戦姫絶唱シンフォギア 雪音クリスは幸せになりたい   作:牛☆大権現

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「継ぐ者」

警報が鳴り響く。

 

緊急出動。

 

久しぶりの戦場。

 

 

輸送ヘリの中。

 

クリスは腕を組んでいた。

 

向かいにはレイ。

 

緊張で顔が硬い。

 

 

「初実戦か」

 

クリスが聞く。

 

 

「はい」

 

 

「吐くなよ」

 

 

「もう吐きました」

 

 

「早いな!」

 

 

レイは本気だった。

 

 

袋を抱えながら震えている。

 

 

「だ、大丈夫です」

 

 

「全然大丈夫じゃねぇ」

 

 

思わず頭を抱える。

 

 

これが自分の後継者。

 

 

不安しかない。

 

 

だが。

 

その時。

 

 

レイがぽつりと呟いた。

 

 

「でも」

 

 

「?」

 

 

「先輩がいるから」

 

 

クリスは固まる。

 

 

「だから大丈夫です」

 

 

まっすぐな笑顔。

 

 

反則だった。

 

 

響系統である。

 

 

「……チッ」

 

 

顔を逸らした。

 

 

昔。

 

自分も似たような言葉に救われた。

 

 

だから弱い。

 

 

非常に弱い。

 

 

 

長野県山岳地帯。

 

 

現場は壊滅していた。

 

 

調査部隊。

 

全滅。

 

 

建物は崩壊。

 

 

だが。

 

血痕がない。

 

 

死体もない。

 

 

ただ。

 

異様な静けさだけ。

 

 

翼が眉をひそめる。

 

 

「おかしい」

 

 

その瞬間。

 

 

風が吹いた。

 

 

護符。

 

 

無数の札。

 

 

木々の間から飛来する。

 

 

「来るぞ!」

 

 

クリスが叫ぶ。

 

 

爆発。

 

 

山全体が揺れる。

 

 

そして。

 

白装束の集団。

 

 

数十人。

 

 

人間だ。

 

 

ノイズではない。

 

 

怪物でもない。

 

 

人間。

 

 

それが不気味だった。

 

 

「蓬莱山」

 

 

一人が呟く。

 

 

「我らは蓬莱山」

 

 

「寿命の束縛から人を解放する者」

 

 

レイが小さく震えた。

 

 

クリスが前に出る。

 

 

「変身するぞ」

 

 

レイが頷く。

 

 

深呼吸。

 

 

そして。

 

歌。

 

 

聖詠。

 

 

光が溢れる。

 

 

銀色の装甲。

 

 

無数の砲門。

 

 

SYMPHOGEAR

 

ICHAIVAL

 

 

レイの姿。

 

 

クリスは少し驚いた。

 

 

綺麗だった。

 

 

まだ未熟。

 

 

だが。

 

未来があった。

 

 

「行きます!」

 

 

レイが飛び出す。

 

 

速い。

 

 

想像以上だった。

 

 

連続射撃。

 

 

回避。

 

 

追撃。

 

 

戦術も悪くない。

 

 

敵が吹き飛ぶ。

 

 

「へえ」

 

 

思わず感心する。

 

 

だが。

 

次の瞬間。

 

 

空気が変わった。

 

 

山の奥。

 

 

巨大な気配。

 

 

現れる。

 

 

白衣の男。

 

 

三十代ほど。

 

 

整った顔。

 

 

だが瞳だけが死んでいる。

 

 

「蓬莱山第三弟子」

 

 

男は言った。

 

 

「李天華」

 

 

クリスの本能が警鐘を鳴らす。

 

 

強い。

 

 

今までの連中とは違う。

 

 

圧倒的に。

 

 

李天華は周囲を見回す。

 

 

死体。

 

 

負傷者。

 

 

壊れた施設。

 

 

そして。

 

 

ぽつりと呟いた。

 

 

「無意味だ」

 

 

誰も理解できなかった。

 

 

「人は死ぬ」

 

 

「必ず死ぬ」

 

 

「ならば」

 

 

彼は空を見る。

 

 

「なぜ抗う」

 

 

その声には怒りがない。

 

 

悲しみしかない。

 

 

「師は正しい」

 

 

「死がなければ」

 

 

「誰も泣かなくて済む」

 

 

クリスは眉をひそめた。

 

 

その言葉。

 

 

どこかで聞いた気がした。

 

 

失いたくない。

 

 

別れたくない。

 

 

そう思ったことなら。

 

 

自分も何度もある。

 

 

だが。

 

 

「だから他人の寿命奪うのか」

 

 

クリスが睨む。

 

 

李天華は答えた。

 

 

「救済には代償がいる」

 

 

「世界はそういうものだ」

 

 

その瞬間。

 

 

レイが前に出た。

 

 

「違う!」

 

 

全員が驚く。

 

 

レイは震えていた。

 

 

怖い。

 

 

それでも。

 

 

下がらない。

 

 

「死ぬから」

 

 

「だから今を大切にするんです!」

 

 

李天華が静かに見る。

 

 

レイは続ける。

 

 

「だから誰かを好きになるんです!」

 

 

「だから一緒に笑うんです!」

 

 

クリスが固まる。

 

 

どこかで聞いた。

 

 

そう。

 

 

昔の響だ。

 

 

馬鹿みたいな理想論。

 

 

でも。

 

 

だからこそ。

 

 

世界を救った。

 

 

李天華は目を閉じた。

 

 

そして。

 

 

少しだけ笑った。

 

 

「若いな」

 

 

次の瞬間。

 

 

護符が爆発した。

 

 

轟音。

 

 

土煙。

 

 

敵は消える。

 

 

逃走。

 

 

残されたのは静寂だけだった。

 

 

帰還後。

 

 

基地食堂。

 

 

レイは大盛りカツ丼を食べていた。

 

 

「うまいです!」

 

 

「そうか」

 

 

「うまいです!」

 

 

「二回言ったな」

 

 

レイは笑う。

 

 

そして。

 

 

ぽつり。

 

 

「私」

 

 

「?」

 

 

「将来は先輩みたいな人と結婚したいです」

 

 

クリス。

 

 

盛大に吹く。

 

 

「ぶっ!?」

 

 

周囲も固まる。

 

 

そして。

 

 

背後。

 

 

偶然通りかかった玄十郎。

 

 

同じタイミングでむせた。

 

 

「ゴホッ!?」

 

 

沈黙。

 

 

レイは首を傾げる。

 

 

「?」

 

 

クリスは顔を真っ赤にした。

 

 

なぜか。

 

 

理由はわからない。

 

 

ただ。

 

 

玄十郎と目が合った瞬間。

 

 

妙に落ち着かなかった。

 

 

そして。

 

 

遠く離れた山奥で。

 

 

徐福は静かに笑う。

 

 

「良い」

 

 

「実に良い」

 

 

彼が見ていたのは。

 

 

クリスだった。

 

 

「失うことを恐れる者ほど」

 

 

「美しく壊れる」

ます。

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