戦姫絶唱シンフォギア 雪音クリスは幸せになりたい   作:牛☆大権現

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「失うのが怖いなら」

基地の射撃場。

 

乾いた銃声が響く。

 

 

レイが撃つ。

 

外れる。

 

 

撃つ。

 

外れる。

 

 

撃つ。

 

また外れる。

 

 

「なんでだぁぁぁ!」

 

 

床に転がった。

 

 

クリスは呆れる。

 

 

「何やってんだ」

 

 

「先輩!」

 

 

レイが涙目になる。

 

 

「当たりません!」

 

 

「見りゃわかる」

 

 

「助けてください!」

 

 

「嫌だ」

 

 

即答だった。

 

 

「そんな!」

 

 

「考えろ」

 

 

クリスは射撃位置に立つ。

 

 

構える。

 

 

引き金。

 

 

一発。

 

 

的の中心。

 

 

レイの目が丸くなる。

 

 

「どうしてそんなに当たるんですか」

 

 

クリスは少し考える。

 

 

そして。

 

 

「外す方が難しいからだ」

 

 

「意味わかりません!」

 

 

「アタシもそう思う」

 

 

レイは絶望した。

 

 

師匠として参考にならない。

 

 

 

その日の昼。

 

 

食堂。

 

 

レイは調と切歌に捕まった。

 

 

「レイちゃん!」

 

 

「はい!」

 

 

「好きな人いるデス?」

 

 

「へ?」

 

 

レイが固まる。

 

 

嫌な予感がした。

 

 

そして。

 

 

調がスマホを取り出す。

 

 

画面。

 

 

そこには。

 

 

『クリス先輩に似た人と結婚したい』

 

 

という発言記録。

 

 

レイ絶叫。

 

 

「なんで残ってるんですか!?」

 

 

「スクショした」

 

 

「怖い!」

 

 

 

その頃。

 

 

クリスは別室にいた。

 

 

呼び出し。

 

 

相手は緒川。

 

 

嫌な予感しかしない。

 

 

「なんだよ」

 

 

「お見合いです」

 

 

「帰る」

 

 

「今回は男性ではありません」

 

 

「そういう問題じゃねぇ」

 

 

緒川は一枚の写真を出した。

 

 

女性。

 

 

美人。

 

 

資産家。

 

 

人格良好。

 

 

経歴優秀。

 

 

「どうですか」

 

 

「どうでもいい」

 

 

即答。

 

 

緒川は少しだけ目を細めた。

 

 

「理想の相手は?」

 

 

「いねぇ」

 

 

「本当に?」

 

 

「本当にだ」

 

 

緒川は黙った。

 

 

そして。

 

 

ぽつり。

 

 

「では司令は対象外ですか」

 

 

沈黙。

 

 

世界が止まった。

 

 

「……は?」

 

 

「司令です」

 

 

「聞こえてる!」

 

 

「対象外ですか」

 

 

クリスの顔が赤くなる。

 

 

緒川は見逃さない。

 

 

忍者だから。

 

 

「違うだろ」

 

 

「何がですか」

 

 

「そういうんじゃねぇ」

 

 

「どういうのでしょう」

 

 

「だから!」

 

 

言葉が続かない。

 

 

 

その夜。

 

 

クリスは眠れなかった。

 

 

天井を見る。

 

 

思い出す。

 

 

司令。

 

 

初めて会った日。

 

 

ボロボロだった自分。

 

 

差し出された食事。

 

 

逃げ場のない自分。

 

 

与えられた居場所。

 

 

そして。

 

 

爆弾から庇われた日。

 

 

何度も。

 

 

何度も。

 

 

守られてきた。

 

 

「……違う」

 

 

クリスは頭を振る。

 

 

違う。

 

 

そういう感情じゃない。

 

 

そうじゃない。

 

 

そうじゃないはずだ。

 

 

 

一方。

 

 

風鳴弦十郎も眠れていなかった。

 

 

理由は同じだった。

 

 

翼のせいである。

 

 

「叔父上」

 

 

「なんだ」

 

 

「雪音はどう思いますか」

 

 

「部下だ」

 

 

「今も?」

 

 

「……」

 

 

沈黙。

 

 

翼は逃がさない。

 

 

「今も」

 

 

「元部下だ」

 

 

「そうですか」

 

 

その返答が。

 

 

妙に苦しかった。

 

 

 

翌日。

 

 

事件が起きた。

 

 

長野県。

 

 

失踪者。

 

 

三十七名。

 

 

全員発見。

 

 

全員死亡。

 

 

全員老衰。

 

 

二十代も。

 

 

三十代も。

 

 

全員。

 

 

老人のようになっていた。

 

 

会議室が静まり返る。

 

 

レイもいる。

 

 

クリスもいる。

 

 

誰も言葉を失う。

 

 

そして。

 

 

映像が流れた。

 

 

監視カメラ。

 

 

最後の記録。

 

 

白装束。

 

 

護符。

 

 

そして。

 

 

老人。

 

 

徐福。

 

 

彼はカメラに向かって言った。

 

 

「なぜ怒る」

 

 

静かな声。

 

 

「いずれ死ぬ命だ」

 

 

「私はそれを少し借りただけだ」

 

 

誰も動かない。

 

 

徐福は続ける。

 

 

「人は別れを受け入れられない」

 

 

「だから苦しむ」

 

 

「ならば」

 

 

「別れを無くせばいい」

 

 

映像が切れる。

 

 

静寂。

 

 

その時。

 

 

レイが言った。

 

 

「違う」

 

 

全員が見る。

 

 

レイは震えていた。

 

 

それでも。

 

 

まっすぐ前を向く。

 

 

「別れるから」

 

 

「だから今を大事にするんです」

 

 

クリスが息を止める。

 

 

徐福と。

 

 

レイ。

 

 

思想が真逆だった。

 

 

そして。

 

 

徐福が壊そうとしているものは。

 

 

自分がやっと手に入れたものだった。

 

 

仲間。

 

 

居場所。

 

 

未来。

 

 

失うのは怖い。

 

 

だが。

 

 

だからといって。

 

 

永遠のために誰かを犠牲にしていい理由にはならない。

 

 

その時だった。

 

 

緊急警報。

 

 

赤色灯。

 

 

オペレーターが叫ぶ。

 

 

「蓬莱山反応!」

 

 

「東京湾沿岸!」

 

 

「大規模術式展開!」

 

 

全員が立ち上がる。

 

 

そして。

 

 

徐福は山奥で静かに笑う。

 

 

「さあ」

 

 

「見せてもらおう」

 

 

「お前達の絆を」

 

 

その瞳は。

 

 

クリスだけを見ていた。

 

 

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