着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:運命決定

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ベストジーニストのサイドキックたち見た目以外全然情報がない……




インターン初日 お前も魔法少女にならないか?

 

 

インターン制度の許可が正式に発表された。ホームルームで相澤先生が教壇へ立つ。

 

「条件付きだ。本来なら一年のインターンは見送りになる予定だった」

 

ヴィランの活動は活発になっている。一年生を現場へ出すには危険だという意見も多かったらしい。

 

「それでも現場でしか学べないことはある。受け入れ実績があり、教育体制が整った事務所のみ受け入れを認める」

 

許可が出たならば俺の候補は最初から一つしかない。

 

放課後スマホを取り出す。数回の呼び出し音の後、落ち着いた声が聞こえた。

 

『私だ』

 

「衣替です」

 

『久しいね』

 

「インターンの件で連絡しました」

 

『受け入れの希望かな』

 

「はい。もう一度お世話になりたいです」

 

『構わない。ただし今回は職場体験ではない。半人前のプロ候補として接するつもりだ』

 

「望むところです」

 

『では、東京で待っている』

 

こうしてインターン先はベストジーニスト事務所に決まった。授業では学べないことがまた学べるはずだ。期待と少しの不安を胸に、俺は気を引きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

インターン初日の朝は、まだ空気が少し冷たかった。始発に近い電車へ乗り込み、静岡から東京へ向かう。車窓の景色が少しずつ都会へ変わっていくのを眺めながら、今日一日の流れを頭の中で整理していた。

 

職場体験とは違う。今回は仮免を取得した上でのインターンだ。プロ候補として評価される。その言葉を思い出すだけで自然と背筋が伸びる。

 

東京駅へ到着すると、人の多さは朝から変わらなかった。人の流れに合わせて歩き、高層ビル街を抜ける。やがて見慣れたガラス張りのビルが見えてきた。

 

ベストジーニスト事務所。

 

受付で名前を告げると、そのまま案内される。エレベーターの扉が開くと、以前と変わらない姿のベストジーニストが立っていた。

 

「来たかね」

 

「お久しぶりです」

 

ジーニストさんは俺の全身へ視線を向ける。頭から靴まで一度見渡したあと、小さく頷いた。

 

「以前より整っている」

 

「ありがとうございます」

 

「ただし左袖に小さな皺がある」

 

思わず袖を見るが、本当に小さな皺だった。

 

「身だしなみは他人へ見せるためだけではない。己を律する習慣でもある」

 

「はい・・・」

 

インターン初日の最初の指導は、やはり服装だった。ジーニストさんはそのまま歩き出す。

 

「今日は事務所を一通り案内したあと巡回へ出る。付いて来たまえ」

 

事務所の中は職場体験の頃より忙しく感じた。これもオールマイト引退によるヴィラン活性化の影響だろうか。電話が鳴れば誰かがすぐ応答し、依頼書類は迷うことなく担当者の手へ渡る。慌ただしいはずなのに騒がしさはない。全員が自分の役割を理解して動いている。

 

廊下ですれ違ったサイドキックたちへジーニストさんが俺を紹介すると、全員が短く挨拶だけして仕事へ戻っていった。

 

「久しぶり」「よろしく」「困ったことがあれば遠慮なく」

 

それだけだった。仕事中に余計な雑談はしないということか。それもこの事務所らしかった。

 

管理室へ案内されると、コスチュームが整然と並んでいた。俺は思わずその中の一着を手に取る。

 

軽い。裏返してみると縫製は均一で、負荷が掛かる部分だけ補強の方法が変えられていた。

 

「以前より見るようになったね」

 

「勉強しました。服屋へ行っても最初に縫い方を見ます」

 

ジーニストさんは静かに頷いた。

 

「服は見た目だけで評価するものではない。着る者が安全に動けること、長く使えること、そして着る者の心を支えること。それら全てが服の役目だ」

 

俺は、その言葉を頭の中へ刻み込む。ただ作るだけでは足りない。着る人間まで考えなければ、本当に良い服は作れない。

 

一通り案内が終わると、二人で巡回へ出た。東京の街は昼前になってさらに賑わっている。交差点を渡りながらジーニストさんが言う。

 

「街を見る時は建物より人を見たまえ」

 

「人ですか」

 

「困っている者はいないか。異変はないか。それを探すことがヒーローの日常だ」

 

「はい」

 

周囲を見渡す。買い物帰りの主婦、観光客、子どもを連れた家族。事件など起きそうもないごく普通の日常だ。

 

 

その時……少し離れた歩道からやけに大きな声が聞こえた。

 

「あ!もしかして・・・!」

 

