魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
模擬戦の翌週から、魔法実技の授業が少しだけ変わった。
——ピリカにとって。
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風魔法の実技。
先生が手本を見せる。風の初級魔法を使い、十歩先の的を倒す。基本中の基本。
生徒たちが順番にやっていく。大きな風を起こす者、的を吹き飛ばす者。それぞれの才能に応じた結果が出る。
ピリカの番が来た。
——今までなら、何も起きなかった。ウィンドカッター、ウィンドブラスト。どんな初級の風魔法も、いくら詠唱しても発動しなかった。魔法には最低限必要な魔力量がある。ピリカの魔力は、その最低ラインにすら届かない。それが六年間の現実だった。
——でも。
——空気を押し退けるのに、魔力の規定量は関係ない。
ピリカは掌をかざした。
——空気を押し退ける。
——真空の要領で。
空気を押し退ければ、そこに向かって周りの空気が流れ込む。それが風になる。自分で風を「作る」のではなく、空気の流れを「起こす」。
ぶわっ、と。
的が倒れた。
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「……え」
ピリカ自身が驚いていた。
——倒れた。的が。私の風で。
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先生が目を丸くした。
「……ピリカさん、今の……」
「あ、はい。……倒れ、ました」
「…………ええ、倒れましたね」
先生も困惑している。六年間、風魔法でまともな結果を出したことがない生徒が、急に的を倒した。
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次の授業。水魔法。
水をコップの中に生成する。
——これは、できなかった。真空と関係がない。
——でも、もしかしたら、お師匠様に聞いたら何か方法があるのかもしれない。
今のところ、コップは空のままだった。
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その次。土魔法。
——これも、できなかった。
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次の次。火魔法。
——言うまでもなく、できなかった。
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——できるものと、できないものがある。
ピリカは帰り道に考えた。
——風魔法はできた。空気を押し退けて流れを作る、真空の応用だから。
——水、土、火は相変わらずできない。魔法として発動するには、やっぱり魔力が足りない。
——でも、風は違った。風を「作る」んじゃなくて、空気を「押し退ける」。結果じゃなくて、途中の仕組みに手を加える。それなら、私の魔力でも届く。
——お師匠様が教えてくれたのは、そういうことだ。
——六年間ゼロだったものが、ゼロじゃなくなっていた。
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変化は、少しずつ周りにも広がっていった。
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「ねぇ、ピリカって最近風魔法できるようになってない?」
「あー、この前の授業で的倒してたよね」
「でも他のは全然だったよ」
「風だけ? なんで急に?」
「さぁ……」
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「魔力量って、伸びるものなの?」
「伸びないよ。生まれつきって習ったじゃん」
「じゃあなんで?」
「わかんない。でも、模擬戦でアリサのファイアボールも消してたよね」
「……あれ、結局なんだったんだろうね」
「ほんとにね」
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——成績上位の生徒たちは、特段深く気にした様子はなかった。
彼らにとっては、ピリカの風魔法など取るに足りない。的を倒した程度のことは、自分たちが入学初日にできたことだ。
気にしていたのは——成績が低い生徒たち。
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「ねぇ、ピリカってどうやって風魔法できるようになったの?」
声をかけてきたのは、成績下位の女子生徒だった。風魔法がいつも弱くて、的を倒すのにいつも苦労している。
「え……」
「私、風魔法ずっと苦手で。ピリカが急にできるようになったの見て……なんか、コツとかあるのかなって」
ピリカは少し考えた。
——真空の応用、とは言えない。お師匠様にも、方法は言わなくていいと言われている。
「……ごめんなさい、ちょっとうまく説明できなくて」
「そっか……。ごめんね、変なこと聞いて」
「ううん。でも——」
ピリカは少しだけ笑った。
「——私も、ずっとできなかったから。気持ちはわかるよ」
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女子生徒が去った後、ピリカはふと思った。
——才能が低い人ほど、私のことが気になるんだ。
——「あの才無し侯爵ができたなら、自分もできるかもしれない」って。
——……希望、なのかな。
——でも、私がやってるのは、みんなと同じ方法じゃない。
——教えてあげられない。
——……ちょっとだけ、申し訳ない。
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そんな日々が続いた。
ピリカは学園に通いながら、毎日グリモワルドの家で訓練を続けた。真空の精度を上げる。範囲を広げる。維持する時間を延ばす。
走りながらでも真空を自分の前に維持できるようになった。
——少しずつ、少しずつ。
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ある日の帰り道。
校門の掲示板に、新しい紙が貼り出されていた。
生徒たちが集まっている。
ピリカも覗き込んだ。
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——学年別魔法大会。
——開催まで、あと一ヶ月。
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ピリカは掲示板を見上げた。
——お師匠様が言っていた。あれで優勝しろ、と。
——最初は冗談だと思った。
——でも、今なら。
——……ほんの少しだけ、想像できる。
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——そういえば、今朝お師匠様が言っていた。「今日帰ったら一つ、新しいことを教えるぞ」と。
——なんだろう。
ピリカは掲示板から目を離して、帰り道を歩き出した。
本日の更新はここまで!
6/14(日)は9:10から更新!!
魔法大会編に入っていって、一気に決勝戦(0話の回収)までいきますよ〜〜〜!!
めちゃめちゃ自信ある伏線回収を仕込んでいるので、
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