騎馬戦が終わると昼休憩になった。個人戦トーナメント前なのでみんな食事を取ったり作戦を考えたりしている。俺もパンを食べていたのだが、上鳴と峰田が妙に真面目な顔で近付いてきた。
二人の話を聞くと内容は単純、女子達をチアガールにしたいらしい。だがチアガール自体は良い文化である。華やかだし体育祭にも合う。
作戦は女子達に応援用コスチュームがあると説明し、その流れでチアガールになってもらうというもの。かなり無理がある気もしたが本人達は本気だったので見守ることにする。
そんな訳で女子グループのところへ向かう。上鳴が応援ボーナスがあるらしいと言い始め、峰田も応援コスチュームがあると続ける。二人とも嘘が下手だな。耳郎なんて開始数秒で怪しんでいるぞ。
「衣替これ絶対嘘でしょ」
「嘘だ。ただチアガールは似合うと思う」
正直に答えたら今度は女子達が固まった。芦戸は笑い始めるし葉隠はちょっと見たいと言い出すし、上鳴と峰田は希望を取り戻しているしでかなり混沌としていた。しかし耳郎が強かった。
「じゃあまず男子が着ればいいじゃん」
「たしかに公平ですわ」
「それいい!」
なるほど確かに筋は通っている。そして女子全員の視線が俺へ向く。
「衣替なら着るよね?」
チアガールか、デザインは優秀だし運動もしやすい。断る理由が見当たらなかった。
「着る」
その瞬間、上鳴と峰田の顔色が悪くなるが構わず指を鳴らす。
俺と上鳴と峰田のジャージが消え、三人揃ってチアガールになった。
近くを歩いていた生徒が止まる
女子達も一瞬静かになる
上鳴が自分を見る
峰田も自分を見る
俺については割と似合っていると思った。中性的な顔は便利だからな。
二人が絶叫したが予想していたので特に驚かない。むしろ女子達の反応の方が凄かった。芦戸は立っていられないくらい笑っているし、耳郎も腹を押さえているし、麗日は涙目になっている。蛙吹まで肩を震わせている辺り相当だったらしい。
そこへ偶然爆豪が通り掛かる。
俺達を見る
チアガールが三人並んでいる
盛大に吹き出した。これはかなり貴重な光景である。
観客席よりも昼休憩の通路の方が盛り上がっている気がした。
爆豪が笑った後は上鳴と峰田がうるさかった。二人は必死に戻せと言っていたが女子達が面白がっていたのでしばらくそのままにしておいた。俺は割と気に入っていたので問題ない。
その後、芦戸が自分達も見てみたいと言い出したので女子達も軽く着替えることになる。
麗日は動きやすさ重視
耳郎は黒を基調にした少しロックな感じ
芦戸は派手
八百万は妙に高級感がある
蛙吹は雨をイメージ
葉隠は元気系……顔は見えないが
レクレーション前に会場へ出ると観客席が少し盛り上がり、プレゼントマイクも何か実況していたがその辺は割とあっさり終わり。
個人戦トーナメントの開始が近付き、生徒達が競技場へ集まる。
全国放送
プロヒーロー達も見ている
将来を左右する大舞台
みんな緊張している
やがて大型モニターへトーナメント表が表示され会場も盛り上がる。
一試合目の組み合わせは
衣替装VS物間寧人
プレゼント・マイクも笑いを堪えていた。
『 因縁のカードだァァァ!!』
『因縁だ!』
『姫のやつ!』
『絶対荒れる!』
物間は予選の間ずっと姫だったからな、みんな覚えている。印象に残らない方がおかしい。
当の物間は静かにこちらを見ていて少し怖い。俺が手を振っても振り返してこない。怒っているのか?心が狭いな。
物間はゆっくり歩きながら競技場へ向かう。俺も向かう。
競技場の中央で物間と向かい合う。
観客席は満員
プロヒーロー達も見ている
「衣替」
「何」
「今こそ決着を付けよう」
体育祭始まって以来一番真面目だった。
「君に言いたいことは一つだけだ」
なるほど熱い展開だ。ライバル同士の決戦というわけか。
青春
友情
努力
勝利だ
観客席も静かになりプレゼントマイクも黙る。
「まずそのチアガールやめろ!!」
会場が爆笑した。
俺はずっとチアガールのまま過ごしていた。理由は似合っているからである。