着替えろヴィラン!!魔法少女なんてどうだ?   作:運命決定

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尾白不在なので周りの席順が

障子 上鳴 ︎︎青山
耳郎 衣替 芦戸
瀬呂 切島 ︎︎蛙水

となっておりかなりギャグ要因に囲まれてる

日常です


今の俺は歩く更衣室だ

 

 

 

 

ライブ衣装作りも終盤に差し掛かり、俺の部屋は相変わらず布と型紙で足の踏み場がない。時計を見るともう午前三時二十八分。

 

「・・・あと袖一本・・・いや二本・・・」

 

そう思って作業を続けた結果、ベッドへ倒れ込んだのは四時近かった。目を閉じてすぐ目覚ましが鳴る感覚だ。二時間半で起きる。今日は寝られた方だ。

 

 

 

 

 

 

教室へ着く。席に座ろうとしてゴン、と机に膝をぶつけた。

 

「いてっ」

 

「朝から何やってんだよ」

 

前の席の上鳴が振り返る。

 

「眠い・・・」

 

「知ってるよ。顔が昨日より死んでるぞ」

 

左右から芦戸と耳郎も覗き込んできた。

 

「ほんとだ!クマやば!」

 

「昨日何時に寝たんだよ」

 

「四時」

 

「馬鹿じゃん」

 

「馬鹿じゃない」

 

後ろから切島が椅子を引いた。

 

「衣替、今日休めよ」

 

「無理。衣装ある」

 

左後ろの瀬呂まで会話に混ざる。

 

「文化祭前に倒れたら元も子もねぇぞ」

 

「倒れない」

 

そう返事をした瞬間だった。コクッ

 

「寝た!」

 

「寝てない」

 

「今寝たぞ!」

 

俺は否定しようとして━━━

 

パッ

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・・え?」

 

上鳴が魔法少女になった。しかも爆豪専用として作った衣装だった。

 

「WOW☆」

 

「・・・・・・?」

 

「何だこれ」

 

三秒後、瀬呂が耐えきれなかった。

 

「ぶはっ!胸にかっちゃんって書いてある!」

 

芦戸は机を叩いて笑っている。上鳴が慌てて俺を見る。

 

「衣替ぇ!」

 

「違う」

 

俺は自分の右手を見た。指は鳴らしていない。

 

「耳郎、俺鳴らしてないよな」

 

「うん、見てた。鳴らしてない」

 

「じゃあ何で!!」

 

「俺が聞きたい」

 

「戻せ!!」

 

「あ、うん」

 

パチン

 

制服へ戻る。

 

「はぁ・・・心臓に悪ぃ」

 

瀬呂はまだ笑っていた。

 

「あれ文化祭で爆豪に着せようぜ」

 

「着ねェわ!」

 

そのやり取りで教室に笑いが戻る。俺も少し安心した。

 

「おい、席に着け」

 

相澤先生が教室へ入ってくる。ホームルームが始まり、一時間目も何とか終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間

 

後ろから切島が肩を叩く。

 

「衣替、今日は部屋帰ってすぐ寝ろよ」

 

「衣装ある」

 

「その衣装がお前を殺すぞ」

 

「縁起でもない」

 

「いやマジで!」

 

耳郎はため息を吐いた。

 

「そのうちミシン踏みながら寝そう」

 

「寝ない」

 

その時、コクッ

 

「あ」

 

また一瞬意識が落ちた。

 

パッ

 

「・・・?」

 

今度は右隣の芦戸だった。制服が一瞬で真っ黒なライダージャケットと革パン姿になる。ブーツまでごつい。

 

「え。私、めっちゃ治安悪くない?」

 

「似合うわね、三奈ちゃん」

 

「似合う!!」

 

「バイク乗ってそう!」

 

「いや待って!これ普通に格好いい!」

 

「気に入ってんじゃねぇか!」

 

俺は慌てて指を鳴らした。芦戸は制服へ戻り胸をなで下ろす。

 

「びっくりしたぁ。でも今の衣装ちょっと欲しい」

 

