魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
森を抜けて、最寄りの村に降りた。
村の広場に人だかりができていた。男も女も、みな空を見上げたり、森の方を指差したりしている。顔には恐怖と困惑が入り混じっていた。
——それはそうだろう。ついさっき、真昼に突然夜が訪れ、森の方角に光の柱が立ち、地面を揺るがす衝撃が伝わり、あのドラゴンの断末魔の悲鳴が響いたのだ。
ドラゴンだけでも恐ろしかったのに、さらなる異常事態が重なった。何が起きたのか分からず、ただ怯えているしかなかった——そんな顔をしていた。
⸻
そこに、空から二人が降ってきた。
老人と、金髪の少女。村人たちが一斉に振り返った。
「あ、あの——あなた方は……」
「ボルトランの依頼でドラゴンを退治しに来た者じゃ。もう片付いたぞ」
グリモワルドが、なんでもないことのように言った。
⸻
広場が静まり返った。
——片付いた。この老人が、あれをやったのか。あの夜と、光と、悲鳴。全部、この人が。
村人たちの目が、グリモワルドの顔と、森の方角を行き来した。
「切り刻んでおいたから、素材はそのまま放置で構わん。ボルトランの使いが今日中に回収しに来る」
「き……切り刻んだ……?」
「あの、ドラゴンを……?」
声が震えていた。——あのドラゴンを。この村を何ヶ月も脅かし、誰も手を出せなかったあの怪物を。切り刻んだ、と。
⸻
年配の男が、一歩前に出た。声を絞り出すようにして言った。
「あの——もしよろしければ、宴を開かせていただきたいのですが。ささやかではありますが、精一杯の歓待を——」
グリモワルドは、ひらひらと手を振った。
「こう見えて忙しい身でな。報酬はボルトランのやつから十分に受け取っておる。気にするな」
「そ、そうですか……」
「ではな」
グリモワルドがピリカの方を向いた。
「帰るぞ」
「あ、はい」
再び身体が浮き上がって、二人は空に昇っていった。
地上で村人たちが呆然と見上げている。——あっという間に、二つの影は空の彼方に消えた。
⸻
村人の一人が、ぽつりと呟いた。
「……忙しい方なんだな。そりゃ、あれだけの実力者だ、引っ張りだこだろう……」
全員が、深々と頷いた。
⸻
村長が、腕を組んだ。
「あの方が言っておった"ボルトラン"——あれは、主席宮廷魔法使いのボルトラン様のことじゃろうな」
「ボルトラン様の使いがもう回収に来るってことは……」
「討伐に行くことが決まった時点で、すでに手配されておったんじゃろう」
村人たちの間に、沈黙が落ちた。
「……あの方がドラゴンに勝つなんて、当たり前ということか?」
「あのお二人にとっては——それが当然ということじゃろうな」
⸻
「あの、どうしようもないドラゴンが……。まるで、ちょっとした獣を狩るくらいの感覚で……」
「それにしても——真昼を夜に変えて、それをまた昼に戻した。まるで、昼と夜を自在に操っているようだったな……」
「昼と夜を司る魔法、ってことか……?」
「昼と夜を司る、って……それはほとんど、神様みたいな領域じゃ……」
村長が、静かに言った。
「——なんにしろ、そんなお方を派遣していただけたのは、とても運が良かった」
村長が立ち上がった。
「宴の用意をするぞ。あのお方は忙しいと仰って行かれたが——あのお方がやったことを、きちんと語り継がねばならん」
「「「ですね!!」」」
⸻
上空。風の中で、ピリカが口を開いた。
「お師匠様、忙しいって——今日、この後なにかありましたっけ?」
「家でゴロゴロしてコーヒーを飲むのに忙しい」
「暇じゃないですか!!」
「——それに、宴なんて面倒じゃ。参加なんぞしてられるか」
「完全にそっちが本音じゃないですか!!」
風に乗って、ピリカの声が空に消えた。
レラさん、水辺の狸さん、SSKUGさんより高評価いただきました!!!( ; ; )
ありがとうございますっっ!!
昨日の夜、5話くらい予約追加しました!
まだまだ毎日投稿、続けていきますよー!