偽物スパイダーマン   作:学学 学

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第2話

 ステイシーさんから聴いた病院へと向かう。アクセルが凄く重く感じた。道も空いていたのに、何故かひどく時間がかかった気がした。

 気が重い。

 受付を済ませて病室はと向かう。ノックすると静かな男の声が響いた。その声はひどく静かで重かった。病室に入り、まず目に入ったものはベットの上で眠っている女性だ。全身を包帯で包み顔も見ることも出来ない。包帯の隙間から複数のチューブが生えており、医療器具と繋がっている。

 

「……君たち、来てくれてありがとう。グウェンも喜ぶよ。ああ、グウェンはいつも君たちのことを話していたから……。ああ、ピー、いや恋人すら嫉妬するほど君たちのことが好きだった。」

 

 ステイシーさんはうっすらと笑いながらそう言った。その様子に私たちは頷くことしか出来ない。グウェンさんを見る。とても生きてるなんて言えない。生かされているだけだ。

 意識不明の話を聞いた時はショックだった。しかし、実際に見てみると違う。なんて言えば良いのか、何をすれば良いのか、分からない。フィンも同じらしく、私のシャツの裾を掴んだまま震えているだけだ。

 

「……ステイシーさん。グウェンさんは、何があったんですか?」

 

 私はそう聞いた。聴くことも憚れるほどステイシーさんは憔悴していたが、聴かずにはいられなかった。

 

「…………事故だ。車に轢かれた。」

 

嘘だ。

私は忍者だ。侍の義娘でもある。だから断言できる。これは事故じゃない。包帯の上からでは詳細は分からないが、この怪我は車に轢かれたものなんかでは無い。

 

「………………。本当に事故なんですね。」

 

「ああ。そう処理された。」

 

 騒がれた声。疲れた声。何かを飲み込んでいる返答だ。フィンが服の袖を軽く引っ張った。彼女と目を合わせると、フィンは小さく首を振った。今のステイシーさんを見てスパイダーマンのコスチュームの渡せるような状況じゃ無いと思ったんだろう。こう言う時のフィンは弱い。

 

「………………メグ、そろそろ帰りましょう。ステイシーさんも気持ちを整理する時間も必要だと思うわ」

 

「…………そうね。スパイダーマンが助けてくれれば良かったのですけどね。」

 

 私の言葉にステイシーさんはなんとも言えない表情になった。私の言葉が気に障ったのか、それとも、別の意味があるのか……。

 細かな表情で相手の感情を、嘘をついているかを探る。私はそこまで上手く無い。超有名スパイのブラックウィドウと比べるときっとお遊びレベルだ。それでも、追い詰められた人に対してなら少しは読み取れる。

 

「………ああ、そうだったら良かったのにな。」

 

 ………やっぱり、ステイシーさんは優しい人だ。

 

◆

 

 病院から出るとフィンは小さく言う。

 

「メグ、親友だから言うけど。ステイシーさんへの最後の言葉。少し、酷いと思うわ。スパイダーマンが助けてくれれば良かったのにって、そんな、たられば、わざわざ言う必要無いと思う。」

 

 割と怒ってる…。けも、ごもっともだ。

 

「………うん、そうだね。ごめん。人の心が無かった。けど、グウェンさんの怪我は事故じゃない。それにスパイダーマンが関わっている。」

 

「……………どういうこと?」

 

 フィンは静かに言う。

 

「あの怪我は事故なんかじゃない。切り傷に火傷、武器によるものだと思う。見てみないと詳しいことは分からないけど……」

 

私の言葉にフィンは頷いてから口を開いた。その目つきは少し鋭い、思考を切り替えたみたいだ。

 

「けど、ステイシーさんは事故だと言っま。つまり、警察的には事故だと発表したと言うこと。」

 

「そう言うこ。そして、ステイシーさんの言葉には、嘘(・)が無かった。彼は本心からこれが事故だと思っているってこと。」

 

「けど、それじゃあ………。警察も動かない可能性がある?」

 

 そう言う事だ。

 警察はどう言うわけか事故だと発表した。ステイシーさんもそう信じてる。そうなると捜査は進まないし犯人は捕まらない。

 もともと、警察は信用していないし、悪人が等しく裁きが降るとも思っていない。それでも、それでまだ。

 

「グウェンさんにあんな目を合わせた犯人が捕まらないと言うこと。」

 

 私の言葉にフィンは静かに答える。

 

「許せない。」

 

 そうだ、私も同じ気持ちだ。

 だからこそ、私の想いを口にする。

 

「そして、手がかりはある。ステイシーさんの反応から今回の事件にスパイダーマンが関係していると思う。」

 

 私がスパイダーマンの名前を出した時の反応。間違いなく彼は関係してる。

 だから……

 

 無意識に拳を握り、フィンが持つバックに視線を向ける。

 それに気がついたフィンは目を開いた。

 

「スパイダーマン? まさか、メグ……」

 

「うん。グウェンさんを襲ったやつらは、私が捕まえる。だから、そのスパイダーマンスーツ。私に渡して」

 

 これは我儘だ。

 犯人を捕まえてもグウェンさんは治らない。ステイシーさんも、事故として納得してるのだ。そのまたまでも良いだろう。

 それに、きっと、とても危険なことだ。フィンは巻き込めない。

 

「…………いやよ。メグ。わたしも協力する。グウェンさんの仇を討とう」

 

 

……………。

 

「ありがとう。」

 

 

 こうして、私たちのスパイダーマンご(・)っ(・)こ(・)が始まった。

 

 

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