「作る?」

 

「今じゃない!」

 

耳郎がツッコんで教室中が笑いに包まれる。

 

「あ」

 

また眠気が来た。そして耳郎がそれを見逃さなかった。

 

「みんな衣替から三歩離れて!第二ラウンド来るよ!」

 

「逃げろぉ!」

 

「俺を爆弾みたいに言うな」

 

「逃げろぉぉ!」

 

瀬呂が大げさに叫ぶと教室中が一斉に椅子をガガガガッと引いた。俺の周りだけ見事に空く。

 

「傷付くんだが」

 

「いや傷付くのはこっちだから」

 

「今日はもう信用できねぇ」

 

「信用って何?」

 

「服。」

 

「瀬呂・・・服は全てにおいて信用足る」

 

「うるさ」

 

「俺は今日一回魔法少女になってる」

 

「私ライダーだった。格好良かったけど」

 

「気に入ってるじゃん」

 

「ちょっとだけ!」

 

「ちょっとなんだ」

 

「まだ二時間目だぞ・・・」

 

「濃すぎるんだよ今日・・・」

 

瀬呂が机を指差した。

 

「はいはい。じゃあ衣替が眠そうになったら全員逃げる」

 

「眠くなかったら?」

 

「近付く。名付けて衣替警戒レベル」

 

上鳴が黒板へ向かい勝手に端へ書いた。

 

衣替警戒レベル

(^_^) 安全

( ⌯₄⌯) 注意

( ˇωˇ )避難

 

「見える化だ!」

 

「今どれ?」

 

「半目じゃね?」

 

「レベル注意!」

 

三時間目開始まであと五分。そんな中またぼんやりと俺の視界が少し揺れる。視界の端で耳郎が俺を見ている。

 

「あ。レベル上がった」

 

「本当だ。死んだ魚みてぇな目してる」

 

「失礼だな」

 

「切島避難準備だ!」

 

「お、おう」

 

切島が机を少し後ろへ引く。周りの奴らも机ごとちょっと離れた。

 

「災害扱いするな」

 

「実際災害じゃん」

 

ガラッ

 

「Hey!俺の英語の時間だぜェーーー!!」

 

マイク先生が入ってきた。「起立!」と飯田が号令を掛け全員立つ。俺も……立ったはずだった。

 

フラッ

 

耳郎が俺の腕を掴む。

 

「立ちながら寝るなよ」

 

「寝ない」

 

そう言った瞬間。

 

パッ

 

「・・・えっと」

 

そこには可視化状態の葉隠が立っていた。制服姿ではなく頭のてっぺんからつま先まで着ぐるみサイズの巨大なペンギン姿で。歩くたびに、よちよち。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「どうしたァ葉隠ガール!?」

 

「ギャハハハハ!」

 

「何でペンギン!」

 

「可愛い!」

 

「可愛いけど何で!」

 

「歩き方までペンギンじゃん!」

 

葉隠は半泣きで羽をバタバタさせる。

 

「歩きづらい!暑い!衣替くん!!!」

 

「ごめん」

 

「違うじゃなくてごめんになってる!」

 

「俺も分かんない」

 

「戻してぇ!」

 

パチン

 

制服へ戻ると葉隠は机へ突っ伏した。教室中が笑い続ける中、耳郎だけは俺を見て、小さくため息をついた。

 

「・・・次、誰かな」

 

 

 

 

マイク先生が教卓を叩いた。

 

「あー、授業始めるぞリスナー」

 

「「「はい」」」

 

何とか全員席へ着く。俺も深呼吸した。今日は終わってくれ。

 

 

 

 

十分後

 

眠い……シャーペンを持つ手が止まる。

 

コクッ

 

耳郎が横目で俺を見る。

 

「衣替寝るな」

 

「・・・」

 

肩をつついてくる。

 

「・・・起きてる」

 

「絶対寝てたろ」

 

前では上鳴が黒板ではなく俺を見ている。

 

「レベル避難」

 

『( ˇωˇ )』が描かれたノートを見せてくる。

 

