魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】 作:Koh_novel
翌朝。
テーブルの上には、焼き菓子の包みが開いていた。昨日の帰り際、お母様が『グリモワルド様とご一緒に』と持たせてくれた差し入れだ。
「ふむ、うまいのう。さすが侯爵家の菓子じゃ」
「ですよね。これ、私が小さい頃から大好きなやつなんです」
朝から二人で、遠慮なくつまんでいた。優勝の余韻と、和解の余韻と。なんだか少しだけ、行儀の悪い幸せだった。
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「それで、お師匠様。昨日の……お金を稼ぐ話なんですけど」
「おお、もう考えたのか」
「考えたというか……一晩中、頭から離れなかったというか……」
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まずピリカの頭に浮かんだのは、部屋の棚にしまってある革袋だった。
——勘当の日に持たされた、手切れ金。
あの頃は、見るのも嫌だった。自分が捨てられた値段みたいな気がして、中身を確かめる気にもなれなかった。
でも、今は違う。
あれはもう手切れ金じゃない。家族からの——支援金だ。
だからこそ。
……だからこそ、安易に使いたくなかった。
「……たしかに、いつまでもお師匠様と家族に甘えてるわけには、いきませんよね」
「うむうむ。そこの金は、もうもらったものじゃ。別に使えばよいとは思うがの——自分の力で稼いだ金で食う飯のほうが、気持ちがいいじゃろ?」
「は、はい。確かにそうです」
即答できた。自分でも少し驚くくらい、素直に。
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「もう一度言うが、猶予は半年じゃ。それまでになんとかせい」
「は、はい! ちなみにお師匠様、何か、あてのようなものは……」
「ま、魔物でも狩ればよかろう。月に1、2匹も狩ってくれば、生活費くらいにはなるじゃろて」
「ま、魔物ぉ!?」
「なんじゃその声は。週末にでも軽く行って、軽く狩って、軽く帰ってくればよいではないか」
「軽くの回数!」
——お師匠様の『軽く』を信用してはいけない。
空を軽く飛ぶし、ドラゴンを軽く蒸発させるし、コーヒーを軽く無音で淹れる人の『軽く』だ。
「わしもボルトランの依頼でたまに狩っておるがの。あれは1匹で、なかなかの実入りになるぞ」
(お師匠様が受けてる依頼って、本来は軍隊が出ていくようなやつなんですけど……)
ピリカはドラゴン討伐の光景を思い出した。あの報酬と、私がそのへんの魔物を狩った報酬が、同じなわけがない。
……でも。
でも、もっと弱い魔物なら。私の魔術でも倒せるくらいの相手なら、数をこなせばなんとかなるかもしれない。真空もあるし、電気もあるし、メリケンサックだってある。——いざとなれば、小さめの水素爆発という切り札だってあるのだ。
「は、はい……。なんとかします」
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ピリカは膝の上で、ぐっと拳を握った。
家族からの支援金は、ありがたい。あの袋に込められた気持ちごと、本当にありがたいと思っている。
だからこそ、できるだけ手をつけたくない。
自分の力で稼いで、生活して——いつか胸を張って、『もう大丈夫だよ』と言いたい。
それが、新しくやり直す家族との、一番いい関わり方のような気がした。
「うむ、よい顔じゃ」
グリモワルドが満足そうに頷いた。
「ところでお主、稼げるようになったら、コーヒー豆はちょっと良いやつを頼むぞ」
「私の稼ぎを家計に組み込まないでください!?」
「かっかっか! 師匠孝行と思えばよいじゃろ!」
「まだ銅貨1枚も稼いでないんですよ!!!」
「かっかっか!!」
おちつき太陽さん、ナナシロキさん、観光客の兎さん、金属の水瓶と羊さんから高評価いただきました!
ありがたすぎですっ!、!!
そして、観光客の兎さんからは評価コメで「作られたようなヒールがいなくて大半の人物に好感が持てる」「おじいちゃんかっこいい」といただいてて、そこ意識して書いてるのでめっちゃ嬉しかったです( ; ; )