振り向くと、こちらへ全力で駆け寄ってくる三人組がいたのだが……全員、身長は百八十センチを超えていた。腕も脚も丸太みたいに太いし首も肩も筋肉で盛り上がっている。

 

更に驚くことにその三人が揃って着ているのは、ピンクや水色を基調にしたフリルだらけの魔法少女衣装だった。

 

周囲の通行人も思わず足を止める。仕方ないことだと思う。三人は俺の目の前まで来ると、一斉に頭を下げた。

 

「衣替さんですよね!」

 

「体育祭見ました!」

 

「ファンなんです!」

 

俺は思わずジーニストさんを見る。ジーニストさんは表情一つ変えず、その様子を見守っていた。

 

三人とも目を輝かせていた。近くで見るとさらに迫力がある。胸元には大きなリボン、スカートは何段ものフリル、ニーソックスにロングブーツ。

 

どこからどう見ても王道の魔法少女衣装なのに、それを着ているのは全員が鍛え上げられた筋骨隆々の大男。

 

「着替えの個性、最高でした!」

 

「応援してます!」

 

一人が興奮したままバッグを開ける。中から取り出したのは色紙。

 

「サインください!お願いします!」

 

もう一人はスマホを構える。

 

「写真も一枚だけ!」

 

突然のことに俺は少し戸惑う。職場体験では経験しなかったことだ。

 

「俺でいいんですか?」

 

「もちろんです!」

 

「むしろ衣替さんじゃないと駄目ですよ!」

 

三人とも勢いがすごい。ジーニストさんは隣で静かに腕を組んでいた。

 

「ドレスコード」

 

「はい」

 

「彼らは一般市民だ。可能な範囲で応じるといい。ただし、周囲への配慮は忘れないように」

 

「分かりました」

 

俺は色紙を受け取り、名前を書く。

 

「うおぉ!ありがとうございます!」

 

三人は子どものようにはしゃいでいた。その様子に通行人も何事かと集まり始めてきてしまった。

 

「あれ雄英の子じゃない?」

「体育祭で見た!」

「職場体験でも来てた子だ」

 

人が増え始めたので、一人が遠慮がちに聞いてきた。

 

「あのぉ・・・」

 

「どうしました?」

 

「もしよければ、一緒に魔法少女姿で写真撮ってもらえませんか?」

 

もちろん俺に断る理由はない。

 

「いいですよ」

 

個性を発動する。コスチュームが一瞬で消え、代わりに豪華な魔法少女衣装へ変わる。

 

白を基調に金の装飾

何枚ものフリルが重なったスカート

大きなリボン

ロングブーツ

肩からは純白のマントが揺れる

 

「うおおおおっ!」

 

「本物だぁ!」

 

「やっぱりセンスいい!」

 

三人のテンションが一気に上がる。

 

「この袖!」

 

「この刺繍!」

 

「この配色!」

 

「最高です!」

 

服好き同士なのか、見る場所が少し普通と違う。

 

「ありがとうございます」

 

俺も少し照れながら答える。四人で並び、スマホへ向かって笑顔を作る。

 

パシャッ

 

撮影が終わると、周囲からも小さな拍手が起きた。

 

「ありがとうございます!」

 

「一生の思い出です!」

 

その時、道の奥から怒鳴り声が聞こえる。

 

「どけぇぇぇ!」

 

人混みが左右へ割れる。一人の男が全力で走ってきた。後ろから警察官が追い掛けている。

 

「止まれ!」

 

「逃げるな!」

 

男は角を曲がった瞬間、目の前の光景を見て急停止した。

 

「・・・」

 

筋骨隆々の魔法少女が3人。その中央には、体育祭でも見ただろう雄英高校の俺。男は何度か瞬きを繰り返す。

 

「・・・なんだこれ」

 

三人組は男へ気付く。

 

「あっ!」

 

「こんにちは!」

 

「君も魔法少女好き?」

 

男は一歩下がる。俺は状況がよく分からないまま男を見る。

 

「ヴィラン?逃げてるんですか?」

 

男は何も答えない。俺は悪気なく笑った。

 

「せっかくだし・・・お前も魔法少女にならないか?」

 

男は俺を見て、三人組を見る。

 

「・・・・・・・・嫌です」

 

「そうか。」

 

少し残念。三人組が一斉に口を開く。

 

「えぇー!」

 

「絶対似合うのに!」

 

「人生変わるぞ!」

 

「一回着れば世界が広がる!」

 

男は後ずさる……一歩……また一歩……。ちょうどその背中へ警察官が追い付いた。

 

「確保!」

 

肩を掴まれても男は抵抗しなかった。

 

