『僕は実は吸血鬼なんだぜ』って嘘をついたら 両親を食べるハメになったんですけど 作:焼肉食べ放題のレバーは生が美味い
そもそも、吸血鬼がいる、なんて荒唐無稽な話を信じるなんて、なんて愚かなんだ、と思う人もいるかもしれないが、そこは許して欲しい。
幼い子供にとっては、親の言葉は絶対なのだ。
会ってはいけない、と言われたら会わないし。
コレをしなさい、と言われたらソレをするし。
神様はいるんだ、と言われたらいるし。
近所に吸血鬼が住んでいるんだ、と言われたら住んでいる。
しかも、本当に吸血鬼はいたっていうのが、この話のタチの悪い所だ。
▲▼▲
「
「ママさんも、娘にどうにかして友達を作って欲しい言ってたわよ」
とある皆既月食の冬の日。月が紅く染まる夜。尿意を催し起きた福は、トイレから自分の部屋に戻る途中に、リビングでの両親の会話を偶然聞いた。
10歳の福は、毎日のように小学校の友達と遊んでいた。故に友達がいないという吸血鬼の娘の存在は、そんな彼に憐れみという感情を教える教材としては、及第点を優に超えていた。
──なんてかわいそうなんだ!! 僕が友達になってあげなきゃ!!
幼子らしい正義感を発揮した福の行動は早かった。こっそり家から出て、その吸血鬼の娘に会いに行こうとしたのである。時刻は夜の12時だ。10歳にとっては、まだまだ馴染みのない時間帯だ。
吸血鬼に会いに行くのも、夜に一人で外に出るのも、どちらも当然母親からやってはいけないと言いつけられてることだ。それを、福は意識的に破ろうとしている。そんなのは初めてのことだ。福は、親の言うことをちゃんと聞く良い子だったのだ。
「……」
福は忍び足で玄関に向かい、ドアの鍵を開けて外に出た。
元はと言えば、トイレに行くために目が覚めただけなのだから、寝ぼけていて思考力が鈍るのは当然。常時の彼ならば、夜中に一人で家を出るような暴挙は、絶対に働かないはずだった。そして、リビングにいる両親も、酒で酔って耳が遠くなったせいか、どちらかが話している最中で物音がかき消されたせいかは知らないが、どちらも息子が家の中から姿を消したことに気づけなかった。
「……」
北海道でも、線路が通っていないような田舎でもないのだから、3軒隣の家なんて目と鼻の先。すぐに白内家の前に着いた福はその家のチャイムを押そうとして、しかしどこにもインターフォンがないことに気がついた。
どうしたものかと、福はキョロキョロと首を回す。
実は白内家のドアにはドアノッカーがついていたのだが、福の目にはそれはただの装飾品としてしか映らなかった。まぁ、現代においてインターフォンではなくドアノッカーを採用している家の持ち主は、相当の変わり者か重度のアンティーク愛好家くらいだろう。そしてそういう人物は、岐大家の周りには住んでいなかった。馴染みのないドアノッカーを、福が来訪者がいることを知らせるための道具と認識出来ないのも無理のない話だ。
ただ、この後の行動はあまり擁護出来ない。寝ぼけているのに加えて、初めて深夜の世界を一人歩く興奮で、思考力が鈍っていたことを踏まえても、アレはあんまりだ。
「……」
福は、試しに触れてみたドアに鍵がかかっていなかったのを良いことに、そのまま白内家の中に不法侵入した。思いっきり刑法130条に抵触している。
─オバケ屋敷みたいだ
家に入った瞬間、福はそう思った。それも、日本風の幽霊屋敷ではなく、西洋風のホーンテッドハウスである。そして不思議なことに、その屋敷には窓と呼べるものが一切なかった。
星の光の侵入すら許さぬ暗闇と、散乱しているアンティーク調の家具が、屋敷の異界感をより一層高めている。
普段の福ならば、怖くてこの屋敷から逃げ出していただろう。だが、ハイになっている福は、怖がるどころかこの異様な雰囲気に興奮と興味を示し、早足で屋敷の奥に進んでいった。
