機動戦士ガンダムZZ【放送事故】ハマーン様、軍事回線ジャックでハプニング10連発を世界配信されてしまう 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ジュドー(14歳)
「(使い捨ての紙コップや、焼きちぎれた配線くずを段ボール箱へ雑に放り込みながら、深いハラワタからのため息を吐き出す)……はぁーあ。なんだって祭りの後ってのは、こんなにも惨めで、頭が酷く重たくなるような気分になるんだろうな。……ジュドーです。昨日までのあのバカ騒ぎが嘘みたいに、アーガマの仮設格納庫には、散らかった紙吹雪と泥だらけの折りたたみパイプ椅子しか残ってねえ。通信室のメインモニターも完全に黙りこくっちまって、サイコミュが起こしてた不気味な過共鳴のノイズも、ピタリと止まりやがった……」
ルー(15歳)
「(Zガンダムの足元に立てかけた作業ハシゴの上で、ステージ用の衣装を丁寧に折りたたみながら、眉をひそめて見下ろす)何をしみじみと黄昏れているのよ、ジュドー。格納庫を散らかしたのはアタシたちだけじゃないでしょう。自分たちが脱ぎ捨てた作業着や機材くらい、最後まで責任を持って片づけなさいよ。……でも、確かに不思議ね。あんなに耳障りだった通信回線の雑音や、全宇宙から飛び込んできていた割り込み信号が途切れると、逆にこの静けさで耳が痛くなりそうだわ」
エル(14歳)
「(ロール状の感熱記録紙を短冊状に切り分け、油性ペンと一緒に全員の元へ配って回りながら)ほら、二人とも文句を言わないの! 9人全員にこれ、ちゃんと配るから。昨日の騒動の最中、みんな胸の奥に溜め込んでいて言えなかった『本当の最後の一言』を、ここに書き出しておくのよ。誰かに見せるためのカッコつけた言葉じゃなくていい。故郷の家族とか、もう二度と会えない戦死したあいつらとか、自分自身に向けた本当の気持ちをね。こうやって紙に書き出しておかないと、またサイコミュ回路がアタシたちの抑え込んだ感情をハッキングして、変な電波をまき散らし始めるかもしれないじゃない」
リィナ・アーシタ(12歳)
「(エルの隣で小さなクリップボードを抱えながら、静かに頷く)そうですね、エルさん。お兄ちゃんたちが今まで何度も巻き込まれてきた通信回路の異常発振は、全部、戦いの極限状態で言えなかった本当の本心が、壊れた回路と共鳴を起こしたのが原因だったんだと思います。ちゃんと文字にして言葉を整理しておけば、通信機も二度と暴走したりしないはずよ。……お兄ちゃん、腰が止まっているわよ。ちゃんと動いて」
ジュドー
「わかってるよ、リィナ。……とは言ってもさ、俺が書くことなんて目新しいものはないぜ。『早くシャングリラのジャンク山に帰って、腹いっぱいまともな飯を食って、泥のように眠りたい』くらいなもんだ」
プルツー(10歳)
「(パイプ椅子に深く腰掛け、プルの遺品である黄色いリボンを指先に固く巻きつけながら、低い静かな声でつぶやく)……嘘をつくな。お前、さっきから木星往還船の定期募集要項のデータ通信ログを、何度もチラチラと盗み見ていただろ。隠したって無駄だ。……アタシはもう書き終えたぞ。『プル、アタシはもうお前の身代わりでも影でもない。これからはアタシ自身の足で、プルツーという名前で生きていく』ってな」
クム(10歳)
「(小さな手でペンを握りしめ、一生懸命に文字を書き込みながら)私も書けたよ! 『シャングリラの汚いコロニーの空はすごく狭かったけれど、みんなで一緒に歌った時間は絶対に嘘じゃなかった』って!」
ミリィ(10歳)
「(クムの頭を撫でながら)私も同じ気持ちよ。戦火の中で出会ったアタシたちが、こうして生きて同じ空を見上げていること自体が、何よりの真実なんだから」
アヌ(16歳)
「(胸に手を当てて深く息を吐く)私たちの祈りや叫びが、遠く離れた戦災コロニーの人々に届いていたと信じたいですね」
サラサ(16歳)
「ええ。争いの火種はまだ宇宙のあちこちに残っていますけれど、この静寂の中で紡ぐ言葉こそが、未来への確かな光になりますわ」
ジュドー
「みんな、いつの間にか大人になってやがるな……。……って、おいビーチャ! モンド! イーノ! お前たち、通信コンソールの裏側で何をごそごそやってんだ!? さっきからメインモニターのインジケーターが、変な点滅を繰り返してるぞ!」
ビーチャ(15歳)
「おうジュドー! ちょっと待て、今データのルートを解析してるところなんだよ! 驚くなよ、アーガマの通信機を何度直しても、謎の中継信号が全宇宙へ流れ続けていた理由が、ついにハッキリしたぞ!」