「暴れないのか?」

 

警察官が不思議そうに聞くが男は力なく首を振った。

 

「もういいです・・・魔法少女にされるくらいなら捕まります・・・」

 

手錠が掛けられる。三人組は最後まで笑顔だった。

 

「いつでも待ってるからな!」

 

「諦めるな!」

 

「魔法少女は心だ!」

 

 

パトカーへ乗せられていく男は、遠い目で小さく呟いた。

 

「東京って怖ぇ・・・」

 

周囲では事情を知らない通行人たちが笑いをこらえている。その様子を見届けたベストジーニストは髪を静かに手で整え、隣の俺へ視線を向けた。

 

「ドレスコード」

 

「はい」

 

「君は・・・実に個性的な形で事件を終わらせるね」

 

「俺、今回何かしましたかね?」

 

「いや、今回は本当に何もしていない。だからこそこういう結果になったのだろう」

 

ジーニストさんは少し笑っていた。周囲にいた警察官も状況を把握すると苦笑いしていた。

 

「・・・こんな確保のされ方もあるんですね」

 

「逃走犯が自分から両手を出すなんて初めて見ましたよ」

 

手錠を掛けられたヴィランはうなだれたまま首を振る。

 

「だって無理だろ・・・なんだよあの集団・・・こえぇよ・・・・・」

 

パトカーへ乗せられる直前、三人組は最後まで笑顔で手を振っていた。

 

「またイベントで会おうな!」

 

「いつでも待ってるぞ!」

 

「魔法少女は仲間を歓迎する!」

 

ヴィランは最後までこっちを向かなかった。

 

「もう一生会いたくねぇ・・・」

 

そのままパトカーは走り去っていった。騒ぎが落ち着くと、野次馬たちから自然と拍手が起こる。

 

「衣替さん!」

 

「写真ありがとうございました!」

 

「サイン家宝にします!」

 

三人組は何度も頭を下げる。

 

「今日は本当にありがとうございました!」

 

「体育祭からずっと応援してます!」

 

「これからも魔法少女衣装楽しみにしてます!」

 

「ありがとうございます」

 

俺も頭を下げる。素直に嬉しいので。

 

「気を付けて帰ってくださいね」

 

「はい!」

 

三人は満足そうに去っていった。少し離れたところで、スマホを構えていた女性が興奮気味に友人へ話している。

 

「全部撮っちゃった!」

「今の絶対バズるよ!」

「ニュースにもなるんじゃない?」

 

「・・・ジーニストさん」

 

「何かね」

 

「もしかして撮られてました?」

 

「かなり撮られていたね」

 

「ですよね」

 

「だが今回は一般市民から求められた交流であり、職務の妨げにもなっていない。何も問題はない」

 

豪華な魔法少女衣装のまま人前へ出ていたのだから目立たないわけがないか。俺は個性を解除してコスチュームへ戻る。

 

「私はあの衣装もよく似合っていたと思うが」

 

「ありがとうございます。ただ仕事中はこのくらいで十分ですね」

 

その返事を聞き、ジーニストさんは満足そうに頷いた。

 

「オンとオフを切り替えられるのは良いことだ。服もまた、着る場面を選ぶ。今日の君は、その判断を誤らなかった」

 

 

 

その後は予定通り巡回を続けた。道案内をしたり、落とし物を交番へ届けたり、小さな困り事を手伝ったりと、大きな事件は起きなかった。

 

夕方、事務所へ戻る。ジーニストさんは応接室へ入ると椅子へ腰掛け、俺にも座るよう促した。

 

「初日の総評だ」

 

自然と姿勢が伸びる。

 

「君は服を見る目も、周囲を見る目も以前より育っていた。一般市民への対応も落ち着いていた。だが・・・」

 

そこで一度言葉を切る。少し怖い。

 

「予想外の出来事が起きても動じない胆力は評価する。しかし今日は偶然が味方した面も大きい。それを実力と勘違いしてはいけない」

 

「はい」

 

「次回からはさらに厳しく見る。覚悟しておきたまえ」

 

「よろしくお願いします」

 

ジーニストさんは静かに頷いた。かっこいい。

 

「今日はここまでだ。お疲れさま、ドレスコード」

 

「ありがとうございました」

 

 

 

事務所を出る頃には、東京の空は夕焼けに染まっていた。長い一日だったな……。そう思いながら駅へ向かって歩いていると、スマホが震える。

 

上鳴『おい衣替!!』

『お前ニュースになってるぞ!!!!』

 

というメッセージと一緒に、ネットニュースの記事のスクリーンショットが送られてきた。見出しには大きくこう書かれていた。

 