「Heyリスナー!授業中だぞ」

 

「命懸けなんですよ俺らは!」

 

 

その瞬間ガラッと教室のドアが開いた。相澤先生がプリントを届けに来たらしい。一歩教室へ入ると……

 

「悪いなマイク」

 

パッ

 

「「「・・・・・」」」

 

教室が凍る。相澤先生が、上下ともふわふわの水色パジャマになってしまった。胸には大きく『おやすみ』。その文字の横で眠そうな羊が一匹欠伸をしている。

 

「・・・w」

 

教室全員が必死に口を押さえる。マイク先生は決壊寸前だ。俺だけ青ざめる。

 

「せ、先生・・・」

 

「戻せ。」

 

「はい!」

 

パチン

 

コスチュームに戻る。相澤先生は何事もなかったようにプリントを教卓へ置いた。

 

「以上だ」

 

踵を返しガラッとドアが閉まるとすぐ教室が大爆発した。

 

「「「アハハハハハ!!」」」

 

「羊ぃぃ!」

 

「『おやすみ』は反則!」

 

「何であんなの作った!」

 

「修学旅行用」

 

「用途限定されすぎ!」

 

「あーーーーもったいねェーーーー!!写真撮って香山先輩に見せりゃ良かったぜェーーーーー!?!?」

 

耳郎も涙を拭きながら「・・・今日一番かも」と呟いた。

 

その頃、廊下では。相澤が静かに職員室へ向かって歩いていた。心の中で小さくため息をつく。

 

(……放課後、検証だな)

 

 

 

 

 

「いや待てこれさ、衣替新技覚えたんじゃね?」

 

「寝不足で才能開花?」

 

「嫌な才能☆」

 

「指鳴らさなくても着替えられるとか強ぇじゃん」

 

「サイアク」

 

「極悪非道」

 

クラスメイトたちがひどすぎる。そんなに日頃の行いが悪かっただろうか?…………考えるのはやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてようやく昼休みまで来た。食堂へ行くとしよう。

 

「おい近寄んな」

 

「・・・え?」

 

俺が立ち上がると、瀬呂と上鳴が同時に二歩下がった。「待て!」とさらに切島まで一歩下がる。

 

「また着替えたら困るし」

 

「俺も困る」

 

「近寄るなよ!」

 

「ひどいな」

 

「ひどくねぇ!」

 

芦戸なんて机を盾にし始めた。

 

「衣替半径二メートル立入禁止!」

 

「感染症じゃないんだが」

 

「服感染!」

 

「新ジャンルの誕生・・・」

 

 

改めて食堂へ向かう。当然、俺の周りだけぽっかり空いていた。

 

「今日のお前危険物だもん」

 

「瀬呂、危険物扱いやめろ。歩く更衣室と言え」

 

「自覚あんだな」

 

「ない」

 

「あるじゃねえか」

 

そんなくだらないやり取りをしながら廊下を歩く。しかし眠い。本当に眠い。欠伸を噛み殺すと視界が少しだけ揺れた。

 

あ。少し意識が飛んだ。

 

パッ

 

「またぁ!?」

 

今度は切島だった。制服が真っ赤な学ランへ変わる。

 

「何で俺ぇ!?」

 

「切島似合う!」

 

芦戸が爆笑する。

 

「昭和の不良じゃん!」

 

「違ぇよ!オイ衣替ぇ!」

 

「ごめん」

 

パチン

 

制服に戻すと切島が胸を撫で下ろす。耳郎が無言で俺を見つめてくる。

 

「今日部屋入ったら寝ろ」

 

「はい」

 

「約束しろ」

 

「・・・はい」

 

そう返事をした瞬間。

 

パッ

 

「・・・は?」

 

今度は耳郎が純白のウェディングドレス姿になっていた。A組どころか廊下を歩いていた他クラスの生徒まで止まった。耳郎本人は状況が飲み込めず、ゆっくりと自分の腕を見る。

 

「・・・は?」

 

