魔法少女はギャルじゃない! 【魔法少女ユメミ97】   作:葛川忍

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  「_____ッ!? ぎゃあああ!!」

 

 ユメミの悲鳴が響いた。

 

ユメミの目の前には全裸のクラウスがいる。

悲鳴が出るのも無理はないだろう。

ユメミの声を聞くなり部屋のドアがノックされた。

 

 「ユメミちゃん? どうしたの? 何かあったの?」

 

 「なんでもないッ_____!」

 

 それだけ聞くなりユメミの母は「そう」と言ったきり深く関わろうとしなかった。

ユメミも母親を関わらせようとしていない。

 

 「すまないユメミ。驚かせるつもりはなかった。肉体の疑似構成を誤った」

 

 「ほんと_____ふざけんなし!」

 

 裸の男、クラウスは黒いベッドの中にユメミが咄嗟に隠した。

地球人に好印象を与える目的でつくられた顔は異常なまでに整っている。

ユメミも半裸である事を考えると酷く淫らな状況に見えるが、事故である。

 

 「つーか見んなし!」

 

 枕をクラウスの顔面に押し付けるとユメミは急いでナイトブラを着けグレーのルームウェアに着替える。

ゼラピケというブランドの上下は柔らかい生地が心地よい。

 

 「てかなんなの? 服になったりパンツになったりマッパになったり、マジでヘンタイじゃん」

 

 クラウスはいつの間にか最初に見たホスト風の姿になりベッドに腰かけていた。

ユメミは心地悪さを感じながらもネイビー色のビーズソファに身体を預ける。

 

 「説明させてくれ。まずこの姿になったのはわたしの機能に関する状況を共有させるためだ。服という装飾を失念していた。それに音と視界を介したコミュニケーションに慣れていない。私とて無意味に驚かせたり、君の母親に認知されるアクシデントを望んではいない。母親に関しては必要であれば情報を共有することも考えるが____」

 

 「だから話が長いんだって。オタクくんじゃん」

 

 その後クラウスの説明によるとこうだった。

ひとつ、ユメミの存在に融合したクラウスだが短い時間であればユメミの肉体から離れる事もできる。

できるが活動時間はせいぜい1時間が限界で地球次元の法則を無視した超能力は互いに使えなくなる。

意識のエネルギーをユメミと共有しているからだと言う。

 

 「つまり、基本あたしに粘着してないとダメってこと?」

 

 「そうだが、どうやら下着の形で密着することにストレスを感じさせているようなので、別の方法が必要に思ったのだ」

 

 「なんか非モテっぽいよね。言うことが」

 

 「非モテとはどういう意味だ?」

 

 「そんで、他の説明って?」

 

 クラウスの説明はここからが本懐であったのだろう。

主に地球文明を守るためにクラウスたちがとる行動、そしてクラウスたちの次元に関しての事である。

 

 「地球で活動を目論む異星人は12体。彼らはそれぞれの目的の為に独自に活動している。わたしと君の使命は彼らが地球文明に余計な接触を避ける為に排除することだ」

 

 「排除って、殺すってこと?」

 

 「行為としてはそう映るだろうが、そうではない」

 

 クラウスは語る。一般的な地球人であるユメミの認知でもある程度理解できるように。

 

 「そもそも我々の次元で肉体は自己の存在と同一でない。今活動している異星人も肉体は存在ではない。この次元で活動するために物質的な肉体を作り、その上で意識を投影している。その肉体が滅んだとしても死を意味しない。だから異星人を排除することに抵抗を感じる必要はない」

 

 クラウスは前回のユメミがそのせいでテンタル星人に敗北したことを知っている。

 

 「敢えて難しく言ってんでしょ?」

 

 「君たちの認知に合わせているつもりだが」

 

 「つまりソシャゲのキャラみたいなもんでしょ?」

 

 「キャラ?」

 

 クラウスは知識としてソシャゲという()()()な電子機器を使う遊戯がある事を知っている。

 

 「ソシャゲのキャラが死んでも自分が死ぬわけじゃないみたいな。そういう説明でいいじゃん」

 

 「ユメミ、君は言語能力が優れているな」

 

 「あんた高位次元の~~~とか言ってなかった? 女子高生に驚くってヤバくね?」

 

 「高次元の存在だからと言って全てに関して君たちより優れているわけではない」

 

 「SABIX出たやつにも馬鹿はいるもんね」

 

 「SABIXは知識にないが、侮辱的な発言のようだな」

 

 流石に進学塾の知識は入れてなかったのだろう。

ともかく、と前置きしクラウスは続ける。

 

 「これから異星人を追跡するにあたり、協力者の助力が必要だ。すまんがスマートフォンを借りるぞ」

 

 ユメミが何か言うよりも早くクラウスはスクールバックの中からスマートフォンを手に取る。

 

 「ひとのスマホ勝手に触んなし」

 

 ユメミがスマホを取り返そうとするより先に、クラウスはスマートフォンの挿しこみ口(ポート)に左中指そのものを埋め込んだ。

 

 「げっ」

 

 些細なことであっても奇妙を見れば気持ちが悪い。

ユメミが唸るなり、クラウスは中指をスマホから抜きユメミに返した。

 

 「君の個人情報は見ていないから安心してくれ」

 

 「あんた、今なにして」

 

 「協力者に現状を共有し、必要な支援を受けられるよう契約関係を結ぶためのスクリプトを作成した」

 

 「協力者って、誰よ」

 

 「U()C()O()だ」

 

 「ゆーこ? だれそれ」

 

 「未確認文明管理事務局。政治的立場を超え、地球文明側から見た我々との外交窓口だ」

 

 「総理大臣より偉いのそれ?」

 

 「偉い、という価値観に当てはめるべきかどうか疑問だが、傘下の国でならあらゆる協力を受けられる。資金援助、情報操作、治外法権まで。もっとも必要以上の協力を要請するつもりはないが」

 

 「すげー……………じゃん」

 

 物事のスケールはとうに女子高生が触れてよい境界を飛び越えている。

脳がフリーズしそうな想像以上のリアルに、ユメミは突然ベッドに押し倒されたような顔になった。

 

 「ユメミちゃん。ウーバー来るわよ」

 

 部屋の外から母継美が呼ぶ声によってクラウスとの話を終えるタイミングが来た。

 

 「ちょうどいい。わたしもエネルギーを消費した。君の身体に戻らせてもらう」

 

 クラウスは美男子の姿から一本の黒いベルトのような姿になると蛇のように床を這う。

 

 「ちょっ、だからいちいちキモイことすんなって!」

 

 つま先から太ももをクラウスが這う気持ち悪さにユメミは顔をしかめる。

 

 ~~~物理的接触に深い意味を持たせているんだったな君たちは。すまなかった。~~~

 

 ベルト状のクラウスは黒いチョーカーに姿を変えユメミの首に巻き付き再びユメミの身体に戻った。

 

 「……………………悪くねーセンスじゃん」

 

 姿見に映ったチョーカー(クラウス)のデザインを見てユメミはクラウスに聞こえないよう小声を出した。

黒いシンプルなチョーカーだが真ん中の金具から黒曜石のような星がぶら下がっている。

ユメミ好みのアクセントだった。

 

インターホンが鳴らされ宅配が届き、しばしユメミの本来の日常が戻る。

これからユメミを巻き込む物語のプロットを知る由もなく。

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