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アニメの文化祭観返したらB組劇の後一般客っぽいの何人かいたんですけど彼らは……?
飯田がパンパンと手を叩く。
「さぁ!まだ終わっていないぞ!片付け開始だ!」
「「おーー!」」
全員が一斉に動き始める。演出で使った巨大な氷やテープ紙吹雪を片付けて急いで撤収しなくてはならない。
緑谷が通形先輩と壊理ちゃんに話しかけられている。壊理ちゃんは全身でライブの感想を緑谷に伝えていた。あの様子を見ていればもう何も心配いらないな。
そんな中俺は静かに衣装をケースへ仕舞っていた。そこに八百万が近付いてくる。その腕には細長い衣装ケース。中には今日のために仕上げたミスコン衣装が入っている。
「そろそろ行きましょうか」
「うん」
もう控室へ向かわなければならない。そこへ峰田が氷の入ったタライを抱えたまま近付く。
「おーい衣替!優勝してこい!片付けなんか気にすんな!オイラたちもすぐ行く!絶対行く!!!」
上鳴も親指を立てる。
「A組代表だからな!負けんなよ!」
芦戸も笑顔で両手を振る。
「ヤオモモ!頑張って!」
八百万も笑顔で頭を下げた。
「必ず皆さんの期待に応えてまいります」
A組のみんなへ軽く手を振り、八百万と並んで体育館を出る。遠くから聞こえる出店の呼び込み。他科の笑い声。文化祭はまだ終わっていない。
「少し緊張してきました」
「大丈夫。衣装は出来上がってるからあとは着る人が完成させるだけ」
「ふふっ。衣替さんらしい励まし方ですね」
その笑顔には、ライブ前のような硬さはもうなかった。
二人がミスコン会場の控室へ入ると、向こうから拳藤と柳が「お、八百万」と歩いてきた。
拳藤はまだ本番衣装ではなく、制服姿のままだ。髪だけはきれいに整えられ、いつもの快活な雰囲気の中にも少しだけ本番前らしい緊張が見えた。
「ライブちょっと見たよ。すごいね、なんか私鳥肌立っちゃってさ」
「ありがとうございます」
「耳郎ももちろんだけど・・・あの衣装、やっぱり衣替が作ったんだろ?」
「うん」
「やっぱりなぁ」
拳藤は感心したように何度も頷いた。
「一人一人ちゃんと似合ってた。特に耳郎が一番輝いて見えたよ」
俺は軽く肩をすくめ「主役だからな」と返すと、拳藤は表情を引き締めた。
「でも今日は負けない」
本気の目だ。俺も自然と笑う。
「こっちも」
柳が静かに俺と八百万を見る。
「B組の劇終わったら物間も合流して騒がしくなると思うけど、ヨロシクね」
拳藤が苦笑する。八百万も拳藤へ視線を向ける。
「私も拳藤さんがどんな衣装で来られるのか、とても楽しみにしています」
「期待しててよ。物間がめちゃくちゃ考えてくれたから」
拳藤はニッと笑う。俺と八百万にとって文化祭最後の勝負が、いよいよ幕を開けようとしていた。控室には九人の出場者が集まっている。大きな鏡が並び、机の上にはヘアスプレーや化粧道具が整然と並べられている。
俺と八百万は衣装ケースを開き、中を確認する。
「よし、問題ない」
「改めて見ると、本当に綺麗ですわね」
「自信作だ」
その言葉に八百万は照れたように笑った。
「衣替さんは、本当に服がお好きなのですね」
「好き。だから似合う人に着てほしい。今日は八百万だ」
その何気ない一言が嬉しかったのか、八百万は小さく頷き、更衣室へ入っていった。その間俺は椅子へ座り、本番の様子を静かに頭の中でイメージしていた。
それを破ったのは勢いよく開いた扉だった。
「終わったぁぁぁ!」