改めて耳郎が低い声を漏らした。最初に吹き出したのは瀬呂だった。

 

「ぶっ・・・!」

 

「ちょ、待っ・・・!」

 

「ウェディングドレス!?」

 

「綺麗だぜ耳郎!w」

 

「きゃーーー!相手は誰ーーー!?」

 

「笑うなぁぁぁ!!」

 

耳郎が顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「衣替ぇぇぇぇ!!」

 

「似合ってるな(ごめん)」

 

「本音と建前が逆になってる!」

 

廊下中が笑い声に包まれる。通り掛かった普通科の女子が思わず立ち止まった。

 

「えっ、文化祭の練習?」

 

「違う!」

 

耳郎が即答する。

 

「事故!完全に事故だから!」

 

「でも綺麗じゃん」

 

「芦戸ぉぉぉ!!」

 

芦戸は腹を抱えて笑っていた。

 

「いやだって普通に似合うんだもん!」

 

「そういう問題じゃない!」

 

耳郎は裾を押さえながらしゃがみ込む。

 

「早く戻して!」

 

「はい」

 

パチン

 

制服へ戻ると耳郎は深いため息を吐いた。

 

「・・・寿命縮んだ」

 

「ごめん」

 

「もうその謝罪聞き飽きた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わり、五時間目、六時間目も終わった。幸い、と言っていいのかそれ以上の被害者は出なかった。

 

「終わったぁ・・・」

 

チャイムが鳴ると同時に瀬呂が机へ突っ伏す。

 

「今日は濃すぎた」

 

「一日で一年分笑った」

 

「相澤先生の『おやすみ』はダメだって・・・w」

 

「ぶはっw」

 

「やめろw」

 

「羊!」

 

「羊はずるい!」

 

教室中がまた笑い始める。俺だけは笑えなかった。その時ガラッと教室の扉が開くと相澤先生が来た。

 

「衣替来い」

 

「はい」

 

「連行された」

「終わったな」

「南無」

 

 

 

 

 

 

職員室

 

「失礼します」

 

「入れ」

 

中へ入ると、相澤先生はいつものように椅子へ座った。

 

「まず確認する。今日、指を鳴らさずに発動した回数は」

 

「・・・六回です」

 

「無意識か」

 

「はい」

 

「じゃあ意識して発動しよう。指を鳴らさず俺を着替えさせろ。今すぐだ」

 

「・・・・やってみます」

 

俺はまず念じてみる。いつものように相手に似合う服をイメージし、記憶の引き出しから取り出し、貼り付ける。いつのならここで指を鳴らしスイッチとしているが……

 

「・・・・!!」

 

「駄目か」

 

「無理そうです・・・」

 

「もう一回だ」

 

「はい」

 

深呼吸してもう一度集中する。あぁ…………眠い。意識が…………沈む………………。

 

コクッ

 

「!」

 

発動した感覚があった。

 

「先生!」

 

……違う、相澤先生じゃない。着替えさせたのは………………職員室の入口に居るドアを開けて入ってきたマイク先生だった。

 

「Yo、イレイザー━━」

 

そこで止まる。上下とも真っ赤な特攻服。背中には金文字で『夜露死苦』。セメントス先生が書類から顔を上げ、エクトプラズム先生がお茶を静かに置く。オールマイトが吹き出しかける。

 

「・・・HEY?何コレ?」

 

職員室全員の視線が、ゆっくり俺へ集まる。なので俺は静かに俯いた。

 

「ごめんなさい」

 

相澤先生は深く、本当に深くため息をついた。

 

「とりあえず今日の衣装作り禁止」

 

「えぇっ!?」

 

思わず顔を上げる。

 

「でも文化祭が!」

 

「終わらせるために寝ろ」

 

「・・・」

 

「これは命令だ」

 

反論できない……。

 

その奥で、まだ特攻服姿のマイク先生が鏡を見ながら一言。

 

「これ結構カッコよくねぇ〜?」

 

職員室にいた教師全員が、一斉に笑いだした。

 

俺だけ笑えてなかった。

 

 

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