魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】   作:葛川忍

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 感情を露わにしている時、その人間の本性がでる。

今ユメミは怒りのために壮絶なまでに顔を歪ませていた。

普段の彼女からは考えられないことであった。

 

そしてその怒りは、触手によって校舎の壁に貼り付けにされた事後のオブジェ(にんげん)を見た瞬間に膨れ上がったのである。

 

 

 ~~~ユメミ。奴を相手に四方を壁に囲まれた空間で戦うのは不利だ。場所を変えた方がいい。~~~

 

 クラウスの言うことは事実である。

量子トンネルを使い自在に触手を伸ばせるテンタル星人と閉所で戦うのは自殺行為である。

 

しかしユメミはまだ背後で身動きを忘れている愛華の存在を横目で見た。

 

 「こいつを放っておけって言うの?」

 

 ~~~ユメミ、奴の狙いは君だ。橘愛華が攻撃を受ける可能性は低い。~~~

 

 100パーセントじゃない。そう認識しユメミは奥歯を噛み締める。

 

同時にテンタル星人が戦闘態勢に帰った。

 

 ~~~ユメミ! 来るぞ!~~~

 

 ユメミの両脇の壁から物理の壁を無視しタール色の触手が放たれる。

 

 「ブリッツ・バタフライ!!(閃光切り裂く刃)

 

ヂヂヂ、という音と共に刃の伸びた魔法のカッターナイフがユメミの両手の中に光と共に構成され、ピンク色の軌跡を描きながら伸びて来た触手を切り裂いた。

 

逆手に構えている。

こうすると、自然な腕の動きに無理なく刃が後を追ってくる。

 

映画で見た見様見真似だが、ナイフ術とは身を守りながら戦うための技術であるとユメミは瞬時に理解した。

 

 「なにやってんだよ橘! 早く逃げろよ!!」

 

 ユメミは背後に守っている愛華に叫んだ。

しかし愛華は腰が抜けてしまったのだろう。尻を床につけたまま震えている。

 

 「動けない………。動けないんです」

 

 愛華は変身したユメミを廻理夢だと認識していない。

 

 ~~~ユメミ! 橘愛華に構うな! 今はテンタル星人を処理することだけを考えるんだ! ここから離脱しろ!~~~

 

 「人に優しくねえオタクとかマジで生きてる価値ねえから!」

 

 ~~~ユメミ!~~~

 

 ユメミはクラウスの指示を聞かず、廊下奥のテンタル星人目掛け飛んだ。

背中には光の羽根が構成されている。

 

 「ヴァルキリー・ジェイダ!(戦女神の剣)

 

 ユメミは賢い。

ナイフが身を守りながら戦うためのものと知り、敵を切り倒すためのものでないと理解すると新たな武器を構成した。

 

それは一振りの長剣であった。

白銀色の諸刃剣。

柄にはピンクダイヤで装飾されており、刃はピンク色の光を帯びている。

 

 ~~~いかん! ユメミ! その武器ではダメだ!~~~

 

 しかしユメミは(さか)しらだった。

 

 「____ッ!? なんで!?」

 

 テンタル星人の懐に飛び込み剣を横一文字に切りつけた瞬間、ユメミの表情が変わる。

 

刃はテンタル星人の腕を叩いただけで、棒を振ったくらいのダメージしか与えられなかった。

 

 「ピィィィィィィィィィ」

 

 機械的なテンタル星人の声が響くなり、床から生み出された触手により一瞬にしてユメミの前身は絡めとられてしまう。

 

その瞬間にユメミの敗北は確定した。

 

 ~~~ユメミ。君は剣を扱ったことなどないだろう。物体を切れるだけの()()()()()()()()()()()()()。今回は君の負けだ。~~~

 

 「何冷静ぶって言って________ひぎいッッッッッッッッ!?」

 

 ユメミの言葉は悲鳴によって途切れる。

コスチュームのスカートの中にタール色の触手が突入していた。

 

 「あげッ、おッ、げええっ、げうっ! あぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 体の内部を逆流する凄まじい異物の痛みにユメミは獣のような叫び声をあげた。

身体を逃がそうにも両足を掴まれ、もう一本の触手で中心から固定されているせいで何もできない。

 

 「ひッ____たす____げっ! クラウス____だずけッ!!」

 

 助かりたい一心で再度魔法のカッターナイフを両手に構成するも、新たに伸ばされた触手により両手首も繋がれてしまうユメミ。

 

 

もっとも両手が自由であっても、精神が萎えている状況では触手を切り裂けないであろうとクラウスは分析している。

 

 ~~~すまないユメミ。わたしが甘かった。文明保護管として現象の影響を可能な限り残しつつ、次は負けない状況を作る。今回は耐えてくれ。~~~

 

 「クラ______うえ、えっ、えッ______おごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッ!!」

 

 仰け反ったユメミの口から体液を(まと)わせて極太の触手が勢いよく飛び出した。

ユメミは他の生徒と同じく淫獄のオブジェと化した。

しかしそれはユメミにとってこれから始まる地獄の幕開けに過ぎなかった。

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