魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】   作:Koh_novel

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第55話 金、稼げよ

 

 翌朝。

 テーブルの上には、焼き菓子の包みが開いていた。昨日の帰り際、お母様が『グリモワルド様とご一緒に』と持たせてくれた差し入れだ。

「ふむ、うまいのう。さすが侯爵家の菓子じゃ」

「ですよね。これ、私が小さい頃から大好きなやつなんです」

 朝から二人で、遠慮なくつまんでいた。優勝の余韻と、和解の余韻と。なんだか少しだけ、行儀の悪い幸せだった。

「それで、お師匠様。昨日の……お金を稼ぐ話なんですけど」

「おお、もう考えたのか」

「考えたというか……一晩中、頭から離れなかったというか……」

 

 まずピリカの頭に浮かんだのは、部屋の棚にしまってある革袋だった。

 

 ——勘当の日に持たされた、手切れ金。

 

 あの頃は、見るのも嫌だった。自分が捨てられた値段みたいな気がして、中身を確かめる気にもなれなかった。

 

 でも、今は違う。

 

 あれはもう手切れ金じゃない。家族からの——支援金だ。

 

 だからこそ。

 

 ……だからこそ、安易に使いたくなかった。

 

「……たしかに、いつまでもお師匠様と家族に甘えてるわけには、いきませんよね」

 

「うむうむ。そこの金は、もうもらったものじゃ。別に使えばよいとは思うがの——自分の力で稼いだ金で食う飯のほうが、気持ちがいいじゃろ?」

 

「は、はい。確かにそうです」

 

 即答できた。自分でも少し驚くくらい、素直に。

 

 

「もう一度言うが、猶予は半年じゃ。それまでになんとかせい」

 

「は、はい! ちなみにお師匠様、何か、あてのようなものは……」

 

「ま、魔物でも狩ればよかろう。月に1、2匹も狩ってくれば、生活費くらいにはなるじゃろて」

 

「ま、魔物ぉ!?」

 

「なんじゃその声は。週末にでも軽く行って、軽く狩って、軽く帰ってくればよいではないか」

 

「軽くの回数!」

 

 ——お師匠様の『軽く』を信用してはいけない。

 

 空を軽く飛ぶし、ドラゴンを軽く蒸発させるし、コーヒーを軽く無音で淹れる人の『軽く』だ。

 

「わしもボルトランの依頼でたまに狩っておるがの。あれは1匹で、なかなかの実入りになるぞ」

 

 (お師匠様が受けてる依頼って、本来は軍隊が出ていくようなやつなんですけど……)

 

 ピリカはドラゴン討伐の光景を思い出した。あの報酬と、私がそのへんの魔物を狩った報酬が、同じなわけがない。

 

 ……でも。

 

 でも、もっと弱い魔物なら。私の魔術でも倒せるくらいの相手なら、数をこなせばなんとかなるかもしれない。真空もあるし、電気もあるし、メリケンサックだってある。——いざとなれば、小さめの水素爆発という切り札だってあるのだ。

 

「は、はい……。なんとかします」

 

 

 ピリカは膝の上で、ぐっと拳を握った。

 

 家族からの支援金は、ありがたい。あの袋に込められた気持ちごと、本当にありがたいと思っている。

 

 だからこそ、できるだけ手をつけたくない。

 

 自分の力で稼いで、生活して——いつか胸を張って、『もう大丈夫だよ』と言いたい。

 

 それが、新しくやり直す家族との、一番いい関わり方のような気がした。

 

「うむ、よい顔じゃ」

 

 グリモワルドが満足そうに頷いた。

 

「ところでお主、稼げるようになったら、コーヒー豆はちょっと良いやつを頼むぞ」

 

「私の稼ぎを家計に組み込まないでください!?」

 

「かっかっか! 師匠孝行と思えばよいじゃろ!」

 

「まだ銅貨1枚も稼いでないんですよ!!!」

 

「かっかっか!!」

 




おちつき太陽さん、ナナシロキさん、観光客の兎さん、金属の水瓶と羊さんから高評価いただきました!
ありがたすぎですっ!、!!

そして、観光客の兎さんからは評価コメで「作られたようなヒールがいなくて大半の人物に好感が持てる」「おじいちゃんかっこいい」といただいてて、そこ意識して書いてるのでめっちゃ嬉しかったです( ; ; )
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