物間が肩で息をしながら演劇の衣装のまま飛び込んでくる。柳が呆れたようにため息をついている。
「衣替、準備は万端かい?」
「もちろん」
「結構。こちらも万端だ」
丁度カーテンが開き、衣装に着替えた拳藤が出てくる。……なるほど。いつもの拳藤らしい快活さを残している。可愛さだけを狙った衣装じゃないな。頼れる先輩、姉御。そんな印象をそのまま形にした一着だ。
「どう?」
拳藤が照れくさそうに一回転する。物間は腕を組み、その姿を頭の先からつま先まで確認すると満足そうに頷いた。
「完璧だ。君らしく行け」
「任せろ」
もう一つのカーテンがゆっくり開くと、控室にいた全員の視線が一斉に集まった。堂々と、凛としている八百万が出てくる。
「・・・」
物間が思わず黙り込む。拳藤も一瞬だけ言葉を失った。
「うわ・・・」
それが最初に漏れた感想だった。八百万は少し照れたように裾を整える。
「いかがでしょうか」
俺は少し離れた場所から全体を見渡す。全部想像通りだ。
「似合ってる」
この一言だけで充分。八百万は安心したように微笑む。物間はゆっくり息を吐きながら腕を組み直した。
「なるほどそう来たか・・・」
「女子票狙いだからな」
その目は悔しそうでもあり、同時に感心もしていた。
「女子票、ね。確かに可愛いではなく"憧れ"を取りに来たデザインだ。女性向けファッション誌の表紙に載っていても違和感がない」
「正直かっこいいな・・・私じゃ着こなせない衣装だ」
「拳藤は拳藤でいいのさ!」
「そうだな」
拳藤は笑う。そこへ係の人が控室へ顔を出した。
「間もなく本番です。出演者の皆さんはステージ袖へお願いいたします」
控室の空気が一気に張り詰める。八百万は鏡の前へ立ち、最後に一度だけ身だしなみを確認した。俺は追加パーツをもう一度確認する。
「準備はいいか?」
「はい。」
その返事は静かだったが、不思議なくらい力強かった。ステージ袖へ移動すると、観客のざわめきが壁越しにも伝わってきた。ライブとは違う空気だ。
『今年もミスコン開催です!!』
「「うおおおおおお!!」」
順番に数人が終わっていく。
『続いてヒーロー科一年 拳藤一佳さんです!』
拳藤が一歩前へ出る。物間は最後にジャケットの襟を軽く整えた。
「胸を張れ。君は誰より拳藤一佳らしく歩けばいい」
拳藤はニッと笑い「任せろ」と言って、ステージへ向かい歩き始めた。
「シュシュッとケンドー!」
「B組の代表!」
「応援してるぞー!」
親しみのある声があちこちから飛ぶ。拳藤は照れくさそうに笑いながら大きく手を振った。
「こんにちはー!」
その一言だけで観客の何人かが笑う。普段の拳藤そのままだ。だからこそ緊張している様子もなく、自然体だった。
ネイビーを基調にしたショートジャケットは肩のラインをきれいに見せ、白いインナーが爽やかな印象を与えている。腰には細い白のベルト。ショートパンツとロングブーツの組み合わせが健康的な脚を引き立て、袖を軽くまくった着こなしが「頼れる先輩」を思わせた。かわいさを作る衣装ではない。拳藤の性格がそのまま服になったようなデザインだった。
「おっ、いいぞ拳藤!」
「似合ってるー!」
観客席から自然に声が飛ぶ。拳藤はステージ中央まで歩くと、少しだけ腰へ手を当てて観客を見渡した。
「今日は見に来てくれてありがとう!」
元気よく響いた声に、会場中が「おおー!」と応える。
「ライブも演劇も最高だったでしょ?まだまだ最後まで楽しもう!!」
「「おおおおお!!」」
