着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:運命決定

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ギャグがないと時間の流れが早くなる

爆豪を合格させるか迷いました




真面目に救助演習

 

 

俺と葉隠は合格者控え室へ向かった。会場の喧騒から少し離れた通路を進みドアを抜けると、椅子が並んでいて軽食もある。

 

まだ合格者は1人。士傑高校の制帽を被った全身から熱量が漏れているみたいな男。夜嵐イナサっていうらしい。

 

……かなり暑苦しい。

 

夜嵐は椅子に座っていたが、俺たちが入った瞬間勢いよく立ち上がった。

 

「おおぉ!!」

 

声がでかくて葉隠がびくっとした。夜嵐がずんずん近づいてくる。

 

「雄英!!速いッスね!!!!」

 

近い、うるさい、暑い。夜嵐は目を輝かせたまま俺を指差した。

 

「あんた!! 服を変える人ッスね!!」

 

……なんだその言い方。

 

「有名人だね衣替くん」

 

なんか嬉しくない。夜嵐はさらに熱量を上げてくる。

 

「実に恐ろしい個性ッス!! ですが!! どんな衣装になろうと屈しない心!! それこそヒーローに必要な資質ッス!! 俺はフリルを着せられても魂は折れまないッス!!」

 

なるほど、天敵というわけか。

 

「・・・そう」

 

「ウス!!」

 

 

疲れたので席に座る。葉隠も隣に座った。

 

 

 

 

 

 

さらに時間が経ち……雄英全員、1次は通った。爆豪組は少し遅かったが良かった良かった。あとで魔法少女衣装も回収しておかないとな。

 

「衣替やりすぎ」

 

「阿鼻叫喚だったぞ」

 

「お前怖ぇよ・・・」

 

好き放題言われたが後悔も反省もしていない。

 

 

 

 

 

 

2次選考の説明が始まった。画面で1次のフィールドが爆発してる。なぜ?

 

2次は救助演習か。これでラストらしい。

 

崩れたビル、ひび割れた道路、散乱した瓦礫、傾いた標識。まるで大規模災害の直後みたいな景色が広がっている。

 

会場の空気が少し変わった。1次とはまるで違う。今度は戦う試験じゃない。

 

「この試験では、皆さんには救助活動をしてもらいます。皆さんがすでに仮免許を取得しているヒーローであると仮定し、被災現場でどれだけ適切な救助を行えるかを評価します」

 

画面では老若男女様々な人たちが現場に向かいだした。要救助者役のプロ、通称HUCのみなさんらしい。色んな仕事がこの世にはある。

 

被災現場の全域に負傷者としてスタンバイしている彼らを救助していけと。そして俺らの行動はポイントとして採点されると……ふざける余裕はなさそうだ。いつも真面目だけど。救助なら服の用途も変わる。見た目より実用性だ。いや、見た目も大事だけど。

 

 

 

試験開始の嫌なベルの音が響いた。

 

ヒーローとして、人を助ける試験が始まる。

 

 

 

 

試験開始からA組はひとかたまりで動いていた。爆豪たちはどこかに行ったが……

 

だが、すぐ気付く。何人か見てるだけになってしまっている。

 

「1次選考とは逆だ。少人編成で動こう」

 

障子の冷静な判断にみんな従う。俺は障子、峰田、飯田と。索敵とパワー、便利なもぎもぎ、先行偵察と搬送、服屋の俺。なかなかバランスのいいチームだ。

 

「状況によっては他校ともコミュニケーションをとり、より多くの命を救わん!」

 

飯田の号令に、全員で頷き気を引きしめる。

 

 

 

 

障子が腕を増やし、耳を広げて索敵を開始した。耳が増えるとなぜ索敵出来るかはまだ理解してない。いつか教えてくれ。

 

「北東四十メートルに成人男性一名。意識はある」

 

「俺がまず先行し状況を確認する!」

 

さすが飯田だ、早い。

 

「右足負傷、歩行困難!」

 

俺たちも追いつく。瓦礫にもたれた男性が苦しそうに息をしていた。まず服装を見る。スーツと革靴か。

 

個性を発動し軽量で動きやすいスポーツウェアに変えた。ついでに足元も革靴からクッション性の高いランニングシューズへ。

 

「え・・・?」

 

「運びやすく怪我の手当がしやすい格好にしました」

 

「助かるよ衣替君!」

 

そのまま飯田が男性を背負い一時救護所へ。

 

 

 

その後も救助は続いた。障子が次々と要救助者を見つけ飯田が先行。状況確認し軽傷ならそのまま搬送。重いなら全員で現場入り。崩れそうな瓦礫は峰田が固定、もぎもぎで簡易的なハシゴも作れる。……この連携は強いな。

 

衣服の問題はかなり多かった。救助の邪魔になる服はいくらでもあり、そこに俺の個性は刺さった。

 

足を怪我した女性にはヒールからスニーカーへ

服が濡れて震える子供には厚手のパーカー

スーツ姿で汗だくの男性には軽装

腕を骨折してる人は固定しスリングで腕を吊るす

 

ジーニストの教えが活きている。子供を救助した時は特にそうだった。濡れた服がふわふわした暖かいうさ耳パーカーに変わると少しだけ泣き止んだ。まぁ…HUCの人だから顔は成人女性だったが。

 

峰田も「そういう使い方もあるのか」と関心していたので「服はメンタルに効く」と短く答えておいた。

 

ここまでかなり順調だった。

 

 

 

突然、遠くで爆発音が響いた。

 

全員が顔を上げる。障子が即座に索敵する。

 

