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アンケートの結果は死穢八斎會殴り込み参加になりそうです。
なので……
寮へ戻り、部屋着に着替える。大きめの紙袋を抱えて共有スペースへ戻ると、何人かソファへ倒れ込んでいた。
「もう先輩とは当分戦いたくねぇ……」
切島が天井を見ながらぼやく。
「最後まで一発もまともに当たらなかったもんね〜」
芦戸も苦笑いだ。切島は24時間急所だけ硬化しておく訓練したらどうだろう。危ないか……?まぁいい、俺は障子に用がある。
「障子これ」
「ん?」
紙袋を差し出す。障子が首を傾げながら中を覗く。
「服か?」
「試作品だ」
取り出したのは濃い藍色のパーカー。ただ普通のパーカーじゃない。肩幅にはかなり余裕を持たせ、袖口は和服みたいに大きく広がっている。
「冬寒そうだし障子用に作った。腕が窮屈にならないように袖もかなり広くなってる」
「・・・着てみてもいいか」
「あぁ。感想をくれ」
障子が黙って袖へ腕を通した。何度か腕を動かしてから、小さく頷く。
「動きやすいな。・・・・ありがとう。」
「ならよかった」
障子はたぶん、喜んでくれていると思う。ならば当然、俺も嬉しい。切島が目を輝かせ上鳴も近寄ってくる。
「すげぇじゃん!」
「完全オーダーメイド!!」
「個性によっては既製品じゃ限界があるからな」
麗日が袖を触る。
「この生地気持ちいい。伸縮性あるん?」
「少しだけ。でも丈夫だし裂けても直しやすい。ファスナーを付けてもいいかもしれないな」
葉隠が障子の周りをぐるぐる回る。
「いいなぁ!私のも作って!」
「考えとく。というか葉隠はコスチュームをどうにかした方がいい。通形先輩に話聞いただろう?」
「衣替は将来服屋とかやるのか?」
「やる」
上鳴に即答する。当然だろう。
「俺は将来、自分のブランドを立ち上げる。ヒーローとしての知名度も利用してな。………あと、朝の魔法少女アニメの衣装デザインも担当する」
みんなが笑いながら盛り上がる。飯田が「素晴らしい目標だ!」と言い、切島は「絶対向いてる!」と乗ってくる。上鳴は「魔法少女だけ急に具体的だな」と笑う。
俺も真顔で「本気だ」と言い切る。
そのやり取りを少し離れた場所から耳郎が眺めていた。ソファに座り、イヤホンジャックを指先で弄びながら静かに話を聞いている。俺は特に、何も言わない。
その空気のままキッチンで青山がグラスを持ち上げる。
「みんなの夢に乾杯、と言いたいところだけれど━━━」
手が滑った。
「あっ」
赤紫色のぶどうジュースが床へ広がる。ワインを思わせる深い色がフローリングにじわっと染みる。
「ソーリー・・・」
その時ちょうど、モップを持った謹慎最終日の爆豪が廊下から戻ってくる。掃除し終えたところらしい。そして床のぶどうジュースを見て……固まった。何も言わない。その沈黙が逆に怖い。
峰田は口元を押さえ、急に背筋を伸ばくした。
「おーっほっほっほ!掃除番長爆豪さん!」
峰田が手をひらひら振る。
「謹慎中のお仕事が増えましてよ、おーっほっほ!さぁさぁ、お掃除のお時間ですわよ!」
「そのキャラ何!」
「全然似合ってねぇ!」
爆豪はため息一つ吐くと、もう一度床へ視線を落とした。
「おいブドウ」
「ん?」
「仲間が散らばってんぞ」
「ぶはっ!」
上鳴が吹き出した。芦戸も腹を抱えて笑い始める。
「いやいやいや!ぶどうジュースだから!俺じゃねぇよ!」
「回収してこいや」
「だから俺じゃねぇって!」
麗日まで笑いを堪えきれず口元を押さえた。飯田も肩を震わせながら咳払いをする。
「こ、こら諸君・・・!」
全然止められていない。俺は床へ広がる色を見ていた。
「色は近いな」
「衣替まで乗るな!」
「品種は違うけど」
「そこじゃねぇ!」
さらに笑いが広がる。爆豪は呆れたように鼻を鳴らし、キッチンペーパーを引き抜いた。青山が慌てて雑巾へ手を伸ばす。
「ボクが拭くよ!」
「待て擦んな。押さえて吸わせろ」
爆豪は床へキッチンペーパーを何枚も重ね、その上から手のひらで静かに押さえた。赤紫色がじわりと紙へ移っていく。
「最初に色を吸わせるンだよ。ここで擦ると色素が広がる」
「な、なるほど・・・!」
「水は最後だ。最初から濡らすと余計面倒になる」
「爆豪相変わらず何でもできるなぁー」
「当たり前ェだ」
切島が苦笑する。爆豪は一切手を止めない。必要な分だけ水を含ませた布で床を拭き、乾いた布でもう一度仕上げる。シミ一つ残っていない。
「ビューティフル!」
「これくらい普通だ」
峰田がまた肩を揺らし始めた。
「おーっほっほっほ!さすがですわ掃除番長爆豪さん!見事なお手並みでしたわ!」
切島が「やめとけって」と言うが、本人も笑っていた。
「ご苦労さま、おーっほっほ!」
爆豪は静かに峰田を見る。そしてゆっくり歩き出した。
「ここにまだ」
「汚ぇブドウが」
「残ってんなァ・・・」
一歩進む事に峰田の顔が青ざめていく。
「え、ちょ、待っ」
「掃除してやるよ」
「いやその掃除違っ━━」
「死ねェ!!」
「ぎゃああああ!」
峰田が全力疾走で逃げ出し爆豪が一直線に追う。ソファを飛び越え、テーブルを回り込み、峰田は涙目で叫んだ。
「誰か止めろぉぉぉ!」
峰田を追い回す爆豪の怒号が廊下の向こうへ消えていく。
「待てブドウ!」
「だから俺ブドウじゃねぇぇぇ!」
ドタドタと足音が遠ざかり、ラウンジには笑い声だけが残った。俺は青山のズボンの裾を指差す。
「青山、そのシミなら落ちる」
「本当かい?」
「まず水だけで擦るな。台所用の中性洗剤を少し付けて、シミの裏側からぬるま湯を流す。押し出すように洗えば色は残りにくい」
「なるほど・・・!ありがとう、衣替くん!」
その時、隣で切島が感心したように笑う。
「さすがだなぁ。服のことになると先生みてぇだ」
「そういえば切島」
「んぁ?」
「部屋の隅の汗だくのトレーニングウェア、まだ置きっぱなしだろ」
「あ・・・」
図星か。
「洗え」
「いや、今日洗うつもりだったんだ!」
「昨日も聞いた」
「うっ・・・」
「雑菌が増える。臭いも取れなくなる。生地も傷む。あと部屋も臭くなる」
「悪ぃ悪ぃ!部屋帰ったら絶対洗うから!絶対!」
「信用してない」
「ひでぇ!」
芦戸が肩を震わせた。
「お母さんみたい!」
切島は苦笑しながら立ち上がる。
「分かった分かった! 今日こそ洗う!」
「忘れたら?」
「・・・明日洗う」
「だから信用してない」
「ぐっ・・・」
みんな切島に呆れたり笑ったりしている。そんな賑やかな中、
「待てブドウ!」
「ぎゃああああ!」
という爆豪と峰田の追いかけっこがまだ続いていた。