「文化祭ってさ、一人じゃ作れないんだよね。ヒーロー科も普通科もサポート科も経営科も、先生も、お客さんも、みんながいるから今日がある!だから!最後まで思いっきり楽しんで帰ってくれ!」
「うおおおお!!」
「拳藤ー!!」
「姉御ー!!」
拳を振り上げた拳藤。袖で見ていた物間が小さく笑う。
「そうだ・・・それでいい・・・拳藤は飾る必要がない。拳藤らしさで勝負すればいい!」
拳藤は一歩後ろへ下がると、右手をゆっくり前へ出し個性を発動した。右拳が少しずつ大きくなる。
「おっ!」
「最後に一つだけ!」
拳藤は巨大化した拳を頭の上まで持ち上げた。そして親指を勢いよく立てる。大きなサムズアップだ。
「今日最高な人ー!」
「「はーーーーい!!」」
「じゃあ最後まで笑って帰れー!!」
「「うおおおおおおお!!!」」
会場が揺れるほどの歓声だった。拳藤は最後に豪快に笑う。
「ありがと!」
深く一礼し、軽快な足取りで袖へ帰ってくる。物間が満足そうに頷いた。
「完璧だ!観客を味方につけた!」
「緊張したぁ。でも楽しかった!」
「君はそういう顔が一番似合う」
物間はそう言うと、ちらりと隣を見る。八百万は静かに拳藤を見つめていた。
「・・・素敵でしたわ拳藤さん」
その言葉に拳藤も笑顔で答える。
「ありがと。次は八百万の番だよ。正直すっごい楽しみ」
『続いてヒーロー科一年 八百万百さんです!』
俺は袖口を最後に整えた。
「大丈夫。全部準備できてる」
「衣替さん、その・・・少々アドリブを加えても?」
「?別に構わない。それが服を完成させるために必要だと、八百万が思ったなら」
「私も拳藤さんの本気に応えたくなりました」
八百万は小さく頷き、そして少しだけ微笑んだ。
「では・・・完成させてまいります」
その言葉を聞いて、俺も自然と笑った。
「いってらっしゃい」
八百万は胸を張り、ステージへゆっくりと歩き出した。
「A組ーーー!」
「ヤオヨロズー!」
「うおーーー!!」
歓声と拍手の中、八百万は静かにステージへ足を踏み入れた。大きな歓声の中でも、慌てる様子はない。背筋を真っ直ぐ伸ばし、ゆっくりと歩き始める。
シャンパンゴールドのショートジャケットが陽の光を受けて柔らかく輝く。エメラルドグリーンのベルト。腰の位置を高く見せるハイウエストパンツは173cmの長身をさらに際立たせ、ヒールブーツの分だけ脚は一層長く見えた。ライブではロングスカートで脚のラインを隠していたのでミスコンでは見せつける。
「脚長っ・・・!」
「モデルみたい」
「こんなスタイル良かったのか!」
「カッコイイ・・・」
観客から思わず漏れた声に、八百万は表情を変えない。歩幅は一定、視線はまっすぐ前。
そして一歩踏み出すたび、足元へ白い花びらがふわりと舞う。最初は誰も気付かなかった。
「あれ・・・?」
「花?」
もう一歩、また数枚。さらに一歩。白い花びらが歩いた軌跡へ静かに降り積もっていく。
派手ではない。演出だと気付いた時には、八百万の後ろへ一本の花道が出来上がっていた。
「きれい・・・」
「素敵・・・」
さっきまでの歓声が嘘のように静まり返り、誰もがその姿へ見入っていた。ただ歩くだけ、それだけなのに目が離せない。
ステージ中央で八百万は静かに立ち止まった。観客を見渡し柔らかく微笑むと、自然と拍手が広がる。
八百万は一礼し、再び歩き始めた。その瞬間、俺は舞台袖で右手を軽く上げる。
パチン
「えっ!?」
ショートジャケットが一瞬で姿を変えた。後ろ側だけがすっと長く伸び、膝下まで流れる燕尾風ロングコートへ変化する。前は短いままだから長い脚は隠れない。後ろだけが女王のマントのように優雅に揺れる。