『雄英高校インターン生と"筋肉魔法少女"が逃走犯を取り囲む ヴィランまさかの自主降伏』

 

記事の写真には、笑顔でファンと記念撮影をする豪華な魔法少女姿の俺、その隣でいつも通り表情を崩さないベストジーニスト、そして少し離れた場所で両手を上げて警察へ確保されるヴィランまで、きれいに一枚へ収まっていた。

 

俺は思わず空を見上げる。

 

「初のネットニュースがこれっていい事なのかな・・・・・」

 

夕焼けは何も答えてくれなかった。

 

 




【速報】ベストジーニスト事務所付近で逃走ヴィラン確保 なお理由が意味不明【動画あり】


1 名無しのヒーロー好き
動画見た奴いる?
何が起きたんだこれ

2 名無しの一般人
リアルタイムでいた
腹痛い

3 名無しのヒーロー好き
ジーニスト出動までは分かる
その後が分からん

4 名無しの一般人
説明すると余計分からなくなる

5 名無しのヒーロー好き
説明しろw

6 名無しの一般人
逃走ヴィラン

角曲がる

筋肉ムキムキ魔法少女3人

体育祭の衣替くん発見

衣替くんも魔法少女

ヴィラン降伏

7 名無しのヒーロー好き
???????

8 名無しの一般人
全部本当

9 名無しのヒーロー好き
フェイクニュースだろ

10 名無しの一般人
動画あるぞ

11 名無しの一般人
(動画)

12 名無しのヒーロー好き
待って
本当にムキムキで草

13 名無しの一般人
しかも衣装クオリティ高い

14 名無しのヒーロー好き
衣替の衣装だけガチすぎる

15 名無しのコスプレ好き
あれ自作じゃね?
刺繍やばい

16 名無しのヒーロー好き
本人製作っぽい

17 名無しの一般人
ムキムキ3人組が完全にファンだった

18 名無しの一般人
「サインお願いします!」
「写真お願いします!」
ってめちゃくちゃ礼儀正しかった

19 名無しのヒーロー好き
ジーニスト横でずっと待ってるの笑う

20 名無しの一般人
ちゃんと一般市民対応だから止めないんだよな

21 名無しのヒーロー好き
でヴィラン来る

22 名無しの一般人
そこからが本番

23 名無しのヒーロー好き
動画見た
ヴィラン固まってるwww

24 名無しの一般人
あの「……は?」って顔好き

25 名無しのヒーロー好き
状況理解できてない顔だった

26 名無しの一般人
衣替くん「お前も魔法少女にならないか?」

27 名無しのヒーロー好き
wwwwwwwwww

28 名無しの一般人
ヴィラン「嫌です」
即答

29 名無しのヒーロー好き
そこだけ会話成立してるの草

30 名無しの一般人
終わらないぞ

31 名無しの一般人
ムキムキ魔法少女3人
「絶対似合う!」
「世界が広がる!」
「一回着てみよう!」

32 名無しのヒーロー好き
囲まれてて草

33 名無しの一般人
ヴィラン一歩ずつ下がっていく
後ろから警察

34 名無しの一般人
「もう捕まります」
で自主降伏

35 名無しのヒーロー好き
今年一番意味分からん逮捕

36 名無しの警察関係者(自称)
現場いた
笑っちゃいけないから必死だった

37 名無しのヒーロー好き
ジーニスト何してたの?

38 名無しの一般人
ずっと見守ってた

39 名無しの一般人
最後だけ
「ドレスコード」
って呼んでた
コードネームかっこいい

40 名無しのヒーロー好き
ドレスコードって衣替のヒーロー名か
初めて知った

41 名無しの一般人
衣替本人は終始真面目

42 名無しのヒーロー好き
そこが一番怖い

43 名無しの一般人
魔法少女衣装も「写真ならせっかくなので」って感じだった

44 名無しのヒーロー好き
善意100%

45 名無しの一般人
だからジワる

46 名無しのヒーロー好き
ヴィラン可哀想になってきた

47 名無しの一般人
最後パトカー乗る時
「東京って怖ぇ……」
って言ってた

48 名無しのヒーロー好き
それはそう

49 名無しの一般人
今日一番の被害者ヴィラン説

50 名無しのヒーロー好き
体育祭の時から思ってたけど
衣替くんって真面目にやってるのに結果だけギャグになるタイプだな

51 名無しの一般人
ベストジーニスト事務所インターン初日
・ファンサする
・魔法少女になる
・ヴィランを精神的に追い詰める
・ニュースになる
情報量多すぎる

52 名無しのヒーロー好き
来週もニュースになりそうで楽しみなんだが

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