魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】 作:葛川忍
学校を社会の縮図として見るならば、放課後の教室にも人の顔色が出る。
クラスメイトと楽し気に喋る者、掃除の登板を割り当てられ不満そうな者、恋に心を浮かせている者、誰とも顔を合わせずそそくさと帰る者。
ユメミは最後の例に漏れなかった。
あまりクラスメイトに価値を感じていない。
だが、ユメミに対して周りはそうではなかった。
ユメミは目立つ。
特に、思春期の男子の多くにとってユメミの顔と身体は欲望を掻き立てる。
裸にしてみたい。唇を味わいたい。粘膜を結び付けてみたい。
そう思っているのかはわからぬが、男子の中のひとりがユメミに声をかけてくる。
「ユメミっち! 帰るの? ダメダメ! 今日は帰さねーから……………なんつって! あ、このノリあんまおもんねーか。だはは!」
「チャラスケ………」
ユメミはこういう類の男が嫌いだった。
顔立ちは良い。
背も高く体にも無駄がない。
だが雑に染めた金髪が気に入らない。拘りなく開けたピアスが気に入らない。
そしてなにより女にモテることでアイデンティを掴もうとしているような生き様が気に入らない。
なぜこの男はウザがられているのにこのノリで話しかけてくるんだろう。ユメミは不思議だった。
「いや、マジで今日は帰さねーから」
「ウザ。キモ。普通に帰るけど」
「ちょ! どんだけSなのユメミっち! 今日はオカ文部の部会なんだって! ユメミっちもう3週サボってんじゃん。まじで指導入るよ」
「_____めんど」
実際ユメミは部活があることを忘れていた。
それどころの状況にないので仕方ない。
ユメミの通う東中高校は私立で、生徒には部活への参加が義務付けられている。
部活への出席率も内申に響くし、あまりにも参加姿勢が見られなければ指導が入り呼び出される。
「いいじゃん
「触んなし」
ユメミは肩を叩こうとしたチャラスケの手を叩いて退けた。
どうせ身体接触が異性の心を動かすとでも思っているのだろう。ユメミはチャラスケのそういうところを軽蔑している。
「オタクくんと部長にもユメミっち連れてくるって約束しちゃったからさ。ね? ね? 部活行こーよ♡ お願ーい♡」
「そのクネクネした動きなんとかなんない?」
通称オカ文部とは、オカルト・文学研究部の略で、部員はユメミとチャラスケを含め5人。
部活設立時の目標は「神秘が文化に与える影響を調査し、文学として落とし込む」というものだったが5人いるなかで文筆活動しているのは2人だけ。ユメミを含め残りの3人は活動内容にまるで興味がないのに籍を置いている。
ユメミは単に1番面倒が少なそうだから入部しただけで、チャラスケはユメミがいるから入部したのだろう。
「ノーって言ってないってことは来てくれるってことで確定っしょ? やったーーーーーーーー!!」
大袈裟に軽いノリで喜んで見せるチャラスケ。
ユメミはまだ行くともなにも言ってはいないのに。
~~~ユメミ。行くといい。友人は大切にしろ。~~~
突然クラウスの声が鼓膜に響きユメミは驚いた。
「_____ッ! きゅ、急に喋んなし!」
「は? 俺なんか言ったっけ?」
クラウスの声はユメミの鼓膜に直接音を伝えているので当然周りには聞こえない。
例えるなら密閉型イヤホンから意図せず音が流れるような感覚か。
ユメミが驚くのも無理はないだろう。
~~~現状、異星人が活動している気配も見られない。UCOから情報もない。君の日常生活を最低限守る義務が私にはある。~~~
「わかったよ。行くよ。行けばいいんでしょ」
「マジ! マジマジィ!? バンザーイ! バンザーイ!!」
チャラスケはユメミの言葉が自分に向けられたものだと思い再度大袈裟に喜んでみせた。
滑稽だとユメミは馬鹿にしているが、それも茶山良介なりの努力だとユメミの若さでは気づけない。