着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:うめけ

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体育祭でライバル登場

 

 

USJ事件からしばらく経った。世間はまだ騒いでいるらしいが俺の日常はあまり変わらない。朝起きて学校へ行き服を見る。帰宅して服を見る。休日はもっと服を見る。一般的な学生の日常だ。

 

そんなある日、教室へ入ってきた相澤先生が体育祭をやると言った。教室は一気に騒がしくなるがそれも仕方ない。

 

確かに体育祭は大イベントだ。テレビ中継もあるしプロヒーローも見ているので将来の進路にも関わるらしい。周囲を見ると上鳴と瀬呂が騒いでいる。峰田は多分女子の体操服について考えている。そして爆豪は俺が優勝すると宣言していた。まだ何も始まっていないのに優勝していたので凄い自信だと思う。俺は服のことを考えていた。

 

瀬呂がこっちを向いて「衣替はどうすんだ」と聞かれたので少し考える。体育祭は全国放送である。つまり全国へ服を見せる機会とも言えるな。

 

「服を頑張る」

 

全員に否定された。体育祭なのだから服も大事だろう?だが耳郎は頭を抱え、上鳴は嫌な顔をし、瀬呂は遠い目をしていた。緑谷なんてお願いだから変なことしないでねと言い出す始末。なぜ信用がないのだろう?少しだけ心当たりはあったがUSJで死柄木を魔法少女にした件かもしれない。だがあれは必要な判断だったはずだ。少なくとも面白かったし。

 

放課後になると俺はまっすぐ帰宅した。なんか他科の生徒が集まっていた気がするけど俺は服のことしか考えてなかった。

 

体育祭の準備はヒーロー科の生徒らしい準備ではなく服の準備だ。家の倉庫へ入ると安心するな。広い、落ち着く、服がたくさんある、素晴らしい空間だ。体育祭は全国放送、つまり全国の人間が見る。プロヒーローも見る。未来の敵も見るかもしれない。だからこそ妥協はできない。

 

俺は服の手入れをしながら真剣に考える。体育祭に相応しい服とは何か。走りやすさも重要だ。動きやすさも重要だ。だがインパクトこそ必要だと思う。悩ましい……

 

気付けば二時間くらい経っており、その頃にはクラスのグループチャットが大変なことになっていた。

 

『衣替絶対変なことするだろ』

 

『するなよ』

 

『本当にするなよ』

 

『心配ですわ』

 

『自重したまえ!』

 

『お願いだから加減してね』

 

『殺すぞ布切れ野郎』

 

俺はスマホを置いて倉庫を見回す。なぜみんなそんなに警戒するのだろう?少し考えてみたが分からない。ヴィランを着替えさせただけだろうに。

 

 

 

 

 

体育祭当日

 

会場へ足を踏み入れた瞬間、歓声が聞こえた。観客席が埋まっている。テレビカメラもあるし確かに全国放送らしい。周囲を見るとみんな少し緊張していた。緑谷は硬い顔をしていて麗日も落ち着かない様子だ。轟は相変わらず無表情だし爆豪は相変わらず機嫌が悪い。うん、いつも通りだな。

 

人が多いということは服も多いつまり素晴らしい。

 

「衣替」

 

耳郎か。

 

「何」

 

「今服見てたよね」

 

鋭い。

 

そんなことをしているうちに開会式が始まる。各クラスが並び、観客席から歓声が飛ぶ。全国から注目される雄英体育祭、その開会宣言の場で爆豪が前へ出た。

 

そして自分が一位になると宣言した。まだ競技が始まっていないのに全員を煽っている。普通は出来ないので才能だと思う。俺も敬意を評して指を鳴らそうとしたら周りのクラスメイトに全力で止められた。手が痛い。

 

 

 

 

 

いよいよ競技開始だ。モニターに表示された最初の種目を見た瞬間、会場が沸く。

 

障害物競走か、なるほど走る競技らしい。走っている最中も服は変えられるな、と考えていたら後ろから耳郎の声が聞こえた気がした。多分まだ何もしていないのに警戒されている。

 

競技開始の合図と同時に全員が飛び出し俺も走る。障害物競走なので走らないと始まらない。だが開始数秒自分の服装がお世辞にもオシャレとは言えないジャージだということに気づくと俺は指を鳴らした。

 

軽量スポーツウェアとランニングシューズ。通気性良好でストレッチ素材だからかなり走りやすい。「ズルくね!?」と横の上鳴に言われたが「個性です」と答えておいた。

 

目の前の集団が詰まった。第一障害の巨大なロボットが道を塞いでいる。入試でも見たやつだ。

 

俺はロボットを見上げる。大きいな…そして服は着ていないな…残念だ……

 

そんなことを考えながら走っていると横から声が飛んできた。

 

「おやおやA組の問題児じゃないか」

 

