魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】 作:葛川忍
「なにこれなにこれ!? なんなのこれ!!」
ネイルのついた指先からやがて脱毛サロンに通う脇まで、マニキュアを塗ったつま先から少女としての完成形に近い尻まで。
ユメミの細胞で成り立っている部分すべてが虹色の輝きに包まれている。
~~~融合だ! 君の体に私の機能を同化させているのだ!~~~
「頭ん中から声がするんだけど!?」
~~~安心しろ! 文明保護官の規範により、思考のプライバシーは守っている。脳には最低限の同化しかしていない。脳内の声に聞こえるのは鼓膜に直接信号を送っているためだ!〜〜〜
「早口で説明しすぎなんですけど! オタクくんかよ!? ………………………ひあッ♡?」
突如ユメミは身体の芯に眩暈がするような痺れを感じ短い悲鳴をあげた。
秘めたアンダーラインから脳髄を一直線に官能的なしびれを感じたのだ。
思わずその場にへたり込みそうになるユメミ。
かろうじて耐える太腿が官能に震えていた。
「ちょッ……………♡ なにしてくれてんの人の身体に………………♡」
~~~すまん。必要上性器にも機能を振り分ける必要があった。君たちが性的な刺激を特別視しているのは理解している。これ以降、刺激を与えないと約束しよう。~~~
「………………つぅ♡ 勝手、言うなし………………」
甘い痺れが収まると同時にユメミの肉体を輝かせていた虹色の光が消えた。
雑居ビルの屋上には制服をきたひとりの女子高生が体内に宇宙からの使者を宿し残された。
~~~伝えたいことは多数あるが、今伝えるべき必要な事を伝える。~~~
「女子高生の身体ん中に入り込んでなんか悪いとか思わないわけ?」
ユメミは突然体内に浸食を受けた反動か、脱力を感じ壁を背に身体をもたれさせる。
頬が上気していた。
~~~最優先事項だ。まず私と融合した君には私の機能が与えられる。そして君の脳神経に眠る退化した機能を活性化させた。~~~
「説明が長い」
ユメミはスカートのポケットから笛に似た喫煙具を取り出しGALLZのグロスを塗った唇に咥えた。
~~~君は未成年だろう。喫煙は違法のはずだが?~~~
「ニコチン入ってねーから」
~~~そのことに関しては後で議論しよう。説明を省いて伝えると、君には私の機能の一部が与えられた結果、現時点の地球文明にない力の操作を可能としている。君たちの言葉で表現するなら魔法というものだ。~~~
「魔法、……って」
ユメミは紫煙を吐き出して苦笑した。
あまりにも漫画じみている。
この17歳の少女には漫画の出来事をフィクションと捉えることができる当然の理性がある。
だが、理外のことについては
~~~ひとつ、君は君が想像しうるものであれば具現化できる。小さいものなら君が今吸ってるタバコのようなものから、大きなものでは惑星間航行を可能とする船のようなものまで。これは私の機能を貸す形だが。~~
「だから、タバコじゃなくってベープだって。つか、無敵じゃんそれ」
~~~もうひとつ、これは私も想定していなかったことだが、君と融合したことにより私の中の眠っていた魔法の機能が目覚めた。それは君と融合した時点より後の出来事を夢にできる
「無敵じゃん」
~~~だが、回数に制限がある。夢にできる回数はあと97回だ。~~~
「なんか回数中途半端じゃね?」
~~~もうひとつ伝えるべきことを手短に言う。今、この星はならず者星人12人に干渉を受けている。わたしたちの役目は、彼らの干渉からこの星の文明を保護することだ。~~~
「勝手に
~~~今回の融合は緊急の措置だった。すまなく思っている。だが聞いてほしい。~~~
ユメミはクラウスの言葉を聞きながら屋上の床に視線を落とした。
先ほどまであったホスト風の男は綺麗に消え去り、零れ落ちた異形の臓物も、蜜色の液体も消えている。
魂の奥底から渇望していた非日常が向こうの方からやってきた興奮に、ユメミは冷笑を気取りながらも震えていた。
クラウスはユメミの様子を気にすることなく
曰く、クラウスの言うならず者星人たちは旅行中に不慮の事故で不時着したという
12週間後、彼らを母星に戻す船が来るまでの間、彼らが
「へぇ……警察みたいなもんなん?」
~~~警察とは違うな。どちらかと言えば環境保護のようなものだ。~~~
気が付けば陽がだいぶ落ちていた。
赤い陽射しがユメミを夕色に染めている。
クラウスは宣言通りユメミの思考を読み取ることはしなかったので彼女が何を思っているか測りかねている。
しかし、クラウスは望まざる気配を感じ意識を切り替えた。
~~~ギャルくん、まずいな。~~~
最後のひと吸い紫煙を吹き出したユメミが喫煙具をポケットに戻そうとした時、クラウスが説明を打ち切るような言葉を出した。
「ユメミ。ギャル呼びとかマジで失礼」
~~~ユメミ。奴はもう一度君に接触するつもりだ。~~~
「は?」
~~~前方に移動しろ! 接触まで2秒。~~~
「2秒? なんだっつーの!?」
疑問を抱きながらもクラウスの声に緊迫したものを感じ本能的に3歩前に足を進めたことが彼女を救った。
ブジュル。
柔らかい肉を握りつぶすような音にユメミは振り向く。
「マジ、なんなんだよ……」
そこには凌辱の意志が牙を剥いていた。
先ほどまでユメミがもたれていた壁からタール色をした触手の先端が飛び出し宙を泳いでいる。
触手は壁を突き破るのではなく、壁そのものから生えてきたように見えた。
~~~ユメミ。後のことは後で話し合おう。今は協力してくれ。テンタル星人を撃退するぞ。~~~
「か、勝手に決めんなし」
だが宇宙から降ってきた
「トゥルルルルルルルルルル」
雑居ビルの屋上、先ほど一旦姿を消した異星人テンタル星人が水面から浮かび上がってきたかのように姿を現したのである。