魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
放課後。郊外の丘の上。
グリモワルドの家の前で、アリサが立ち止まった。
手には紙袋——手土産のコーヒー豆。それを胸の前で抱きしめている。
「……緊張してる?」
「少し」
アリサの頬が、わずかに強張っていた。
「大丈夫、理不尽に怒ったりはしないから。あと、話してると意外と普通のおじいちゃんだよ」
「……それは、流石に嘘だと思うのだけれど」
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ピリカが扉を叩いた。
「お師匠様、アリサを連れてきました」
数秒の沈黙。
がちゃり。
扉が開いた。白髪の老人が、いつもの怠そうな顔で立っていた。
「おう、ようきたな。入れ」
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玄関で、ピリカが振り返った。
「あ、お師匠様の家では靴を脱ぐんだよ」
「え——はい。わかりました」
アリサは丁寧に靴を揃えて脱いだ。
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居間に入った瞬間、アリサの足が止まった。
壁に埋め込まれた金属の管。見たことのない形の箱。床を渦巻く風の渦。天井から垂れる光の球体。棚に並ぶガラスの瓶や謎の筒——どれもこれも、見たことがないものばかりだった。
「…………」
アリサの目が、あちこちに泳いでいる。
「いちいち面倒じゃ、いったん全部気にするな。わからんもんがあったら後でピリカに聞け」
「は、はい」
「お師匠様、私の最近の経験からすると、周りにあるものたぶんほぼ全てよくわからないと思います」
「そんなわけあるかい」
グリモワルドはピリカの言葉を全く信じていない。ピリカが呆れた顔をしている。アリサは——もう既に、何から聞けば良いのかわからなかった。
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「まぁ座れ。コーヒーでも淹れよう」
グリモワルドの目が、アリサの手元の紙袋に止まった。
「お、良い手土産じゃな。あやつの勧めか?」
「は、はい。お祖父様に——」
言い終わる前に、紙袋がふわりとアリサの手から離れた。宙に浮き、口が開き、中から薄緑の生豆がさらさらと流れ出す。——紙袋はそのまま棚の上にふわりと着地した。
豆は空中をグリモワルドの方へ飛んでいきながら——もう赤く光り始めていた。
アリサの目が見開かれた。
同時に、グリモワルドが壁際の取っ手を捻った。金属の管から水が流れ出す。流れ出した水が——空中で止まった。管から離れて、宙に球体を作る。
水の球から、湯気が立った。すでに一瞬で沸騰している。
空中の豆は焙煎を終え、回転しながらガリガリと砕けていく。
アリサは椅子に座ったまま、凍りついたように動けなかった。
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だが、それだけではなかった。
グリモワルドの足元——床から、砂のような粒が集まり始めた。
粒が渦を巻き、掌の横で固まっていく。円筒形になり、縁ができ、底ができ——数秒でコップの形になった。表面が滑らかに整えられ、指で弾くと陶器の音がした。
——土魔法で、コップを生成している。コーヒーを淹れながら。
「…………っ」
アリサは息を呑んだ。
浮遊、加熱、焙煎、粉砕、造形——五つの魔法が、同時に、無詠唱で走っている。
しかもその全てが、一つ一つの精度が恐ろしく高い。
——これが、ソーラーレイのグリモワルド。
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ピリカが隣でコーヒーを淹れる様子を眺めている。
完全にリラックスした顔。——この空間に、この魔法の密度に、もう慣れきっている。
「……ピリカ」
「ん?」
「あなた、毎日これを見ているの?」
「え? あ、コーヒー? うん、毎日淹れてくれるけど」
「…………」
——毎日。この並行魔法を、当たり前に見ている。そして慣れきっている。
アリサの声が、少し震えていた。
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沸いた湯と粉が合流した。混ざり合って、褐色の液体になっていく。三つのコップに注がれる。残った粉は小さな球に圧縮されて、部屋の隅のゴミ箱に飛んでいった。
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「ほい」
コップがアリサの前にふわりと着地した。
「あ、ありがとうございます」
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さらに——背後の大きな箱の扉がひとりでに開いた。中からガラスの瓶が浮き出してくる。中身は白い液体——ミルクだ。蓋が回って外れ、ミルクが三つの球に分かれて宙に浮かんだ。
グリモワルドは確認もせず、三つのコップの上にミルクの球を跳ねないようにゆっくりと落とした。じわりと白が広がり、コップの中の液体がくるりと回って混ざった。
——その瞬間、それまでどこか呆然とコーヒーを淹れる様子を眺めていたアリサが、小さく声を上げた。
「あっ……」
「大丈夫? どしたの?」
「な、なんでもないです」
ヨッシー大好き人間さん、黒狼@紅蓮団さん、紅絽紺さん、雨曇1216さん、蛙河カントさん、lkustさんより高評価いただきました!!!
みなさまめちゃ優しい( ; ; )
評価時のコメントも嬉しいものばかり、ありがたすぎます( ; ; )
これでまだまだ戦えます....!(それはそうとして、さらに高評価は待ってます!!!(強欲