魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】 作:葛川忍
人は夕暮れに思いを重ねる。
その意味は人によって違うだろうが、高校生にとっても夕暮れは終わりの始まりを感じさせる時間だろう。
下校路の歓楽街、高層ビルの窓ガラスに反射した陽光が街ゆく人の顔に色をつける。
たんなる自然現象とも言えるが、赤く染まった街にユメミはなにを感じているのだろうか。
~~~ユメミ。どうして突然帰ったりした? あれでは他の仲間が戸惑うではないか。~~~
「仲間じゃねーし」
ユメミはクラウスの声をシャットアウトしようと密閉型イヤホンを耳に挿しこみ音楽を流すが、そもそもクラウスは身体の内から話しかけてくる。
無駄だった。
~~~仲間を大切にするのは我々上位次元でも変わらない。もしあの橘愛華になにかしらのストレスを感じたのなら互いに良好な関係を維持できるように善処すべきじゃないか。~~~
「うるさい。話しかけんな」
クラウスは戸惑った。
ユメミに疎まれることはあれど、明確に会話を拒絶されたのははじめてだった。
~~~ユメミ。地球人の感情処理は複雑だという知識はある。これはわたしが君を知るためでもあるんだ。何か問題があるなら共有してくれ。~~~
ユメミは答えず、街の交差点で赤い信号を前に止まった。
目の前を魚群のように車が流れてゆく。
~~~君の精神状態はわたしの使命にも関わる。何も無暗に君の行動に介入しようというわけじゃない。君の精神活動は変身後のパフォーマンスにも関わる。条件が知りたい。話せる範囲でいい。教えてくれないか。~~~
信号が変わり周囲の人並がまた動きはじめる。
その流れにユメミの靴が一拍遅れた。
「ほんと、話が長い」
ユメミは僅かに苦笑した。
「
~~~過去? 知り合いだったという事か? なにか人に知られたくない過去があるのか?~~~
「根掘り葉掘り聞こうとすんじゃん。ノンデリかよ」
鉄道の高架下の影の下でユメミは口を開く。
顔色に影が落ちていた。
ここまで来ると人混みも多少薄くなる。
「ジュニアアイドルだったんだ。あたし」
~~~アイドル? 悪い話に聞こえないが? 特にこの国ではアイドルは憧れの的だと知識にあるが。~~~
「オッサンどもに股の写真撮られるのが憧れの的になるならね」
~~~どういうことだユメミ。わたしにはわからない。何があったんだ?~~~
「あんた地球になにしに来てんの? 勉強しなよ」
クラウスは大局的な知識しか持ち合わせていない。
素直な彼は自分の知識不足を恥じ「すまない」と詫びた。
そのクラウスの単純さにユメミは思わず毒気を抜かれそうになる。
「とにかく、
~~~君の意志は尊重するが、せっかく小説が書きかけなのに勿体ないと思うぞ。知的活動として文章を書くことは良いことじゃないか。~~~
「世の中良い悪いで動くほど単純じゃないっつーの」
街の喧騒から遠ざかり生活の場への境界に近づいた時、クラウスの意識が鋭くなる。
~~~馬鹿な。~~~
突然クラウスは深刻な声を出した。
「あんた馬鹿っつった?」
~~~狂っているのか、テンタル星人。~~~
テンタル星人、その名を聞いてユメミの意識にも緊張が走る。
「出てきたの?」
~~~場所が問題だ。意図がわからない。完全に理性的でない。~~~
「結論から先に言えよ」
~~~ユメミ。今すぐ戦闘準備だ。それとスマートフォンを貸してくれ。UCOの助けがいる。~~~
「だから場所はどこなんだって」
ユメミは苛立っている。
~~~奴は君がさっきまでいた学校に出現した。~~~
時刻は18時過ぎ。
最終下校時刻よりも30分早い。
安戸や愛華がまだ部室にいても不思議ではない時間だった。