「うおおおお!!」
「変わった!!」
「衣装チェンジ!」
「衣替だ!」
「すげぇ!」
観客が一気に沸き上がる。八百万は驚く素振りを一切見せず、まるで最初からその姿だったかのようにゆっくりと身体を回した。
コートが大きく円を描く。裏地のエメラルドグリーンが一瞬だけ鮮やかに覗き、歩いてきた花びらがふわりと巻き上がる。その光景はまるで一輪の花が咲くようだった。
「綺麗・・・」
「すご・・・」
「かっこいい」
「じょ、女王・・・」
観客のあちこちから感嘆の声が漏れる。ターンを終えた八百万は、燕尾をなびかせながらもう一度ゆっくり歩き出す。片手をポケットへ入れ、もう片方の手で客席へ軽く手を振る。その仕草には余裕があり、気品があり、誰かへ媚びるような可愛らしさではなく、自分らしく堂々と立つ美しさがあった。
ライブで見せた八百万とはまるで別人。女性が憧れる女性。そんな言葉が自然と浮かぶ姿だった。
ステージの端まで歩いた八百万は振り返り、深く一礼する。
数秒の静寂のあと━━
「「うおおおおおおおおおお!!」」
今日一番と言っていいほどの歓声と拍手が会場中へ響き渡った。
「ヤオヨロズーー!!」
「かっこいい!!」
「脚長ぇーっ!」
「すげぇ・・・」
「鳥肌立った!」
八百万は照れくさそうに微笑みながらもう一度頭を下げ、ゆっくりとステージ袖へ戻ってくる。袖へ入った瞬間、それまで張り詰めていた緊張が一気にほどけたのか、小さく息を吐いた。
「・・・終わりましたわ」
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
「最高だった」
八百万は少しだけ頬を赤くする。
「そう言っていただけると安心します」
「花びらも歩き方も全部良かった」
「海外のファッションショーで見た記憶を自分なりに再現しまして・・・」
「うん。成功だよ」
「ライブとはまた違う達成感があります」
八百万は胸に手を当て、小さく笑う。そこへ拳藤が興奮した様子で駆け寄ってきた。
「めちゃくちゃ格好良かったよ八百万!」
「ありがとうございます」
「いや、本当にさ。同じ女子でも全然方向性違うのに、あれはズルいって」
「そのお言葉、そのままお返しします。拳藤さんのステージは皆さんを巻き込む力があって、本当に素敵でしたわ」
「あはは、照れるな」
その横で物間は腕を組み、ステージを見つめたまま静かに口を開く。
「・・・それでも拳藤が勝つ」
柳が「物間燃えてるなー」と横から眺めている。
「八百万が勝つ」
「いや拳藤が「静かに!次の人始まるよ!」ハイ」
「絢爛豪華こそ美の終着点!」
あ、あれが絢爛崎先輩か……圧巻のパフォーマンスだ。金色顔面装甲車に比べれば確かに他の出場者は地味だろう。文化祭としては100点。だが……本人より乗り物が目立って良いのだろうか。せっかくいいスタイルをしているのに高い位置に居て装甲車も動いていてよく見えない。
『続いてヒーロー科三年 波動ねじれさんです!』
「「おおおおおおおお!!」」
淡いエメラルドグリーンのドレスをまとった波動先輩が姿を現した。何枚もの羽根のようなフリルが幾重にも重なり、妖精の羽衣のように軽やかに揺れる。長く淡い青髪がドレスの上をさらりと流れ落ちていた。
波動はにこりと笑うと、両足が床からゆっくりと離れた。ふわり、ふわりと浮かび上がる。個性で生み出した推進力で、まるで空気そのものに抱きかかえられているような穏やかな浮遊。ドレスの裾が花びらのように揺れ、長い髪がゆっくりと宙を泳ぐ。まるで本当に妖精が舞い降りてきたようだった。横の拳藤が「綺麗・・・」と無意識に呟く。
