戦姫絶唱シンフォギア 雪音クリスは幸せになりたい   作:牛☆大権現

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「千年の執着」

月が綺麗だった。

 

 

徐福は一人で座っていた。

 

 

山頂。

 

 

誰もいない。

 

 

風だけが吹く。

 

 

そして。

 

 

手には一本の簪。

 

 

古い。

 

 

あまりにも古い。

 

 

李天華が近づく。

 

 

「師」

 

 

徐福は振り返らない。

 

 

「どうした」

 

 

「なぜあの者達を殺さないのですか」

 

 

沈黙。

 

 

長い沈黙。

 

 

やがて。

 

 

徐福は少し笑った。

 

 

「若いな」

 

 

李天華は黙る。

 

 

「昔」

 

 

徐福が呟く。

 

 

「私にもそういう時代があった」

 

 

 

二千年以上前。

 

 

まだ秦の時代。

 

 

徐福は仙人ではなかった。

 

 

ただの人間だった。

 

 

 

山村。

 

 

小さな家。

 

 

そこで。

 

 

一人の女と暮らしていた。

 

 

 

笑う女だった。

 

 

貧しくても笑う。

 

 

雨漏りしても笑う。

 

 

畑が失敗しても笑う。

 

 

徐福はよく怒られた。

 

 

難しい本ばかり読んでいるから。

 

 

 

「あなた」

 

 

女が笑う。

 

 

「また徹夜?」

 

 

 

若い徐福も笑う。

 

 

 

それだけだった。

 

 

本当に。

 

 

それだけだった。

 

 

 

場面が変わる。

 

 

雪。

 

 

病。

 

 

 

女が横たわっている。

 

 

徐福は薬を作る。

 

 

祈る。

 

 

願う。

 

 

 

何も届かない。

 

 

 

女は笑った。

 

 

最後まで。

 

 

 

「泣かないで」

 

 

 

その言葉が。

 

 

今でも許せない。

 

 

 

徐福は拳を握る。

 

 

 

なぜ。

 

 

死ぬのか。

 

 

 

なぜ。

 

 

奪われるのか。

 

 

 

なぜ。

 

 

愛しただけなのに。

 

 

 

その日から。

 

 

徐福は狂った。

 

 

 

不老不死。

 

 

仙薬。

 

 

命。

 

 

寿命。

 

 

魂。

 

 

何百年も研究した。

 

 

何千年も。

 

 

 

誰かを救うために。

 

 

最初は。

 

 

 

だが。

 

 

いつしか。

 

 

目的が変わった。

 

 

 

誰も失わない世界。

 

 

 

それだけが残った。

 

 

 

現在。

 

 

徐福は空を見る。

 

 

 

「もう少しだ」

 

 

 

簪を握る。

 

 

 

「もう少しで」

 

 

 

その顔は。

 

 

勝利を望む顔ではなかった。

 

 

 

救われたい人間の顔だった。

 

 

 

一方。

 

 

地下牢。

 

 

 

レイ達。

 

 

 

蒼が壁を殴る。

 

 

 

当然壊れない。

 

 

 

「くそっ!」

 

 

 

薫も悔しそうだ。

 

 

 

ノアも。

 

 

ミナも。

 

 

リリィも。

 

 

 

誰も諦めていない。

 

 

 

レイだけが静かだった。

 

 

 

「先輩」

 

 

ぽつり。

 

 

 

「助けに来るかな」

 

 

 

蒼が即答する。

 

 

 

「来る」

 

 

 

「即答だな」

 

 

 

「だって響先生だぞ」

 

 

 

全員が笑う。

 

 

少しだけ。

 

 

 

「クリス先輩も来る」

 

 

リリィが言う。

 

 

 

レイが顔を上げる。

 

 

 

「なんで?」

 

 

 

リリィは不思議そうだった。

 

 

 

「だってレイ先輩のこと好きだし」

 

 

 

レイが吹く。

 

 

 

「違う!」

 

 

 

「違うの?」

 

 

 

「そういう意味じゃなく!」

 

 

 

蒼が笑う。

 

 

 

「確かにめちゃくちゃ可愛がられてるよな」

 

 

 

「先輩だからだ!」

 

 

 

「それだけかなー」

 

 

 

ノアまで言う。

 

 

 

レイが真っ赤になる。

 

 

 

だが。

 

 

その笑いが。

 

 

少しだけ救いだった。

 

 

 

その頃。

 

 

作戦室。

 

 

 

クリスは眠れない。

 

 

 

モニター。

 

 

資料。

 

 

解析結果。

 

 

 

何度見ても変わらない。

 

 

 

救出方法なし。

 

 

 

それが一番腹立たしい。

 

 

 

その時。

 

 

缶コーヒー。

 

 

机に置かれる。

 

 

 

玄十郎だった。

 

 

 

「またお前か」

 

 

 

「また俺だ」

 

 

 

少しだけ笑う。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

そして。

 

 

玄十郎が言う。

 

 

 

「似ているな」

 

 

 

「何が」

 

 

 

「徐福だ」

 

 

 

クリスが睨む。

 

 

 

「喧嘩売ってんのか」

 

 

 

玄十郎は首を振る。

 

 

 

「違う」

 

 

 

「失いたくないんだろう」

 

 

 

言葉が詰まる。

 

 

 

図星だった。

 

 

 

レイ。

 

 

 

あの馬鹿弟子。

 

 

 

死んでほしくない。

 

 

 

絶対に。

 

 

 

玄十郎は続ける。

 

 

 

「だから気を付けろ」

 

 

 

「失いたくない気持ちは」

 

 

 

「時々、人を間違った場所へ連れて行く」

 

 

 

クリスは黙る。

 

 

 

徐福。

 

 

 

もし。

 

 

 

もっと失ったら。

 

 

 

もっと苦しんだら。

 

 

 

自分も。

 

 

 

ああなるのか。

 

 

 

答えは出ない。

 

 

 

ただ。

 

 

胸の奥が重かった。

 

 

 

そして。

 

 

その夜。

 

 

エルフナインは一人。

 

 

研究室に残っていた。

 

 

 

誰もいない。

 

 

 

モニターだけが光る。

 

 

 

解析。

 

 

解析。

 

 

解析。

 

 

 

そして。

 

 

ついに。

 

 

何かを見つける。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

顔色が変わる。

 

 

 

ありえない。

 

 

 

絶対にありえない。

 

 

 

でも。

 

 

データは示していた。

 

 

 

徐福が使った術式。

 

 

 

その構造は。

 

 

 

シンフォギアより古い。

 

 

 

錬金術より古い。

 

 

 

人類史以前。

 

 

 

バビロニア以前。

 

 

 

神話以前。

 

 

 

エルフナインの指が震える。

 

 

 

「そんな・・・」

 

 

 

そして。

 

 

画面に浮かぶ一つの単語。

 

 

 

【太初の言語】

 

 

 

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