戦姫絶唱シンフォギア 雪音クリスは幸せになりたい 作:牛☆大権現
S.O.N.G本部。
夜明け。
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基地は静かだった。
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昨日までの戦闘が嘘のように。
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だが。
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誰一人眠ってはいない。
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研究室ではエルフナインが最後の調整を続けていた。
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「出力安定率……七十二パーセント」
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「まだ足りません……」
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彼女の目には隈が浮かんでいた。
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未来がそっとコーヒーを置く。
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「ありがとう」
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エルフナインは笑う。
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「でも、まだ寝られません」
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「この子たちを完成させないと」
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モニターには七つの新しいペンダント。
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それぞれの装者の名前が表示されている。
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響。
翼。
クリス。
マリア。
調。
切歌。
未来。
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「……お願い」
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エルフナインは小さく呟く。
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「今度こそ、皆さんを守って」
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一方。
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射撃場。
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乾いた銃声が響く。
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パンッ。
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パンッ。
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パンッ。
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クリスだった。
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変身はしていない。
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ただ黙々と撃ち続ける。
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弾はすべて中心へ吸い込まれる。
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それでも。
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撃つ。
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撃つ。
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撃つ。
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「そんなに撃っても、穴は増えないぞ」
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背後から声。
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玄十郎だった。
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クリスは振り返らない。
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「知ってる」
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また一発。
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「昨日は悪かった」
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小さな声だった。
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「何がだ」
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「……暴走した」
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「お前は止まった」
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玄十郎は静かに言う。
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「それで十分だ」
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クリスは笑わない。
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「十分じゃねぇ」
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「アンタを撃った」
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玄十郎は自分の肩を見る。
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包帯。
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「かすり傷だ」
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「普通の人間なら死ぬ」
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「俺は普通ではない」
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思わずクリスが吹き出す。
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「そこ威張るとこじゃねぇだろ」
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二人とも少し笑った。
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ようやく。
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張り詰めていた空気が緩む。
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その時だった。
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玄十郎が真顔になる。
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「クリス」
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「……何だ」
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「歌えるか」
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静寂。
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クリスはイチイバルのペンダントを見る。
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新しい。
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でも。
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その形はどこか昔の面影を残していた。
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「正直、怖ぇ」
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初めて本音を言った。
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「また暴走したら」
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「今度こそ誰か殺しちまうかもしれねぇ」
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玄十郎は少しだけ考えた。
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そして言う。
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「一人で歌うな」
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クリスが顔を上げる。
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「歌は一人で歌うものじゃない」
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「……」
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「お前はもう、一人じゃない」
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その言葉は。
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一期のクリスが一番欲しかった言葉だった。
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クリスは答えない。
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ただ。
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ペンダントを強く握る。
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その頃。
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蓬莱山。
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レイは静かに目を閉じていた。
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術式の中。
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身体は動かない。
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それでも。
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耳元で誰かが歌っている気がした。
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「……先輩?」
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違う。
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聞こえたのは歌ではない。
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「もう一人じゃない」
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誰かの言葉。
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レイは微かに笑う。
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「そうですよ」
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「先輩」
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「一人じゃないですよ」
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祭壇の最上段。
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徐福は静かに七つの座を見下ろしていた。
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李天華が問いかける。
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「師よ」
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「なぜ笑っておられないのです」
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徐福はしばらく答えなかった。
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やがて。
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「……あの娘は戻った」
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「戻った?」
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「闇からだ」
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静かな声だった。
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「だからこそ」
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「次は折らねばならぬ」
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水鏡に映る。
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雪音クリス。
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徐福は知っていた。
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今のクリスは、
まだ立ち直ったのではない。
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立ち直ろうとしている途中なのだと。
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そこを折れば。
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もう二度と立ち上がれない。
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老人は静かに目を閉じた。
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「次で終わらせよう」
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そして。
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S.O.N.G本部。
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エルフナインが最後のボタンを押す。
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七つのペンダントが同時に光を放つ。
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「完成しました」
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静かな声だった。
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「第二世代再構築型シンフォギア」
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「……起動可能です」
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全員がペンダントを見つめる。
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もう一度歌う。
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その意味を。
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それぞれ胸に抱きながら。