最後に、ゆっくりとステージへ降り立つ。その後満面の笑顔のまま舞台袖へ戻っていった。その後ろ姿を見送りながら、多くの観客が同じことを思っていただろう。「可愛い」「癒やされた」と。それが波動先輩だけが持つ、誰にも真似のできない魅力だった。
『さぁさぁ!最後の出場者も終わったところで投票の開始です!結果発表は夕方です!』
「B組拳藤!B組拳藤に清き複数表を!!」
失格になるぞ物間……。散っていく観客もそれぞれ「あの人が良かった」「今年はレベル高いな」と話し合っている。舞台袖でも同じだった。
「私は波動先輩かな」
「いや、拳藤も良かった」
「八百万すごかったよね」
そんな声があちこちから聞こえてくる。八百万は静かに周りの様子を眺めていた。
「これだけ楽しんでいただけたなら、それだけでも十分ですわ」
「いや、優勝する」
八百万は驚いたようにこちらを見る。俺の真っ直ぐな言葉に、八百万は思わず笑ってしまった。
「では、信じましょう」
「衣替、八百万。私も負けるつもりないから。結果が楽しみだ!んじゃ!」
拳藤は笑いながら柳と共にクラスへ戻って行った。
ミスコンが終わると、あとは他の出し物を楽しむだけだ。ようやく全員が自由時間になる。
「やっと終わったー!」
「自由時間だ!」
「全部回るぞ!」
そんな他愛ないやり取りをしながらA組+壊理ちゃんと通形先輩で歩き始める。まぁ二十二人もいれば当然まとまってはいられない。
「アスレチック行こうぜ爆豪!」
「俺が勝つ」
爆豪と切島の勝負を遠目から眺めたり。
「C組の心霊迷宮ヤバそ〜行かね?」
「行くー!」
「ウチ。ヤダ。」
何人かお化け屋敷に行ったり。轟と飯田は顔はめパネルに顔をはめ、常闇と口田が写真を撮っている。麗日と蛙水はクレープを壊理ちゃんに食べさせてる。
「衣替さん!」
壊理ちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくる。クラスTシャツ姿だ。
「似合うね、エリちゃん」
衣替がそう言うと、壊理ちゃんは照れながらTシャツの裾をつまんだ。通形先輩も笑う。
「エリちゃんずっと鏡見てたんだよね。かわいいって」
壊理ちゃんは恥ずかしそうに俯く。
「みんなとおそろい・・・うれしい」
その言葉だけで、俺も自然と笑顔になる。
「見てコレ!セメントス先生!」
葉隠と耳郎と八百万が盛り上がっている。そこにはセメントス先生を模した紙パックのジュースが並んでいた。
「似すぎですわね・・・」
「似てるから飲みにくいね!」
「セメントス先生飲んでるみたい」
みんなで一本ずつ買う。壊理ちゃんも両手で持ちながらちびちび飲む。
「おいしい!」
味は美味しかった。
その後も文化祭らしい食べ歩きが続く。途中、緑谷と砂藤がそっと列を離れる。
「ちょっと行ってくる」
「すぐ戻るから」
「どこに?」
「ちょっとサプライズに」
緑谷は笑うだけだった。
夕方
空が少しずつ茜色へ変わり始める。
『お待たせしました!ミスコン結果発表の時間です!!いやぁ、今年は本当に票が割れました!』
その一言で観客がざわめく。
「割れたってことは接戦?」
「誰だ?」
「ねじれ先輩じゃね?」
「いや八百万だろ」
「拳藤もかなり良かったぞ」
『そこで今年は特別に、まず上位三名を発表します!』
俺は息を呑んだ。さぁどうなる……
『まず第三位!・・・・・・ではなく!!』
進行役がニヤリと笑う。
『今年は第三位が存在しません!!』
「えぇーーー!?」
「どういうこと!?」