「・・・ヴィラン役か。ギャングオルカが救護所方面に現れた・・・」

 

プロヒーローギャングオルカとそのサイドキック数十名がヴィラン役として襲撃を開始した。救助だけでは終わらないようだ。戦闘と救助を同時に行えとアナウンスが入る。

 

「正気かよ!!ハードル高くねぇか!?」

 

「衣替君どうする!」

 

「救助を続行しよう」

 

轟、爆豪、緑谷、他校生と戦闘要員はいる。俺たちは救助の方が向いているはずだ。

 

「ただ、その前に少し邪魔することは出来る」

 

遠くのヴィランたちは視界に入っているから。

 

「待て衣替!魔法少女はやめておけ。負傷者たちがパニックを起こす可能性がある」

 

「・・・・・そうだな」

 

採点されてるからな、真面目にやろう。

 

パチン

 

一気にサイドキックたちを着替えさせロングコートに変えた。裾も袖も、無駄に長く重いものへ。

 

「なっ!?」

「動きづらっ!」

 

足が絡んで明らかに動きが鈍っている。

 

さらにギャングオルカは乾燥に弱いと聞いたことがある。

 

パチン

 

厚手のニット

重ね着

更に重ね着

マフラー

 

無駄に暑苦しい冬服フルセット。しかも燃えやすい繊維中心にした。轟か爆豪のような火属性の個性持ちが向かえば良い相性になるだろう。

 

「よし、行こうみんな!」

 

飯田の仕切り直しで救助再開だ。ヴィラン襲撃で要救助者役たちはさらに混乱していた。演技でも迫力は本物だったが、だからこそ冷静に動く。

 

誰が一番危険か、誰を優先すべきか、頭を回し続ける。HUCも迫真の演技でこちらの判断を惑わしてくる。遠くでは氷結音、烈風音が響き続けていた。戦闘は激しそうだ。

 

だが俺たちは救助優先、止まらない。

 

もう要救助者全員救助したのではないだろうか。そう思えてきた頃には全員かなり消耗していた。

 

「・・・いたぞ」

 

瓦礫の影に女性一名。意識はあり、軽傷。飯田が即座に駆け寄り女性を抱き上げる。

 

「大丈夫です!」

 

全力で救護所へ向かい俺たちも追う。

 

到着し女性を下ろした瞬間、会場全体にアナウンスが響いた。

 

『配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。これにて仮免試験全行程終了となります』

 

一気に張り詰めていた空気が緩んだ。終わったか。

 

峰田がその場に座り込む。

 

「つ、疲れた・・・」

 

飯田も息を吐く。

 

「全力を尽くした」

 

障子が静かに肩を下ろす。

 

 

やれることはやった。あとは結果だけだ。

 

 

 

 

 

汗と埃まみれだったコスチュームを脱ぎ、制服へ着替える。さっきまで災害現場みたいな場所を走り回っていたせいで、制服の感触が妙に落ち着いた。

 

「いやー・・・まじで読めねえ」

 

「結果を待つしかない」

 

みんな緊張している。

 

 

 

 

会場へ戻る頃には、全員かなり静かになっていた。

 

「えー・・・皆さん、お疲れ様でした」

 

目良さんのアナウンスが響く。採点方法はヒーロー公安委員会とHUCによる2重の減点方式。危機的状況でどれだけ間違いのない行動を取れたかを審査していたらしい。

 

スクリーンに合格者一覧が表示された。

 

 

 

あった。《衣替装》

 

 

 

みんな自分の名前を見つけたらしく安堵と喜びの声をあげている。

 

その中で爆豪が「ねェ・・・!」と変顔をしていた。落ちたのか爆豪……ギャングオルカとの戦いにも居なかったらしいし、いったい何をしていたんだ……

 

轟の元には夜嵐が来てすごい頭下げてる。なんとなく察した。轟も落ちたのか……喧嘩してた?なぜ…………話を聞くに因縁があったようだが。

 

 

採点内容の記載されているプリントが各自に配られる。ボーダーラインは50点。

 

プリントを受け取り視線を落とした。個性の柔軟さと救助の適応力や冷静さを評価されたらしい。周囲との連携や応急処置力も褒められている。

 

「衣替何点だった!?オイラは72点!」

 

「89点。思ったより高かった」

 

「高ぁっ!!」

 

減点理由は……初動でやや観察時間が長い、救助対象への説明を簡略化しすぎ、ヴィラン妨害時個性使用の意図は優秀だが味方との事前共有不足、か……冷静に判断していたつもりだが気付かない内に焦っていたといったところか。

 

「クソが!!」

 

爆豪は点数より理由にキレているらしい。

 

一方、轟は無言でプリントを見ていた。その隣で夜嵐も静かに紙を見ている。さっきまでの熱さがない。

 

最後に目良さんのアナウンスで不合格者も特別講習と個別テストをクリアすれば仮免許を発行されるチャンスがあると説明があった。よっぽど1次選考を突破した実力者を大事にしたいらしい。これもオールマイト引退の影響なのかもな。

 

 

 

 

試験は終わり、俺たちは仮免許証を手に入れた。

 

緑谷は写真を撮りまくっている。轟と夜嵐は険悪さのない会話をしている。相澤先生とMs.ジョークは合同練習の相談をしていた。

 

緑谷が士傑に質問を投げかけていたが、話を聞いているとあのケミィという生徒は調子が悪いと先に帰ってしまったそうだ。ここ3日ぐらい様子が変だったというが、いったい何だったんだろう彼女は?結局あれから絡んで来なかったし………………

 

 

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