知らない声だし知らない顔だ。金髪で笑顔が胡散臭いし多分初対面なはずなんだが。

 

「誰?」

 

「誰とは失礼だね」

 

傷付いたような顔をしているが知らないので仕方ないだろう。すると近くにいた瀬呂が「物間だ!」と教えてくれた。なるほど名前だけ聞いたことはある。

 

「A組はいいねぇ。ヴィランに襲撃されて全国的に有名になれて」

 

「大変だった」

 

「それで有名になれたんだから結果オーライじゃないか」

 

物間はさらに何か言おうとしているが俺は少し気になっていた。そう、服である。体育祭用ジャージは地味だ…もう少し華やかでもいいと思うんだが…

 

パチン

 

物間のジャージが消える

 

燕尾服

シルクハット

白手袋

 

完全に司会者

 

物間も周囲も止まる。俺は似合っていたから少し満足。

 

「……は?」

 

初対面なのに聞き慣れた反応だ。もはや人類共通なのかもしれないな。

 

「何これ」

 

物間が自分を見る。もう一度見る。さらに見る。

 

「何これ!?」

 

その隙に他の生徒達がどんどん追い抜いていく。

 

「じゃあ。」

 

「待て待て待て待て!」

 

逃げようとしたら物間が元気に追いかけてきた。数秒後にはロボットの足に引っ掛かって転んでが。シルクハットが飛んでいく様は少し面白かったぞ。

 

その後も走る。第二障害を越えてもう第三障害と割と順調だったが

 

「待ちたまえ!」

 

物間が追い付いてきたらしい。しつこいな。

 

「戻せ!」

 

「似合ってる」

 

「そういう問題じゃない!」

 

なるほどまだ地味だと?欲しがりさんだな。仕方ないので指を鳴らした。

 

パチン

 

代わりに王子様衣装にしてあげた。白馬に乗ってそうなやつ。

 

マント付き

キラキラ付き

無駄に豪華

 

『キャーーー!!!』

『あの王子様だれ!?!?』

 

歓声は高まり物間は固まり、俺は先へ進む。後ろから絶叫が聞こえた気がしたが無視だ。

 

トップ争いには轟、爆豪。俺もそこそこに前の方だし頑張らなくては。服を変えているだけな割には健闘していると思う。

 

ふと後ろを見ると物間がまだいた。王子様だった。ちゃんと走っていて根性あるな。少しだけ尊敬してあげよう。

 

「衣替装ぉぉぉぉ!!」

 

と叫びながら追いかけてきたのでやっぱり気のせいだ。体育祭はまだ始まったばかりなのに俺はもう疲れたぞ。

 

 

しつこく物間が追いかけてくる。障害物競走なのに俺しか見ていない気がするのはヒーロー科としてどうなんだろうと思ったが、多分俺も人のことは言えない。さっきから服のことしか考えていないし。

 

「戻せ!」

 

「嫌」

 

「なんで!?」

 

似合っているからだが?

 

「戻せ!」

 

「嫌」

 

「戻せ!」

 

「似合う」

 

「そういう問題じゃない!」

 

おや?服のことばかり考えていて気にしていなかったが結構順位が抜かれてる気がする。

 

「まずいな」

 

「何がだ!」

 

さっきまで割と前の方にいたはず

 

「順位落ちてる」

 

「当たり前だろ!」

 

「どうしようか」

 

「走れ!」

 

走るしかなさそうだ。すると物間が急に静かになった。

 

「なるほど」

 

「何?」

 

「君がそういうつもりなら」

 

物間何か企んでいる顔で笑ったその瞬間、物間が俺へ飛び掛かってきた。

 

「なに!」

 

「道連れだ!!」

 

意味が分からない!だが勢いだけは凄かった。俺と物間はそのまま地面を転がる。さらに転がり続け順位も転がる。

 

まずいどんどん落ちていく。

 

「何してるんだ!」

 

「君への嫌がらせだ!!!」

 

正直だったが好感は持てない。仕方なく俺は指を鳴らす。

 

パチン

 

王子様衣装が消え物間が少し嬉しそうな顔をする。その顔はまだ早いぞ。

 

次の瞬間王子様は姫になった

 

豪華なドレス

ティアラ

ロングスカート

 

完全装備だ

 

物間が止まる。近くを走っていた生徒達まで止まる。

 

「……」

 

『カワイイ……』

『あれほんとにさっきの王子?』

 

「なんでだぁぁぁぁぁ!!」

 

やはり王子には姫が必要。バランスが大事だ、満足である。

 

やっと落ち着ける。物間と遊びすぎたな……このままでは予選落ちするかもしれない。さすがにそれは困る。体育祭はまだ服を披露していないからだ。

 

本番はここからなのに。

 

「衣替君何やってるの!?」

 

遠くから緑谷の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

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