会場中から驚きの声が上がる。
『つまり!優勝者が三人います!!』
「「ええええええええええ!!」」
歓声とどよめきが入り混じる。
『三年波動ねじれさん!!一年八百万百さん!!一年拳藤一佳さん!!三名同率優勝です!!!!』
会場が揺れるほどの拍手が起こった。
「うおおおおお!!」
「マジか!」
「納得!」
「全員違う魅力だった!」
「これは決められねぇ!」
拳藤が目を丸くする。八百万も驚きのあまり言葉を失っていた。波動先輩だけは「やったー!」といつもの調子で笑っている。そんな彼女らを進行役がステージ中央へ呼ぶ。
『三人とも前へ!』
拍手の中、三人が横一列に並ぶ。三人が並ぶと、改めて方向性の違いがよく分かった。
波動先輩は妖精のような愛らしさ
拳藤は誰からも慕われる姉御
八百万は女王の如き堂々とした気品
誰もが違う。だからこそ優劣を付けられなかった。
「可愛さなら波動!」
「親しみやすさなら拳藤!」
「憧れなら八百万!」
「どれも良くて決められなかったー!」
観客からもどんどん声が飛ぶ。
ティアラを受け取った拳藤は、嬉しそうに笑いながら隣を見ると八百万と目が合う。二人とも自然と笑った。
「引き分けだな」
拳藤が手を差し出す。八百万もその手を握り返した。
「はい。本当に」
波動先輩へは絢爛崎先輩が健闘を讃えあっている。
俺の元には物間がゆっくりと歩いてくる。俺も自然と歩み寄った。しばらく見つめ合ったあと、物間は肩を落として笑った。
「・・・引き分けか。体育祭では君が勝ったから今回は勝ち返すつもりだったんだけどねぇ」
俺も笑う。
「次、また勝負しよう」
「ああ。」
物間はニヤリと笑う。
「次こそ勝つ」
「俺も」
短い会話だったけれど、お互いに悔しさは隠せない。会場にはまだ拍手が続いていた。
文化祭最後のイベントは、誰か一人が勝者になる終わり方ではなく、それぞれが自分らしさを貫いた三人を称える温かな空気の中で幕を閉じた。ステージの上では三人が並んで笑い、彼女らへ惜しみない拍手が鳴り響く。
その光景を見上げながら俺は小さく息を吐く。
今回も服は、人を輝かせることができた。
その事実だけで十分誇らしかった。
校門前
壊理ちゃんはもう帰る時間だ。寂しそうにやや俯いている。
「エリちゃん。サプライズ!」
緑谷の手には真っ赤なリンゴ飴。透明な飴が夕日に照らされて宝石みたいに輝いている。通形先輩が驚いている。
「砂藤くんと寮へ戻って作ったんです」
壊理ちゃんは両手で受け取り、大事そうに抱える。小さく一口。カリッと飴が割れる音。
壊理ちゃんの表情がぱっと明るくなった。
「さらにあまい・・・!」
「また作るよ。楽しみにしてて!」
「うん!」
相澤先生に連れられ、壊理ちゃんは病院に戻る。壊理ちゃんは何度も何度も振り返りながら手を振る。
「またね」
「またね!」
文化祭は終わった。
けれど、この日の思い出は、きっと誰にとっても忘れられない一日として心に残り続けるのだった。
AIに描いてもらったミスコン衣装
紋章とかチェーンは勝手に描かれたものなので気にしないでください
【挿絵表示】
ねじれちゃんラストチャンスなのに負ける展開かわいそすぎるな、とかライバルに勝ち続ける展開嫌いだな、とか考えた結果3人1位になりました
区切りいいとこまで書けまして、初めは草薙理解君の『MAGICAL秩序☆リカピュア!』を聴いてたら思いついた短編ネタだったのをここまで続けられたのは驚きです
ここからは思いついたら書く、ぐらいでやっていくので気長に待ってていただけるとありがたいです