【完結済】機動戦士ガンダムZZ【放送事故】ハマーン様、軍事回線ジャックでハプニング10連発を世界配信されてしまう 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ジュドー(14歳)
「(木星往還船ジュピトリスIIの観測デッキから、ガラス越しに遠ざかっていく地球と月、そしてサイド1の漆黒のシルエットを見つめながら、静かに息を吐き出す)……これまで、何度もこの通信室のパネルをぶち壊してきた。困ったことがあれば爆発させて誤魔化し、全宇宙に醜態を晒してはハイ・メガ・キャノンで全てを真っ白に燃やし尽くせば、それで終われると思ってたんだ。……ジュドーです。だけど、違ったんだな。壊して消し去るだけじゃ、何も終わらないし、何も始まらない。俺たちが自分の手で何を選び、何を残して未来へ向かうのか……それを選び取ることこそが、本当の意味で『終わらせる』ってことなんだ」
ルー(15歳)
「(ジュドーの隣に寄り添い、メインコンソールの最終送信アクセスキーに手を重ねながら)ええ、そうよジュドー。アタシたちが過ごしたあの無我夢中の日々も、泣き笑いしたバカ騒ぎも、全部この宇宙の片隅で起きたかけがえのない真実だもの。消去ボタンを押してなかったことにするなんて、そんなの自分たちの生きてきた時間を否定するのと同じだわ。……さあ、全コロニーの複製ノードを自動停止させる前に、最後の全宇宙自主送信の枠が開いたわよ。アタシたちの声を、届けましょう」
ジュドー
「(アクセスキーを静かに押し込む)全宇宙の通信回線へ……最後のメッセージを送信する。これは軍の命令でもなければ、勝者の宣伝でもない。俺たち、シャングリラからやってきたガンダム・チームと、この戦いを一緒に生き抜いた仲間たちの……最初で最後の、本当の声だ!」
(画面のインジケーターが優しく点灯し、地球圏、サイド1、アクシズ宙域、そして木星圏へと向かうすべての通信ノードに、9人それぞれの場所からのテキストと音声が、一行ずつ静かに読み上げられていく)
クム(10歳・復興学校の教室より)
『私たちは今日から、新しい学校で文字や歴史の勉強を始めます。争いのお話だけじゃなくて、誰かと歌を歌った日のこと、忘れずに教科書に書いておきます』
ミリィ(10歳・復興学校の教室より)
『宇宙はとても広くて寂しいけれど、誰かがどこかで笑っているって思えるだけで、暗闇も怖くなくなりました』
アヌ(16歳・地球圏の医療施設より)
『戦いで傷ついた人々を看病しながら、私は祈り続けます。二度と、子どもたちがモビルスーツに乗らなくてよい時代が来ることを』
サラサ(16歳・地球圏の医療施設より)
『奪い合うのではなく、分け合う心。私たちが届けてきた声が、どこかの誰かの小さな慰めになっていれば幸いです』
プルツー(10歳・リハビリ施設のテラスより)
『……アタシは生きているぞ。誰かの影でも代用品でもなく、プルツーという名前で、この光の差す風を感じている。……プル、お前の愛したこの世界を、アタシは自分の目で見ていくからな』
エル(14歳・シャングリラの復興輸送隊トラックより)
『ほら、シャングリラのみんな! 泣き言を言ってる暇があったら、この資材を運ぶわよ! アタシはここで、泥にまみれながら生活を作っていくんだから! ジュドー、ルー! たまには通信してこないと、本気で怒るんだからね!』
リィナ・アーシタ(12歳・地球のセイラ邸の勉強部屋より)
『お兄ちゃん。私、セイラさんからたくさんのことを教わっています。地球の青い海も、静かな風も、お兄ちゃんが見せてくれた可能性のおかげで、こんなに綺麗に見えるよ。……お兄ちゃん、迷わずに行ってね』
ビーチャ(15歳・ジャンク屋の作業場より)