モンド(15歳)
「アナハイム社の基幹回線が遮断された後も、シャングリラのあちこちに打ち捨てられている自作の違法アンテナや、廃棄されたコロニーの旧型中継ノードが、自動的に信号を迂回中継し続けてやがったんだ! 回路のメイン基板を1箇所壊したところで、全コロニーの民間草の根ネットワークにデータがコピーされて、勝手に分散保持される仕組みになってたんだよ!」
イーノ(15歳)
「つまり、僕たちがこれまで通信室の機器を力任せに壊してトラブルを強制終了させていたのは、ただの気休めでしかなかったんだ。裏側では、僕たちのやり取りや艦内の映像データが、記録ログとして各所のサーバーに溜まり続けていたんだよ」
ジュドー
「な、なんだって……!? じゃあ、俺たちが焦ったり、怒鳴り合ったり、情けない姿を見せてたのが、全部ログとして残っちまってるってことかよ!?(顔を真っ赤にし、額に大きな青筋を浮かべて、近くにあったハイ・メガ・キャノンの外部バイパスケーブルへ手を伸ばす)またシャングリラのジャンク屋どもとアナハイムの悪癖が、変なバックアップシステムを作りやがって!! こうなったら、全コロニーの草の根中継ノードごと、ハイ・メガ・キャノンで根こそぎ焼き払ってやる! 今度こそ、その恥ずかしい記録データを跡形もなく消滅させてやるぜ!!」
リィナ
「(ジュドーの伸ばした腕を、両手でしっかりと、力強く抑え込む)ダメよ、お兄ちゃん!! 絶対に撃っちゃダメ!!」
ジュドー
「リィナ!? なんで止めるんだよ! このままじゃ俺たちのプライベートも、戦場でのみっともない愚痴も、全部宇宙の歴史の恥晒しとして残っちゃうんだぞ! 消さなきゃダメだ!」
リィナ
「力任せに壊して解決した気になっちゃダメよ! 今までお兄ちゃんは、自分にとって都合の悪いことや、向き合うのが辛いことがあるたびに、通信機を壊したり暴れて誤魔化そうとしてきたでしょう? でもね、残されたデータの中には、この戦いで死んでいった人たちの最後の声や、もう二度と戻ってこないあの日の記録も一緒に残っているのよ。……全部を壊して消し去ってしまう前に、そこに何が残されているのか、ちゃんと自分の目で見届けるのがお兄ちゃんの責任でしょう!?」
ジュドー
「リィナ……。……くそっ、妹にそこまで正論を言われたら、俺はもう何も言い返せねえよ……」
ルー
「(ジュドーの手からケーブルを取り上げ、メインコンソールの解析画面を覗き込みながら、急に表情を険しくする)……ジュドー、ちょっと来て。冗談を言っている場合じゃなくなったわ。シャングリラの複製ノード群の最深部、暗号化されたプロテクト層の中に、未再生の音声ログが一ファイルだけ引っかかってる」
エル
「未再生のログ……? 誰がそんなところに暗号化データを仕込んだのよ」
ルー
「送信元の識別コードは……『H-0088』。アクシズの、あの総帥のIDよ」
エル
「ハマーン・カーン……!? あの人が戦いの果てに、そんな暗号データを遺していたっていうの!?」
ジュドー
「(息を飲み、コンソールの前へ一歩踏み出す)……ハマーンが……? 一体何を遺したっていうんだ……」
(格納庫の照明がわずかにチラつき、ノイズ混じりのスピーカーから、割れたそろばんが弾けるような乾いた音とともに、静かで冷ややかな、しかし途方もなく疲れ切った一人の女性の過去ログデータが再生され始める)
ハマーン・カーン(残留音声ログ)
『……通信が正常に接続されているかは分からん。いや、誰にも届いていなくて構わないのだ。これは全宇宙に向けた宣伝でもなければ、ネオ・ジオンの正当性を訴える決起の言葉でもない。……私という一人の人間が、この歪んだ時代に生きて存在し、そして敗れ去っていったという、ただの事実の記録だ。……ジュドー・アーシタ。もしお前が、怒りに任せてこの通信機を壊さず、この記録を開いたというのなら……聞くがいい。これはお前に対する命令でも、呪いの言葉でもない。……ただの、私という人間の記録だ』
ジュドー
「(固く握りしめていた拳を、ゆっくりと、かみしめるように解いていく)……ハマーン……。あんた、最後までネオ・ジオンの誇りだの、統制だのと言っておきながら……裏ではこんな静かな声を遺していたのかよ……」
ルー
「全宇宙への通信が完全に停止するまで、残された時間はあとわずか……。アタシたちがこの記録をどう扱い、どう未来へ進むか、最後の選択が始まるわね」