機動戦士ガンダムZZ【放送事故】ハマーン様、軍事回線ジャックでハプニング10連発を世界配信されてしまう 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ジュドー(14歳)
「(メインコンソールに表示された波形データを見つめながら、拳を握りしめる)……ノイズの奥から聞こえてくるのは、あいつの声だけじゃねえ。マシュマーやキャラ、それに死んでいったアクシズの兵士たちの声まで混ざり合ってやがる。……ジュドーです。通信室の破壊を止めて、ハマーンの遺した暗号データ『H-0088』の解析を始めたんだが、聞こえてくるのは恐ろしい戦争の亡霊たちの呟きばかりだ。サイコミュが拾い集めた残留思念のログ……。あいつらはもう二度と、新しい言葉を喋ることも、俺たちと笑い合うこともできないっていうのに……」
ルー(15歳)
「(コンソールのサブパネルを高速で操作し、ログの暗号階層を解除しながら)過去のサイコミュ過共鳴が残した音波の残骸ね。死者が蘇って喋っているわけじゃないわ。受信用ノードに残された音声データと、アタシたちの記憶の中にいる彼らのイメージが組み合わさって再生されているだけ。……悲しいけれど、これが現実よ。彼らはもう、この宇宙のどこにもいない」
エル(14歳)
「(画面に刻まれる膨大な数字の列を指差し、不審そうに眉をひそめる)ねえ、ルー。ハマーンのログの背景からずっと聞こえている、このパチパチっていう音……。これ、あの人がいつも弾いていたそろばんの音じゃない? でも、画面に表示されている数字の並びが変よ。10兆ゴールドバウだの100兆バウだのっていう、あのふざけた金額の単位がどこにもついていないわ」
ビーチャ(15歳)
「(キーボードを叩きながら目を丸くする)おいおい、マジかよ! この数字のフォーマット、ネオ・ジオンの戦時会計データなんかじゃねえぞ! コロニー公社と地球連邦軍の、戦災避難民リストの照合コードだ!」
モンド(15歳)
「なんだって!? じゃあ、ハマーンが毎回弾いていたあのそろばんのパチパチって音は、連邦から金をむしり取るための計算なんかじゃなくて……!」
イーノ(15歳)
「……うん。戦闘で巻き込まれた民間人や、壊れて沈んでいった宇宙都市の犠牲者、そして行方不明になった子供たちの整理番号を、彼女自身が一つずつ照合していた音だったんだ。金額のインフレなんて最初から存在しなくて、あのアクシズの総帥は、ただ一人でその膨大な数字を数え続けていたんだよ」
ジュドー
「(言葉を失い、画面に表示される果てしない数字の列を凝視する)……ハマーン……。あんた、全宇宙の支配者を気取りながら、影ではそんな作業をずっとやってたのかよ……。自分の犯した罪の重さを、数字にして背負い込もうとしてたってのか……!」
(スピーカーのノイズが急激に薄れ、ハマーンの生前の冷徹で、どこか悲哀に満ちた音声メッセージがクリアに響き渡り始める)
ハマーン・カーン(残留音声ログ)
『……そろばんの音が止まったか。ならば、データの開示は正常に行われたということだな。ジュドー・アーシタ、そして地球圏の俗物ども。私という人間が死んだ後、この記録をどう扱うつもりだ? 連邦の政治家どもは、私を全宇宙を恐怖に陥れた希代の悪魔として歴史に刻むだろう。あるいは、ネオ・ジオンの残党どもは、私を聖女のように崇め奉り、次の戦いの道具として利用するかもしれん。……だが、許さん』
リィナ・アーシタ(12歳)
「(ハマーンの声にじっと耳を傾け、胸の前で手を合わせる)ハマーンさん……」
ハマーン・カーン(残留音声ログ)