「……」
大股で奥に踏み込んでいった福。だが、自分と同じ年齢らしい吸血鬼の娘を見つけることは出来なかった。
興奮の消費期限は短い。福は段々と冷静になってきた。すると急に、恐怖が心の内から這い寄ってくる。
親の言いつけを破ったこと。
屋敷の暗闇。
人を喰うという吸血鬼。
それらへの恐れが膨らんで来て、ようやく福の中に、家に帰るという選択肢が現れる。
即断即決が子供の特性だ。福は走って、屋敷の入口に向かう。だが、そんな福を引き留めるように、可憐な声が、彼の鼓膜を叩いた。
「あれ? 帰っちゃうんですか?」
誰もいなかったはずの、福の隣から声が聞こえた。福は悲鳴を上げようとして、しかし、横を向いて、自分の隣にいる少女を見た瞬間に、叫びは喉の中で潰れて消えてしまった。
「ん? どうしました?」
不健康そうな白い肌。艷やかな黒の長髪。大きな紅い目。口から覗く鋭い牙。そして何より、美しい。
少女の姿を見た瞬間、福の中から冷静さは消え失せ、先ほどまでとは別の興奮が、彼の脳内を満たす。そしてその胸の高鳴りは、福から屋敷から立ち去るという選択肢を消し去り、彼がこの屋敷に来た理由を思い出させた。
「ねぇ、吸血鬼ちゃん。僕と友達にならない?」
突然の福の言葉に、少女は少しキョトンとして固まった後すぐに「ムリですよ」と答えた。
「どうしてさ」
「だって、私は吸血鬼で、アナタは人間ですから」
少女はそれ以上は言わずに、福の首元を指で撫でて、スンスンと鼻を鳴らした。
「美味しそうな匂い」
そう言う少女は、少し頬を染めていて息も荒く、かなり興奮しているようだった。
そんな彼女を見て福は、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまって動けない。……いや実際はただ見惚れていただけなのだが、娘の舌がチロリと福の首の皮を舐めると、流石にそんなことも言えなくなったようで、彼は娘の肩を掴んで引き離した。
「ストップストップ」
ひとまずの被食、絶命の危機は免れた。だがしかしこの後はどうしたものか。人間である福とは友達になれないと彼女は言っている。それは嫌だ。
──あ……
瞬間、福はとある考えを閃いた。それは、福が彼女と友達になるにはこれ以上ない、というか、たった一つしかないとも言える名案だった。あるいは、彼らの真っ当な人生、吸血鬼生を破滅に導く最悪のプランとも言えたのかもしれないが、とにかく、それを思いついた福は上機嫌に、目の前の彼女にとあるウソをついた。
「キミは僕を人間だって言うけどさ、実は僕は吸血鬼なんだぜ」
福がそう言うと、吸血鬼の娘は目を丸くした。
「え? でもオニーサンからは、吸血鬼の匂いはしませんよ?」
「それは……アレだよ。ほら、僕さ、赤ん坊の頃に人間の夫婦にひろわれてね。母さんと父さん、二人は僕を人間だと思って育てたし、僕も育ててくれた二人のために、人間として生きてきた。だから僕は、人の血を吸ったことがないんだよ」
自分でも驚くぐらい、福の舌はペラペラ回った。
「人の血を吸わない吸血鬼なんて、吸血鬼とは言えないだろ? だから僕からは、人間の匂いがするんだよ」
「……オニーサン、可哀想な人、いや、鬼なんですね」
福の一つ下、9歳の吸血鬼の娘は、一歩も外の世界に出たことがない。それは文字通りの世間知らず。つまり、両親以外の言葉を操る生き物に会ったことがないということだ。そして彼女の両親は、娘に悪意のある言葉を向けるような鬼達ではない。彼女は、他人の悪意ある嘘に触れたことがないのだ。故に純粋で、悪く言えば騙されやすい。
騙そうとする意志はあるが、悪意も技術も足りていない、100人が聞けば100人が見破れるような福のウソを、屁理屈を、その幼鬼は見破れなかった。