『おうジュドー! 俺たちはシャングリラで立派に商売を始めてるぞ! 金儲けはヘタクソだけどよ、誰かの役に立つ仕事をやっていくから安心して行け!』
モンド(15歳・ジャンク屋の作業場より)
『壊れた機械を直すのは、モビルスーツだけじゃないって分かったよ! 俺たちの手で、この街を元通りにしてやるからな!』
イーノ(15歳・ジャンク屋の作業場より)
『ジュドー、ルーさん、木星は遠いけれど……夜空を見上げたら、いつでも君たちのことを思い出すよ!』
ブライト・ノア(36歳・アーガマ艦橋より)
『……ジュドー・アーシタ、ルー・ルカ。君たちが残した戦闘記録と戦災者リストは、連邦公文書館に永久保存されるよう手配した。我々大人は、この記録を二度と汚さないことを誓う。……健やかなる航海を祈る』
(テキストが順に画面を流れていき、最後に、過去の全95話にわたる通信事故の中で蓄積されたハマーン・カーンの残留ログデータが、被害者たちのリストと並んで画面に静かに表示される)
ハマーン・カーン(残留音声ログ)
『……そろばんの音が、ついに止まったか。私の野望も、私の黒字化も……すべてはこの途方もない数字の前に消え去った。……だが、ジュドー・アーシタ。お前がこの記録を消さずに、世界へ曝け出したことを……私は嘲笑いはしない。……これでいい。誰もが自分の愚かさを抱えたまま、それでも前へ進むのだ。……さらばだ、地球圏の俗物ども。そして……光を掴み取った子どもたちよ』
(スピーカーから、カチリと、たった一度だけそろばんの玉が静かに弾ける音が響き、ハマーンの通信ID「H-0088」が、画面から静かに消滅・アーカイブ化されていく)
ジュドー
「(画面を見つめ、胸の深奥から湧き上がる温かな想いとともに、深々と深く頭を下げる)……ありがとう、ハマーン。あんたの遺した記録も、あんたという人間がいたことも……俺たちは絶対に忘れないよ」
ルー
「(ジュドーの肩を抱き寄せ、画面の操作パネルを見つめる)……全複製ノードの自動停止プログラム、完了。個人のプライベートな通信事故データは非公開化して厳重に封印。戦争の記憶と、生き残った者たちのメッセージだけが、公式アーカイブとして残されたわ」
ジュドー
「(ジュピトリスIIの展望デッキから、広大な漆黒の宇宙を見つめる。そこには、かつて見たような過剰なピンク色の過共鳴の光ではなく、静かで、どこまでも清らかな星々の輝きが広がっている)……終わったんだな。俺たちの、あの短くて、無茶苦茶で……だけど最高だった時間が」
ルー
「ええ。事故のように始まった通信も、これで本当におしまい。……さあ、ジュドー。最後の挨拶をして、通信を切りなさい」
ジュドー
「(マイクを引き寄せ、全宇宙の受信用ノードへ向かって、穏やかな、少年の柔らかい声で語りかける)……全宇宙のみんな。今まで俺たちの騒がしい声につき合ってくれて、本当にありがとう。もう通信機が暴走して、お邪魔することもないよ。……俺たちはこれから、新しい宇宙へ行ってきます。みんなも……それぞれの生活を、自分の足で頑張ってくれよな!」
(ジュドーが静かに通信終了のスイッチを押す。画面のインジケーターがスーッと光を失い、完全に消灯する)
『――ツーツーツー……(通信終了音)――』
(通信の終了音の後、宇宙は完全な無音へと包まれる。そして、画面がゆっくりと暗転していく中、ノイズのない世界に、新しい生活の音が、静かに響き始める)
(シャングリラの街で響く、金属を叩くコンコンという工具の音と、子どもたちの弾んだ笑い声)
(地球の庭辺で、風が葉を揺らすサラサラという音と、リィナがページをめくる静かな音)
リィナ
『……いってらっしゃい、お兄ちゃん』
ジュドー
『……行ってきます、リィナ』
(ジュピトリスIIの主推進バーニアが静かに噴射され、巨船が木星の果てしない闇と光の向こう側へと、ゆっくりと旅立っていく)