魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】 作:葛川忍
ユメミは異星人と戦う魔法少女に選ばれた。
選ばれてしまった。
そして魔法少女に変身しテンタル星人を退けた。
アニメであればエンディングテーマが流れて次の週になるのだろうが、現実はそうもいかない。
「それで、どう帰れっていうの。こんなんじゃ町、歩けないじゃん」
ユメミは改めて自分の身体を確かめる。
レオタードとフリルのついたスカート、袖が一体化した魔法少女の恰好。
露出も多く、胸の谷間、太もも、臍の周囲から張りの良い素肌が解放されていた。
このまま町を歩き好奇の目にさらされSNSに盗撮画像が載ってしまうかもしれない、とユメミは心配している。
「おまけに制服もパンツも全部飛び散りくさるし。どーしてくれんだっつーの、マジで」
あれ、高かったんだけど。とユメミは頬を膨らませた。
今日着けていたブラとショーツはユメミのお気に入りだった。
しかしクラウスの力を借りて変身した際にすべて千切れ飛んでしまったのである。
~~~心配するな。ひとつずつ説明しよう。まず移動する際、私の機能を使う。光学迷彩と言えばわかるか? そのまま空を飛べばまず視認されることはない。~~~
「それで家まで行こうってわけ? 家はいる時どうすんのよ。あたしこの恰好でママに会うのイヤなんだけど」
~~~説明は最後まで聞け。これは重要な事だが、今君が着ているものは私そのものだ。~~~
「は? つまり、あんた、あたしのこの服ってわけ?」
ユメミはギョっとし、改めて自分のコスチュームを気にした。
~~~そうだ。先ほど出したナイフも羽根も、わたしの肉体を使っている。コスチュームもすべてそうだ。~~~
「キモッ!! まじでキモッ!!」
ユメミは思わず自分の身体を抱いた。
嫌でも自分の胸や股間を意識してしまうのだろう。
ユメミのコスチュームはレオタードをベースにしている。
乳首もアンダーラインも未知の素材に密着し守られている。
その素材そのものがクラウスだというのだから無理もない。
~~~ここにも人が来ないとは限らん。移動するならさっさと移動するぞ~~~
「仕切んなしヘンタイ」
ユメミはモヤモヤを処理できない。
しかし留まる理由もないのでユメミは再び翼を展開した。
同時にクラウスが光学迷彩の機能をコスチュームに与える。
光を屈折する幕を張り、ユメミの身体は隠された。
ユメミは早くも状況に順応しはじめている。
初体験を終えた生娘にしては変わりようがマセているが。
◆
街のふしだらな賑わいが突然ふっと消える場所があり、そこには見えない境界線がある。
そしてその境界線の先には生活のつまらなさが広がっている。
歓楽街からそう遠くない場所にユメミの住むマンションはあった。
22階建てのマンション、402号室の2LDK、家賃22万。
ユメミのひとり親である母、
「あら~~~~! ユメミちゃんおかえりなさ~~~~~い!!」
帰宅したユメミを見るなり、母継美は大袈裟に抱き着く。
既に人目につかないところでユメミは制服姿に戻っている。
もっともそれは制服に変化したクラウスだが。
「晩御飯はどうする? 何頼む?」
「バーキン」
「はーい♪」
母親から離れ部屋に戻るユメミ。
異星人のクラウスから見ても温度のズレを感じる。
親と子という概念が別の次元にあるクラウスだが、地球人の親子関係とはこういうものだったか?
「あの人は、母親を
自室に戻ったユメミはクラウスに聞こえるように呟いた。
家に戻る最中に回収したスクールバックをベッドに投げる。
シーツから枕まで黒一色のベッドが音を立てた。
~~~ユメミ。母親をやっているとはどういう意味だ?~~~
「あんたにはわかんない。着替えるから見ないでよ」
ブラウスを脱ぎ捨て、チェックスカートのジッパーを下したときにユメミは気づいた。
そもそも今自分が身に着けているものがクラウスそのものだったと。
「最悪」
靴下を残し上から下まで裸になったユメミ。
一瞬姿見に映った自分の身体には見た目の変化はない。
そこらのグラビアモデルに引けを取らないプロポーション。
そこに自尊心を感じるが、素直に好きとも言えない過去がある。
ため息に似た短い息を吐き出しショーツに脚を通した時、
「ユメミ。母親と上手く行ってないのか?」
ギクリとして振り返るとそこには真っ裸の男がいた。
制服から人間の体に化けたクラウスだった。