「いいですよ。友達になってあげます」
「ホント?」
「えぇ。オニーサンが人間じゃないなら、断る必要はないですからね」
「やった」
喜びを表すように、福はピョンピョンとその場を跳ねた。
「それじゃあ、何して遊ぼっか」
「え?」
「ん? どうしてそんな不思議そうな顔するんだ? 友達になったなら、遊ぶのが普通だろ?」
「………………そうですね。友達って、そういうものなんですもんね」
何が面白いのか、彼女はクスクスと笑う。
「アナタと遊ぶのは楽しそう。でも、今日はもう帰ってください」
「え〜〜」
「今は出かけてますけど、私の父様と母様。凄く厳しい鬼なんです。オニーサンが勝手にウチに入っているのを見たら、きっと怒られますよ」
「あ〜。それはヤダな」
福は首をがっくしと下げた。
─仕方ない。帰るか
「あ、でも」
トボトボと出口に向かう福の背に、彼女は声をかけた。
「今日は、父様と母様は散歩に出かけてるだけですけど、明日は人妖友好会? って言う集まりに行くらしくて、明後日の日没まで帰って来ないんですって」
「そう? じゃあ明日の夜、またここに来るよ」
そう言って、福は屋敷の扉を開けた。空を見上げると、紅い月が輝いている。
──そういえば、今日は月食の日だったんだ。まるで……まるで……あれ? 誰の眼みたいなんだ?
福は、自分があの紅い目の吸血鬼の名前を知らないことにようやく気づいた。
自宅に向かっていた進んでいた足をターンして、あの屋敷に戻る。相変わらずただの装飾品にしか見えないドアノッカーは無視して、再度屋敷内に不法侵入した彼は、そのまま奥に踏み込んだ。
吸血鬼の娘は、さっき福と別れた場所と変わらない所に立っていた。
「あれ? 戻ってきたんですか」
「うん。聞きたいこと……っていうか、友達としてやっとかなきゃいけないことをしてないことに気づいてさ」
「やらなきゃいけないことって?」
「自己紹介だよ」
月のような彼女の目を見つめながら、福は自らの名を紡ぐ。
「僕の名前は岐大 福。キミの名前は?」
「…………私は、白内 トキです」
しらない とき。
ただの6つの文字の組み合わせ。
それが、福の耳にはとても綺麗なモノに聞こえた。
「これからよろしくね。トキちゃん」
▲▼▲
『明日の夜また会おう』
福とトキはそう約束したが、その約束が守られることはなかった。いや別に、彼らのどっちかが死んだとか、何らかの大災害が起きて遊ぶどころではなくなったとか、そういう重大な事件が起こったからではない。単純に、夜に福が家をこっそり抜け出そうとしたら、普通に親にバレたのだ。
「こんな夜中に外に出ようとして!! アナタ何を考えてるの!!」
大袈裟に言って福の母の怒り様は、烈火の如く、だった。昨日は酒を飲んでいて気づかなかったというのに、偶々気づいた今日は大声で怒鳴っているというのは、どこか滑稽だと言えなくもないが、だからって流石に、おそらくは自分のために怒ってくれているのであろう母を笑うほど、福は捻くれてはいなかった。
「ごめんなさい」
──ごめんなさい
声に出して母に、そして心の中ではトキに謝った福は、大人しく二階にある子供部屋に向かった。
「うぅん。うるさいなぁ。お兄ちゃん。お母さんのこと怒らせないでよ」
先に寝ていたが、母の声で目を覚ましてしまったらしい妹がそう文句を言った。
「ごめんごめん」
申し訳なさそうに軽く笑いながら、福も布団の中に入った。
──明日こそ会いに行って、トキちゃんに謝ろう
そんなことを思いながら、福は目を閉じた。
▲▼▲
「……」
ふと、福は目を覚ました。その途端、胸焼けしたような、腹の奥に何か黒い塊が居座っているような不快感が襲ってくる。スンスンと鼻を鳴らすと、吐き気を催すような悪臭も感じる。
──……風邪でもひいたか?
