魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】   作:Koh_novel

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第46話 忙しい?人

 森を抜けて、最寄りの村に降りた。

 

 村の広場に人だかりができていた。男も女も、みな空を見上げたり、森の方を指差したりしている。顔には恐怖と困惑が入り混じっていた。

 

 ——それはそうだろう。ついさっき、真昼に突然夜が訪れ、森の方角に光の柱が立ち、地面を揺るがす衝撃が伝わり、あのドラゴンの断末魔の悲鳴が響いたのだ。

 

 ドラゴンだけでも恐ろしかったのに、さらなる異常事態が重なった。何が起きたのか分からず、ただ怯えているしかなかった——そんな顔をしていた。

 

 

 そこに、空から二人が降ってきた。

 

 老人と、金髪の少女。村人たちが一斉に振り返った。

 

「あ、あの——あなた方は……」

 

「ボルトランの依頼でドラゴンを退治しに来た者じゃ。もう片付いたぞ」

 

 グリモワルドが、なんでもないことのように言った。

 

 

 広場が静まり返った。

 

 ——片付いた。この老人が、あれをやったのか。あの夜と、光と、悲鳴。全部、この人が。

 

 村人たちの目が、グリモワルドの顔と、森の方角を行き来した。

 

「切り刻んでおいたから、素材はそのまま放置で構わん。ボルトランの使いが今日中に回収しに来る」

 

「き……切り刻んだ……?」

 

「あの、ドラゴンを……?」

 

 声が震えていた。——あのドラゴンを。この村を何ヶ月も脅かし、誰も手を出せなかったあの怪物を。切り刻んだ、と。

 

 

 年配の男が、一歩前に出た。声を絞り出すようにして言った。

 

「あの——もしよろしければ、宴を開かせていただきたいのですが。ささやかではありますが、精一杯の歓待を——」

 

 グリモワルドは、ひらひらと手を振った。

 

「こう見えて忙しい身でな。報酬はボルトランのやつから十分に受け取っておる。気にするな」

 

「そ、そうですか……」

 

「ではな」

 

 グリモワルドがピリカの方を向いた。

 

「帰るぞ」

 

「あ、はい」

 

 再び身体が浮き上がって、二人は空に昇っていった。

 

 地上で村人たちが呆然と見上げている。——あっという間に、二つの影は空の彼方に消えた。

 

 

 村人の一人が、ぽつりと呟いた。

 

「……忙しい方なんだな。そりゃ、あれだけの実力者だ、引っ張りだこだろう……」

 

 全員が、深々と頷いた。

 

 

 村長が、腕を組んだ。

 

「あの方が言っておった"ボルトラン"——あれは、主席宮廷魔法使いのボルトラン様のことじゃろうな」

 

「ボルトラン様の使いがもう回収に来るってことは……」

 

「討伐に行くことが決まった時点で、すでに手配されておったんじゃろう」

 

 村人たちの間に、沈黙が落ちた。

 

「……あの方がドラゴンに勝つなんて、当たり前ということか?」

 

「あのお二人にとっては——それが当然ということじゃろうな」

 

 

「あの、どうしようもないドラゴンが……。まるで、ちょっとした獣を狩るくらいの感覚で……」

 

「それにしても——真昼を夜に変えて、それをまた昼に戻した。まるで、昼と夜を自在に操っているようだったな……」

 

「昼と夜を司る魔法、ってことか……?」

 

「昼と夜を司る、って……それはほとんど、神様みたいな領域じゃ……」

 

 村長が、静かに言った。

 

「——なんにしろ、そんなお方を派遣していただけたのは、とても運が良かった」

 

 村長が立ち上がった。

 

「宴の用意をするぞ。あのお方は忙しいと仰って行かれたが——あのお方がやったことを、きちんと語り継がねばならん」

 

「「「ですね!!」」」

 

 

 上空。風の中で、ピリカが口を開いた。

 

「お師匠様、忙しいって——今日、この後なにかありましたっけ?」

 

「家でゴロゴロしてコーヒーを飲むのに忙しい」

 

「暇じゃないですか!!」

 

「——それに、宴なんて面倒じゃ。参加なんぞしてられるか」

 

「完全にそっちが本音じゃないですか!!」

 

 風に乗って、ピリカの声が空に消えた。

 




レラさん、水辺の狸さん、SSKUGさんより高評価いただきました!!!( ; ; )
ありがとうございますっっ!!

昨日の夜、5話くらい予約追加しました!
まだまだ毎日投稿、続けていきますよー!
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