

 

大体しょうもないがそこそこ盛り上がっていた。しかし、空気が変わったのは常闇の番だった。

 

「では━━━━━━これは、闇の深淵に触れたある夜の話だ」

 

ワードのチョイスにだいぶクセはあるが、声のトーンも間の取り方も全部怖くて無駄に上手い。耳郎の顔色が目に見えて悪くなっていく。麗日はもう半分泣きそうだ。峰田は更に身長が縮んだ。

 

「やめて常闇くんほんとに上手い」

 

誰かが言ったが止まらない。常闇の怪談が終わる頃には空気はかなり冷えていた。

 

雨音が妙に大きく聞こえる。

 

 

急に轟が、静かに口を開いた。いつもの真顔で。

 

「そういえば小さい頃、見たことがある」

 

嫌な予感に耳郎が小さく呟く。

 

「何を・・・」

 

「白い女。」

 

個性も使ってないのにキン、と空気が凍ったが轟は淡々と続ける。

 

「あれは夜中だった」

「廊下に立ってたんだ」

「長い髪で」

「顔は見えなかったな」

 

「ちょっと待って無理・・・」

 

「母さんかと思った」

「でも違った・・・」

 

「・・・」

 

 

「足がなかった。」

 

「ぎゃああああ無理無理無理!」

 

耳郎らが限界を迎えたその瞬間━━

 

窓の外が真っ白に光った。落雷だ。全員がびくっとする。

 

プツン、と明かりが消えた。

 

停電か?真っ暗で何も見えない。

 

「きゃああああ!!」

 

「うわああ!?」

 

「停電!?」

 

これはマズそう、大パニックだ。芦戸が悲鳴を上げ、葉隠が騒ぎ、上鳴まで叫んでいる。耳郎はたぶん完全に思考停止してた。反射的に一番近くにいた俺の腕にしがみついてきたから。

 

ぎゅっ。

 

柔らかい感触に思わず暗闇の中で顔を向けた。

 

……耳郎珍しいな……俺を頼るほどのレベルか……半泣きなのが伝わってくる。

 

「無理無理無理怖い怖い怖い!」

 

「耳郎」

 

「なに!?」

 

「近い」

 

「うるさい!!」

 

声が震えてるし相当怖いらしい。

 

「誰かライト!」

 

「落ち着きたまえ!」

 

「オイラを誰か守ってくれぇ・・・」

 

一番冷静だったのは頼れる障子。

 

「動くな、転ぶぞ」

 

「上鳴! スマホ!」

 

「俺のスマホどこだよ!!」

 

 

混乱渦巻く暗闇の中俺は考える。

 

…………今ならやれる。俺の口元が少しだけ上がった。

 

パチン

 

暗闇だから見えない…最高の状況だ。

 

 

 

 

 

パッと電気が復旧した。共有スペースに明かりが戻る。

 

「うわぁ・・・びっくりした・・・」

 

「焦った・・・」

 

みんな安堵した。耳郎もようやく落ち着き、俺から離れようとして━━━目を見開きながら固まった。

 

「・・・え」

 

全員がそっちを見るとそこにいたのは俺。……ただし、いつもの俺ではない。

 

白い長袖のワンピース

長い黒髪

髪で見えない顔

髪の隙間から覗く目

 

完全に呪いの女貞子。

 

耳郎が目を見開いたまま、じっくり3秒かけて息を吸う。

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

過去最大級の絶叫をあげてソファから転げ落ちた。

 

「うわあああああああ!!」

 

「何なん!?怖い怖い怖い怖い怖い!!」

 

「怖っ!!」

 

「ヒェッ」

 

「ぶははははは!! 何してんだ衣替!!」

 

「やべえ!! 完成度高すぎる!!」

 

「似合うな」

 

「見事だ・・・」

 

耳郎が涙目で叫ぶ。

 

「なんでそんな格好してんだよ!!」

 

「停電用コーデ」

 

「そんなもんあるわけないだろ!!」

 

そのまま半泣きのままクッションを掴み全力で投げてきた。

 

「もう許さん!!」

 

クッションが貞子の顔面に直撃。

 

上鳴達の笑い声と耳郎の怒鳴り声が嵐の夜の寮に響き渡った。

 

 





そろそろ仮免試験でしょうか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。