なんとなく首を回して見ると隣に、苦しそうに呼吸をする妹が見えた。
──
一階にある洗面所に行こうと、子供部屋の扉を開けて廊下に出る。すると、目覚めた時から感じていた悪臭が強くなった。階段を下っていくと、さらにそれは悪化していく。
──何かあるのか?
福は、自らを苛む諸々の不快感が、病によるものではないのではという考えに至る。
階段を下り切った先にあるのは、左右に別れた廊下。右に進めば洗面台が、左に進めばリビングとキッチンがある。水を飲むだけなら、右に行けばいい。だが、リビングから、これまで感じていたものとは比にならない悪臭が漂って来ていて、それに不審と興味を抱いた福は左に進み、リビングに繋がる扉を開けた。
「あ!! オニーサン!!」
福を出迎えたのは、満面の笑みをその顔に湛えたトキだった。それは、眩しくて、柔らかくて、見た者全てがつられて笑ってしまうような、とびきりの笑顔だったけれど、福の視界にそれは映っていなかった。そんな余裕は、彼にはなかった。
「……」
赤。ひたすらの紅。夜の闇にも勝る朱。
とある一つの色。
福の目から脳に送られる情報はそれだけで、しかし単純ながらもどこまでも鮮烈なそれに、福の思考は支配される。鼓膜を震わせるトキの声にも、鼻腔を穿つ悪臭にも、構っている余裕はない。
その赤の出所はどこなのだろう、と首を回す。全身血塗れのトキは見えるけれども、彼女がケガをしている様子はないから、彼女ではない。
さらに視界を動かすと、とある一点。リビングに備え付けられた固定電話──それが本来置かれているはずの台の下の床にあるモノにピッタリと焦点が合って、そこに福の意識は釘付けになった。
「……」
それは、抱き合って倒れている二人の人間だった。そしてその内の片方。赤で汚れた固定電話の受話器を持っている女性。夜の闇の中でも分かる。それは、福の母親だった。時に優しく、時に厳しい。福が心の底から愛していて、福を心の底から愛してくれている母だった。
──あ……
パッと見外傷はないように見えるが、よくよく見てみると、口と、抱き合っているせいでよく見えない胸元から、ドクドクと血が流れているのが見えた。
──死んだ。死んだ。死んだんだ
まだ、祖父母の白装束を見た経験すらない。もちろん死体に関する知識も持っていない福ですら、直感的にそう思った。
そして、そんな母親の遺体と抱き合って倒れているモノ。いや
「……」
ふと、トキの右腕が視界に入った。血を浴びたように真っ赤な彼女だが、その右腕は特に異様だった。彼女の右腕についたピンク色のぶよぶよとした物体。それは一体、何なのだろうか? それは一体、誰のナニなのだろうか?
