魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】   作:葛川忍

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  「マジで無理ゲーじゃん。暗いし、遠いし、絶対無理っしょこんなの!」

 

 ~~~他に手がないのだ。大丈夫。ユメミ。君ならできる。~~~

 

 「気安く言うなっつーの」

 

 そう言いつつもユメミの精神は高揚していた。

 

 「マジで魔法少女じゃん。あたし」

 

 東中高校の上空300m。

魔法少女に変身したユメミは肩に奇妙なハンマーを担ぎ、遥か地面を見下ろしている。

この都市のトレードマークである赤い鉄塔に迫る高さから見下ろす学校は豆粒程度の大きさに見える。

 

 ~~~そもそも魔法少女とはなんだユメミ。君のイメージしたコスチュームはとてもではないが戦闘用には思えない。~~~

 

 「今度ネトブリでも見ればわかんじゃねーの」

 

 ~~~まあいい。もう一度作戦を確認しておくぞユメミ。~~~

 

 クラウスとUCOで立案した作戦は単純である。

学校にやってきたテンタル星人を屋外におびき寄せ、予め上空で待機したユメミの急降下攻撃により殲滅する。

 

 「赤い光がチカってしたら、全力でテンタル星人をぶっ叩く。そんだけでしょ?」

 

 ユメミに姿を似せた囮役はテンタル星人のイチを上空のユメミにストロボライトによって知らせる。

無論、テンタル星人の実際の位置とストロボの位置にズレはあるが、変身し動体視力が増したユメミであれば落下軌道を修正する事も可能だろう。

 

 ~~~そうだ。そしてテンタル星人はそもそもこの次元で活動するためのアバターだ。配慮する必要はない。~~~

 

 クラウスにとっての懸念は土壇場でユメミが手心を加える事だったが、95回目の夢でユメミが届かずともテンタル星人を叩き斬ろうとしていたのは安心材料になった。

 

 「ガチでUCOの人たちは大丈夫なんだろーな。嘘だったら二度と協力しねーから」

 

 ユメミにとっての懸念は急降下攻撃の衝撃でUCOの人員に死傷者が出ることだった。

 

 ~~~問題ない。彼らもプロだ。人的被害が出ないよう段取る。後は君のマナの操作次第だな。~~~

 

 クラウスは答えたが、その口ぶりはあたかも既にそうなる事を知っているようでもある。

 

 「言ってくれんじゃん」

 

 しかしユメミは高揚していた。

まるで空想世界の出来事のように、魔法少女に変身し敵と戦う。

他の誰にも成し得ない自分が主人公の物語に酔っていた。

しかし、酔っていなければ彼女は今ここにいなかっただろう。

 

そしてユメミとクラウスの視界の先。

闇に包まれた校舎の屋上で赤いストロボが光る。

 

 ~~~ユメミ。~~~

 

 そうクラウスが声をかけるよりも早く、ユメミは背中に展開した白い羽根、ルシフェルフェザーに力を伝導させるとピンク色の光を跡に曳きながら加速落下をはじめた。

 

 「ギガンティック_____」

 

 ユメミは鼻先から急降下しながら奇妙なハンマーを振り上げる。

それは長い柄に黒い厚底靴のような塊が付いた魔法のハンマーであった。

 

剣では切れない。

切れるだけの時間を伴うイメージが持てない。

カッターナイフで接近戦を仕掛けるにはテンタル星人は危険すぎる。

ならば単純に質量を叩きつける大槌ならどうだ?

 

 「ギガンティック・エスペランザ!!」

 

 ユメミが叫ぶと厚底靴の大槌がピンク色に発光する。

 

 ~~~ユメミ! 接敵するぞ!~~~

 

 屋上に到達するほんの1秒ほど前、ユメミは囮役を触手で捕らえたテンタル星人の本体を目で捕らえた。 

僅かに落下地点と逸れている。

しかしユメミの研ぎ澄まされた神経が瞬時にルシフェルフェザーを輝かせ鋭角に軌道を修正した。

 

 「でりゃあああああああああああああああ!!!」

 

 そして着地する瞬間、ユメミが創造した破壊の槌、ギガンティック・エスペランザは振り下ろされたのだ。

 

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