書きたくなったら書く 作:落液
地上最強を目指す男、ジャック・ハンマー。
彼はある日、トレーニング中に気付く。
「俺の肉体には……まだ無駄がある」
錠剤を飲みながら考える。
睡眠は削った。
精神も削った。
寿命すら削った。
だが、まだ足りない。
ジャックは病院の待合室で静かに呟く。
「強さに不要なものは、全て捨てる」
手術終了。
静まり返る病室。
ベッドの上で目を開くジャック。
医師が告げる。
「手術は成功しました」
数秒。
沈黙。
そして
「そうか」
事実、それだけであった
笑わない。
後悔しない。
まるでただ歯石を取った程度の反応。
その日の夜。
病室。
刃牙が呼び出される。
薄暗い通路。
ジャックが立っている。
いつも通り巨大。
いつも通り怖い。
だが。
何かが違う。
刃牙
「で、話って何?」
ジャック
「俺は進化した」
刃牙
「また骨延長?」
ジャック
「違う」
刃牙
「歯?」
ジャック
「違う」
刃牙
「筋肉移植?」
ジャック
「違う」
ジャックは静かに言う。
「捨てた」
刃牙
「何を?」
ジャック
「未来を」
刃牙
「???」
ジャック
「強さに不要だが、確実に必要な器官をな」
刃牙
「どこ?」
ジャック
「下だ」
刃牙
「下?」
ジャック
「もっと下だ!!!」
⸻
刃牙の脳が理解する。
理解した瞬間。
停止する。
刃牙
「待て」
ジャック
「うむ」
刃牙
「待て待て待て」
ジャック
「うむ」
刃牙
「何やってんだよォォッ〜!」
ジャック
「強さには不要だと思った」
刃牙
「必要とか不要とかそういう話じゃないだろ!!」
ジャック
「不要だ」
刃牙
「そういう問題じゃねぇッ!!」
〜後日〜
徳川の御老公
「本当にやる奴がおるとはのォ」
刃牙
「俺だって骨延長の時は理解しようとしたんだよ」
烈
「うむ」
刃牙
「薬漬けの時も理解しようとした」
列
「そうだな」
刃牙
「でも今回だけは無理だ」
烈海王
「私もです」
渋川
「ワシもじゃ」
独歩
「この場にいる全員そうだと思うぜ」
数日後。
世界最強の生物、範馬勇次郎の耳にも当然その話は入った。
勇次郎
「……ほう」
表情は変わらない。
しかし。
5秒後。
勇次郎の肩が震え始める。
「クク……」
地面が震える。
「ククク……」
空気が震える。
「ハハハハハハハハ!!!!!!」
勇次郎
「強さのために寿命を削る!!」
「薬を飲む!!」
「骨を伸ばす!!」
「まぁわかる!」
「そこでソレを切る奴があるかァ!!!!!」
さらに爆笑。
⸻
数分後。
ようやく落ち着く。
すると勇次郎は
「馬鹿だ」
「救いようもねェ」
「理屈も通ってねェ」
「強さはそんな場所には無い」
とジャックに吐き捨てた
ナレーション。
範馬勇次郎は認めない。
称賛もしない。
真似もしない。
だが。
世界中の誰も理解できない選択をした男を見て、
笑った。
それは親子の情ではない。
理解でもない。