戦姫絶唱シンフォギア 雪音クリスは幸せになりたい 作:牛☆大権現
蓬莱山。
地下神殿。
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七人の装者が駆ける。
新型シンフォギアを纏ったまま。
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未来の神獣鏡が結界を浄化し、
響が道を切り開き、
翼が護符を断ち切り、
クリスの砲撃が巨大な岩壁を吹き飛ばす。
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「もう少し!」
エルフナインの声が通信に響く。
「術式中枢まで三百メートルです!」
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その瞬間。
山全体が震えた。
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徐福が印を結ぶ。
「蓬莱機関――第二段階。」
巨大な術式が回転を始める。
七つの座から光の柱が天へ伸びた。
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地下祭壇。
拘束されていたレイ達が苦しみ始める。
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「ぐっ……!」
レイが歯を食いしばる。
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蒼が叫ぶ。
「何だ、この力……!」
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七人の身体からフォニックゲインが吸い上げられていく。
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徐福の声が響く。
「お前達は、歌を継ぐ者。」
「だからこそ、お前達の歌は礎になる。」
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レイが睨み返す。
「ふざけるな!」
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しかし術式は止まらない。
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その頃。
術式の外では、
新型シンフォギアにも異変が起き始めていた。
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クリスの砲門が震える。
響の拳が軋む。
未来の神獣鏡にも細かな亀裂が走る。
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エルフナインが青ざめる。
「術式が逆流しています!」
「新型シンフォギアが蓬莱機関に引っ張られている!」
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つまり。
徐福は最初から読んでいた。
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「新しいギアを造る。」
その選択すら。
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翼が静かに呟く。
「こちらの一手も、読まれていたか……」
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玄十郎が前へ出ようとする。
しかし。
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クリスが腕を掴んだ。
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「待て。」
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玄十郎が振り返る。
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クリスは首を振った。
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「今行ったら……また全部、一人で背負うだろ。」
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玄十郎は何も言わない。
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「今回は違う。」
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クリスは仲間を見る。
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響が頷く。
翼も。
マリアも。
未来も。
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「アタシ達が歌う。」
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「アンタは最後の切り札だ。」
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玄十郎は静かに笑った。
「……了解した。」
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その頃。
地下祭壇。
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レイは苦しみながら目を開く。
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「先輩……」
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その時だった。
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神獣鏡の光が、
ほんの一瞬だけ地下まで届く。
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未来ではない。
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ひまりでもない。
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神獣鏡そのものが、
レイ達へ語り掛けているようだった。
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レイの脳裏に浮かぶ。
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射撃訓練。
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失敗して、
クリスに怒鳴られて、
悔しくて、
でも。
最後には必ず、
クリスは笑っていた。
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『次は当てろ。』
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それだけだった。
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レイは笑う。
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「……そうですよ。」
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「先輩。」
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「助けられるだけじゃ……終われません。」
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その言葉に、
蒼が顔を上げる。
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薫も。
ノアも。
ミナも。
リリィも。
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六人が互いを見る。
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「やるか。」
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蒼が笑う。
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「当たり前だ。」
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レイが頷く。
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六人は同時に、
砕けかけたペンダントへ手を伸ばした。
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「これが最後でも。」
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「託された歌だ。」
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砕けたシンフォギアから、
かすかな光が漏れる。
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それは変身ではない。
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歌だった。
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フォニックゲインだけが、
術式の内側から逆流を始める。
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エルフナインが息を呑む。
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「術式が……乱れてる!」
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「中から干渉しています!」
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未来が目を見開く。
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「レイちゃんたち……!」
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クリスは小さく笑った。
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「やっぱり。」
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「アタシの弟子だ。」
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その笑顔は、
これまでの戦いで初めて、
心からの笑顔だった。
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しかし。
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徐福は動じない。
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静かに目を閉じる。
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「ならば。」
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「仙たちよ。」
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「門を開け。」
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その瞬間。
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神殿最奥の巨大な石門が軋みを上げる。
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中から流れ出すのは、
これまでの仙道たちとは比べものにならない、
濃密な瘴気。
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李天華が初めて表情を曇らせた。
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「師よ……まさか。」
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徐福は静かに頷く。
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「ここから先は。」
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「人では止められぬ。」
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石門の向こうで、
何かが目を開く。
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その威圧感に、
新旧すべての装者が息を呑んだ。
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クリスは新型イチイバルを構える。
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「上等だ。」
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「歌ってやる。」
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しかし、その表情は第22話とは違う。
怒りではない。
恐怖でもない。
誰かを守るために、歌う覚悟。
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