『私の存在を、勝者の都合のいい宣伝材料にするな。そして、敗者の復讐の旗印にもさせるな。私の孤独も、私の過ちも、そしてこの手に残された膨大な犠牲者の数字も……すべて等しく、敗北の記録として保存せよ。それが、戦いを止めることができなかった全宇宙の大人たちが支払うべき、最低限の対価だ。……これが、私からお前たちへ残す、最後の命令である』
マシュマー・セロ(残留音声・過去ログ)
『……ハマーン様……我が命は、騎士としての誉れとともに……!』
キャラ・スーン(残留音声・過去ログ)
『……あははは! 燃える、燃えるわ! 宇宙が私の炎で満たされていく……!』
エル
「(マシュマーとキャラの苦痛に満ちた過去ログが重なるのを聞き、たまらず目を背ける)……嫌だわ。あの二人だって、あんなに過剰に強がって、狂ったような演技をして戦場を駆け抜けて……最後はあんなにあっけなく散っていったなんて……」
プルツー(10歳)
「(画面に反射する自分の顔を見つめながら、静かに呟く)強化人間として命を削られた奴らの叫びだ。……アタシも、一歩間違えればあのログの中に混ざっていた。ハマーンは自分を美化することも、自分に従った部下たちの悲劇を隠すことも拒んでいるんだ」
ジュドー
「(ゆっくりと歩み寄り、コンソールの横に据え付けられたハイ・メガ・キャノンの起動スイッチを見つめる。その手は微かに震えているが、瞳には迷いがない)……俺はさ、今までずっと、自分にとって不都合なことや、直面するのが恐ろしい現実にぶつかるたびに、このハイ・メガ・キャノンの威力を頼りにしてきた。通信機を爆破して、画面を真っ白に燃やし尽くせば、全部なかったことにできると思ってたんだ」
ルー
「ジュドー……」
ジュドー
「(起動スイッチからゆっくりと手を離し、システムのメイン電源を「保存」のモードへと切り替える)でも、もうそんな誤魔化しはやめる。ハマーンの記録も、戦死していった奴らの最後の叫びも、全部消さずに残すよ。ただし、ハマーン……あんたの言いなりにはならないぜ」
リィナ
「お兄ちゃん……?」
ジュドー
「あんたは『敗北の記録として保存しろ』と言ったが、俺はこれを単なる絶望の証拠にはしない。地球連邦軍が作った勝者の歴史とも、ネオ・ジオンが作った殉教者の歴史とも違う……戦場で傷つき、奪われ、それでも生きようとした普通の人たちの証言として、この数字と記録を保存するんだ。連邦の記録保管庫と、シャングリラの草の根ネットワークの両方に複製して、誰も勝手に改ざんできないようにしてやる」
(コンソールのインジケーターが青く点灯し、ハマーンの暗号データが正常にバックアップ・共有処理されていく)
ハマーン・カーン(残留音声ログ)
『……フフ。どこまでも生意気な小僧だ。……だが、それでいい。お前がその選択をしたのなら……私の残した通信回路は、真の意味で役割を終える……』
(ハマーンの残留音声が静かな余韻を残して消え去ると同時に、メインモニターの端で、緊急の警報アラートが赤く点滅し始める)
ビーチャ
「(アラートの音に跳び上がり、画面を凝視する)おいジュドー! 大変だ! ハマーンのログの暗号が解除された影響で、旧アクシズ宙域の暗号通信網が一斉に開放されたぞ!」
モンド
「待てよ、その通信網の先から、SOSの救難信号が拾える! 1つや2つじゃない……戦後の混乱で放置された3つの漂流避難区画からだ!」
イーノ
「酸素の循環システムが限界を迎えてる! このままじゃ、あと数時間で避難民の人たちが窒息しちゃうよ!」
エル
「救難信号の周波数がバラバラで、今のアーガマの通常回線じゃ同時に位置を特定できないわ! どうするのよ、ジュドー!?」
ジュドー
「(顔を引き締め、仲間たちを見回す)決まってるだろ! ハマーンが遺した数字をただ眺めて涙を流すのはおしまいだ! 今生きている奴らを救うために、この通信機とサイコミュ回路を最後の最後まで使い倒してやるぜ!」