──あ、う、あ……
なんとなく、福は経緯を理解した。
誰が、どんな風にして殺したのかを。
誰かが、助けを求めようとして、あるいは庇おうとして、無惨に殺されたことを。
──どうして……
犯人と凶器と被害者を把握した福が次に疑問に思ったのは、動機だった。そう、悲しみとかの感情はまだ追いついてこない。涙は流れないし、悲鳴も上げない。福は、自分でも不思議なくらいに冷静だった。
「オニーサン。私がなんでここにいるのか、知りたいですか?」
福の内心を察しているのか察していないのかは知らないが、トキはどこか楽しそうにそう問うた。そして福からの答えも待たずに言葉を続ける。
「まぁ、理由は二つあるんですよ。一つ目は単純に、オニーサンを助けてあげようとしたんです。あ、こう言うと少し恩着せがましいですかね?」
テヘッ、とどこか照れくさそうにトキは笑う。
「今日の夜。いや、もう昨日ですか? まぁなんにしても、私はこの家の会話を盗み聞いたんですよ」
盗み聞いた。どこから? そんなの決まってる。岐大家の3軒隣にあるトキの住んでいる家からだ。近所とはいえ、それでも数十mは離れていて、さらにはいくつかのコンクリートの壁を挟んだ先での会話を盗み聞くなんていうのは、当然人間には不可能だが、超常的な身体能力を持つ吸血鬼──トキならば、その程度のことは簡単だった。
「今、そこに転がっている人間」
トキは、床に転がっている福の母親だったモノを指差す。
「あれ、オニーサンに怒鳴っていたでしょう。それはダメですよぉ。ダメ。人間ごときが、所詮食糧でしかないモノが、
諭すように、幼い子供に常識を授ける母のように、トキは語る。
「きっと、オニーサンは優しいんです。だから、人間から理不尽な扱いを受けても許容する。でも、私にはそんなことは出来ません。オニーサンが理不尽に苦しめられるのを黙って見て見ぬ振りをすることは出来ません」
吸血鬼の常識と人間の常識は違う。
法も道徳も倫理も、あらゆる規範が少しずつズレていて、共有出来ない◯と☓がある。
「友達っていうのは、助け合うものなんでしょう? だから私は、オニーサンを助けてあげたんです。この人間のツガイを、殺してあげたんです」
子供を叱るなんて、親としては当然のことだ。福の母親は間違ったことは何一つしていない。それなのに吸血鬼に目をつけられてしまったのは、『自分は吸血鬼なんだ』なんてくだらない嘘を福がついてしまったからに他ならなかった。
そしてトキは、意図なく、逆に善意をもって、すでにボロボロの福に追い打ちをかける。
「二つ目の理由です。オニーサン、昨日、『人の血を吸わない吸血鬼なんて、吸血鬼とは言えない』って言ったでしょう。私も、それにはおおむね同意したんですけど、少し違和感を覚えたんです。本当は、吸血鬼の基準は、もっと厳しいものなんじゃないかって………………えと」
少し恥ずかしくて、トキの言葉が止まる。でもすぐに、開き直るように笑ったトキは口を開いた。
「私、引きこもりの吸血鬼だったんです。実は、外の世界に出るの、今日が初めてなんですよ。それで、引きこもっていた理由なんですけど、別に、外が怖かったからとかではないんです。ただ、外に出る必要がなかったからなんです」
トキの知る範囲では、外の世界にあるもので魅力的だと思えるものはなかった。そして、生きるのに必要なモノ──ヒトの血や肉は、両親が持ってきてくれた。
「だから私ね、人を殺したことは、これまでなかったんですよ。でもそんな存在を、吸血鬼って呼べるんですかね?」
人を殺し、死にたての新鮮な血を喰らうモノ。きっとそれこそが、真の吸血鬼だ。パックに入った血液や、冷凍されたどこの部位かも分からない肉を食むモノでは決してない。
「オニーサンは言わずがもな、たぶん私も、吸血鬼としては失格なんです。だから今日合格しましょう。本当の吸血鬼に生まれ変わりましょう。そのための二人分です」
抱き合ったまま死んだ人間の男女は、トキと福のためのバースデーケーキだった。
「ハッピーバースデートゥーユー&ミーですよ、オニーサン」
トキは、床に横たわる福の父親だったものの頭をもぎ、それを福に差し出した。
──あ……
『実は僕は吸血鬼なんだぜ』
昨日の自らの言葉が、福を縛る。
もし、ここで福が「僕は吸血鬼なんかじゃない!!」と真実を言えば、きっと福は両親を食わなくてすむだろう。だが、目の前の彼女に自分が人間であることがバレれば、今度は自分が喰われるかもしれない。
それじゃあ、このまま嘘を貫き通そうか。だけど、それでは福は両親を食わないといけない。それは、人間としての福の死だ。
──どうする。どうする。どうする
選択の時。
岐大 福は、両親を────
→食べる
食べない
何やってんだろ。
最低だ、俺って。