魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
夜。グリモワルドの家。
テーブルに二人で座っていた。グリモワルドはコーヒーを啜り、ピリカは膝を抱えていた。
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「お主、やけに外を気にしておるの?」
「いえ、大丈夫みたいです」
「そうか?」
しばらくの間、グリモワルドがコーヒーを飲む音だけが響いたあと、ピリカが、ぽつりとこぼした。
「お師匠様。私が魔法大会の決勝に出るなんて、夢のようで、今でも全く信じられません」
「ほう、あれだけ痛く苦しい修行をして、まだ全てが夢のように思えるとは」
「いえ、夢じゃなかったです。あれが夢であってたまるもんですか」
「かっかっか! ま、全部わしのおかげじゃな」
ピリカは少し考えて、頷いた。
「それは……そうですね。その通りです」
「……冗談じゃ、流石にそれは違う。"全部"は嘘じゃ。わしの導きとお主の努力、ちょうど半分半分、ということにしておこうか」
「半分半分……」
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「明日はあのアリサとなんじゃろ? さすが歴代最高と謳われるだけある、順当に勝ち進んだみたいじゃな」
「明日、アリサに勝てるか……。今から不安で」
「お主、気づいておるか?」
「何をですか?」
「お主はすでに、魔法大会で優勝か、もしくは準優勝が確定しておる。明日の試合がどうなろうと、最低でも二位じゃ」
「あ——」
言葉が詰まった。
そうだ。決勝まで来たということは、もう二位以上が確定している。そんな当たり前のことに、気づいていなかった。
「三ヶ月前、ファイアボールが出ずに泣き叫んでおった頃からすると、すでに現時点で夢物語みたいなもんじゃろう」
「たしかに……」
「変に考え込むな。お主の成果はすでに出ておる。明日は二百点が二百五十点になるかどうか、というだけの話じゃ」
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ピリカは、グリモワルドの横顔を見た。
照明の柔らかな魔法の光が、皺だらけの顔を照らしている。いつもと変わらない、だるそうな表情。
「お師匠様、励ましてくれたんですか?」
「せっかくとった弟子が、実力を発揮して負けるならまだしも、わけのわからん落ち込み方をして実力を発揮できず負けるのは嫌じゃからな。せいぜいわしを楽しませてくれ」
——やっぱり、素直じゃない。
「ふふっ、明日、頑張りますね」
「それで良い。今日は早く寝ろよ」
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部屋に戻って、ベッドに横になった。
天井を見上げた。三ヶ月前、初めてこの家に来た夜も、同じ天井を見上げていた。
——あの夜は、何も見えなかった。
——今は、明日が見える。
目を閉じた。——眠れない。心臓がどくどくと鳴っている。身体は疲れているのに、頭の中がぐるぐる回っている。
アリサのファイアボール。ファイアランス。それをどう消すか。どう近づくか。真空の厚さ。タイミング。足の運び方。——考えが止まらない。
寝返りを打った。また打った。布団を蹴って、また被った。
——外の雨の音が、やけに大きく聴こえる。いつの間にか、本降りになっていた。
——落ち着け、寝ろ、明日に響く。
そう思うほど目が冴えた。
拳を、布団の中で握った。手のひらが汗ばんでいた。
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その時、急に扉が開いて部屋が明るくなった。
「きゅ、急に開けないでくださいよ!」
「言い忘れておったが、明日のアリサとお主の試合。賭けのオッズは五十倍でアリサだそうじゃぞ、お主、期待されてないのう」
「……なんで弟子の試合で賭けをしてるんですか!!」
「かっかっか。では、おやすみ」
扉が閉まった。廊下を遠ざかる足音と、くっくっく、という笑い声が聞こえた。
——もう。
ピリカは布団を頭まで被った。顔が熱い。怒っているのか呆れているのか、自分でもよくわからなかった。
——でも、なぜか、さっきより心臓は落ち着いていた。