魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
今後、1000文字に満たないときは一気に2話の場合がありますが、ボーナス回ということであまり気にしないでください〜。
そんなに頻度は多くないと思います!(今のところ2/30回)
【第30話 帰り道〜アリサとボルトランの場合】
夕暮れの石畳を、二人で歩いていた。
魔法大会の喧騒が、背中の方で遠ざかっていく。屋台の灯りがぽつぽつと並ぶ通りを抜けて、静かな住宅街に入った。
アリサは、隣を歩く祖父の横顔をちらりと見た。
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「お祖父様、すみません。優勝できず……」
「気にするな。結果的に同率一位ではある。それに相手があのグリモワルドの弟子だ、むしろ引き分けで済んでよくやった」
「グリモワルド様って、東部戦線の英雄、ソーラーレイのグリモワルド様で合ってますか?」
「合っているが、やつはその称号に何の興味もない。言わない方が良いぞ」
「そ、そうなんですね……」
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しばらく、二人の足音だけが響いた。
ボルトランが、静かに口を開いた。
「それと、比喩でもなんでもなく、やつは世界最高の魔法使いだ。やつの元で学べる機会を無駄にするな」
「お祖父様と比べてもですか……?」
「はっはっは!! わしなぞ足元にも——いや、ギリギリ足元くらいか……? わしもそこそこ才能はあると思うんだが、全力で努力しても足元くらいまでしかいけなかった」
「そこそこって……。宮廷の主席魔法使い様が何を言ってるんですか」
「あいつは本当に規格外なんだ」
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ふと、祖父の横顔を見た。
普段厳格なボルトランが、珍しく懐かしそうな顔をして、穏やかに微笑んでいた。
——初めて見る、祖父の表情だった。
「予言しておくが、家に行ったらきっと驚くぞ」
「え、お家訪問でそんなに驚くこととかあるんですか?」
「はっ、説明しても無駄だから、行って体感してこい。規格外という意味もわかるだろう」
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「手土産は生のコーヒー豆を持っていけ」
「わかりました、最高級品を用意していきます」
「それでいい。まあ、やつはコーヒーの味など分からんだろうがな」
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【第31話 夜のグリモワルド邸〜ピリカとグリモワルドの場合】
夜。グリモワルドの家。
棚に並んだ二つのコーヒー豆の瓶——太陽のマークと、月のマーク。月の方から豆が浮き上がり、いつもの魔法でコーヒーが出来上がっていく。
以前ピリカが尋ねた時、グリモワルドが何やら説明してくれたが、今のピリカに理解できたのは「月の豆は "眠気を飛ばす成分" が抜いてある」ということだけだった。
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二人はいつもの椅子に座って、コーヒーを飲んでいた。
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「対戦相手——アリサと言ったな。素晴らしい才能の持ち主じゃったの」
「本当にそうだと思います。あのファイアボールの弾幕を維持しながら超級魔法の詠唱を通すなんて、とんでもない集中力ですよ」
ピリカは、コップを両手で包みながら頷いた。
「そして雨が降ってよかったのぅ。まさに恵みの雨。アリサの火魔法は弱まり、水素爆発は格段にやりやすくなる」
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「そうですね」
ピリカが、少し目を逸らした。
「前日の夜に忍び込んで会場に水を撒いておく必要がなくなって、助かりました」
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「……おぬし、そんなことやろうとしてたのか」
「まず間違いなく、アリサは私の決勝までの戦い方を分析してる。きっと遠距離から押し潰してくるから、近づいて殴る隙なんて与えてくれないだろうって思ってたんです」
ピリカはコーヒーを一口飲んだ。
「おそらく水素爆発しか勝ち筋はないだろうなって。いえ、近づいて殴れればそれが一番楽ではあったんですけど」
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「お師匠様も言ってたじゃないですか」
ピリカが、グリモワルドを見た。
「"弱者が勝ち方を選んでる場合じゃない、勝つことの方が百倍大事"って。それに前日に会場に水を撒いちゃダメです、なんて規定はないわけで」
「お主、意外とやるのぅ……!」
グリモワルドが愉快そうに笑った。
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しばらく、静かな時間が流れた。
グリモワルドがコップをテーブルに置いた。
「あそこまでこちらにとって理想的な状況で、あのギリギリの引き分けじゃ。雨じゃなければ完全に負けてたの」
「それは間違いないですね」
ピリカは少し笑った。
「まぁ、運も実力のうちってことで」
「かっかっか! 間違いない!」
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ピリカがコップを膝の上で包んだ。そして、ぽつりとこぼした。
「……それにしても、世代一位なんて。夢にも思ったことなかったのに。ほんとになっちゃいましたね」
「正直、わしは全然いけると思っとった」
「え、そうなんですか?」
「窓から見てた時の、お主の努力の才能を鑑みてな」
「そ、それほどでも……」
「ただ——予想以上の相手の強さと……」
珍しく、グリモワルドが少し言い淀んだ。
「相手の強さと……?」
「予想以上のお主のセンスのなさが……」
「こんな日にまでそんなことを言って!!!」
「かっかっか! まぁ、それでも同率優勝じゃからいいじゃないか」
「それはそうなんですけどね!!!」
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三ヶ月間、ずっと張り詰めていた糸が——ふっと、緩んだ。
ゆるく笑い合う二人の声が、その夜は遅くまで響いていた。
——この家に来てから、毎日規則正しく訓練を重ねてきた。夜はいつも早く寝ていた。こんなふうに夜更かしをするのは、ピリカがここに住むようになって初めてのことだった。